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第6章 この心に誓う

第33話 〜彼方〜

小鳥のさえずりが聞こえる・・。

レプラス「・・・・んく・・・。」

レプラスは目を覚ました。目の前に森が広がっている。

レプラス「ここは・・・どこだ?たしかステーションが爆発して・・あれ?」

レプラスは自分の体を見た。それはいつもつけてたジ・エンシェントではなく・・

全く知らないパーツだった。

ハイヒールのような足で頑丈な鎧で包み込んだような脚部。

肩に巨大なバーニアがついており、両手とも手の甲に3本の金色の爪がある。

青い長髪に水色の兜。女、男、どちらともいえないパーツである。

「起こしてしまいましたか?」

上から声がした。

見上げるとピンクと黄色のかわいらしい妖精のようなメダロットが顔を覗かせていた。

このメダロットも名前がわからない。

レプラス「あれ・・僕・・宇宙にいたような・・。」

メダロット「宇宙?リウス様、まだ夢の中にいらっしゃるのですか?」

レプラス「夢・・・だったのか・・悪夢だ、忘れよう。カディア、心配かけた?(あれ?)」

カディア。それははじめて聞く名前のはずだが・・なぜかこのメダロットに名前を聞く前に発した。

それにリウスと呼ばれたのにおかしく思わなかったのか・・

リウス様と呼ばれるのは当たり前のように感じた。

カディア「いえ・・決してそんなことありません。私も、

     少し前まで横で寝ていましたから・・。」

レプラス「そ・・そうか。」

「やれやれ・・・・できている、というのも一つの困りだな。」

すると今度は前の方から声がしてきた。見るとフォストが木を背に座っている。

フォスト「私の講演、眠たかったか?二人ともねてしまうなんて・・」

カディア「フォスト様の話す言葉は難しすぎます。もう少しやわらかく話してください。」

フォスト「ははは・・・努力しよう。さて、パープ!パープラグオン、いるか!?」

はるか上から返事が返ってきた。

パープ「なんだ?フォストー。」

フォスト「異常は無いか?」

するとパープラグオンは敬礼をして大声で叫んだ。

パープ「今のところなし!あったらすぐ連絡するよ。」

フォスト「うむ、ご苦労!」

カディアは胸に手を当てて問う。

カディア「まだ戦乱は鎮まりそうもないのでしょうか・・?」

フォスト「悲しいことだが・・私達がレアメダルと呼ばれる以上、簡単にいきそうも無い。

     あちらも・・ロボロボ団も戦力を整えているらしい。」

レプラス「(ロボロボ団・・・?)」

フォスト「直接交戦は避けられないだろう。ここを離れれば・・この森も、

     この森に住む動物達も焼かれるのだから・・。」

カディア「なぜこの森はこんな悲劇を繰り返さなければならないのでしょうか・・?」

フォスト「あちらはこの森に眠る財宝も目的の一つとしてるらしい。

     そんな財宝、この森にあるはずないのだが・・・。」

そういい終わると同時に天からパープラグオンの声が轟いた。

パープ「フォスト!!奴らが来た!奴らが来たぞ!!」

フォスト「戦火は免れぬか・・全員戦闘配備!!作戦通りいけ!!それとリウス。」

レプラス「!?」

フォスト「至急、ハデスに連絡を頼む。」

レプラス「わ、わかった!カディア、いくよ!」

カディア「はい!」


第34話 〜弐〜



紫苑「リウス・・起きて・・。」

リウスは目を覚ました。紫苑はレプラスを抱きしめる。

レプラス「わっ!?・・・ここは?」

ゴウカン「気がついたかい?ここは私が入っている組織の基地の一角だ。」

紫苑達は牢屋のような檻の中にいて、ゴウカンはその外にいる。

ゴウカンの後ろにハデス、ストロがいる。

ストロ「宇宙からここまで、全ての従業員を移動させるのは大変だったさね。」

どうやらゴウカン達は宇宙ステーションの従業員達を全員移動させたようだ。

どうやったかは不明だが。

紫苑「・・・・・・・・そうだ!ゲンブ君達は!?」

ゴウカン「安心したまえ、彼らは無事だ。まぁ・・・、」

ハデス「ここにはいない。あまり大勢にここを知られるのは好ましいことではない。記憶も多少調整した。」

レプラス「ほか?」

ハデス「君も経験あるやり方でほかの場所に・・・な。」

ゴウカンは檻の鍵を開けると紫苑達を外に出した。

ゴウカン「君達をここに連れてきたのは深いわけがある。

     とりあえずきたまえ。」

ゴウカンに導かれるまま来たのは一つの研究施設だった。



大きなコンピューターが3つほど三角形のように並びその真ん中にカプセルがある。

カプセルの中には緑色の液体に揺られながら1枚のメダルが輝いていた。

見るとメダルの絵柄はドラゴン、だがその両手にひとつずつ宝玉が握られている。

通常のドラゴンメダルには宝玉はない。それに、大きな山脈を背にしているのも通常とは違う。

レプラス「(これ・・・・は・・・。)」

ゴウカン「これはオリュンポスのメダル。この世に一つしかない、古(いにしえ)のレアメダルだ。」

紫苑「レア・・・メダル・・。」

ハデス「そしてレプラスもレアメダルだな?」

紫苑「はい・・。」

ゴウカン「このメダルがレアメダルならレプラスもレアメダルというのは当然のことなのだ。」

ハデス「このメダルとレプラスのメダルはもともと一つのメダルだったからな。」

紫苑「!?」

ストロ「!!?初めて聞く内容さね・・ハデス。」

ハデス「まだ話してなかったかストロ・・・お前ならわかるだろう?もともとはリウスのメダルなのだ。」

レプラス「リウス!?あの夢ででてきた!?」

ハデス「夢・・・?・・・・恐らく間違いないだろう。」

ゴウカン「二つに分けた時に微かに残っていた記憶が何かの拍子で再生されたのだな。」

紫苑「ちょっと待って・・・一体どういうこと?」

ゴウカン「リウス、というメダルは使い方次第で地球を破壊出来るほど恐ろしい力を持っているのだ。

     保管する側も、万が一のこともありできるだけ危険を取り除いておかねばならない。」

ハデス「そこで有力だったのがデータを分散し、複数のメダルに力を分けることだった。」

ゴウカン「二つにわけるのは当時この技術を開発したMr.サリドマッドンナー氏の協力もあり、

     案外簡単にできた・・・・・が。」

ハデス「一つはここで封印をしておくとして、もう1枚をどうするかだった。そして悩んでいた時、

    ミスターは言った。」

Mr.S「元気で友達を大事にする、信じれる子供に託しなさい。」

ハデス「・・・・・と。その時私は一人思い当たる人物がいた。」

ゴウカン「そして情報を集め、その人物にメダルを託した。」

紫苑「私?」

ハデスはこくりと頷いた。

レプラス「あの夢にでてくるのはそういう意味合いで出てきてたのか・・・紫苑・・。」

紫苑「・・・・ん・・・?」

レプラス「僕はこのゴウカンからメダルを受け取ったっていうの・・なんで言ってくれなかったんだ?」

紫苑「なんでって・・・レプラスに今みたいな顔、してほしくなかったもの。」

レプラス「紫苑・・・。」

ストロ「いいマスターを持ったネェ・・・ゴウカンも見習いなよ。」

ゴウカン「ほっとけ。さて、そこでひとつ提供がある。

     敵も格段に強くなっている。特にロボロボ幹部には今のままではほぼ無抵抗で終わってしまう。」

レプラス「サイズカッター・・。」

ゴウカン「自分の身、マスターの身を守るためには今以上の戦力が必要かもしれない。そこでこれだ。

     だれか。」

研究員「はい、ゲートAオープン。」

研究室の奥のドアの一つが開く。その奥に1体のメダロットが立っていた。


第35話 〜後継機〜



つま先が丸く比較的軽そうな両足。

胸にはジ・エンシェントの旧式、ムーンドラゴンの脚部にあった赤と黒のマーク。

獣の爪のような肩と腕、そしてウォーバニットのようなたてがみ、

龍の頭部に右目には眼帯がある。

赤、黄、水色とカラーはジ・エンシェントと同じだ。

ゴウカン「君のジ・エンシェントの後継機にあたる新型メダロット、

     『クロスドラグーン』だ。」

紫苑「クロス・・ドラグーン・・。え?後継機!?」

ハデス「そう、レアメダルなるもの、今のままでは少々危ないのでな。」

ゴウカン「それもあるのだが・・まあいい。とにかくレプラス君。

     これは君の物だ。大事に使いたまえ。」

レプラス「これって性能どうなの?」

ハデス「基本は同じ連携攻撃、ただし回復はできなくなっている。

    反面、連携攻撃設置に充填、放熱が無用になっている。

    そして攻撃範囲が広く、威力も上がっている。」

レプラス「???」

ストロ「実際に使う方がいいじゃないさね。シミュいくよ。」

紫苑「シミュ?」

ゴウカン「シミュレーションバトルルーム。

     我々の簡単な訓練施設さ・・・。」

一向は研究施設を後にした。



たどり着いた先は研究施設から5分程歩いたところにあるまた大きな建物。

だがそれは全て屋内に建てられており、組織の基地内に窓は無い。

訓練施設に入ると椅子がたくさんある。椅子の正面に、黄色のカプセルがある。

カプセルの中はカラのようだ。既に椅子に座って訓練を受けてる者も多い。

ゴウカン「紫苑はこの椅子に座り、レプラスはカプセルに入る。

     紫苑君、これを頭にかぶれ。」

紫苑は言われたまま渡されたものを頭につける。

ヘルメットのようなもので、口の近くにマイクがある。恐らく、メダロットとの通信ができるのだろうか?

ゴウカン「レプラス君はこのカプセルに入り通信を待つ。」

レプラス「はい?」

カプセルの中に入ると光の束が体を包みこむ。

そして紫苑の座っている椅子のコンピュータにレプラスのデータが登録される。

通信「はじめての訓練になります。ミッションレベルを指定してください。」

ゴウカン「ミッションC−A、エネミーレベルはB。」

通信「C−A、エネミーB、了解しました。ダウンロードを開始します。」

紫苑「え?え?」

ハデス「シミュレーションロボトル。限りなく現実に近いロボトルを色々な場所、条件でできるシステムだ。

    直接攻撃を受けても現実のパーツやメダルに支障はない。が、攻撃を受けない方が得点は高い。」

レプラス「得点?」

ゴウカン「評価、とも言うね。近々アーケード用にする計画もあるし。

     高い方が色々いいことがある。」

レプラス「よし紫苑!高得点を目指そう!」

紫苑「う、うん!」

通信「C−A。評価最高値100。過去のランキング、1位97点、2位88点、3位87点。

   健闘を祈ります。・・・・・・転送。」


第36話 〜訓練〜



気がつくと西部風の町の中心にレプラスはいた。

紫苑を高い建造物の上にいる。

通信「転送完了。作戦の説明をします。

   この町は今、敵イエロータートル部隊に攻撃を受けています。

   敵部隊を迎撃しつつ、敵総大将を撃破してください。」

レプラス「つまり敵を全滅しろと?」

通信「そうなります。ただし、建物への被害は最小限に留めて下さい。」

紫苑「レプラス、いくよ?」

レプラス「あいよ!!」

通信「作戦を開始します。」

通信が終わると同時に建物の影から敵機が飛び出してきた!

製品名イエロータートル。スピードは遅いが破壊力のあるレーザーを装備。

全体が黄色い、装甲がかなり頑丈なメダロットである。

紫苑「レプラス、後ろ!ドラウプニル!」

レプラスは後ろを向き頭部のたてがみから連携攻撃を発射する。

こちらも発射されたのは赤いボールである。

イエロータートルはレーザーを撃つ。

レプラス「おわっ!?」

紫苑「えっと・・レプラス、クリアエッジ!!」

レプラス「これでもくらえー!!」

レプラスは連携攻撃を発動、伸びた砲台から発射されたのは炎の弾ではなく、

水色のレーザーだった。

イエロータートルはレーザーの束をまともに浴び、体の半分を失い、残り半分も綺麗に焦がす。

レプラス「な?」

紫苑「ぇ・・・!レプラス、左!」

レプラス「え、ちょ、ちょっとまったこの数は・・。」

レプラスの左にイエロータートルが5、6体バラバラにいる。

レプラス「もうやぶれかぶれだ、リペアシューター!!」

左腕をふりかぶり連携攻撃を使用、すると今度はボールから全ての砲台が上へと伸び放射。

火の玉が雨のように降り注ぐ。残ったのはイエロータートルの残骸だけだった。

レプラス「???威力や効果が全然違うぞ?」

紫苑「新型・・・だからじゃない?レプラス上!!」

レプラスの真上にイエロータートルが突っ込んでくる。そこにレプラスはまわし蹴りを浴びせる。

さらに後ろからイエロータートルが3体顔を出す。

レプラスは確実に連携攻撃で頭部を仕留めていく。

前後を挟むように敵が現れ同時にレーザーを発射、レプラスは跳躍し回避、

同士討ちにも成功する。

紫苑「レプラス左、クリアエッジ!」

レプラス「あいよ!!」



レプラス「これで全部かな・・。」

レプラスはイエロータートルの残骸を見渡しながらつぶやいた。

紫苑はまだ訓練が終わらないことに疑問を抱きながら辺りを警戒している。

ふいに紫苑はレプラスの影に何かが迫るのを見た!

紫苑「レプラス、後ろ!よけて!」

レプラス「え!?ぉわ!?」

レプラスの目の前に閃光が走る。横の建物が真っ二つに斬られる。

???「キキキ・・・オレの剣をかわせるたぁ・・ナカナカヤルナー!!」

レプラス「な・・誰だ!?」

???「誰だぁ?ヒトノシマにハイリコンでおいて誰だト・・フザケルナよ!!

    オレの名はキリーキンザム!ここの支配者よー!!」

製品名キリーキンザム。体全てが刃物でできている危険なメダロット。

レプラス「支配者!?いわゆるボスバトル?紫苑。」

紫苑「だと思う。」

キンザム「何をゴチャゴチャと・・・そうボスさ!!イエロータートル、可愛い子分達の仇は

     お前の命で償わせてもらうぜぇ!!!!?」

キリーキンザムは左腕の大剣を天に向けた。


第37話 〜凛冽〜



キリーキンザムの剣圧がレプラスを襲う。

直接斬られてる訳でもないのに、装甲が剥がれ落ちる。

レプラス「・・・・・マジ?」

紫苑「レプラス、右!」

レプラス「ぇ・・のわっ!」

続けて放たれた剣撃をしゃがんで避ける。

しゃがんだ所を蹴られたが気にするダメージではない。

キンザム「受け続けるダケかぁ〜?その程度じゃ!

     このキリーキンザム様は倒セネーェぜッ!?」

レプラス「言わせておけば・・・」

紫苑「レプラス、クリアエッジ!」

レプラス「あいよ!」

頭部から連携攻撃を取り出し発射する。キリーキンザムは連携攻撃の炎に包まれた。

レプラス「よし!」

だが爆煙が晴れた時、そこには残骸すら落ちていなかった。

後ろから突き刺すように呆れた声が響く。

キンザム「どこ見てんだか。それで勝ったつもりか?え?」

キリーキンザムは後ろにある建物の屋根にあぐらをかいている。

キンザム「相手から手加減サレナキャ勝てねーのかよ?お前、今頃首が転がってルぜ?」

レプラス「な、何をぅ!」

紫苑「ちょっと待ってレプラス!」

レプラス「これならどうだー!!」

レプラスの咆哮と共に無数の炎が天へ舞い昇った後、雨のように降り注ぐ。

キリーキンザムはその雨を見ながら嘆いた。動こうとしない。

キンザム「・・・・・・けっ。」

キリーキンザムが座っていた建物に無数の炎は当たり、建物を燃やす。

やがてバキバキと崩れ、やがて建物は崩壊した。

瓦礫の山はなおも炎を増して燃え続ける。その炎の中に影ひとつ。

キンザム「ちゃんと狙ってんのか〜?一発も当たってネーゾ〜?

     それによ〜・・お前どういうミッションか、わかってねーミタイダナ?」

レプラス「なにぃ!?」

キンザム「オレの足元を見てみなよ、え〜?」

キリーキンザムの立つ瓦礫の山の中に影がちらほら見える。

そしてキリーキンザムはその影の一つを踏んでいる。

女メダロット「たす・・けて・・」

ボロボロになった手をレプラスの方に伸ばしながら嘆いた。

キリーキンザムはその女メダロットの左胸に右腕の剣を突き刺す。

女メダロット「はぅ!・・・・ガクッ」

紫苑「!!」

レプラス「お前・・!」

引き抜いた剣にベットリついたオイルをなめながらキリーキンザムは笑い出す。

キンザム「勘違いするんじゃねーよ。トドメをさしたのは俺だが、

     彼女をボロボロにしたのはお前の・・ナンダッケ?さっきの炎の雨なんだぜ?オレの後ろを見ろ。」

キリーキンザムの背後には黒焦げになったメダロットが幾つか転がっている。

キンザム「今オレが楽にさせた奴の家族かな〜・・・トドメさすまえにアイツラは死んじまったナ〜・・。」

レプラス「!?・・・?ぐ・・・。」

キンザム「心が潰れたか?ヒャヒャハ・・・心が真っ白になっていくな?」

レプラス「僕は・・・うわーーーァァァァァー!!!!」

紫苑「レプラス!?どうしたの!?レプラスー!!」

レプラス「(この記憶・・・・覚えがある・・・なんだ・・・?)」

キリーキンザムはレプラスの方に走り寄る。レプラスは気づいてない。

キンザム「亡骸を悲しむ思いはアッタカ・・・だがそれが命取りダ!!」

レプラスは右胸を貫かれた。

レプラス「うわッ!!?・・・ぁ・・・あぁ・・。」

キンザム「へっへっへ・・・ぁん?剣が・・剣が抜けネェ!?」

キリーキンザムは体をひねったり強く腕を引っ張ったりする。

キンザム「くそ!抜けろ!抜けろぉー!!」

レプラス「・・・・今少しわかったよ・・紫苑・・。」

紫苑「・・?」

レプラス「つぁあーーーーーーーー!!!!!!!」

レプラスは右手でキリーキンザムを空に殴り飛ばす。突き刺してた方の腕は粉々に砕け散る。

レプラスの右手は微かに放電していた。

キンザム「メダ!・・フォー・・スーーー!!!?」

レプラス「クリアエッジィィィィィ!!!!」

レプラスは連携攻撃を発射、空中に飛ばされたキリーキンザムは回避どころか防御もできない。

キンザム「ミゴトダー!!!!」

キリーキンザムの絶叫は爆音にかき消された。



通信「ミッション終了。評価値67点、戦闘ランク、Bに認定します。」



気付くとそこはもとの世界だった。

紫苑もレプラスも疲れ果てていた。特にレプラスの疲労はひどいものだった。

ハデス「戦闘ランクB・・・やはりまだこの機体を操るのはレベル不足だったか・・マスター?」

ゴウカンは無言で顔を振りレプラスを見る。紫苑もレプラスを見つめていた。

紫苑「・・・レプラス・・・?」

ゴウカン「・・・・・・・・レプラス君。君がやったことは全てデータ上の出来事だ。

     現実では誰も死んでいないし、怪我をしているメダロットもいない。わかるな?」

レプラスは顔を伏せたまま答える。

レプラス「でも・・・・僕は確かにやってはいけないことをしてしまったんだ・・。

     敵の挑発に乗せられて・・・データとか、現実とか関係なく、僕は・・・。」

ゴウカン「ここで私の友人を例に話をしよう。」

レプラス「話・・?」

ゴウカン「まだ第二次世界大戦をやっていた時代、私は同級生だった友人とともに戦争に参加した。

     あれはちょうど戦争が終盤ぐらいの時だったか・・。」

ハデス「(・・・・マスター?)」

ゴウカン「最初は私と友人のいた部隊が優勢だったのだが、状況がしだいに劣勢になってきてね・・

     やはり兵糧が問題だったかと思う。中には敵に降伏を求める者、反乱を起こす者もいた。」

レプラス「反乱を?」

ゴウカン「ああ。同じ部隊にいたメンバーは全く赤の他人でもなかったからね。

     さすがに同じ飯を食べてきた仲間と武器を交えるのは辛かった。」

紫苑「・・・。」

ゴウカン「私と友人は最後まで日本軍として戦った。私と友人は裏切った仲間を次々と殺してきた。

     共に励ましあい、生きて日本の地をまた踏もう、そう言い続けて。・・・だが。」

レプラス「だが?」

ゴウカン「その友人にも最期には裏切られたよ・・軍の日本行きの輸送船に乗る時不意打ちを受けてね。

     輸送船に乗れなかった。私は必死の思いで敵の輸送船を奪い、日本に逃げてきたのだが。」

レプラス「・・・・。」

ゴウカン「後日友人の乗った輸送船は敵の襲撃に遭遇し沈没したらしい。そして日本に逃げてしばらくしたら次は原子爆弾だ。

     だいぶ離れていたから症状は軽かったものの、それはひどいありさまだった。私はなんとか実家に戻ることが出来た。

     母も父も生きていた・・ボロボロの体だったが・・。だが私の手は血で汚れていた。私は父に全て話したよ。

     これまでのことを。」

レプラス「・・・・で・・?」

ゴウカン「父は私を殴り飛ばした・・・裏切られたとはいえ、もとは大切と思い続けた仲間だったから。

     仲間を殺した奴など私の息子ではない!とその言葉は今でも覚えているよ。

     もともと父は戦争反対をしていたからね。」

ハデス「・・・・・・(初めて聞く内容だな・・)」

ゴウカン「だがレプラス君。君は早い段階でそれに気付いたんだ。少なくとも、

     私や、私の友人のような結末はおりないだろう。もっと自分に自信を持ちたまえ。」

レプラス「自分に自信を・・・。」

ゴウカン「ああ。君は新型を使ったにしろ、この訓練内容を初めてやってランクBを出せたんだ。

     私が初めてやった時はランクD、この差はすごいことなのだぞ?」

ハデス「(それは・・・マスターの不注意ではないか?形式番号TANパーツを使ってランクBを出すなど不可能に近い・・。)」

レプラス「そう考えれば上出来ってことなのかな・・?ははやったよ紫苑!」

紫苑「うん。ご苦労様。」

ゴウカン「さて、時間も遅くなってきた。今日はここに泊まっていきなさい。」

紫苑「いいのですか?・・あ、でもパパやママが・・。」

ゴウカン「こちらから連絡しておくから安心を。さぁ、来たまえ。」

紫苑とレプラスはゴウカンに導かれるまま訓練施設を後にした。


第38話 〜秋口〜



ゴウカンは紫苑達が眠ると静かに部屋から出た。

ドアの近くにハデスが腕を組み、壁にもたれながら立っていた。

ハデス「マスター、先程の話、私は聞いたこと無かったぞ。やはりマスターにはまだ私の知らない秘密があったのか?」

ゴウカン「・・・・あれか?信じるな、ただのハッタリにすぎん。」

ハデス「ハッタリ!?嘘話をリウ・・レプラスにしたというのか!?」

ゴウカン「あの場で率直に自信を持てと言っても今のように元気にはならなかったはずだ。

     はげましの効果を上げるには多少の例え話も必要なのさ。」

ハデス「私の考えすぎだったか・・。」

ゴウカン「でもこの際だから打ち明けよう。ハッタリといえども、全部が全部ハッタリではない。」

ハデス「何?」

ゴウカン「不思議に思わなかったかな?お前と会ってから何十年経った今も変わらないこの体を。」

ハデス「確かに・・・言われてみればそうだ。だが我らメダロットも同様だ・・まさか?」

ゴウカン「残念だが私はメダロットではない。当然背中にメダルは入っていない。

     だが人間かと聞かれてもはいと言えぬし幽霊と聞かれてもそれは否と言える。」

ハデス「???珍しく遠回りに言うな。」

ゴウカン「フォストの言葉を聞いていたお前なら多少の意味は理解できよう・・。私はもう寝る。」

ゴウカンはハデスのいる方向とは反対の方向に歩き出した。ハデスはその姿を見つめながら小さな声でつぶやく。

ハデス「戦争時代の話が嘘では無いと・・?それゆえマスターは高校生クラスの体格をしている・・。

    マスターは・・・・。」

小さく首を振る。

ハデス「まさか・・・既に死んだ人間など・・動くわけが無い。・・・いや、死んでいるといったら・・私もそうか・・ククッ。」



ロボロボA「大変ロボ!バベル様!大変だロボ!!」

下水道の一角。ロボロボ団員の声が辺りに響く。

バベル「なんだロボ。騒々しい・・。」

ロボロボA「食料の残りがあと2日を切ったロボ!!このままでは飢え死にロボ!」

バベル「なにぃ?くそ、あいつ、管理を怠ったかロボ・・。」

ロボロボA「どうするロボ!?お金も最終兵器の予算で余裕が無いロボ!」

バベル「落ち着けェ!!・・・・・・・・そもそもなぜ食料問題をオレに報告するロボ?

    食料管理はアイツの仕事だロボ。」

ロボロボA「アイツ?あ、アマクサ様のことロボか?」

バベル「わかったならさっさといってこいロボ!おら遅いィ!!」

ロボロボA「ひぇ!ア、アマクサ様ロボー!!





ロボロボ団の幹部は皆同じような黒いタイツに二本角のようだ。

バベルとの違いはサングラスが正方形なところと、少し前髪が飛び出していることぐらいか。

アマクサ「どうしたというのだロボロボ一般団員。」

ロボロボA「倉庫の食料の底があとわずかだロボ!今日か明日あたりに補給しないとやばいロボ!」

アマクサ「缶詰1年分抽選で100名様プレゼントが外れたというのかロボ・・・しかし缶詰以外、保存が効く食料はないロボ?」

ロボロボA「カップラーメンとかインスタントがあるロボ。」

アマクサ「どこにお湯があるというのだロボ。水も馬鹿にできない値段になってしまったのだぞロボ?

     それに塩分タップリは栄養バランスが悪いロボ。」

ロボロボA「そんな躊躇(ちゅうちょ)なこといってる場合じゃないロボ〜。」

アマクサ「む〜・・・!おう!そうだロボ!ちょうどいい場所があったロボ!」

ロボロボA「ロボ!?いい場所があったロボ!?」

アマクサ「我ながらいいアイディアロボ。成功すれば少なくともあと二日は持つ。善は急げロボ。

     さっそく明日実行するロボよ!」
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