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第3章 交差する幻影、すれ違う記憶

第13話 〜選択〜

紫苑は目を覚ました。いつもと変わらない天井が視界に広がる。

朝日がカーテンを越えて部屋に差し込んでいる。小鳥の声も聞こえる。

だがなぜか体が重い。いつものように起き上がれない。

顔をくっと横に倒した。

レプラス「お・・・おはよー・・・大丈夫?紫苑?」

紫苑「ん・・・おはよう・・レプラス。・・大丈夫。」

レプラスに支えられながらやっと起き上がることが出来た。

紫苑「レプラス・・・ピクニックのこと・・覚えてる?」

レプラス「お弁当食べて・・ロボロボ団と戦って・・ハデスに助けられて・・。」

紫苑「その後・・。」

レプラス「その後から記憶がないんだよね。気がついたら家にいたし。」

紫苑「でもなにかあったのは本当だよね・・私、ピクニックに行った時の服装だし・・。」

紫苑は自分の着ている服を見た。昨日のピクニックの服装のままである。

帰った直後疲れてそのまま寝てしまったのだろうか?にしても記憶が無いのは変だ。

紫苑「考えても仕方ないよね。」

そう言うと今まで重かった頭が急に軽くなった。ふとレプラスを見ると体に生々しい傷跡が残っている。

紫苑「あ、その傷・・パーツ交換。」

レプラスの両腕を交換した。もとの連携攻撃パーツに戻る。

でも頭は傷が入ったままのパーツである。

レプラス「あ〜頭のパーツ予備なかったね〜そういえば。」

紫苑「そうだ。今日コンビニに予備のパーツ買いに行こ?レプラス。」

レプラス「買ってくれるの?」

紫苑「好きなの選んでいいよ。お年玉残ってるから。」

レプラス「あいよ!行く!」

紫苑「レプラス、部屋から出て。ついでにドアも閉めて。」

レプラス「え・・いきなり何?」

紫苑「着替えるから。のぞいちゃダメだよ!」

レプラス「のぞかないよ!」



コンビニは家のすぐ近くにあり、通学路にある。コンビニには色々なものがあり、パーツの種類も豊富だ。

デパートなどの大型店には負けるがコンビニのみ入手可能なものもある。

レプラス「へぇ・・ここがコンビニか〜。紫苑の家より小さいね。」

入るとパーツ売り場にゲンブとセイリュウ、ヘルメス、ステルミアがいる。

レプラス「おっはよー!」

ゲンブ「おはようございます紫苑さん。あなたも買い物ですか?」

紫苑「うん。予備のパーツ・・買おうかなって。」

ヘルメスとゲンブは女性用のパーツ売り場、セイリュウとステルミアは男性用の売り場で物色していた。

ヘルメス「簡単にかわいい系もいいですがやはりロボトルのこともありますから・・」

ゲンブ「家の中でだけつければいいでしょう。」

ヘルメス「そういうわけにもいかないのです、マスター。」

セイリュウ「紫苑ちゃんおはよー!」

紫苑「おはよ。レプラス、好きなの1体選んでて。」

レプラス「あいよ。え〜と・・なんだこれ?ビーストマスター?」

ステルミア「あまり強力なものは選ばない方がいいですよ。しっかり裏の性能表示を見ないと後悔します。」

レプラス「そんなものなのかい?」

ステルミア「ええ。・・そのビーストマスターは充填、放熱それぞれ30秒くらいかかりますね。」

レプラス「30ッ!?・・・ほかのにしよ・・・ステルミアは何を選んでるんだ?」

ステルミア「攻撃パーツの一つや二つ必要になるかと思いまして・・・ふむ。軽いですね。」

レプラス「製造年月日19XX年?」

ステルミア「メダロット初期のパーツですね。性能も良し。マスター、決まりました。」

セイリュウ「決まった?じゃレジ行こっ。」

レプラスは商品と約2時間くらいにらめっこをしていた。



空の太陽はようやく山を上り終わり今下山しようと準備している。

時計の兄弟も重なったところだ。

レプラスとヘルメスは今もなお商品選びに悪戦苦闘している。

紫苑「レプラス・・・まだ?」

レプラス「待って・・・お、これいいや。」

1体メダロットの箱を持ちすかさず裏の性能表示を見る。

レプラス「12秒14秒・・少し長いなぁ〜・・。」

それを遠くから見ていたステルミアが口を開いた。

ステルミア「カスタマイズすれば多少の準備時間は削れますよ?」

レプラス「カスタマイズ!?」

ヘルメス「セイリュウ殿はカスタマイズの達人だ。それがしの機体もセイリュウ殿の手がかけられている。」

セイリュウ「達人なんて・・そんな・・。」

ゲンブ「お世辞ではありませんよ。オシロイの父も是非我がオシロイカンパニーにと協力要請してきたほどです。」

レプラス「オシロイって社長の息子!?」

ゲンブ「ええ。イクシオンもオシロイカンパニーの製品です。」

レプラス「へぇ〜・・。」

ステルミア「でも改造すると各会社のパーツ保険や修理願いなどが適用されなくなります。

      修理などは専門の場所に持っていかなければ不可能になります。あとは・・」

セイリュウ「自動修復カプセルを購入するか・・だね。一つあたり50000円。」

紫苑「5万・・・で、その専門の場所っていうのは?」

ゲンブ「ここからそう遠くない所にあるジャンク屋が一番近いですね。」

レプラス「ジャンク屋・・・か。紫苑、これにするよ。」

ヘルメス「同じ形式か・・それがしは・・・マスター、これにする。」

紫苑が買ったメダロットは製品名ムーンドラゴン。レプラスの機体、ジ・エンシェントの旧式で

色は赤と黄色、黒の三色のみ、連携攻撃はおろか、攻撃パーツがない。そのかわり、不死に匹敵する回復能力を持つ。

ゲンブが買ったメダロットは製品名メダプルート。神秘的な雰囲気を感じさせる女型パーツ。

行動内容はヘルメスの使っているウォーバニットと似ているので実戦でも良い戦果を上げれるだろう。

セイリュウが買ったのは製品名タンクソルジャーの右腕、バルカンのみ。

充填が2秒と早く5,6発連続で出せるマシンガンだが威力は低く装甲も薄い。

紙コップ並に軽いので機動性は全く左右されないのが唯一の長点か。



外へ出ると駐車場にスザクとビャッコがたむろしていた。

ゲンブを見るとすぐさま問いかける。

スザク「シボリカジューはあったか?」

ゲンブ「さぁ?そんなこと調べてないですよ。なんでそんなことをやらなければいけないのです。」

スザク「お前がナンバー2だからだよ・・ナンバー1の言うことは聞けよ。」

ゲンブ「ふざけないでください。もともとトーテムポールズは貴方達が勝手に作ったグループです。

    それに私やセイリュウさんの了解を得ずにメンバーに入れていますし・・。」

スザク「ありゃ言ってなかったか・・・ま、ナンバー2はナンバー2だな。

    んじゃ一番下、もいっかいコンビニ入って調べて来い。」

ステルミア「一番下というのは私とセイリュウのことですか?」

スザク「それ以外無ェだろ。おら早くいけ。」

セイリュウ「・・・・・・。」

スザク「おらにらんでねぇで早くいけよロボトルもろくにしねぇクズが。」

セイリュウ「ステルミア、行くよ・・バルカン転送。」

セイリュウは目を閉じステルミアの右腕を先程コンビニで買ったバルカンに変える。

変更した直後ステルミアはスザクの胸に3発弾を当てた。

ステルミア「スザク・・このケンカ、ご勝負願う!!」


第14話 〜鍍金(めっき)〜



スザクは胸をなでながらセイリュウをにらみ、

スザク「一番下のくせに・・オレに挑戦だと・・・・?おもしれぇ!!

    二度と生意気なセリフ吐かせねぇよぉにしてやるゼッ!!」

ビャッコ「待てよ格下、お前はナンバー4でやす。ならば

     まず最初にこのナンバー3を倒してからにするでやす。」

ゲンブ「紫苑さんの時と一緒ですか・・進歩の無い・・。」

ステルミア「2体いても同じこと、まとめてかかってこい!」

レプラス、ゲンブ「!?」

スザク「(ブチッ)言ったなザコがぁ!!!やってやろうじゃねぇか・・

    その体、修理不能にしてやるぜ!!!!アレス転送!!」

ビャッコ「ディモ転送!」

ゲンブ「えっと・・・・ロボトルファイト!!」



かくしてセイリュウとスザク、ビャッコのケンカが始まった・・。

双方にらみあったまま一歩も動かない。両者相手が攻撃してくるのを待っている。

紫苑の時と同じだがセイリュウは違った。

ステルミア「どうしましたアレス。臆しましたか?」

アレス「なにッ!?」

ステルミア「おや・・・スザクの所に臆病風が吹いてる音がひゅ〜ひゅ〜聞こえますね。」

スザク「(ブチブチッ)アレス!切り刻め!!」

アレス「言われなくとも・・とうっ!!!」

アレスが走りこみステルミアを右腕の爪で攻撃、ステルミアは軽く跳びアレスの頭の上に着地する。

ステルミアはバルカンを2発、アレスの頭に当てる。

ステルミア「放熱・・12・・11・・。」

アレス「ぐっ!・・・こしゃくなぁ!!」

ビャッコ「ディモ、ミサイル発射でやす!」

ディモは左腕を構え紫苑戦でも見せたミサイルを発射した。

しかしステルミアはそのミサイルをつかむなりそれをアレスに投げつける。爆風がアレスを襲う。

スザク「!?」

セイリュウ「ステルミア、ディモを先に倒して。」

ステルミアはディモの足元にスライディング、ディモは体勢を崩される。

すかさずディモの頭を持ちバルカンを喉に当てる。

スザク「今だアレェス!!背中にハンマーを叩き込めゃ!!」

アレス「おおおおお!!!!」

ステルミア「少し兵法を考えなさい、アレス。」

アレスは左腕を叩きおろした。だがステルミアはディモを振り回し防御する。

アレスのハンマーはディモの頭を直撃した。ディモからメダルが外れる。

ビャッコ「そんなバカな・・・でやす・・。」

セイリュウ「パターンC中止、パターンB実行。」

ステルミアはディモを蹴り飛ばしアレスの顔面に当てる。その直後アレスの背後に回り足払い、

アレスは足を滑らせ無防備状態になった後、アレスの目を肘で潰す。

レプラス「・・・・・・。」

目を潰した後バルカンを3発、アレスの喉に撃ち、とび蹴りでアレスを遠くへ蹴り飛ばす。

ステルミアは後ろにジャンプし距離を取る。

スザク「アレス!大丈夫か!?しっかりしろ!」

メダロッチ「アレス、頭部ダメージ78、視覚、聴覚センサーが破損、胸部変形、左腕の関節が破損。

      左腕使用不可。右足ダメージ8、左足ダメージ10。」

スザク「ほとんどの攻撃が頭部だけにいっているぅ!?」

ステルミアはバルカンを5発アレスの頭に撃つ。

スザク「アレス!避けろ!」

だがアレスは防御せずにバルカンを受け、倒れこむ。

セイリュウ「無駄だよ。もう今のアレスは何も見えないし何も聞こえない、ただの棒同然。」

ステルミア「どうしますマスター?まだやりますか?」

セイリュウ「スザクがギブアップを認めるまで・・。」

スザク「・・・・・・ばか野郎・・・・。」

ステルミア「?」

スザク「だれがギブアップなんか言うかこのお調子者ぉ!!!!!!!!!!!」

セイリュウ「・・・・・ステルミア、パターンラスト実行。」

ステルミアはアレス目がけて跳び顔面を勢いよく踏む。この時アレスのセンサーがガチャンと壊れる音がした。

壊れた目にバルカンを入れ頭の内部に直接弾を撃ち込む。アレスの頭に大きな空気穴ができ、メダルが外れた。

最後に膝で頭の装甲を潰し、スザク目がけて蹴り飛ばす。

アレスは頭部のみ修理不可能の状態で敗北した。

ゲンブ「セ・・セイリュウさんの勝利・・・・。パーツを一つ・・」

セイリュウ「いらない。」

スザク「!?」

セイリュウ「帰ろう、ステルミア・・・。」

セイリュウとステルミアはコンビニの駐車場にスザクや紫苑達を残し帰宅した。

コンビニの外にはバラバラになったアレスの頭部の残骸が広がり、その隅には一粒の涙が落ちていた。


第15話 〜闇夜〜



時は午前2時12分34秒00。普通は皆夢を冒険している時刻だ。

だが現実を冒険している者達がいる。

屋根から屋根へ音も無く移り風のように舞う。

その体を包む服は闇に溶け込み獣でさえも気付かない。

冒険している者達の中に快盗ゴウカンがいた。今日はハデスも一緒である。

ゴウカン「飛来した物体はこちらの方向で間違いないな?」

ハデス「1時間18秒前の出来事だ。間違いない。」

両者屋根や道路を無音で駆け、草がこすれる音もせずに森林に入る。

ハデス「あったぞゴウカン。」

森林の中央に大きなクレーターがある。どうやら空から垂直に落ちてきたらしい。

周りの木々が木っ端微塵に破壊されている。虫達の気配がしない。

クレーターには金色がまぶしいメダロットが機能停止の状態で土に沈んでいる。

ゴウカン「ラーゴールデン。これで目標の5体が揃ったな。」

ゴウカンは仮面を取り空を見た。枝の上に幾つか人影が見える。

ゴウカン「よし、これを本部まで輸送だ。みんな、いくぞ!」

ゴウカン達はその夜のうちにメダロットをどこか遠くまで持ち去っていった。



刻同じにして別の町の一軒に紫と黒が特徴的なメダロットが近づいている。

その背後に額に十字架を携えた男達が隠れている。

メダロットからはオイルが血のように流れ落ち、ティンペットがむき出しになっている。

メダロットは静かに右手を窓に当て力を加えた。

音もなく窓のガラスが割れ、窓のカギを開け家の中に侵入する。

家の中では男の子とメダロットが寝ている。どうやら子供の部屋らしい。

十字架を携えた男達はふところから木の棒を出し男の子の首元を叩きつける。

男の子は気絶、気がついたメダロットも窓を割ったメダロットに一撃で倒される。

男達「よーし、この子とメダロットを基地にお連れするロボ。」

???「待ちなよ。」

背後からするどい声が響く。男達は驚き振り向いた。

闇にうっすらと銀色に機体が浮かんでいる。体つきからして女型だろう。

窓を割ったメダロットが答えた。

???「シルバ・・・・ナンダ・・。」

シルバ「デスカービン・・・・それとその他多数・・我武者羅に刈ってもダメだよ。

    これ以上能無しを増やす気かい?」

男達「能無しロボ?こいつはこれでもメダリンク18位の実力を持つ・・・。」

シルバ「たかが18位だろ!?こんな手ごたえの無い奴いらないね!!もう少しマシな奴刈ってきなよ!」

デスカービン「デハ・・・シルバ・・・オマエ・・ターゲット・・シッテルノカ?」

シルバ「一人いるよ!でもまわりが邪魔だね。誰かに見られる訳にはいかないからね。

    ・・・・?おっと、うるさい奴がきたようだ。」

男達「警察ロボ!逃げるロボ!とりあえずコイツは連れてくロボ!!」

デスカービン「シルバ・・・スコシ・・・ジカン・・・カセゲ・・。」

シルバ「言われるまでもないね。警察のメダの百機や千機、軽く潰してあげるよ。」

デスカービン「マカセタ・・。」

男達は子供を背負い闇の町へ逃げ去った。

その後現場に来た警察は一瞬のうちにシルバと呼ばれたメダロットにより絶叫と共に地面に倒れ臥した。


第16話 〜龍影〜



ここはクルス小学校。紫苑達が通う学校である。

昼休み、多くのクラスメイトは体育館で運動しに行ってるため教室は静かだ。

紫苑とレプラスは窓から外の風景を見ている。あちこちにビルが建ち、車が通る。

赤い屋根、青い屋根、高い煙突。黙々と吹き上げる白い煙は天へと昇りその天から光が差し込む。

光を追い小鳥達が遊戯をしている。

ゲンブは自分の席で新聞を読んでる。気になる記事があったのか、ずっと頭を動かしていない。

ヘルメスは自分の体をドライバーで整備している。

まだウォーバニットのパーツを装備している。弾を補充したり、銃口を磨いたり。

オシロイはひたすら勉強を続けている。次期に会社の跡取りとなるため勉強はかかせない。

イクシオンはオシロイがノートに書いてることをメモリーにひたすら記録させている。

スザクとセイリュウは欠席、ビャッコも昼前に早退した。

紫苑「セイリュウちゃん休んでるね・・・どうしたのかな?」

紫苑がゲンブに問いかける。ゲンブは新聞から目を移して答えた。

ゲンブ「スザクやビャッコは大体想像できますがセイリュウさんはわからないですね。

    やはり昨日のロボトルが原因でしょうか・・・。」

昨日のロボトル、それはステルミアがアレスとディモ2体を相手に圧勝したロボトルである。

紫苑とゲンブはまさかセイリュウがあんな戦い方をするとは思ってもいなかった。

ゲンブ「いままで負け無しだったスザクが紫苑さんと戦ってから2連敗です。

    そして昨日のアレスの損傷・・・すぐには立ち直れないでしょう・・。

    そしてセイリュウさんも・・。」

紫苑「セイリュウちゃんも?」

ゲンブ「セイリュウさんはほとんどロボトルはしたがらない。

実際セイリュウさんと知り合ってからセイリュウさんのロボトルを見たのは昨日の一戦が初めてです。」

レプラス「ゲンブがセイリュウと知り合ったのってどれくらい前のことなんだ?」

ゲンブ「かれこれ3年ぐらいになりますか・・僕達が小学校に入学した時に同じクラスになり・・ですから。」

レプラス「・・・・・・ん?」

レプラスはゲンブの机の上にある灰色の紙束は見つめた。

レプラス「なんだこれ?」

ヘルメスが整備を終えたのか工具などを片付けこちらに来た。

ヘルメス「レプラス殿、それは新聞というものですよ。」

レプラス「新聞?」

ゲンブ「僕達の知らないところで何が起こっているのか・・それを知るための情報手段の一つです。

    気になるところがあったので学校に持ってきました。」

紫苑「気になるところ?」

ゲンブ「ええ。読みますか?ここです。」

ゲンブはそう言いながらレプラスから新聞を受け取り机に広げ読んでいた記事を指差した。

記事の内容はメダロッター誘拐事件についてである。

ここ数日で10数名の子供とメダロットが一夜のうちにさらわれるというものだった。

犯人は家の窓や壁を大胆に破壊している。現場には血のような跡が残っている。

だが駆けつけた警官も近所の住人も誰一人犯人の姿を見ていないという。

ゲンブ「そしてわかったことがこの血はメダロットのオイルだそうです。」

レプラス「オイル!?メダロットの仕業なのか!?」

ヘルメス「可能性はなくはない・・。マスター、続きを・・。」

ゲンブはさらに紫苑達に記事を聞かせた。


第17話 〜銀狼〜



ゲンブ達が新聞を読んでいる中、その教室を木に隠れて見つめる影が二つ。

快盗ゴウカンとハデス。なぜだかわからないが二人はよくこの学校に来る。

ゴウカン「メダロッター狩り・・ハデス・・奴らの可能性は?」

ハデス「87パーセント。あの集団に捕まった奴らの愚行だな。」

ゴウカン「そうだとしたら血の跡はデスカービンの仕業かな?」

ハデス「だろう?奴なら壁の一つや二つ、一瞬で破壊できる。」

ゴウカン「後はどうこの事件に処理するか・・・くっ!?」

ハデス「!?」

ゴウカンは後ろからきた弾を防御した。

だが勢いが強かったせいかゴウカンはグランドの真ん中まで飛ばされる。

ハデスも後に続く。ゴウカンとハデスは群がる子供の中に着地した。

ゴウカンの姿を見て逃げない子供は一人もいない。

ゴウカン「ハデス、戦闘態勢!」

ハデス「見られてしまいますよ!?我らの行動が・・」

ゴウカン「そんな悠長なことやっておれぬ!それに・・・敵もその気らしい。」

ハデス「!?」

ゴウカンとハデスの前に一人の銀色のメダロットが降り立つ。昨晩デスカービンにシルバと呼ばれたメダロットだ。

教室にいた紫苑達も気付かないわけ無い。すぐにグランドにでてきた。

レプラス「ハデス!?」

ハデス「!レプラス、くるな!!」

シルバ「おや知り合いかい?あんたの知り合いなんてここにはいないと思ってたが・・。」

ハデス「今更何のようだシルバレイド!!!!!」

シルバと呼ばれたメダロットの正式名称はシルバレイドというらしい。

メダロット社、オシロイカンパニー共に商品リストに無い名前だ。

なぜハデスはこの名を知っているのだろうか?

シルバ「決まってるだろ。邪魔者を消しにきたのさ。障害は取り除いておかなきゃね。」

ハデス「くっ・・・。」

まわりがざわめき始める。

子供A「おい・・・これなんだ?いったいなんだ?」

子供B「あ!ロボトルだ!そうだよロボトルだよ!」

ロボトルと聞いて逃げていた子供がどんどん近づいてくる。

ハデス「・・・・・・・どうしますマスター・・・。」

ゴウカン「仕方ないだろう・・シルバレイド!ロボトルファイトの掛け声で戦闘開始だ!いいな!?」

シルバ「ロボトル?そんな遊びに付き合ってる暇など・・・。」

ハデス「形だけだ。お前もこの子供の数はどうしようもないだろう?」

そう言われ初めてシルバはまわりを見た。

あふれんばかりの子供が目を輝かせながらこちらを見ている。さすがのシルバも汗を流す。

シルバ「・・・・・・・・・い、いいだろう。この子供達の目に私達の本気を焼き付けようではないか・・。」

ゴウカン「じ・・・じゃあ誰か・・・そこの君、そう僕!開始お願い!」

子供A「え!?え・・・・ロボトルーファイッ!!」

銀色の機体をなびかせて2体のメダロットは空へ飛翔した。



戦闘開始の声とともに2体のメダロットは空に飛翔した。

互いに空気の摩擦熱で機体が赤く燃えている。

燃えた状態で体当たりを繰り返し残骸が地上に落ちる。

シルバは左腕からソードを出しハデスに切り込む。

ハデスはそれを右腕で受け止め叩き割り顔面を蹴り飛ばす。

そのハデスの足をシルバは受け止め逆に投げ飛ばす。

宙を舞うハデスは体を回転させながらシルバに射撃攻撃し着地。

着地地点に向かってシルバが突進、ハデスもカウンターをしかける。

シルバとハデスは互いに頭部を殴り胸を蹴り後方に跳んだ。

ゲンブ「ロボトルなのか・・・・これは・・・?」

ハデスは音もなく消え一瞬でシルバの背後に回り射撃。

シルバを貫いたと思ったがハデスが撃ったのは残像、シルバがハデスを真上からかかと落とし。

ハデスそれを難なく回避、バク転して再び距離を取って仕切りなおしになる。

お互いに攻撃、反撃、回避が全て一瞬で行われている。

シルバ「やるねぇ・・さすがに一筋縄ではいかないねぇ・・・。けどね。」

シルバは左腕を構え、ハデスが叩き割ったはずのソードをまた出した。

ハデス「復活パーツか・・・だが・・」

シルバの攻撃を受け破損したはずのハデスの体はもうダメージを受けた跡すらない。

シルバ「自動修復・・またやっかいな物を装備してるねぇ。」

ハデス「お互い様だろう?マスター。」

ゴウカン「ああ、パターンEだ。」

ハデスは横に回転しながら飛翔、シルバの目の前に着地。

シルバはソードを振るがハデスはしゃがんで回避、足首にレーザーを撃つ。

シルバ「くっ!機動力を奪う作戦か!?このぉ!」

シルバはソードで反撃するがその刃をハデスは左腕で防御。左腕から電気が流れシルバを感電させる。

シルバ「くぁ!!?・・・バリヤ・・・だと・・?」

ハデス「終わりだ、シルバ。クロノアーチェル!!」

右腕からレーザーを発射、足を破損したシルバは回避の仕様がない。

シルバは両腕で頭を覆いながら目を閉じた。

シルバ「くぅ・・・これまで・・か・・。」

ガキィィィィィイン!!



シルバ「んく?」

ハデス「!?」

シルバとハデスの間に胸に黒い真珠をつけた赤黒いメダロットが立っている。

左手にレーザーをつかんでいる。どうやら受け止めたらしい。

だがこんなメダロット、ハデスがレーザーを撃つ1分前まで近くに、空にさえいなかったはずだ。

???「シルバ。無理をしないでくれよ〜お前までやられたら夢見悪いぜ〜。」

ハデス「バニジンガルム!!」

バニジン「あっちゃ〜、ハデス。君もいたのかい・・・君あいかわらず・・邪魔。」

シルバ「こんなとこまで・・・まあいいよ。私はここで退却するよ。」

ハデス「逃がすか!!」

ハデスはレーザーを撃つがバニジンガルムに受け止められる。バニジンガルムは受け止めたレーザーを握りつぶした。

バニジン「僕も長居はしたくないんだよね〜・・・ここでおいとまさせてもらうよ・・。サンダーランサー!」

バニジンガルムは頭部から青白い電波をグランド中に放射し、空へ消えた。

レプラス「う・・・なんだ・・・この・・・電波・・・は・・。」

紫苑「レプラス!しっかり!」

グランドにいた全てのメダロットは全員機能停止した。

ハデス「・・雷龍・・・白銀龍・・・今度こそ・・。」

ゴウカン「ちぇ。じゃハデス、退却するぞ。」

ハデス「了・・・解。」

ゴウカンとハデスは足早にその場から退却した。

子供A「今の・・・・なんだったんだよ・・。」
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