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第7章 蛇を喰らう

第39話 〜苦悶〜

紫苑はその眼を開けた。

視界には見慣れた天井が広がる。

紫苑「?あれ?」

紫苑は窓のカーテンを開けてみた。まぶしい光と共にまた見慣れた景色が輝いている。

どうやらここは自分の家のようだ。

紫苑「おかしいなぁ・・たしかにあの施設の中で寝たはずなんだけど・・夢?」

ふと横を見るとレプラスが床で眠っている。装備しているものはジ・エンシェント。

紫苑「夢だったのかなぁ・・宇宙行ったのも・・・でもはっきり覚えてるのはなんでだろう?」

レプラスも眼が覚める。

レプラス「・・・・・ん、あれ!?」

辺りを確認する。レプラスも動揺を隠せないようだ。

レプラス「あれ・・紫苑、ここは?」

紫苑「家・・みたいだね。私、パジャマだし・・夢だったのかな?」

レプラス「でも二人して同じ夢を見たの?ひょっとして・・うーん。」

ふいに下から紫苑を呼ぶ声がした。

ママ「紫苑ー!そろそろ起きないと遅刻しますよー!」

紫苑「やばっ!」

レプラス「え?学校!?」

紫苑「学校!」



ひさしぶり見るクルス小学校。ひさしぶり、と言っても土日をはさんでの二日間だけなのだが、

ずっと見てなかったように見えるのは気のせいだろうか?

ほかの子供の様子も、先生達の様子もいつもと変わらないのだが、

紫苑は体を締め付けられるているような妙な威圧感を覚えていた。

紫苑「うっ・・。」

レプラス「?大丈夫?」

紫苑「大丈夫・・誰かに見られてる気がするけど・・気のせいだよね?」

レプラス「見られてる?」

レプラスは左右を見た。後ろも確認する。だが怪しい人影は見当たらない。

紫苑「疲れてるのかな・・・?はやくクラスに入ろっと・・。」



クラスに入るとまず目についたのが人の少なさである。

セイリュウ、ゲンブはいるものの、あとのビャッコやスザク、オシロイがいないほか、

学級のおよそ半分という数の席ががら空きになっていた。

紫苑「セイリュウちゃん、ゲンブ君、おはよ。」

ゲンブ「おはようございます、ん?紫苑さん、顔色が良くないですよ?大丈夫ですか?」

紫苑「大丈夫。ありがと・・(クラスの中に入っても変わらないなんて・・うっ。)」

ステルミア「それにしても・・・今日は何か外の雰囲気が良くないですね。」

外の景色を横目で見ながらステルミアがつぶやく。

ヘルメス「ステルミア殿も感じるか・・・それがしも何か感じていたところだ・・。」

レプラス「何か?」

ヘルメス「学校に来る間何か黒いものが後ろをザワザワと動くのを見た。速すぎて何かなのかはわからないが・・

     その黒いものの視線がいまだ消えぬ。」

紫苑「ヘルメスも感じるの?私もグランドに入ったときから何かを感じるの・・。」

ステルミア「(この感じ・・・何かはわからないが・・似た感覚が前にもあった気がする。)」



グランドの片隅にそびえたつ木の影に二人隠れている。草むらに体を隠しながら双眼鏡で子供達の様子を見ている。

アマクサ「ふふふ・・ロボ。のんきに登校する子供達め・・ロボ。今にその笑顔をこの私が消してやろう・・ロボ。」

ロボロボA「え?・・食料を確保するのではないロボか?」

アマクサ「我らの作戦は食料を確保し、そのうえ子供達の笑顔を抹消することができるのだロボ。ふふふ・・見ていろロボ!」


第40話 〜餓鬼〜



アマクサはふところからトランシーバーを取り出しスイッチを入れる。

アマクサ「こちらアマクサロボ。どーぞ・・」

ロボロボB「こちら偵察部隊、どーぞ・・ロボ。」

アマクサ「給食のトラックは見つけたか・・ロボ。」

ロボロボB「発見したロボ。後数分でそちらに到着するかと思うロボ。」

アマクサ「よし、すぐ奪取だロボ。時間をかけてはならぬ・・ロボ。」

ロボロボB「了解ロボ!」

アマクサはスイッチを切った。

ロボロボA「きゅ・・給食を奪うのか・・ロボ?」

アマクサ「この小学校は全校生徒および先生の合計およそ1000人以上、

     その人数に充分な量がトラック1台に積載されているロボ。

     トラック1台襲撃しただけでかなりの兵糧が奪えるのだロボ。これはお得ではないか?んぅ?」

ロボロボA「・・・・・最高のアイディアロボ・・・(何考えてるかやっぱりわからないロボ・・。)」

アマクサ「よし、こちらも応援に行こうではないかロボ。」



時は12時。多くの子供は給食を楽しみに午前最後の授業を受けていた。

だが職員室はまさに修羅場と化していた。

先生A「給食トラックが到着しない!?それはどういうことだ!?」

先生B「いつもなら10時には到着して積み込みが終了しているはず・・だが今日は遅すぎる・・。」

先生C「今センターから連絡が入りました!輸送途中に何者かに襲われたそうです!」

先生A、B「なにっ!??」

先生D「給食トラックを襲うとは・・・それで今トラックは!?」

先生C「学校から約2分の交差点でまだ犯人と警護メダロットが交戦中だそうです!」

先生B「むぅ・・給食開始まであと12分・・・私はいくぞ!!」

先生A「行くって・・・まさか?」

先生B「このままでは生徒達にメンツが立たん!私自らこんな馬鹿げたことをした奴らを説教しに行く!」

先生A「それならオレも行こう!数は多い方がいい!」

先生D「なんとか時間内に終わらせるのだ!そうすればこのことは保護者に内密にできる!・・。」

先生C「行きましょう!交差点へ!」



紫苑「あれ?」

算数の授業を受けていた紫苑はふと窓を見た紫苑は数人の先生が慌てて飛び出していくのを見た。

紫苑「(こんな時間にどうしたんだろ・・?)」

先生E「紫苑ちゃん、次の問題の答えは?」

紫苑「あ!ぇっと・・・30平方センチメートルです!」

先生E「よろしい。では次、ゲンブ君。」

ゲンブ「はい。えっと・・。」

先生E「抜き打ち問題、次の計算の答えを述べなさい。」

ゲンブ「は?」

先生E「567×78÷200−78+(45−89)×987−999÷1000。

    小数点は切り捨てとしなさい。」

ゲンブ「ちょ・・・ちょっと待ってくださいよ・・そんな計算・・・え・・・・と・・。

    −43285です。・・先生、まだマイナスも千も万の単位もやってませんよ?」

先生E「正解。よくできました。(よくできたっつーか化け物頭脳ですよ君。)」

ゲンブ「冗談がきついですよもう・・・。」

深いため息をついたゲンブの声と同時に授業終了のチャイムが鳴った。

皆お待ちかねの給食タイム。紫苑は給食当番である。



紫苑「あれっ・・?」

給食室に一番乗りした紫苑は辺りを見て驚いた。

いつもならそこにある牛乳も、あつあつのご飯もパンも食器も無い。

続いてほかのクラスも入ってきた。紫苑が耳を塞ぐほどとてつもない声で叫ぶ。

生徒A「!?なんだこりゃ〜!?給食が無ェ!!浜万さんも今来た所か!?」

紫苑「うん・・今来たところ・・。」

生徒B「給食が・・・オラの楽しみが・・・。」

続いてゲンブも走って入って来る。

ゲンブ「今の叫び声はなんですか!?こ・・・これは!?」

ゲンブは辺りを見て呆然とする。

ゲンブ「・・・・・・・職員室に急ぎましょう・・。」

生徒A「ぇ?」

ゲンブ「職員室なら何か給食センターから連絡が入ってるはずです!」

生徒B「そ・・それもそうだすな・・よし。」

生徒A、B、紫苑、ゲンブは職員室に足を急いだ。

ゲンブは職員室のドアを強く開けないように加減して開ける。

ゲンブ「失礼します!!」

急いで入ってきたゲンブを見るなり先生達全員の顔が青ざめた。

ゲンブはそれを見るなり予想が当たっていたかとばかりに先生達をにらみつける。

先生F「・・・や、やぁ・・なんだい?」

ゲンブ「なんだい?ではありません。今日の給食はどうなったのですか!?」

先生G「きゅ・・給食がないのかい?お、おかしいな・・そんなはずは・・。」

ゲンブ「やはり、先生達も緊急事態にすぐに対応できないのでしょうか?

    隠していてもすぐに全校生徒何百という生徒がここに流れ込みますよ?

    この事態がPTAかどこかにでもバレれば・・・どうなるかわかりますか?」

先生達は顔を合わせた。青ざめた表情がさらに青くなる。

小学生に言われるセリフじゃないと思いつつも、否定できないのは確かだ。

先生H「・・・・先程センターから連絡があったんだ・・。給食トラックがここに来る途中、何者かに襲われたと。」

ゲンブ「襲われた・・?」

先生H「ここからすぐの交差点でまだ警護メダロットが防戦しているはずだ・・

    応援に行った先生達もまだ帰ってきていない・・。」

ゲンブ「恐らくてこずっているのですね・・。くっ、なぜそのようなことをすぐに言わないのですか貴方達は!?」

生徒A「(・・・怖いぞコイツ・・。)」

ゲンブ「私達も行きましょう。」

先生H「待て!子供が出る幕では・・」

先生はすぐに睨み返したゲンブの瞳に言葉を失った。

ゲンブ「ではこのまま何もしないで待てと?では貴方達が給食代1日分を全校生徒分支払うとでも言うのですか?

    食べられないのなら何かの方法で返すのは当たり前でしょう?

    私達は給食を食べるため給食の代金を1年に2回ほどの割合で支払っているのですから。

    お金を支払って何も得が無いとでも言うのなら・・・それほど馬鹿げたことはありません。

    あえて言葉で表すのなら『詐欺』です!!」

先生達はさらに顔が青くなった。先生達だけではない。

まわりにいた紫苑達も体が震えだす。ゲンブは一人職員室を後にした。

紫苑はなんとか呼吸を落ち着かせると職員室を出て行ったゲンブの後を追った。

その様子を窓の近くに生えている木の枝に座って見つめていたクジャクはゲンブの様子を見ながら・・

???「我、かの少年に神秘の力を感ず・・・だがその力、白銀の牙に勝れども、世界樹の幹を斬ることはできずなり・・。

    交える道に起こる戦乱の未来、我も共に行こうではないか・・。」

クジャクは大きく飛翔し、大空に消えた。


第41話 〜孔雀石〜



製品名ローサイレン。パトカーはパトカーでもタンクソルジャーとは違い、

かかとにタイヤが付いた感じの二脚メダロットである。

右手の拳銃で相手を威嚇した後左手に握り締めた手錠で相手を御用とする。

だが実戦経験が少ないためロボロボ団の操るゴーフバレットを撃破することができないでいた。

ロボロボA「弱いロボ!警護メダロットといえどもこの程度なのかロボ!?」

先生B「くぅ・・馬鹿にするな!いけフラワーチャージ!」

製品名フラワーチャージ。ラフレシアのような花をモチーフにしている。

両腕で武器のチャージを早め、頭部からレーザーを撃つ、強力なメダロットだ。

アマクサ「増援かロボ。おもしろい。メダロット転送ロボ。」

赤い稲妻が落ちる。そこに現れたのは製品名ガラパゴッシュであった。

両手にチェーンソーを持つ危ないメダロットである。

先生B「なぎ払え!」

フラワーチャージは頭部からレーザーを放つ!

だがガラパゴッシュは余裕でかわすとフラワーチャージに突進していった。

先生B「くっ・・何をしている!さっさと次を撃て!!」

フラワーチャージ「放熱ガマダデス。」

アマクサ「阿呆が・・・ロボ。」

ガラパゴッシュは縦横無尽にチェーンソーを振り回すとフラワーチャージはバラバラに崩れ落ちた。

ガラパゴッシュ「ゴシュ!」

アマクサ「邪魔者は片付けたロボ。お前達、トラックを本部まで・・」

ゲンブ「待て!!」

アマクサ「んぅ?」

ゲンブ「貴方達ですか!給食トラックを襲ったというのは!」

アマクサ「なんだ何かと思えばガキかロボ。お前ら、とっととこいつらを片付けろロボ。」

ロボロボA「ん?こいつら・・・ロボ・・・。こいつらロボ!バベル様に失態を犯した奴らロボ!!」

レプラス「バベル・・・サイズカッター!?こいつら、あいつらの仲間か!?」

ヘルメス「(金魚蜂を見れば一発でわかると思うのだが・・・。)」

紫苑「レプラス・・・どうする?新型、いく?」

レプラス「少し様子を見よう。下手にやったらトラックに被害が及びそうだよ。」

ゲンブ「(新型・・・?)」

アマクサ「聞き覚えがあるな・・・そうか・・・バベルの野郎がてこずったのかロボ。

     いいだろう・・・私も相手になってやるロボ。」

ゲンブ「紫苑さん、チームロボトル、いきますよ!」

紫苑「うん!」

アマクサ「一般兵A、B用意しろロボ!!」

ロボロボA、B「了解ロボ!」

ロボロボ団は右手を構え、メダロットを転送する。

転送したメダロットはお馴染みのゴーフバレットである。

ヘルメス「くっ・・・こちらが不利な条件というのも同じなのか!卑怯な・・」

アマクサ「我らロボロボ団に卑怯という文字は無いロボ!!」

その時だった。ふいに辺りが暗くなる。

空が紫に染まり、生暖かい風が出てくる。

ヘルメス「!?なんだこの威圧感は?」

紫苑「・・・・・!?・・孔雀?」

ゲンブ「紫苑さん?何を突然・・。」

と上を見たゲンブは言葉を失った。ゲンブと紫苑の上に大きな孔雀が舞い降りる。

アマクサ「なんだお前はロボ。」

???「我が名はラーゴールデン。時を司るものなり。故もって助太刀いたす。」

直視できない程輝いている装甲を持ち、肩や背中についた孔雀が羽を広げたような派手な翼が目立つ。

両手にするどい爪、そして額には水色の宝石。

ヘルメス「助太刀・・?何者にしろ、ありがたい。」

ラー「ふふ・・。」

ロボロボB「3対3になってしまったロボ・・・もう破れかぶれだロボ!」

紫苑「ロボトルーーーファイッ!!」

アマクサ「我々の勝利を祈って・・・・アーメン!!ロボ!!」


第42話 〜一籌(いっちゅう)〜



味方機はレプラス、ヘルメス、ラーゴールデン。

敵機はゴーフバレット2体とガラパゴッシュ。

ゴーフバレットは空を飛び真上からミサイルの雨を降らす。

ガラパゴッシュも加勢して正面からミサイルの嵐を起こす!

前から、上から同時に攻撃されレプラス達は回避の仕様がない。

レプラス「うわっ!いきなりかよ!?」

ヘルメス「この量・・逃げられん!」

ラーゴルデンは無言で二人をかばうように前へ出る。

ラー「前はまかせよ。その隙に左右へ展開するのだ!」

ヘルメス「かたじけない!」

ヘルメスは右のほうに逃げる。レプラスはヘルメスと反対方向に逃げ、ゴーフバレットに向かって連携攻撃を繰り出す。

だが惜しくもゴーフバレットには当たらなかった。

ラーゴールデンは数10発ものミサイルに被弾する。ラーゴールデンは爆発に飲み込まれ見えなくなった。

ヘルメス「ラーゴールデン殿!」

ラー「・・・・・・かゆいな。」

ヘルメス「!?」

煙が晴れるとラーゴールデンの周りに青いバリアみたいな物が光っている。

ラー「所詮この程度・・・悠久に姿を変えない雲霄の敵ではあらず。」

レプラス「?雲霄(うんしょう)?」

ラー「上がうるさいな。インパクトダンス!」

ラーゴールデンはゴーフバレットに向かって銃を連射した。爪があるので格闘だと思ったのだが、射撃パーツであった。

ヘルメスの左腕パーツ、レンジシューターと比べ物にならない程の弾がゴーフバレットに当たる。

1秒で100発。ラーゴールデンはそう言い放った。

ヘルメス「1秒で100!?・・・レンジシューターの8倍以上だ・・。」

ロボロボA「ぎぇ〜!!!やられたロボー!!」

ロボロボB「くそ!ゴーフバレット!その金色の奴に突撃だロボ!」

ゴーフバレットはラーゴールデンに向かって一目散と突進する。

ヘルメスは横からその頭を打ち抜いた。

アマクサ「バカめがロボ!!突撃などする奴がおるか!ロボ。」

ロボロボB「申し訳ないロボ〜。」

ガラパゴッシュ「・・・・・。」

最初のミサイル以外何も動いていないガラパゴッシュは静かにラーゴールデンを睨んでいる。

ふと横を見、跳躍した。レプラスの砲撃が落ちる。

レプラス「くそ!」

アマクサ「バカめが!ロボ。ガラパゴッシュ!まずはその龍を殺れロボ!」

ガラパゴッシュ「ゴシュ!」

ガラパゴッシュはチェーンソーを作動させる。ギィィン・・と音が耳に響く。

レプラス「くぅ・・。」

レプラスはいつ来てもいいように構える。ガラパゴッシュはそれを見計らい、突進していった。

ヘルメス「レプラス殿!くそ!シュートバレル!」

ヘルメスはガラパゴッシュの進行方向にライフルを2発放つ。だが・・

ガラパゴッシュ「ゴシュ?ゴー!!」

当たったと思ったが、ガラパゴッシュはチェーンソーでライフル弾を切断した。

真っ二つに割れた弾が小さな音を立てて地上に落ちる。

ヘルメス「何・・?」

アマクサ「バカめが!ロボ。ガラパゴッシュ!バリアブルムラマサでライオンを撃破、次に龍を切り刻めロボ!」

ガラパゴッシュ「ゴシュ!」

チェーンソーの刃が赤く燃える。それを地面を斬る様に叩きつけると風圧が深紅の刃となって地を走る。

深紅の刃は地上をガリガリと切断しながらヘルメスの方に向かってくる。

ヘルメス「う、うわあ!」



深紅の刃がヘルメスに当たる寸前ラーゴールデンが飛び出してきてバリアブルムラマサを体で受け止める。

ヘルメス「!?ラーゴールデン殿!?」

ラー「ラーで良い。死の恐怖にかられ、動けなくなるとはそちもまだ青いな。

   だが恐怖に怯えるのは戦士の恥ではない。」

ガリガリと胸を削られているのにも関わらず淡々とラーゴールデンは喋り続ける。

ラー「怯え、何かを失い後悔することが戦士の恥だ。

   この乱世だ。いつ死がきてもおかしくない時代。

   それを乗り越えてこそ、未来が来るのではないか?」

とうとうラーゴールデンの体はティンペットがむき出しになる。

ヘルメス「ラー殿!」

ラー「心配か?青いな。この程度でやられる私ではない。ゴールドシュート!」

ラーゴールデンの装甲が発光し、バリアブルムラマサを跳ね返した。

バリアブルムラマサはガラパゴッシュに飛んでいき、体にXの字を刻む。

ガラパゴッシュ「ゴシュ・・・!?」

アマクサ「バカな・・・ロボ!」

紫苑「動きが止まった!レプラス、充填は?」

レプラス「バッチリさ!」

紫苑「レプラス、連携攻撃!」

レプラス「あいよ!」

ガラパゴッシュ「ゴシュ・・・。」

ガラパゴッシュはなんとか逃げようとした。だがそこにヘルメスがとび蹴りをかます。

ヘルメス「避けさせん!」

顔面を踏まれ倒れそうになったところをさらにヘルメスは後ろから蹴り反対方向に倒す。

ヘルメスはレプラスの真上の方に飛びレプラスは連携攻撃を繰り出した。

結果は命中。ガラパゴッシュはパーツ全てが破壊、ティンペットを焦がし、メダルが外れた。

アマクサ「バカな・・・・ロボ・・。くっ!退却!退却だロボ!!」

アマクサはガラパゴッシュのメダルだけ拾うと走り去っていった。

ロボロボA「ま、待ってくださいロボー!!」

紫苑は残ったガラパゴッシュの残骸を回収した。



運転手「いや〜ひどいめにあったよ。どうもありがとね。」

ゲンブ「これで安心して給食が食べられますね。」

運転手「そのことで言いにくいんだけど・・今何時かわかる?」

紫苑はメダロッチの時計を見た。13時20分。

紫苑「・・・・・。」

ゲンブ「うわ!昼休みが終わってしまいますよ!?」

紫苑「あ、でも生徒みんな給食食べてないんだから先生達にお願いすればなんとかなるかもしれないよ?」

ゲンブ「しょうがないですね・・・五時間目を犠牲にしましょうか。

    (・・・・・・好きな図工が・・ガクッ)」

結局騒動のこともあり給食は五時間目の時間に食べた。

この事件はPTAにばれないわけが無く、臨時会議臨時会議で先生達は夜遅くまで残ることになったのである。



戦闘が終わった後孔雀の姿はどこにも無かったという。

ヘルメス「ハデスといい、あのラー殿といい、このクルス町付近で何か恐ろしいことが起ころうとしているのか?」

ゲンブ「あのメダロットの戦闘能力は半端じゃないですね。

    メダフォースに近い、あのバリアブルムラマサを跳ね返したのですから。」

ヘルメス「とても今の科学では作れない性能です。これは調べてみる価値はあると思います。」

ゲンブ「ですね。」



満点の星空が輝く夜空、そして満月、その夜空の底に眠る都市。今日も良い夜である。

む?今あの月が一瞬消えなかったかい?


第43話 〜覇道〜



オシロイは自宅のベランダから星を見ていた。

コートも着ないで、パジャマ姿である。

イクシオン「マスター・・・そろそろ中に入らんと・・風邪ひくでごわすよ?」

オシロイ「・・・・・ほっといてくれ。」

宇宙の計画が失敗になった後オシロイの元気は喪失している。

どういう感じでステーションが破壊されたのかは全く覚えてないのだが、

ステーションが無くなったことは事実であり、

そのための費用などが全て無駄となってしまった。

新しい技術などを開拓してその穴を埋めればよいのだが、オシロイはまだ小学生。

もともと宇宙開拓はメダロットリサーチ社と並んで乗り出した大事業だが言いだしっぺはオシロイである。

オシロイが父に課してしまった負担はあまりにも大きすぎるものだった。

このまま何もしなければオシロイカンパニーはあと1週間も待たずに倒産してしまう。

父さんの会社が倒産、というギャグも一時期あったがオシロイにとって笑い事ではすまなかった。

オシロイ「・・・・・・はぁ。」

ため息は人生ナンバー1に匹敵する大きさだった。美しい星空だが、オシロイにとってはその空も地獄の業火と同じである。

その様子を部屋の奥から見つめていたイクシオンはオシロイを残し部屋の外へ出て行った。

オシロイ「・・・・はぁ・・。」

????「夢が叶えられなくてとても残念かい?」

オシロイ「!?」

オシロイの隣に黒いコートを着た男が立っている。顔は白く輝いていた。

ゴウカンだった。右手には買い物袋をぶら下げている。

オシロイ「お前は・・・。」

ゴウカン「警察を呼ぶのなら好きにしてかまわん。だがその前に話を一つ聞いてもらおう。」

オシロイ「話・・・・?」

ゴウカン「数百年も昔はここも一つの戦場だった。」

オシロイ「・・・。」

ゴウカン「このクルス町を含め、ティンタウン全土ははるか昔は全て荒野で国と国との戦の絶好の場所だったと聞いている。

     そしてその荒野から少しはずれた所に広大な森があった。美しい森だ。」

オシロイ「話は父から聞いた。だけどそれはおとぎ話・・。」

ゴウカン「世間にはその森が野良メダロットの住みかで、財宝が眠っている、そう伝えられているようだが、

     財宝というのはハッタリだ。」

オシロイ「その話事態がハッタリ・・。」

ゴウカン「でもないのだぞ?」

オシロイ「え?」

ゴウカン「明日の正午、ティンタウン南区にあるジャンク屋に来たまえ。詳しい話はそこでしよう。」

オシロイ「南区?ゲンブ君の言ってたジャンク屋のことか?」

ゴウカン「間違いないだろう。ゲンブはこの私も知っている。なかなかの腕前だ。

     長居は無用かな・・・ではまた会おう!」

ゴウカンはベランダから思いきり下に飛び降りた。

オシロイ「!?」

その直後下の方でドシャッと鈍い音がした。

オシロイ「あれが父が言っていた怪盗ゴウカン・・・本当にただの盗人なのか?」


第44話 〜冥界〜



暑い。快晴の青空に浮かぶ太陽はギンギンと輝き、降り注ぐ光はまるで炎のようである。

額に汗を流しながらもそれをタオルで拭いながらオシロイは人目を避けるように裏通りを歩いていた。

オシロイ「ゲンブ君のもらった地図ではこの辺か・・・・えーと・・。」

裏通りの出口にそう大きくは無い建物が建っていた。

看板を見ると「ジャンクショップ、クリーチャー」と書かれている。

オシロイ「これかな・・?」

開店しているようだが人の気配がしない。店の中は闇に溶け込んでいる。

オシロイ「誰もいないのか・・?おーい!誰かいませんかー!!?」

しかしこだまが帰ってくるだけだった。

オシロイ「からかわれただけなのか・・?」

オシロイは店の奥へ入っていった。表は一通り普通のジャンク屋だったが、奥に入るごとに様子が違っている。

木製の壁が奥に行くと鉄格子になっている。そしてオシロイはある扉を見て足を止めた。

『この先、関係者以外立ち入りを禁ず』

オシロイ「・・・・。」

しばらくその扉を見つめていたが扉が微かに開いていることに気が付いた。

その隙間から中をのぞいて見たが、中も闇でとてもどうなってるかは肉眼ではわからない。

オシロイは辺りを見回した。入ったときから変わらないのだが念のため無人であることを確認する。

そして扉のノブをつかむとそっと開けてみた。微かな隙間からは見えなかった、大きなカプセルが見えてくる。

ふいに視線を感じた。オシロイは慌てて後ろを振り返るが誰もいない。

ゴウカン「・・・来たね。」

ゴウカンは立ち入り禁止の部屋の中にいた。黒いコートを纏い、さらに後ろを向いていたのでわからなかったのである。

闇の中で白い仮面が不気味に笑っている。

ゴウカンは部屋に灯りをつけた。部屋の中は緑色に輝く。

オシロイ「緑?ここはいつもこうなのか?」

ゴウカン「ここだけ緑色の電灯さ。この色の方がお姫様も安心して眠れるだろうからね。」

オシロイ「お姫様?」

ゴウカン「おっと、君が詳細を知る必要は無いことだった。謝罪しよう・・。

     今は伝説と呼ばれたメダロットを君に提供する方が先だな。」

オシロイ「伝説のメダロット!?」

ゴウカン「チッチッチ、伝説と『呼ばれた』メダロットだぜベイビー。

     『呼ばれた』がぬけてるぜサースデー。」

そう言いながら床のタイルを一部分だけ剥がす。

タイルを剥がすとそこには階段があった。

ゴウカン「ここは冥界に続く階段さ。ここを一歩でも降りれば行き着く先は地獄だよ。」

オシロイ「・・・・・・・・・。」

淡々と喋りながらその地獄逝きと言った階段を無表情で降りていく。その様子は恐怖という感情は無く、むしろ楽しい感情が強い。

オシロイはもうどうにでもなれとばかりその階段を下りていった。

その後部屋の扉は無人のはずなのにひとりでに閉まったのである。それも鍵までかかり・・。



ゴウカンとオシロイがたどり着いた所は酷く焼け焦げた森林だった。

所々の木々の皮は焦げ、草は燃え、動物達の死骸が転がっている。死骸が腐敗して発生した臭いで鼻がおかしくなりそうだ。

オシロイ「まさに地獄だな・・・。」

ゴウカン「まだまだ序の口さ。問題はこの森を抜けてからだ。」

導かれるままにオシロイはゴウカンについて行き、森林を出た。

森林を出た先で目にした光景はあまりに残酷だった・・・。



そこは一面見渡す限りの荒野だった。所々から煙が上がり、地面を赤く染めている。

メダロットの残骸が山のように盛り上がり、その山は荒野を点々している。

メダルも数百枚は転がっている。だがそれはどれも割れていて使い物にならなかった。

注意してみると転がっているのはどれも男型メダロットばかりである。

オシロイ「女型のメダロットがいない・・?」

ゴウカン「当時は女型メダロットは大した戦力にはならなかったのだろう。ここに女メダの亡骸が無いのはその名残かもしれん。

     最も・・・・全く無いと言えばそれは間違いだがな。」

オシロイ「なに?」

ゴウカン「ついてきたまえ。」

そういうとゴウカンは荒野の奥へはいっていった。



森林を出て荒野へ入り5分も歩いていないところでゴウカンは立ち止まった。

ゴウカン「見たまえ。」

見るとピンク色と黄色の妖精のようなメダロットが横たわっていた。

全身が酷く焦げ、ティンペットがむき出しになっている。

ティンペットもろとも破壊された形跡もある。

顔や胸からはオイルが流れ出ており、機能が停止してからすでに3時間は経過している。

背中を見てみた。メダルを入れていた場所は跡形も無く壊されており、メダルも見当たらない。

オシロイ「酷いな・・・一体誰がこんなことを・・。」

ゴウカン「誰がしたかは向こうをみればわかる。」

オシロイ「?」

オシロイはゴウカンが指差した方向を見た。そこには地平線のように広がるメダロットの残骸が転がっている。

だがその残骸には見覚えがあった。

オシロイ「ゴットエンペラー!?」

今では値下がりして安易に入手できるようになったメダロット、製品名ゴットエンペラー。

かのロボロボ団首領のヘベレケ博士がギャルにもてたい、その一心で作り上げた兵器と呼ばれたメダロットである。

左腕のレーザーはビルを跡形も無く焼き払い、右腕のミサイルは動くもの全てに死をもたらす。

一般販売するのは多くの反対があったが火力を弱体化させることにより合意、

そういったエピソードがある。発売当時の値段は1パーツだけでも十万はくだらなかった。

そのゴットエンペラーが1000体近く機能停止になっている。

ゴウカン「そのメダロットはあのゴットエンペラーの一斉射撃によって殺されたのだ。

     後ろにいるメダロットを守ろうとしてな・・。」

オシロイ「後ろ!?」

振り返ると後ろには体に長い剣を貫通されて死んでいるメダロットがいた。剣は後ろの岩に突き刺さり、

メダロットは岩にもたれて息を引き取っている。

膝から下はボロボロで体は鎧を着ていたようだが見るも無残な光景。

肩に巨大なバーニアがついてあるがひびわれが酷い。両手とも手の甲に3本の装甲が剥がれ落ちた爪がある。

青い長髪は赤く濡れ、兜は所々がへこんでいる。むき出しになったティンペットの色を見る限り、男型のようだ。

女型のメダロットに対し、こちらはなんとか修理が可能と見える。

ゴウカン「これが今回君に提供するメダロット、『フリゲートカオス』だ。」

オシロイ「フリゲートカオス?」

ゴウカン「(もともとは別の名前があるのだがな・・)これを修理し数百年前の技術をマスターするがいい。」

オシロイ「ん?数百年?そんな時代にメダロットは・・」

ゴウカン「宇宙から飛来した物体。それがメダロットのメダルだ。

     最初からメダロットという名称でなかったにしろ、今の呼び名はメダロットだろう?」

オシロイ「たしかに・・・ってこれは持ち帰るとしてどうやってここから出るのさ?ここって地獄・・。」

ゴウカン「簡単なことさ。目を閉じたまえ。」

オシロイは言われるまま目を閉じた。その直後ゴフっと鈍い音と同時に腹に衝撃を受け気を失った。

ゴウカン「荒っぽいがこれしか方法は無いのでね・・・すまないな。」

気がついた時オシロイは自分の部屋に寝ていた。

腹に妙な痛みを感じたがオシロイはかまわず体を起こし辺りを見回す。

すると部屋の隅にフリゲートカオスと呼ばれたメダロットが剣が抜けられた状態で横たわっているのを見つけた。


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