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第8章 七色を追いかけて

第45話 〜鉱床〜

下水道の一角。水がザーザーと轟音を立てながら流れている。

その音を聞きながら大きなコンピューターに向かっている1体のメダロットがいる。

鮮やか赤とオレンジ色の燃え上がる炎を思わせるメダロットだ。

キーボードをカタカタと鳴らしながら、画面にはとてつもない量の文字が上下に移動する。

メダロットは目だけを移動させ打ち間違いが無いか常に確認している。

手元には膨大な数のフロッピーディスクが散らばり、

その様子を後ろからバニジンガルムが見つめていた。

バニジン「今日もやってたのかい?仕事熱心だね〜。」

赤いメダロットはデータを打ちながら答える。

????「私の課せられた仕事は最終兵器の完成です。一刻も早く完成させなければ・・ですが・・」

バニジン「ですが?」

????「まだデータが足りません・・。65パーセント以上の容量がまだ空白です。

     パーツの材料はダークン様がもって来た量で充分ですが・・。」

バニジン「戦闘に関するデータか・・僕らが集めてる分じゃ全然ダメってことかい。」

????「どこからか調達してきた方がいいです。このスピードでは、容量が埋まるのは約3年以上・・。」

バニジン「3ッ・・・わかったよ。僕がどっかから調達してくる。えっと・・・

     オシロイカンパニー辺りが丁度いいか?」

????「良い案ですね。それでいきましょう。よろしくお願いします。」

バニジン「まかしときなって。」

そういい残すとバニジンは出撃の準備をしていった。

残されたメダロットは誰もいないことを確認してからふっ・・とため息をつくと、

????「この世の残された時間はわずか。乱世の終止符を打つためには急ぐ、それしかないのです・・。」

そうつぶやくと散らばっていたフロッピーの中から無造作に1枚取りファイルを開く。

????「オートラジェイトシステム・・・急速充填・・エネミーストーカー・・バリアシステム・・。

     メダロット社から盗んできたデータはどれも中古ばかりで使えない不良品ばかりです・・が

     ここはこうしてここをこうすれば・・・オート急速充填システム・・と・・。」



出撃準備をしながらバニジンガルムは一人の幹部の部屋を訪れた。

それはアマクサでもない、バベルでもないまた新しい幹部の部屋である。

バニジン「アキレウス〜いるか〜い?」

闇に沈んだ部屋の奥からノソノソと巨漢の持ち主が歩いてきた。

バベル、アマクサとおそろいの黒いタイツに眼鏡が正三角形のサングラスをかけている。

後方の闇に牛の顔だけがふよふよと浮遊している。恐らくメダロットだ。

バニジン「今から大手会社オシロイカンパニーに奇襲をかける。一緒にこない?資金隊長。」

アキレウス「コホ・・あの潰れそうな会社からかロボ・・今そんなに金が倉庫にあるのかロボ・・。」

バニジン「嫌?嫌なら僕一人で行くけど。」

アキレウス「コホ・・まぁ女性の頼みごと、断るのも後味が悪いロボな。行くど、デアタウロス。」

デアタウロス「ブモ!!」

浮遊していたのはデアタウロスというメダロットだった。

鼻輪をつけた牛の顔面そのままで左右の角で敵を串刺しにする恐ろしいメダロットである。

頭部の能力はいまだ不明な部分が多い。

バニジン「(・・・・・このメダロットどうにかならないのかな・・。)」

バニジンガルムとアキレウスはアジトを後にした。


第46話 〜日照雨(そばえ)〜



マンホールのふたをそっと開ける。

車の走る音、人が歩く音、それらは全く聞こえない。

バニジンガルムはアキレウスは踏み台にしながらふたをもう少し上へ持ち上げる。

アキレウス「コホ・・・重・・。」

バニジン「重い?」

アキレウス「コホコホ・・・いやなんでもないロボ。」

バニジン「ふん。」

マンホールを完全に開け地上に顔を出すとバニジンガルムの頬になにか小さな物がポツリ。

バニジン「ん・・・雨か。」

道路に立ち上を見上げる。視界にはぼんやりとオシロイカンパニーが見えている。

無数の雨が無音で地上に注ぎ、空には時々紫色の一本の筋が入る。

バニジン「やっかいな雨だな・・さて行くよ。」

アキレウス「コホ・・了解ロボ。コホ。」

デアタウロス「ブモー!!」

入り口からは入らずに裏へ回る。そして裏口から中へ侵入した。



そのころ、中ではオシロイが持ってきた例のフリゲートカオスを解析されていた。

パワー、スピード、装甲、どの点も従来のメダロットを遥かに上回る。

そして物質は地球にあるものではない。

オシロイ「調べれば調べるほど不思議な機体だよ・・父上。」

オシロイ父「うむ・・。この技術を応用すれば、メダロットはさらに凄くなる・・。」

二人は別室で解析されたデータを見ながらつぶやく。

オシロイの前にはノートパソコンが置いてあり、何かのデータをまとめているところだった。

微かに画面には「STG」「KLN」の文字が見える。

オシロイがノートパソコンを畳み始めた時近くで何かが割れる音がした。

イクシオン「ん?」

イクシオンが部屋から出てみると天井の電球が落ちて割れていた。

オシロイ父「電球が落ちただけか・・・ふぅむ。」

父は息を整えながら椅子にもたれかかる。

オシロイも軽く会釈すると部屋を後にした。

エレベーターに向かうオシロイの後を歩くイクシオンが、

イクシオン「あの機体のデータを、計画していたあの機体に使うわけでごわすな?」

オシロイ「あぁ。とにかく今の状態では、忍び寄る闇に対抗できないからね。」

イクシオン「忍び寄る闇・・・そういえば・・。」

イクシオンは振り返り立ち止まる。

オシロイ「ん?なんだ?」

イクシオン「今日はなにか武者震いがするでごわす。下から何かが沸いてくるように・・。」

その時だった。会社中の電球が、電灯が、辺りを照らすありとあらゆるものが砕け散ったのである。

オシロイ「な、なんだ!?」

イクシオン「この様子は・・・マスター!電気制御室に行ってみるでごわす!!」

オシロイ「くぅ・・よし!行ってみるぞイクシオン!」



地下の電気制御室ではコントロールパネルに高圧の電流を流すバニジンガルムの姿がある。

バニジン「んんんんくく!ふぅ・・・・・・制御室破壊確認・・。僕も金の方に急ぐか・・。」

エネルギーを使いすぎたのか、今にも倒れそうな歩き方でバニジンガルムは制御室を出て行った。



オシロイは制御室のドアを開けると隠し持っていた懐中電灯で辺りを照らした。

だが制御室は見るも無残な光景が広がるばかりで人影は無い。

オシロイ「補助電源もやられてる・・。暗くして目を見えなくした後に・・んぅ?」

イクシオン「マスター?」

オシロイ「金?・・・・・イクシオン!金庫に急ぐぞ!」

イクシオン「まさか!?おのれぇでごわす!!」



重要な物を保管する倉庫の前では激しいロボトルが繰り広げられていた。

幹部アキレウスはデアタウロスを巧みに操り敵を葬る。

一方守る方はというと自動メダロットが数体である。攻撃すら当てることが出来ない。

また1機、また1機と撃破され突破されるのも時間の問題だった。

アキレウス「コホ・・たいしたことないロボ・・。」

デアタウロス「ブモー!!」

右の角でローサイレンを串刺しにし、重力波を出し木っ端微塵に粉砕する。

倉庫の前はメダロットの残骸やオイルの海になっている。

デアタウロス「ブモー!!」

とうとう最後の1機がやられてしまった。

っとそこにバニジンガルムも到着する。

バニジン「あれ・・・終わっちゃったか〜。」

いかにも頑丈そうな扉の横にパスワードを入力するコンピューターがある。

バニジン「面倒だね。こんなものはこう・・・ブラックパール!!」

右手から放電を起こしコンピューターをショートさせる。すると扉は重い音をたててゆっくりと開いた。

だが中にあったのは黒い小さなダンボール1個。

バニジン「!!・・・ダミー?」

イクシオン「そこまででごわす!!」

バニジン「!?」

薄暗い通路の奥に光る一つ目がある。イクシオンだ。その後ろにはオシロイもいる。

アキレウス「コホ・・・ここの社長のご子息かロボ。」

バニジン「弱ったな・・逃げ道といったら屋上に通じる階段しか・・・。」

バニジンガルムは右手に見える階段を横目で見ながら静かに構えている。

デアタウロス「ブモ。」

バニジン「アキレウス、とりあえずそのダンボールだけ持って逃げな。ここは僕にまかせて。」

アキレウス「コホ・・・仕方あるまいロボ。

デアタウロス「ブモ?」

アキレウスとデアタウロスは階段の方に逃げ出した。

オシロイ「待て!逃げるな!」

オシロイは後を追おうとしたがバニジンガルムに道を塞がれる。

バニジン「お前の相手はこの僕だ!!」

イクシオン「くぅ・・・。」

オシロイ「仕方ない、イクシオン、こいつから片付ける!」

イクシオン「了解でごわす!!」



外でオシロイカンパニーを見上げる緑色のメダロットがいる。

赤い目で睨みつけながら静かにつぶやいた。

????「乱世に咲き乱れる可憐な花、それもまた枯れるのもこの自然の理(ことわり)よ・・。

     この世に永遠に咲く不死鳥のような花は無いのだ。不死鳥もいずれ死ぬのだがな・・。」

そういい終わると満足したようにその場所を去った。


第47話 〜絶句〜



オシロイ「イクシオン、コンボーーーーーグ!」

イクシオンは右腕を勢いよく振り上げると棍棒から大きな弾を発射、弾には重力波が纏っている。

バニジン「!?重力攻撃!?」

会社の廊下の幅はロボトルするにしては意外と狭い。

そしてイクシオンの攻撃は命中重視なので都合が良い。暗いことは暗く肉眼ではバニジンガルムの姿は捉えられないが、

イクシオンには赤外線スコープがついている。

バニジンガルムは重力攻撃を両腕をクロスさせて受け止めるとそれをイクシオンの方に跳ね返した。

オシロイ「ワンアイスでなぎ払う!いけぇ!!」

イクシオンの赤い一つ目が黄色く光り、極太のレーザーが轟く。

レーザーは跳ね返ってきた重力攻撃を消し去りバニジンガルムの方にまっすぐ飛んでゆく。

だがバニジンガルムは片手で受け止めさらに握りつぶした。

イクシオン「まじでごわすか!?」

オシロイ「いや・・見ろイクシオン。」

バニジンガルムの両腕はひびが入りバチバチと放電している。

バニジン「くっ・・この狭い場所では跳ね返すだけが精一杯・・。やはり広いところにでるしかないか・・だけど・・。」

オシロイ「2・・1・・放熱完了!イクシオン、ダブルブレイク!!」

イクシオンは両腕の棍棒から同時に重力攻撃を発射した。

とてもニ脚のメダロットが回避できるスペースはどこにもない。

バニジン「ちぃ!!」

バニジンガルムは二つの重力攻撃両方を片手で受け止める。そして胸のバルカン砲を連射、

重力波を粉砕しようとしたが気休めにもならなかった。バニジンガルムは壁に叩きつけられる。

バニジン「ぐぅ・・屋上に行くしか・・・ないのかな・・。」

と嘆くとバニジンガルムも屋上の階段を上りだした。

オシロイ「逃がすか!!」



地上20階。雨がしとしとと降り注ぎ床が濡れている。

屋上の端にはフェンスが無い。通常なら立ち入り禁止になっている。

バニジンガルム達はその看板を破壊し屋上に出たのだった。

雷鳴が起こり、轟音で会社が揺れる感覚すら覚える。そして何より・・

寒い。

階段を駆け上り屋上に出たバニジンガルムはアキレウスの姿が無いのを確認した。

バニジン「無事に逃げたか・・・?」

そこにイクシオンの重力攻撃が届く。

だが廊下と違い屋上は避けるスペースが充分ある。

バニジンガルムは余裕に攻撃を回避した。

オシロイは雨に濡れないように階段と屋上に通じるドアの間に立ちメダロッチを構えている。

バニジン「・・・・・・全く邪魔者が多い世の中だよねぇ・・。」

イクシオン「その言葉そっくりそのまま返すでごわす!!」

バニジン「・・・この広い空間なら十分かな。僕の力、甘くみないでよ。」

そう叫ぶと同時にイクシオンにとび蹴りをかます。イクシオンは右の棍棒で受け止め左の棍棒をバニジンガルムに向ける。

イクシオンは左腕から重力攻撃、バニジンガルムはバク転で回避、着地後胸のバルカンを乱射する。

バニジン「!?動かないのか!?」

イクシオンは無駄に動かず当たるバルカンだけ腕で防御した。そして右腕で反撃。

バニジンガルムは床を滑るように移動しかわすと格闘攻撃をしかける。

オシロイ「イクシオンの攻撃準備時間をなめるな!カナボーグ!!」

イクシオンは左腕で再度攻撃をしかける。イクシオンの両腕はともに充填、放熱が5秒で済む。

バニジン「ァまぁい!!」

バニジンガルムは重力攻撃を跳ね返す。だが前方にイクシオンの姿は無い。

背中から攻撃を受ける。

バニジン「ぐっ!!な・・。」

イクシオンはバニジンガルムの背後からさらに攻撃を繰り返す。

バニジン「くっ!おのれ!」

右肩、腕、左足の装甲が吹き飛ぶ。もはや立っているのもやっとのダメージか。

しかしバニジンガルムはその損傷の中でさらに攻撃をしかける。

ハイキック、アッパー、ストレート、回し蹴りと連続で攻撃を当てるが、装甲が壊れてるため大したダメージではなかった。

イクシオン「いいかげんに・・・・あきらめろでごわす!!!!!」

ダブルブレイク、先程見せた両腕同時攻撃である。

バニジン「そんなもの軽く・・。」

だがバニジンガルムは跳ぼうとした時足首に痛みを感じた。

バニジン「ッ!くそぉ・・。」

ダブルブレイクを受け吹っ飛ばされる。

すると突然イクシオンがバニジンガルムの方に走り出した。

オシロイ「イクシオン!?」

バニジンガルムは床に叩きつけられ体をひきずる。そして勢い余って端から落ちてしまった。

地上20階。精密機械なら落ちてただではすまない。

バニジン「ぅ、ぅわ・・き・・きゃぁあああああああ!!」

闇の空に雷鳴が2連続で落ち、地面からガシャァンと何かが割れる音がした・・・・・


第48話 〜逢瀬〜



ハデスやシルバ達にはそれぞれ称号と似ている呼び名がある。

リーダー的存在だったハデスは龍将、

白雪のような長髪と機体を持つシルバは白銀龍、

不気味な色と漆黒のマントを持つダークンは暗黒龍、

自然を愛し、緑色の機体のフォストには緑龍、

見る方向によって機体の色を千変万化するダストは虹龍、

紫色の機体のパープには紫龍、

ゾンビのように骨組みむき出しのデスカービンは死龍、

石のようにゴツゴツした腕を持つストロは石龍、

といったように何々龍、という言葉を皆持っている。

バニジンガルムは電撃を操るので雷龍という言葉を持っている。

ではバニジンガルムは今のイクシオン戦で電撃を使わなかったのは何故か?

それは天候を考えていただければ答えは見つかるだろう。

雨。

雨によりバニジンガルムの機体や床が濡れていたためである。

濡れた体で電気攻撃をしかけたら最期、自分も相当なダメージを受ける。

電撃をやらず、ただ通常の格闘攻撃とバルカンだけだったのはそのためだった・・。



雨の音は大きくなったり、聞こえないほどに小さくなったり気まぐれに降っている。

バニジン「ぅ・・生きてる・・?」

何も無い視界の中でバニジンガルムはここは空中だと悟った。

バニジン「浮かんでいるのか・・・?だったら死んでるのかな?」

ふいに固いなにかにやさしく置かれた気がした。手のひらに平べったい物の感触が伝わってくる。

????「大丈夫でごわすか?」

バニジンガルムは目を静かに開けた。そこには今戦ったイクシオンがいる。

イクシオンの脚部は飛行タイプのパーツに交換されており、腕はティンペットの状態である。

バニジン「お前・・・・。」

イクシオンはオシロイの方を向き深々と頭を下げた。

イクシオン「マスター、コンボーグ、カナボーグの件・・。」

オシロイ「・・・ふぅ・・いいよイクシオン。気にするな。」

バニジン「コン・・・ボーグ・・・・?」

イクシオン「少女の体を受け止めるのにあのような固いパーツは逆効果だと思ったでごわす。

      交換してる時間もなかったのでそのまま分離したのでごわす。」

バニジン「なぜ助けたの・・・?僕は・・・。」

オシロイ「わかってないなぁ・・。」

バニジン「?」

イクシオン「たとえどんな敵でも、同じメダロットが死ぬのは見たくないでごわす!!」

バニジン「!・・・・・・。」

オシロイ「イクシオンはこういう奴なんだよ。それに乗った僕も僕だけどな。」

バニジン「・・・。」

降っていた雨がピタリと止まった。雲の裂け目から光がこぼれる。

イクシオン「おぉ・・・見るでごわす。良い景色だ・・。」

バニジン「はい・・・良い景色ですねぇ・・虹が出ております・・。」

オシロイ「雨の後の空は格別だな。」

バニジンガルムはイクシオンに支えられて起き綺麗な青空を仰いだ。

バニジンガルムは瞳を閉じ静かに風の音に耳を傾けた。その頬は少し赤くなっていた。


第49話 〜笑劇〜



バニジン「大したデータが集まってない以上、このままおめおめと帰るわけには・・・。」

バニジンガルムはクルス町近辺をうろついていた。

雨はすっかり上がり、バニジンガルムの機体も十分乾いた。これなら電撃も支障はないはずだ。

バニジンガルムは丁度公園の近くの交差点を曲がろうとしていた。



駆けるレプラス、追う紫苑。学校帰りの二人は家まで競争していた。

レプラス「くぅおおおりゃ〜!!」

紫苑「待、待ってよレプラス〜!」

レプラス「競争に待った無しぃ〜!!!ひぐぇ〜は〜!!」

かなり息がきれているようである。いざの時の練習のためか機体はクロスドラグーンを使っている。

レプラスは公園の前の交差点に差し掛かった。ここから家には右に曲がる必要がある。

ゴンッ

レプラス「あぃた!」

バニジン「ッた〜。」

紫苑「レプラス・・大丈夫?あ、ごめんなさい!私のレプラスが・・その・・。」

バニジン「いいのいいの・・こっちだってよそ見してたのは悪いし・・あ。」

バニジンガルムはレプラスを見て固まった。

レプラス「いたたたたた・・・・・ん?・・・・・あ゛!」

レプラスもバニジンガルムを見て固まった。

紫苑はなぜ固まったのか二人を交互に見つめていた。

紫苑「?・・・?・・?」

レプラス「お前は・・・グランドでハデスと戦っていた・・なんだっけ・・?」

ドテッ

バニジン「レプラス?そういえば・・・・・そういえばレプラスと言う名前・・・なんだっけ?」

ドテテッ

二人はしばらく考えていたが同時に叫んだ。

レプラス「バニジンガルム!!」

バニジン「ロボロボ団のブラックリストナンバー2!!」

レプラス「ロボロボ団がまた何か悪さをたくらんでいるってのか!?」

バニジン「そういうお前こそここで会ったが百年目!我らロボロボ団に歯向かった罪、思い知らせてあげましょう!」

紫苑「ちょっと待った。ロボトルするならここはやめた方がいいと思うよ。」

また二人は同時に紫苑に聞いた。

レプラス「どうしてだよ紫苑!」

バニジン「なぜだ!!」

突如レプラスとバニジンガルムの背後から車のクラクションが響いた。

運転手A「そこどいてくれないか〜!?こちとら急いでるんだよ!」

レプラス「・・・・・・ご、ごめんなさい。」

バニジン「・・・・・・す・すみません・・。」

レプラスとバニジンガルムは早々と道の端に寄った。

紫苑「ね?ここだったら車が通るからロボトルには向いてないよ?そこに公園あるからそこでしようよ?ね?」

レプラス「・・・・あいよ!」

バニジン「・・・・仕方ない。」

紫苑「決まり!」

公園の真ん中を陣取ったレプラスとバニジンガルムはお互い向き合い構える。

レプラス「ロボロボ団は絶対に許さない!」

バニジン「ぬかせ!僕の力!思い知らしてやる!」

????「合意と見てよろしいか?」

バニジン「誰だ!!?」

レプラスは声のした方を見た。電柱の上に一人の男が立っている。ゴウカンだ。

ゴウカン「ごみを捨てに出ただけなのだが・・何やらにぎやかだったのでね。つい来てしまったよ。

     そのロボトル、この私が審判をしてしんぜよう!!とぉ!!」

ゴウカンはポーズを決め電柱から勢い良く飛び降りた。

ズシャッ

ゴウカンは着地に失敗、頭から地面に埋まった。

レプラス「・・・・。」

バニジン「・・・・。」

紫苑「・・・・・・。」

埋まった頭を手をぐるぐるまわして掘り起こす。もはや仮面はどろだらけの怪物の顔同然である。

ゴウカン「ぐぶぅ・・・不覚だ・・。おっと待たせてすまないな・・。

     では改めてロボトルファイトレディー・・・ゴー!!」

レプラスとバニジンガルムは再度向き合った。


第50話 〜鵬程(ほうてい)〜



ハデス「遅い・・・マスターは何をやっているのだ・・?」

ゴミ捨て場周辺をうろついているハデスはぼやいた。

ゴミ袋は捨てられている。ならばマスターはどこかで寄り道しているしかない。

ハデス「今日はこれから大事な会議があるというのに・・。」

ハデスは公園の横を通りかかった。

すると公園の真ん中に見覚えのある黒服を見かけた。

ハデス「マス・・ん!?」

ハデスは現在繰り広げられているロボトルを見て言葉を失った。

戦っているのは新型を使っているレプラスと、バニジンガルムである。

ハデス「・・・・・・しばらく様子を見るか・・。」

ハデスは近くの遊具に身を隠しロボトルの様子を見つめた。



紫苑「クリアエッジ!」

レプラス「あいよ!!」

青い光線が束になって発射される。

バニジン「ちぃ!!」

それを片手で跳ね返す。跳ね返した光線は近くの遊具に当たり金棒を折り曲げる。

バニジン「(やっぱり完全に修復してない体じゃ無理か・・。)

     これで決める!サンダーランサー!」

ハデス戦でも見せた雷光。青白い電撃はレプラスの体を喰らう。

レプラス「こんな物・・・・でぃやーーー!!!!」

体に纏わりついた電撃をつき返す。

バニジン「なッ!!?」

電撃を跳ね返されバニジンガルムは自分の電撃を喰らう。

バニジン「ぐぁあーーーー!!!!」

バニジンガルムの体の所々からぶすぶすと煙が上がる。

レプラス「どうだ!!!」

バニジン「新型を使うだけあってさすがだね。

     こちらもやる気が出てきたよ。」

紫苑「レプラス、リペアシューター!!!」

レプラス「あいよ!」

紅い炎の雨が降り注ぐ。バニジンガルムはそれを避けるとレプラスに突撃した。

バニジン「ドラゴンブレス!!」

バニジンガルムは左手を開きレプラスの顔をつかもうとする。

レプラスはその手を受け止める。

バニジン「かかったね!!」

レプラス「なんだって!?」

バニジンガルムは左手からレプラスに直接電撃を流し込む。

バニジンガルムの両腕は電撃攻撃。受け止めてられても与えるダメージ量は変わらない。

レプラス「あがががががががががが!」

レプラスはバニジンガルムを蹴り飛ばす。

レプラス「このぉ!」

バニジン「くぅ!」

体を宙返りさせて綺麗に着地した。

バニジン「さすが・・・やりますね。」

紫苑「・・・・。」

バニジン「さすがの僕もこのままでは不安になってきた・・・。

     かくなる上はこれで倒す!」

レプラス「!?まだ何かあるのか!?」

バニジン「ありますよ・・メダチェェェェェンジ!!!」

紫苑「メダチェンジ!?」


第51話 〜メダチェンジ〜



数多くいるメダロットの中に少数だけ変形できるメダロットが存在する。

変形をメダチェンジと呼び、各部分のパーツの装甲が一体化される。

性能が全体的に上がったり、全く違う能力になったりと効果は様々で、

基本は変形した方が強いのだが逆のメダロットもいる。

レプラスの機体には新型なのに変形の能力がなぜかない。

ゴウカン「(連携攻撃を重視したため変形をいれないでも充分だと思ったのでな。

      まずかったかな・・?)」

バニジンガルムは腕を体の中に入れ、背中と胸を交換させたりして形態を変えていく。

バニジン「変形完了!仕切りなおしだ!」

巨大な龍の頭部。額に黒い真珠をつけた龍の頭部である。

レプラス「!?」

紫苑「龍!?」

龍の顔は口から雷の雨を吐いた。

レプラス「だわぁー!!」

かろうじて直撃は避けられたが雷の落ちた場所は所々えぐれている。

紫苑「凄い破壊力・・・!レプラス、右!」

レプラス「え?おわっ!」

紫苑「ッ右上!左!真上!左!後ろ!」

レプラス「わっと、お、や、たりゃ、グッドだよ紫苑!」

バニジン「くそぉ〜ちょこまかと・・これならどうだー!!」

今度は電撃ではなく実弾を連射してきた。

レプラス「え、まじかよ!」

レプラスは右腕で防御する。

数え切れない弾が右腕に当たる。

レプラス「こっちだって・・プラズマショットー!!」

レプラスが使っているメダフォース。名前は紫苑とレプラスとで決めたらしい。

バニジン「それが噂のメダフォースか!?ぐぅ!」

とてつもない大きさの電撃を受けバニジンガルムの変形は解除される。

だが落ちざまにサンダーランサーをレプラスに向かって発射、

レプラスもクリアエッジを使う。

ほぼ同時に両者相手の片腕を破壊した。

レプラス「どうだーーーーー!!!!!!!」

ハデス「・・・・・・ほう。」

紫苑「大丈夫、レプラス!?」

レプラス「あいよ!!」

バニジン「ここまでやるなんて・・・ダストの言葉も半分信じれるものになってきたかな・・。」

バニジンガルムは残された片手にエネルギーを集中し始めた。

レプラス「!まだやるのか!?」

バニジン「メダフォースを操れるのは褒めてあげる。だけど、それで天狗にならないようにね。」

レプラス「どういう意味だよ。」

ふいにバニジンガルムの体が輝き始めた。

バニジン「こういう意味さ。」

一瞬でレプラスの背後に回り背中を軽くつかむ。

紫苑「!?速い!」

バニジン「僕だってメダフォースくらい使えるんだよッ!!」

蹴り上げ叩き落とし殴り飛ばし潰しはたき切り裂き痺れさせる。

全てが一瞬で行われる。最後に蹴り飛ばす。

バニジン「終わりだ!!」

レプラス「ぐぁ!!」

紫苑「レプラスーーー!!!」

バニジン「リウスと似ていても所詮は偽者!僕の敵では・・あぐぅ!!?」

バニジンガルムの残された片腕が爆発した。

レプラス「誰の偽者さ?僕はレプラス。リウスなんて・・・・・関係ないよ。」

よろけながらもレプラスは立ち上がりバニジンガルムを睨みつける。

レプラス「全く関係ないなんて言えばそれは間違いかもしれないけれど・・僕の名前はレプラスだ。

     リウスなんて、僕の記憶には存在しない、他人だ。その偽者?

     僕はリウスがどういう声をしていたか、どういう姿だったか、それすらわからないんだ。

     笑わせるね。」

バニジン「・・・・・・・・・。」

レプラス「まだやるというのなら・・・・相手になる。」

バニジン「くぅ・・・ここは負けを認める!だけど、僕はまたお前を殺しにくるからね!!」

バニジンガルムは空へ飛び去った。

ゴウカン「勝者!レプラスーーー!!」

レプラス「ふぅ・・・・。」

紫苑「大丈夫!?レプラス。」

紫苑はレプラスを抱きしめた。レプラスの顔は少し赤くなる。

レプラス「ははは・・・あれ?紫苑、涙・・・。」

ゴウカン「・・・・・・・・・・・。」



誰もいなくなった夕焼けに染まる公園でハデスはジャングルジムに登り後の祭りを眺めていた。

ハデス「まさかあそこまでやるようになっていたとはな。」

その背中をコツンと何かがこずく。

????「ここにいたんスか。探したッスよホントに。」

ハデス「アースーク・・?」

アースーク「今日のここでの戦闘、見たッスよ。ホントに凄かったッスね。」

ハデス「数百年にまで続いた積年の恨み・・・晴れるのは近そうだな。」

アースーク「でもアッシが思うに相手の基地の場所がまだわかっちゃいないッス。

      嘆いたって見つかるもんじゃないッスよ?その辺気楽にいきましょうや。リーダーさんよ。」

ハデス「ふ・・そうだな。戻るぞアースーク。」

アースーク「へい。」
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