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第4章 甦る記憶の中で

第18話 〜追憶〜

レプラスは眠りから目覚めた。いつものように太陽の光が差込み、

ほどよい明るさの部屋が一面に広がっている。

昨日のハデスとロボトルしたメダロット。そして黒い真珠のメダロット。

ほかの皆とは違う素質を持った自分。気になることが複雑に交差している。

レプラス「僕は・・・いったい誰だ・・?いったい何者なんだ?」

見つめる両手の中には何が見えてるのか。

紫苑が目を覚まし起き上がった。

紫苑「レプラス?どうしたの?」

レプラス「紫苑・・・ねぇ・・・もし、もしもだよ?

     朝起きて僕がいなくなってたら・・どうする?」

紫苑「な、なに?そ、そんなことあるわけ・・」

レプラス「答えてよ!真剣なんだ!!」

紫苑「さがす・・・探すに決まってるじゃない!」

レプラス「・・見つからなかったら?」

紫苑「見つかるまで探す!だって・・・あんな日に戻るのなんて嫌だよ・・。」

紫苑の目に涙が浮かぶ。

レプラス「ごめん・・・ごめんよ・・変なこと言って・・。

     僕も紫苑がいなくなったら見つかるまで探すよ。」

紫苑「当然!」

紫苑とレプラスは大きな音で互いの手を叩いた。

レプラス「ねぇ紫苑、もう一度クルス山に行ってみようよ。今日休みでしょ?」

紫苑「そうだけど・・なんで?」

レプラス「昨日グランドに現れたハデスと敵対してるメダロット。

     なんか僕、前にあいつらを見たような気がするんだ。」

紫苑「・・・。」

レプラス「もう一度あのハデスと会った場所に行ってみよう!そこにいけば・・

     そこにいけばなにかわかるかもしれない・・そんな気がするんだ!!」

紫苑「レプラス・・うん、行ってみよう!」



紫苑とレプラスは二人だけで山を上り、頂上についた。ちょうど近くに大きな穴が見える。

レプラス「ここでハデスと会ったんだよね・・。」

ロボロボ団の影もあの埋もれたメダロットの姿も見当たらない。

クレーターだけ見ると一体なにがあったのか見当もつかない。

紫苑「あれ?あんな所にあんな物あったけ?」

見るとそう遠くない場所に小さなほこらがある。動物の住居か?

だが気配は全く感じられない。冷たい風が中へヒュ〜ヒュ〜流れ込んでいる。

レプラス「・・・・・入ってみよう・・紫苑。」

紫苑「うん。」

紫苑とレプラスは互いに固く手を握りながらほこらの奥へ入っていった。闇に包まれた空間が広がっている。

後ろを向くと入り口が見えない。もうそんなに歩いたのか?

レプラス「?」

奥の方に光が見える。どうやら外に貫通しているらしい。

動物の住居ではなくトンネルだったのだ。

外に出るとそこは見渡す限り緑が鮮やかな森林だった。

風も無いのに葉がひとつ、またひとつ揺れる。

足元にリンドウ、ユリ、その他様々な野の花が咲いている。

紫苑「今の時代にこんな場所が残ってたなんて・・信じられない。」

紫苑とレプラスはさらに森林の奥へ進んでいった。



目の前に数え切れない程の木が生えている。木の葉の隙間から心地よい日差しが差し込んでいる。

風の歌声、何かが飛ぶ音それぞれが全て聞こえる程辺りは無音に包まれている。

紫苑「この森・・・一度来たかな・・?」

レプラス「わからない・・でも見覚えがある。」

ふと上を見ると葉っぱが一枚ひらひらと落ちてきた。レプラスはそれをなんとなく見た。

すると突然その葉っぱが横に真っ二つに切れ、地面をなにかが這ってくる気がした。

紫苑「ヘビ!?」

ユリ畑の中から緑色の物体が飛び出してきた。大きさはレプラスとほぼ同じ。

その緑色の物体はレプラスに殴りかかってきた。レプラスはかろうじてその拳を受け止める。

出てきたのは全身が緑色のメダロット。肩に龍のような装飾が見える。

レプラス「誰だ!?」

???「!その声?リウスか!?」

緑色のメダロットはレプラスの腕を振りほどき紫苑達の前に着地する。

???「久しぶりだな。帰ってくるならそう連絡すれよ。」

レプラス「馴れ馴れしいな。君、誰だよ。」

???「覚えてないのかリウス?フォストだ。」

紫苑「リウス?」

フォスト「・・・・・人が一緒だったか。旅に出れば誰もが変わるものだな。」

レプラス「誰かと勘違いしてない?僕はレプラス。僕のマスターは紫苑。」

フォスト「記憶が無いのか・・?それとも思い出したくないのか・・?」

レプラス「僕はレプラスだ!!・・・・でもリウス?なにか聞き覚えが・・・・ぐ・・。」

紫苑「レプラス?」

レプラスは急に頭痛に襲われた。

レプラス「ぐぁ・・・・ぁ・・・ぁ・・。」

紫苑「大丈夫!?レプラス!?」

レプラス「僕は・・・僕は・・・・希・・・・望?

     なにかの希望?龍?なに・・・この光景・・。」

レプラスは閉じた視界の中にある光景が浮かんでいるらしい。

必死になにか、鍵となる言葉を取ろうとしている。

レプラス「己・・・審判・・レア・・メダル・・・ドライブ・・。」

フォストは振り向き上の方に見える枝に上り座った。そして小声でレプラスにささやいた。

フォスト「葡萄の美酒夜光の杯、飲まんと欲して琵琶馬上に催す

     酔いて沙場に臥す君笑うこと莫かれ 古来征戦幾人か回える」

紫苑「・・?」

フォスト「まだ充分ではなかったか・・紫苑・・といったかな?」

紫苑「はい。」

フォスト「すまないがレプラスを抱いて5秒程度目をつぶっていてくれ。」

紫苑をレプラスを抱きしめて目をつぶった。

1・・2・・3・・4・・5・・。

目を開けると自分のベッドの上にいた。また幻だったのか?

近くでフクロウが鳴いている。時計はすでに11時を過ぎていた。

紫苑「夢・・・?でもレプラスが・・。夢じゃ・・ないのかな・・?」

紫苑は不思議に思ったが苦しんでいるレプラスに毛布をかけるとそのままレプラスと一緒に眠りについた。



だが紫苑は自分の髪に葉っぱがはさまってることに気がついていなかったのである。

フォスト「リウス・・・あの時お前は死んでいなかったのだな・・。

     ハデスの策略だったか・・。」

フォストは枝に座りながら幻想的に輝く月を見上げ、

フォスト「思いだすな・・・あの頃を。この身に染み渡る・・・あの屈辱を。

     そしてハデス。また会う時は杯か?それとも斧を交えるか?」

月から地面に視線を移す。そして何かを思い出したように・・

フォスト「リウス・・・そなたも沙場に臥す君よ。

     今度会うときはゆるりと話をしようではないか・・。

     『レプラス』ではなく『リウス』よ・・」

フォストはいつまでもいつまでも目を閉じ森のささやきを聞いていた。


第19話 〜海底〜



紫苑とレプラスはフォストというメダロットのことを誰にも話さなかった。

二人の話題にも極力出さないように気をつけた。

何気なく授業を受け雲が空を流れる日々。

そして今日もいつものように放課後が訪れた。

誰もいない放課後、スザクとビャッコは静かに密会していた。

スザク「今日ネットで公開された情報見たか?」

ビャッコ「海底に眠る財宝のことでやすね。

     あのHN、ネムって奴色々な情報を流すでやすね。」

スザク「今度の休みに行ってみないか?ポセイドンパーク。」

ビャッコ「ポセイドンパークでやすか?確かにあそこは海中遊泳ができるでやすね。」

スザク「よし決まりだ!!」

その様子を遠目で見つめるゲンブ。

ゲンブ「また騒動が起こりそうですね・・・。」



海底アミューズメントパーク「ポセイドン」通称ポセイドンパーク。

中にはポセパーと呼ぶ人達も多い。

超有名メダロッター、天領イッキの住む町でマリンパークなるものが建設され、

それに先駆けてクルス町でも建設されたのがポセイドンパークである。

海底遊泳、といっても頑丈な球体のカプセルを使っての海底観察である。

紫苑、ゲンブ、スザク、ビャッコ、ほか数名の同級生、保護者が来場していた。

ゲンブ「セイリュウさんは?」

紫苑「体の具合がまだよくならないみたい・・。」

スザク「よしナンバー3!まずは海底遊泳だぇ!!」

ビャッコ「了解でやす!!」

紫苑「海底遊泳?」

ゲンブ「カプセルを使って海底を冒険できるようです。

    特別チケットで来た僕達は料金タダです。」

紫苑「行ってみよ!ゲンブ君も来る?」

ゲンブ「お供します。」

紫苑達はカプセルに入って海底に出た。



海底の奥深くの大地に裂け目が走っている。

その裂け目の底がどれだけあるか肉眼では確認できない。

だが裂け目の奥にひとかけらの光が見える。

赤、黄、青、緑と虹色に輝くメダロットである。

???「こんな作戦、いやですがNE。

    でもこれで主の世界侵略がまた一歩大きく近づくからヨシとしようKANA?」

メダロットはさらに裂け目の底へ進んでいった。



目の前は水色の空間である。下にサンゴ礁が見え、上には魚の群れ。

太陽からの光は地上とは違う明るさである。

レプラス「へぇ〜・・海もいいね。」

レプラスはカプセルに搭乗していない。

メダロットは陸はもちろん、水中でも活動可能だ。

だが専用の脚部でなければ人間と同じ、思うようには動けない。

戦闘となれば陸でのような動きではとてもじゃないが回避はできないということである。

紫苑「レプラス〜、水中でもロボトルは大丈夫〜?」

レプラスは必死に腕をぐるぐる回して泳いでいる。

レプラス「う〜ん・・慣れるまで時間かかりそう・・。」

紫苑「ゆっくり水中を見ようよ。」

後ろから人魚型のメダロットが近づいてくる。

???「レプラス、水中用脚部では思うように動けないか?」

聞きなれた声である。

レプラス「・・・ヘルメス?なんでそんなパーツなんだ?」

人魚型のメダロットはヘルメスだった。

製品名マリンヒーラー。数ある人魚型メダロットの中で一番人気の商品である。

ゲンブ「水中に出ると聞いてたので水中用のパーツも買ったのです。ところで紫苑さん?」

紫苑「なに?」

ゲンブ「スザク君達を見ませんでした?」

紫苑「え?」



スザクとビャッコはカプセルを使って海の奥深くに進んでいる。

立ち入り禁止の標識も無視、危険な岩場もなんのその。

ビャッコ「さすがにここまで来るとヤバイんじゃないやすか?」

スザク「宝ってのは大抵危険なところにあるんだぜぇ?」

突き進む二人の前に大きな洞穴が見えてきた。

スザク「ここが怪しいなぁ・・ナンバー3!いくぜ!」

ビャッコ「待ってくれでやす!!」

洞穴は途中で行き止まりになっていた。だが水面に出ると壁にはしごのような物がある。

二人はカプセルから降り、はしごを上る。

はしごを上りきった時にはもう下にカプセルは見えないほどの高さであった。

前方に扉が見える。

スザク「宝のお出ましかネェ?開けてみようじゃないかぇ。」

ビャッコとスザクは扉をそっと開けてみた。

最初に視界に入ったのは緑色の水が轟音を出して流れている配水管。

次に鼻にツンと来る刺激臭。足元をねずみが這っている。

スザク「下水道?海ん中だったんだろ?まあいいや。」

ビャッコ「え!?行くのでやすか・・・・?」

スザク「嫌ならそこで待ってな。」

ビャッコは辺りを見回した。何か出そうな雰囲気で満ちている。

ビャッコ「い・・一緒にいくでやす・・。」

スザク、ビャッコは海の中で見つけた不思議な下水道に足を踏み入れていった。


第20話 〜災禍〜



スザクとビャッコは当てもなくどんどん下水道の奥へ歩いている。

もう戻れといっても無理だろう。

歩いていたスザクが急に足を止めた。

ビャッコ「どうしたんでやすか?」

スザク「シッ・・・・なにか聞こえネェか?」

ビャッコ「んぅ?」

スザクとビャッコは目を閉じ耳に手を当てて回りの音を聞いた。

ねずみの鳴き声、水の流れる音、それらにかき消されそうだが密かに聞こえる足音。足音?

足音はしだいにスザク達に近づいてくる。

スザク「・・・・・・。」

スザクは殺気を感じて後ろを振り返った。すると目の前に丸い物体があったのだ。

スザク「のわっ!!」

???「ロボッ!?」

スザクと丸い物体はふんぞり返った。

ビャッコが目を細くして丸い物体を凝視している。

ビャッコ「ロボ・・?」

丸い物体が起きた。丸いのは頭だけで体はタイツ。背中にネジがついている。

恐らく紫苑達と遭遇したロボロボ団である。

スザク「・・人間?」

ロボロボ「わっ・・・なんだお前らはロボ!どうやってここに入ったロボ!」

ビャッコ「どうって・・・カプセル使ってはいってきたでやす。」

ロボロボ「カプセル・・・・?あーロボ!!お前らワルガキロボ!

     『立ち入り禁止』の看板が見えなかったロボ!?」

スザク「あ〜・・・んなもんあったかなぁ・・。」

ビャッコ「(あったでやすスザク。)」

ロボロボ「とにかくここを知られてはまずいロボ!大将ッ!」

すると流れる濁流のなかから1体のメダロットが這い出てきた。

水のよごれが酷くどんな色のメダロットかは見えない。

???「・・・・・・・・天ッ!!」

スザクとビャッコは光に包まれ消えた・・。

ロボロボ「!?何をしたんだロボ?」

???「適当な場所に転送したYO。記憶を消去してNE。」

そして奥から黒いタイツを来た背が高い男が歩いてきた。

紫苑達が見たバベルとは違う人物らしい。

ロボロボ「アマクサ様・・・ロボ?」

その男の名前はアマクサ。バベルとは違う形のサングラスをかけている。

アマクサ「ここに侵入者が来るとは予想外ロボ。

     計画を早めるぞロボ。レインボーダスト。」

ダスト「りょーKAIね。」

ロボロボ「えと計画ってなんだっけロボ?」

ダスト「・・・・・・・HAぁ。君、何を聞いていたんDAI?」

アマクサ「馬鹿者!計画を忘れるとは・・・ロボ。

     海底火山を爆破するんだロボ!!」

ロボロボ「あー!!そうだったロボ!潜水仕様メダ二機、準備完了してるロボ。」

ダスト「潜水仕様・・・数は多い方がいいNE。拝借するよ。」

アマクサ「何、その二機はお前の物だロボ。自由にするがいいロボ。」

ダスト「お〜、ありがたきお言葉。この計画、必ず成功させてみまSU。では・・。」

レインボーダストは再び濁流の中に飛び込んだ。

その様子を影から赤とオレンジ色の鮮やかな女型のメダロットが見ていた。

ほかのロボロボ団員が見ても何も応じないところを見ると彼女もロボロボ団の一員かもしれない。

そのメダロットはゆっくりと天井を見上げると静かにささやいた。

???「海が鳴いている・・・・ハデス様、あなたは今どこにいるのでしょうか?

    ここにあなたがいれば・・・虹龍の行動も止められたでしょう。

    ハデス様、私はあなたにもう一度お会いしたい・・・・・・・・・。」


第21話 〜海人草(まくり)〜



紫苑とゲンブはカプセルに乗りスザク達を探している。

一向に見つかる気配がない。

紫苑「スザク君達、もう帰っちゃったのかな?」

ゲンブ「無いとは言えませんね・・。

    もう少し奥を見てから考えましょうか・・。」

立ち入り禁止の看板が見えてきた。

紫苑「まさかこの先に・・ていうことは・・。」

レプラス「やりそうだけどね。」

ヘルメス「いや、やったようだ。見ろ、あの海草を。」

立ち入り禁止の看板の先に揺れている海草が真ん中を境に直角に曲がっている。

何かが無理に通らなければあのような後は残らない。

紫苑「入ってみる?」

レプラス「そうするしかないんじゃない?」

ゲンブ「まだ二人が行ったとは決まっていないのですが・・。

    確かに先程スザク達がいなくなったことを警察に届出した時

    一定の範囲内は自由に捜索してもいいとの許可も出ましたし・・。」

ヘルメス「ならば入るしかないだろう。」

レプラス「ねぇヘルメス・・。」

ヘルメス「なんだ?」

レプラス「人魚の姿でその口調はやめて・・。」

ヘルメス「・・・・・・・・マスター、脚部以外を交換してください。」



海は呆れるほど穏やかである。

この美しさに感動を誰もが覚えるが、今それを壊そうとする者達がいる。

紫苑達はスザク達が見つけた洞穴を発見した。

その横の地面は真っ二つに割れている。

ヘルメス「何か急に雰囲気が変わったな・・。」

その時いきなりドン、という轟音が響き海水が揺れる。

近くで泳いでいた魚の群れは逃げるように遠くに行ってしまった。

レプラス「な、なんだ!?」

ドン、ドン、と間隔無しに続く轟音。

水中は音が少し聞こえづらくなるはずなのにハッキリと聞こえる。

それだけ大きな音をたてているのか?

紫苑「な、なに?」

ヘルメス「!?あの裂け目からです。」

裂け目の方に行くとメダロットが裂け目の底へ攻撃を繰り返している。

裂け目の底に攻撃が届くたびにドン、という轟音が響く。

紫苑はすぐに警察への通信のスイッチを入れた。

ゲンブはマイクに大声で叫ぶ。

ゲンブ「一体何をしているのですか!?」

メダロットは振り返り様子を見た。レインボーダストと呼ばれたメダロットである。

ダスト「あららら。こんなところにまで邪魔がはいりましたKA。

    2号機、3号機攻撃中止。害虫駆除を始めるYO。」

ヘルメス「害虫!?害虫はお前たちだろう?」

ダスト「いーや。君達が害虫だよ。この地球本来を汚す害虫SA。」

レプラス「なにを言ってるのかわからないね。」

ダスト「そうだNE。君のような凡愚にはわからないだろうNE。」

レプラス「凡愚!?」

ダスト「何をしてるか?そんなもの素直に言えるわけないじゃないKA。

    僕らにロボトルで勝てたら教えてやってもいいけどNE。

    まず、MURIだろうがね。」

ヘルメス「(ムカッ)おもしろい、そのロボトルとやら、受けて立つ!レプラス殿、よいか?」

レプラス「あいよ!」

深海ロボトル、ファイッ!!



地形は水中、そして断崖絶壁。味方機はレプラスとヘルメス。

ヘルメスは潜水用の脚部を装備している。腰から上はウォーバニットのパーツである。

レプラスの装備はいつもと変わらない。

敵機はレインボーダストとイカが2機。

製品名アビスグレーター。モチーフにした大王イカのように危険極まりない性能、

両腕の砲撃は自分のパーツを犠牲にして相手に大ダメージを与える諸刃の剣。

頭部はミサイルを同時に6発撃てる代物で追尾性能があり攻撃力も高い。

レインボーダストはニ脚で地形の相性は悪いがアビスグレーターは水中用。

レインボーダストについてはデータが無く苦戦が予想されるだろう。

カプセルに乗りながら紫苑がレプラスに指示を出す。ゲンブもそれに続く。

紫苑「レプラス、連携攻撃!」

ゲンブ「ヘルメス!敵リーダー機にシュートバレル!」

レプラス「あいよ!」

レプラスは連携攻撃のボールを投げた・・・だが敵の近くにまで飛ばない。

自分のすぐ近くで浮いてしまった。

紫苑「水中だから・・?すぐにリペアスプリング発動!」

レプラス「くっ・・あいよ!」

ヘルメス「援護する!」

レインボーダストに向かってレプラスはクロスファイヤー、ヘルメスはライフル攻撃した。

二つの攻撃とも命中したが爆発がいつもの大きさではない。

半分、いやそれ以下の爆発しか起こらなかった。

煙が晴れるとそこにはレインボーダストが無傷でいた。

ダスト「地上でどうだったか知らないけど、この水中じゃ殆どの攻撃は威力が半減しちゃうのYO。

    こんな攻撃、痛くなんかないNE。」

レインボーダストは波に揺られながらその虹色の機体をなびかせている。

ダスト「さて、こちらの番だYO。」

レインボーダストが左腕を構えるとアビスグレーターの頭部からミサイルが6発ずつ発射された。

レインボーダストもその後左腕からミサイルを3発撃つ。

レプラス達に向かって計15発のミサイルが迫る。

ヘルメス「レプラス殿!つかまれ!」

レプラスはヘルメスの腕をつかみ、高速で回避した。

今のヘルメスは水中用、高速で逃げることは朝飯前である。

だが追尾性能があるミサイルにはそれもあまり意味を成さない。

幾らかはヘルメスが撃ち落とすことができたが5発くらいは受けてしまった。

ヘルメス「うぐッ!?」

ヘルメスは脚部と左腕に2発ずつ当たった。レプラスも脚部に1発当たる。

ヘルメスの脚部は壊れ、水中用のモーターが破損した。

ダスト「これでもう動けないNE?しばらく遊んでみようKA?」

海底に倒れこんだヘルメスとレプラスに向かってレインボーダスト達は適当にミサイルを撃ち続ける。

岩は壊れ、サンゴ礁も砕け、砂が舞う。

レプラスは攻撃を防御することで精一杯である。

直接当たっていなくとも、爆風でのダメージは意外と大きい。

ヘルメス「くっ・・・また負けるのか・・?」

レプラス「うわぁぁぁ!!」

紫苑「レプラス!」

ダスト「ははははははははHA!カイッカーンだNEぇ!!!!

    ミサイルの爆風が!喰らい続ける弱者が!オブジェに見えて仕方が無いNE!」

ヘルメス「急に性格が変わった・・?」

ダスト「誰でも快感を受けると性格は変わってしまうYO!

    HAHAHA、もう君の装甲は限界みたいだNE!NE!

    やはり君らのようなZAKOには優秀な機体には触れぬ運命なのかNA?

レプラス「な・・・んだ・・って・・?」

ダスト「くやしかったら反撃してみなYO!無理だろうがNE、いやははははは!」
第22話 〜夢寐(むび)〜



レプラスは痛みをこらえながら閉じた視界の中で何かを見ていた。

赤く燃える町、煙をあげる建物の窓に見える人影。

だがその人影もしだいに見えなくなる。

陽光がまぶしい森林。小鳥の歌声が聞こえる。

足元に花畑がある。動物達も幸せに暮らしている。

幾つもの光景が転々と移り変わる。

だがその光景はどれも見たことがある光景だった。

見続けていた光景に突如ひびが入り砕ける。

後に残った景色は煙が上がる世界。

自分の両手には赤い液体がベットリついていた。

いつの出来事なのかは思い出せない。

ふいにある言葉が聞こえた。

「何を言い出すのだ!?リウス!」

レプラス「(リウス!?)」

リウス、この間不思議な森で緑色のメダロットに言われた名前。

レプラス「(なんだ?このリウスってのは・・?)」

「今我々がここを離れなければ皆やられてしまう!」

「敵の目的は私達なのだ!!」

声が聞こえる。誰の声かはわからないが、やはり聞き覚えがあった。

「なら君達は皆を捨てて逃げるというのか?」

緑色のメダロットの声・・。

「逃げる!?何を馬鹿なことを!アンタの方が皆を見殺しにしているじゃないか!!」

ハデスと戦ったシルバレイドというメダロットの声・・。

「私はここに残る。行きたければとっとと行くがいい。

 かつて沙場に戦いに行った古来の勇者のようにならんことを祈ろう。」

「いくじなしだNE。まーいいYA。バニジン、行くよ?」

「フン・・。」

レプラス「誰・・?誰だ?・・・そうか・・・。」



ふいに耳元に轟音が響いた。まだ爆撃は続いていた。

ヘルメスは頭部のたてがみも肩の装甲も壊れ果てている。

ヘルメス「このままでは・・くっ・・。」

ダスト「ハーハハハハハハハハハハハハハHAHAHA!!!」

レプラス「・・・・しろ・・。」

ヘルメス「(レプラス殿?)」

オレンジ色に広がる爆風の中でレプラスの体が金色に光り輝いた!

海水が揺れ、岩が吹き飛ぶ。

ダスト「ほーッ!!??」

レプラス「いいかげんにしろーーー!!!!!!!」

体は金に、緑に、赤に、そしてまた金色へと絶え間なく輝いている。

そして両手の中にバチバチと放電するものが見える。

まわりから何かをその拳の中一点に集めているようだ。

紫苑「レプ・・・ラス・・?」

レプラス「ァぁああああぁアアアアアぁァアっっっーーー!!!!」


第23話 〜メダフォース〜



メダフォース。それはいまだ解読されていないメダルの神秘的な力である。

人工でないメダル、『レアメダル』に多く現れる。

機体が金色に輝くのは本領発揮の前兆でいざ力が発揮された場合、

過去に記録されたものでは最大で高層ビルが一つ消し飛んだ。

ただ売られているメダルはメダフォースを発動させた記録が少ない。

公式で残ってるものは世界大会での一件のみである。

つまり、メダフォースを発動した場合、そのメダルはレアメダルと確定しても良い。

現在レプラスに起こっている異変はこのメダフォースといえる。



レプラス「はぁぁぁぁぁぁあああああアアアアアアア!!!!!」

予想できない光景にレインボーダストは攻撃せずに硬直している。

アビスグレーター2機も動かない。

ダスト「このプレッシャーは・・・・まさKAッ!?」

レプラス「でぇやあアアアアアアッッッッ!!!!」

両の拳に集めた力を一気に天へと放出する。

放たれた力の影響により海には大きなクレーターが出現、海底には水が無くなった。

水中用のアビスグレーターはなすすべも無く地に倒れる。

同時に海底にあった裂け目にも崩れた岩に埋められ平坦になる。

次にレプラスの口から大きな緑色のプラズマが放たれる!

子供の握り拳ほどしかない大きさのプラズマはしだいに大きくなり、

レインボーダストに届いた時は学校程の大きさになっていた。

レインボーダストはなんとか回避したがアビスグレーターは防御できず直撃、

ティンペットが粉々に砕け散った。

レインボーダストも爆風でダメージを負い、両腕が吹き飛ぶ。

ダスト「この力・・・この波動・・・アイツKA!?」

その声は恐怖に満ちていた。

海は水を取り戻しクレーターも無くなる。

レプラスの体も元の色に戻り正気を取り戻す。

レプラス「くぅ?・・・あれ・・僕は・・?」

ダスト「うぅ・・覚えていRO!リウス!!」

レインボーダストは地を蹴りすみやかに退却した。

レプラス「・・・・・・・リウス・・?」


第24話 〜追想〜



ポセイドンパークから無事に帰還した紫苑達は疲れた体を休めていた。

スザクとビャッコはポセイドンパークの入り口でぼうっとしていた。

頭が痛い、ぼんやりすると変なことを言ってたので帰って休ませることにしたのである。



毛布を体に巻きつけ寝る紫苑。その脇に眠るレプラス。

レプラスは夢の中で自分と同じ形の深い影と対峙していた。

レプラス「・・・・誰?」

影「・・・・君こそ誰だ?」

レプラス「僕?僕は・・」

影「レプラスとでもいいたいか?でもそれは・・」

レプラス「それは・・?」

影「・・・・・・・・・・・。」

影は踵(きびす)を返し、離れようとした。

レプラス「待ってよ!それは・・・何なのさ!?」

レプラスは走って影を捕まえようとしたが足は動かなかった。

影「君も僕も・・・消えた存在なのだ・・仲間からはね。」

レプラス「消えた・・?」

影「僕の名はすでに君は知っているさ。」

影はさらに遠くなる。もうはるか彼方まで歩いていってしまった。

レプラス「待ってくれ!もう少し!もう少しだけ話を!!」

影「葡萄の美酒は飲みたくないか・・・・?」

レプラス「待ってよ!!」

レプラスは夢から開放された。電気の消えた部屋が広がっている。

紫苑「レプラス・・・・大丈夫?」

少し震えた声で紫苑が問う。体が若干震えてるのがわかる。

レプラス「ごめん!起こしちゃった・・・?」

紫苑「ううん、私も眠れないの。」

レプラス「ハデスと会ってから不思議なことばかりで記憶の整理ができないんだ・・。

     疲れてるだけかな?・・はは・・はぁ。」

紫苑「・・・・・・私は今日のことで。」

レプラス「今日?」

紫苑「ゲンブ君から聞いた。あれはオシロイの言ってたメダフォースに間違いないって。

   メダフォースが使えるのはレアメダルっていう特殊なメダルだけだって。」

レプラス「レアメダル・・・紫苑は怖くない?」

紫苑「え?」

レプラス「僕がレアメダルで・・特殊なメダロットだっていうことで、怖くない?」

紫苑「怖くなんかないよ。だって・・」

レプラス「・・・だって?」

紫苑「私のレプラスだから!」

レプラス「!!・・・・。」

紫苑「レアメダルかどうかは明日のオシロイカンパニーの精密検査でわかるよ。

   深く考えるのは明日にしようよ。」

レプラス「・・・そうだね。おやすみ紫苑。」

紫苑「おやすみ。」



その会話を屋根に寝そべり盗聴する者がいる。快盗ゴウカンだ。

ゴウカン「私の・・・・ふっ。やはり私の判断は正しかった。」

ゴウカンは立ち上がり体を闇のマントで覆うと視線を下にして、

ゴウカン「後はいつ覚醒するか・・・かな?私も行動をとるとするか・・。」

その直後ゴウカンは音もなく風のようにその場から立ち去った。
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