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第14章 巡り合う戦略の嵐

第87話 〜逸脱〜

ロボロボ団の基地。

足元にはネズミが這い回り残飯を食い散らかす。

そのネズミを下水に蹴り飛ばしシルバはある部屋に急いでいた。

コンピュータールーム。

最終兵器が造られている部屋である。

シルバ「ミリオン!!いるかい!?」

部屋は静かだ。人の声はしないが誰かが工具を使って何かしている音が聞こえる。

シルバ「ミリオン!」

ミリオン「どうしましたかシルバ?」

最終兵器と思われる機械の下から滑るように出たのは赤い装甲の目立つヴァーミリオンス。

顔がオイルで汚れている。

シルバ「どうしたじゃないよ・・帝に申請した最終兵器完成予定日、いつだったか覚えてるんだよね!?」

ミリオン「明日、でしょ?」

また滑るように下に入る。

シルバ「は・・・なんでそんなに落ち着いていられるんだぃ!?

    間に合わなかったら、どうなるかわからないんだよッ!?え!?」

ミリオン「これが終われば後はエネルギーチャージのみ。

     チャージ開始から完了までは・・・12時間。充分な結果でしょう?」

シルバ「もう陽は落ちてるんだよ・・・・日の出まであと13時間っていったとこだろうね。」

ミリオン「充分です。ん・・終わり。シルバ。」

シルバ「ん?」

ミリオン「メインキーボードの横の青いボタンを押してください。」

シルバ「・・・これかい?あいよっと。」

シルバがその白い指でボタンを押すと

重い音が太いケーブルの中を流れ始めた。

ミリオン「チャージスタート・・・これで私の仕事も終わりましたね。」

シルバ「じゃ、食堂でオイルでも一杯干すかい?」

ミリオン「私はいいです。今までの資料をまとめておかないと・・」

シルバ「そうかい・・・研究熱心だねぇ・・。じゃ、気が変わったら来なよ。」

ミリオン「是非。」

部屋を出たところでふいに止まる。

シルバ「そうだ・・ミリオン。」

ミリオン「?」

シルバ「バニジンから聞いたけど、メダルはどうなったんだい?」

ミリオン「あぁ・・あのプロトメダルですか・・・それなら・・。」

ミリオンは奥のカプセルを示した。

そこには紅蓮のメダルが水の中で沈んでいた。

ミリオン「目覚めを待っています・・・。」

シルバ「目覚め・・か・・。」



重い音は滝の水のようにずっと流れ続ける。

何十ものケーブルを伝って流れるおびただしい量のエネルギー。

その流れる音を聞きながらミリオンは机からフロッピーを取り出した。

ミリオン「ハデス様・・ハデス様の見る未来に私はいますか・・?

     ハデス様の見る未来には無数の穴がある。その穴を塞ぐため私は私なりの考えを導き出した・・。

     私自身、その考えがうまくいくとはわかりません。でも、でも・・・・

     私は頑張ります・・・。」

ミリオンはフロッピーをそっと胸にしまい込んだ。

時計の兄弟はちょうど真上で合流したところだ。

ミリオン「チャージ完了まであと6時間・・・・私の作戦開始まで・・・あと3時間・・。

     半分以上が眠りに落ちてる時間・・・・。」

その瞳には今までに見たこと無いやさしさを秘めていた。



首領「っくっくっくっく・・・。」

ロボザコ「?どうしましたロボ?」

首領「偵察機は破壊されましたねぇ・・ですがもっと効率よい事がこれから起こりますね。」

ロボザコ「効率いい事・・ロボ?」

首領「基地内の守衛メダロットの防犯レベルをGに移行。」

ロボザコ「G!?最低レベル・・・にですかロボ。」

首領「外の索敵も500メートル内をほぼ穴の状態にしなさい。」

ロボザコ「シミュレーション、パターン、プログラム、設定完了しましたロボ。」

首領「500メートル内の索敵は全て無、ですが、500から600メートルの索敵を最大レベルへ。」

ロボザコ「最大設定、完了しましたロボ。」

首領「よろしい。では全軍・・・・」

ロボザコ「全軍・・?」

首領「おやすみなさい・・グゥー。」

ロボザコ「ロボッ!!!!!?」



ミリオン「・・・?」

3時。幹部やらは浅い眠りに入っているが

それでも一般兵や警備のメダロットは起きているはずだ。

それがこの基地の日常であり当たり前のことなのだ。

だが今日はいつもと違う。

動いてるものは何一つ無い。入り口を守る者もいない。

ミリオン「無用心すぎませんか・・?

     脱走兵一人見抜けないなんて・・それとも罠?」

胸元には最終兵器のデータが入ったフロッピーがある。

基地の入り口はかたい鉄骨の入り組んだ洞窟だ。

そこから月明かりを頼りに外に出れば、目の前に広がるのは遺跡だ。

そう、ゴウカンとハデスと、アルデバランが戦った遺跡である。

その遺跡の一角に空気に溶け込むように作られた小さな入り口。

ミリオンは警戒しながら外の地を踏んだ。

人の手によって造られた硬い機械の床ではなく自然の床に。

辺りを見回すが何かが隠れている気配は無い。

ミリオン「・・・・どういうことでしょうか・・?」

虫もいない無音の夜。ミリオンは月の光を浴びないように進みながら近くの林に飛び込んだ。

ミリオン「索敵もしていない・・罠?」

ミリオンは右手に槍を持たせ一気に踏み込んだ。そして変形。

赤い龍の形態に変形し最大までブースターを噴射させる。

そしてミリオンは基地から500メートルの距離を越した。



基地に警報が響いたのはその直後だった。

首領の極秘の命令で待機していたゴーフバレット、ロボウェポンが一斉に出撃する。

続いてレッドダークン、レインボーダスト、バニジンガルムも飛び立つ。

シルバ「アイツ・・・やっぱり私達を利用していたのかい!?」

格納庫に走るシルバは一人ぐちった。

前に見えるのはデスカービン。格納庫とは逆の方向に進んでいる。

シルバ「デスカービン!格納庫はあっちだろ!?何やってんのさ?」

カービン「アァ・・シルバ・・ヤットミツケタ。」

シルバ「?」

カービン「ミカドガヨンデイル・・・シルバト・・オレヲ・・ハヤクコイ・・・ト。」

シルバ「はぁ?」



シルバ「出撃直前だったよ・・・で、何か用?帝様。」

言葉遣いこそいつもの口調だがそれに含まれるシルバ自身の気はいつもと違う。

デスカービンも尊敬の意思を込めて帝を見つめる。

首領「あなたがたにはミリオン捕獲と同時にほかの任務に回ってもらいたいと思いまして。」

全軍におやすみといったのは単なる策。

帝は最初からミリオンがこうすることを知っていたのか?

カービン「イチドニフタツノ・・・ニンム・・。」

首領「えぇ。これをこなせるのはあなたがたのほかにはいない。そう確信しました。

   だから呼んだのです。あの天狗やヒステリーにはとても任せられません。」

シルバ「!・・・・わかりました。その内容とは?」

首領「疾風の森クルス町付近で戦闘態勢のまま待機、敵が出現次第応戦。です。」

カービン「・・・・・。」

首領「ブラックロイドを4機連れて行きなさい。作戦の成功を祈ります。」

シルバ「了解!ほら、デスカービン、いくよ!」

カービン「ワカッタ。」

スタスタ歩くシルバの背を追いながらノソノソと歩く。

出口の前でデスカービンは振り向きじっと首領を見つめた。

首領「どうかしましたか?」

カービン「・・・・・イヤ。」

首領「ならばはやく行きなさい。彼女を待たせてはダメですよ?」

カービン「・・・・・。」



首領は膨大なデータの流れるディスプレイを目を細くして見ながらつぶやいた。

首領「死龍・・・と言いましたか?あのメダは。」

ザコ「え・・ええロボ。」

首領「あの様子、ほんとにシルバの彼氏でしょうかね?」

ザコ「は?」

首領「それとも私に気付いているのでしょうか・・・・クク。」

ザコ「気付く・・・ロボ?」

首領「様子を見ましょうか・・・。」



首領「(死龍・・・・本当に死んでもらわないとならなくなりそうですね・・。)」
第88話 〜憐憫〜



ミリオン「はぁ・・・はぁ・・。」

砂道をミリオンは走った。どこに?ミリオンはそれがわからなかった。

ふいに立ち止まる。前方に人影があるからだ。

ミリオン「はぁ・・・はぁ・・あなたですか?」

影は動かない。太陽がゆっくりと傾き影は鮮明な形を作る。

はっきり顔が確認できる明るさになった。

ミリオン「・・・・・イヨキッス!」

みかんのような頭部の謎のメダロット。今日はジコクテンの姿が無い。

イヨキッス「・・・・・。」

ミリオン「なぜ前に出ない?これもあなたの『策』ですか?」

イヨキッス「・・・・・。」

ゆっくりと歩きだす。一歩一歩地面を踏みしめるようにゆっくり。

ミリオンは背にある槍に手をかけた。すぐにでも抜ける力具合だ。

だが攻撃できる範囲・・・その一歩手前でイヨキッスは足を止めた。

イヨキッス「・・・・行ってください。」

ミリオン「!?」

イヨキッス「ここを進めばやがて活路もできるでしょう。行ってください。」

ミリオン「・・・・・あなたは?」

罠か?そうも思ったが今はその言葉を信じイヨキッスの横を通り過ぎた。

イヨキッス「・・・・やりかたは違っても私達のやってることは同じ結果を生む。

      そうだろう?ハデス。」



その後基地から500メートルの地点で警報が鳴った。

ミリオンが脱走したのである。首領はにやりと笑い、兵士諸君に出撃命令を出した。

最終兵器のデータをコピーされた。ミリオンが敵に接触するのはまずい。

だが予想していたかのような行動。これは明らかに首領の策。



ある場所、ある部屋。

ゴウカンは目の前のモニターに移る情報に顔をしかめていた。

ゴウカン「なんだ・・・この敵の数は・・?」

オペレーターA「敵は街を避け、南の海を沿い、クルス町に向かうようです。」

ハデス「クルス町・・?」

オペレーターB「敵軍団進路上に1体のメダロット反応!これは・・・

        ヴァーミリオンス!?」

ハデス「ミリオン!?」

ゴウカン「引き戻そうとしているのか・・だがミリオンの意図がわからんな。」

オペレーターA「ヴァーミリオンス、敵軍団と交戦開始!」

ハデス「・・・・・私は行く!」

ゴウカン「待てハデス!」



ミリオン「ぐぅ!!凄い数・・・ですが単品の性能はこちらが上です!!」

ロボウェポンを切り刻む。背後から別のロボウェポンが攻撃をしかける。

ミリオンはそれすらも平気で避け攻撃したロボウェポンを灰にした。

今度はゴーフバレット3体の遠距離からのミサイルの雨。

ミリオン「ちっ!」

ロボウェポン「ぐがー!!」

ミリオン「甘い!!」



ミリオン「まったく・・・ゴキブリですね・・。」

自分の創造物を惜しみなく切り裂いたミリオンは誰にも問わずつぶやいた。



少し離れた空・・

ダークン「我の『特別な』レーダーに反応あり!!ふん、ミリオンだな。

     前方に不届き者を確認した!!これより攻撃を開始する!!」

ダスト「全く無駄な口はいいかRA。さっさとやっちまうBE〜。」

ふたりは戦場に向かった。


第89話 〜屠殺〜



ミリオンとロボウェポンが戦う中その高速の物体は飛来した。

砂煙を巻上げなら深紅の刃を抜き叫ぶ。

ダークン「今頃我らに敵意を向けるとは・・・恩知らずも良いところだ・・。

     別に『優秀な』私はお前など何に使えもしないガラクタと思っていたがな。」

ミリオン「ガラクタ?クス・・・それはあなたのことでしょう?

     傷を治したのは誰だと思いますか?目の前にいる私ですよ?」

ダークン「たわけ!!そんな愚弄聞く耳持たぬ!!

     それに、今はそんな無駄を話すため来たのではない・・わかっているだろう!!」

ミリオン「えぇ。始めましょうか?」

ダスト「待て。ミリオン、機密データだけ返SE!そうすれば命だけは助けてやる!」

ダークン「馬鹿か!何を勝手なことを言っているのだ?」

ダスト「裏切ったといえ、かつての仲間!それを忘れないでほしいNE!」

ミリオン「私自身がデータです。私を斬れますか?虹龍。」

ふところにあるフロッピーが機密データのはずだ。

なぜ嘘をつく?ミリオンも策を講じている。

ダスト「く・・」

ダークン「再度の通告に変化無し・・。

     よかろう、ダストがやれないのなら私が斬る!!このすぐれた剣でなぁ!!」

ダークンは咆哮をあげながら突っ込んだ。

ミリオン「ふ」

小さく息を吐き背の槍を抜く。迫り来る剣先目がけて槍を一閃。

キィィィィン

ダークン「な!」

剣はダークンの手から離れ宙を舞い砂地に刺さる。

ダスト「もう容赦はしない!!くらE!!」

ダストはありったけのミサイルを発射した。

待機してあったロボウェポンも攻撃に移る。ミサイルを追ってジャンプした。

ミリオンはミサイルの爆風を避け飛んできたロボウェポンの首を切り落とす。

槍を背に戻しダストの顔にハイキックを浴びせた。そこにダークンのクロスファイヤーが迫るが、

ミリオンは風のようにダークンの背後にまわりふたたび槍を抜く。

ダークン「く・・・ッ・・!!」

肘打ち、ハイキック、膝蹴り、裏拳、槍を一閃。

ミリオン「破ァ!!」

槍がダークンを突き刺す。ダークンを突き刺したまま槍を縦横無尽に振り回し最後は地面に叩き落す。

衝撃により槍はダークンから抜けミリオンの手に戻る。

ダークン「か・・・」

あふれ出た血を砂が吸う。それでもダークンは立ち上がりミリオンを亡き者にしようとした。

ミリオンの目にはなぐさめの色があった。

ミリオン「まだやるとでも・・?」

ダークン「たとえ・・たとえ勝ち目の無い戦いでも・・引くわけにはいかぬのだ・・。

     それが『強者』の証、プライドなのだ!!」

深紅に染まった刃はミリオンを切りつける。

ダスト「(ちっ・・・この向きではダークンに当たるKA!)」

ダストは上空に飛び真上からミサイルを降らす。だが外れた。

ダークン「つあぁぁぁあ!!死ねェ!赤龍!」

続けてダークンもがむしゃらに剣を突き刺す。

ミリオンは無言でダークンの剣を全て槍で受けるとダークンの脚部を真っ二つに斬った。

ダークン「ぐ・・ぅ・・ぅ・・(また負けたというのか!?)」

ミリオン「天狗に未来無し!」

続けざまに右腕を一刀両断する。ダークンの剣はふたたび宙を舞った。

足の無いダークンは砂に埋もれた。

ダークン「(一度ならず・・・二度までも・・我が負けるなど・・・負けるなど・・)」

ミリオン「この気の集まり方は・・。」

ダークン「ありえんことだァァァァァァァァァアアアアア!!!!!!」

轟ッ!

風の刃が地を走りミリオンを移動不能にする。

そしてダークンの気の全てを固めた衝撃波が放たれた!


第90話 〜援軍〜



ガガガガガガガガガガガガガガガガ・・

ミリオン「パープ・・ラグオン?」

ダークンの放った衝撃波は突如割り込んできた紫色の翼により

ミリオンには届かなかった。パープラグオン。

ダスト「紫龍!お前も敵になるというのKA!?」

パープ「普通のロボトルじゃないと思ったから飛び込んでみたけどさ。

    ミリオンだったのか・・おい、これはどういうことさ一体?」

ダークン「外道が知ることではない!帰れッ!」

拳がパープを襲う。拳を受け止めると先程受け止めた衝撃波を本人に返す。

パープ「うっさい。僕はミリオンに聞いてるんだよッ!」

ヒュン、と空気が切れる音と共にダークンを蹴り飛ばした。

ダークン「ぐほぁ!」

赤く染まった砂をまきあげる。もはや機能が停止してもおかしくない損傷率なのだが・・

ミリオン「パープ・・質問があります・・ハデス様はどこにいますか・・?」

パープ「ハデス!?・・・・・だ。」

ミリオン「え?」

パープ「森さ。ここをまっすぐいけばクルス町。その近くになんとかの森ってあるだろ?」

小さな声で言ってるのでダークンやダストには聞こえない。

ミリオン「ありがとうございます・・。」

ミリオンは歩き出した。その後姿を横目で見ながら内心ため息を漏らす。

パープ「(こういう場合は口で言わなくてもわかるか・・時間を稼げってな。)」

ダークン「くっ・・ダスト!お前はアイツを追え!」

パープ「させない!」

パープは上空に酸を投げた。ダストが撃墜される。

パープ「この先を進みたければ・・僕を倒すことさ!」

ダークン「ガキが・・・・お前が盾になるとでもいうのか?」

パープ「あぁ。少しは時間稼ぎになりたいと思ってね。」

ダークン「なぜあの女にそこまでする?」

パープ「大切な仲間だからさ。ハデスの恋人でもあるしね。」

ダークン「く・・・はははは。」

パープ「ん?何かおかしなことでも言ったかな?」

ダークン「言ったとも・・さてはあの女にほれたか?仲間?恋人?

     そんなのひとかけらも思っていないだろう?

     非力なのに何かをしようとする・・そんな無駄な心にほれただけだろう?

     外道らしいと言えば外道らしいな・・・くははははははは!!!!」

パープ「口が過ぎたね。ま、いつものことだが・・」

言い終わる前に一瞬でダークンの目の前に接近し、顔面を殴り飛ばす!

パープ「僕はディスティちゃん一筋だァ!!」

ダークンの装甲が砕けメダルが機体から外れた。

ダークンが機能停止になった直後ロボロボ団アマクサ、ガラパゴッシュが戦場に到着した。



ハデス「なぜだマスター!なぜ止める!」

無断で出撃しようとしたハデスを強引に止めたゴウカンは一定の距離を保ちハデスと向かい合っていた。

ゴウカン「感情で出撃は許さない。今出撃すれば、我々の命は保障されないのだ。」

ハデス「なぜだ!」

すでにクロノアーチェルの充填は完了している。たとえ相手がゴウカンでも今のハデスはためらいなく撃つ。

理由が倫理に背いていれば。

ゴウカン「ミリオンが交戦している場所とこの基地との間に敵が6機、待機している。

     偵察隊の報告によればシルバとデスカービン。そのほか新型の兵器が4機。

     記録した映像だけ見ても予想できる火力は並ではない。

     ふいに動けば、基地の正確な場所も相手に知らせかねない。そして、

     その新型に撃ち落とされるのが関の山だろう。今のお前では!」

ハデス「どういうことだ!」

ゴウカン「今のハデスは冷静さを忘れている。罠かもしれないこの時にな。

     つきこまれ、返り討ちにあっては元も子もない。お前だけは失うわけにはいかぬのだ!」

ハデス「・・・・・だが、私は想いを寄せてくれた人を・・失いたくは無い。

    罠かもしれないが、もしも本当に追われているのだとしたら・・罠ではないとしたら・・どうするのだ?

    見殺しか!?」

ゴウカン「たしかに彼女は前に宇宙の件を我々に教えてくれた。だから被害も少なく済んでよかった。が、

     同じことが2度続くとは限らない。戦況をもっとよくみなければ・・乱世は生きていけぬよ。」

ハデス「その言葉そっくり返す!私はこの心で何百年と生きてきた!ゴウカン、貴様に会うずっと前から!

    貴様が何年生きてきたなど眼中に無いが、私の道を塞ぐというなら・・・ここで倒すまでだ!」

ゴウカン「ついに糸も切れたか。予想していたよ、いつかこうなることを。なら・・始めるか。」

ゴウカンは愛用の銃に弾を装填すると銃口をかつての愛機に向けた。
第91話 〜折衝〜



赤く燃える荒野の上で銀色の機体は激しくぶつかっていた。

片方は白銀の髪をなびかせて剣を振り下ろす。

もう片方は天に伸びる2本の角をきらめかせ射撃。

近くで動物たちの叫び声が聞こえてくる。悲しい、辛い、負の感情の。

戦っているのはシルバとハデス。

二人が戦っている理由はなんとなくわかるが、このフィールドは何だろう?

名も無きメダロットの残骸が散らばり割れているメダルが数十枚地面に散乱している。

そして二人はボロボロになってもなお、戦いをやめようとしなかった。

時代は今じゃない。今じゃない昔、二人は熱く激突していた。

ハデスの背後にはコロニーが撃破された時にレプラスが見た、

ゴウカンが『フリゲートカオス』という名前でオシロイに託したメダロットの残骸が、

それをかばうようにうつぶせになって少女メダロットの成れの果てが、

シルバの背後には数え切れないほどのメダロットの鉄屑が散らばっていた。

二人の戦いに割り込んだものがいた。

レッドダークン、シルバに加勢したのだ。

2体を相手にしてもなおハデスの闘志は弱まることを知らなかった、

ハデスの攻撃は勢いを増して2体の敵をなぎ払う。

ダークンが何かを合図した。突如遠く彼方から無数のレーザーの波が来る。

ハデスは平然と左手を波にかざした。レーザーは消し飛び硝煙の臭いが立ちこもる。

波が来た方向の丘にはゴットエンペラーの群れがあった。

数は50、100は軽く越す。その大群の攻撃を片手で無効化したのか?

シルバとダークンは再び剣を構えハデスを斬る。

二人はむなしく空を斬った。ヒュンという鋭い音と共にハデスが消え

二人の背後で猛烈な爆発が起こる。

ゴットエンペラーの部品が雨のように降り注いだ。

ハデスは丘を一つ吹き飛ばしたのだ。疲労の顔色一つ見せず再び別の丘を消す。

シルバが叫ぶ。何を叫んだのかは聞こえない。

まわりの丘をあらかた潰したハデスはゆっくりとシルバに向き直った。

シルバが構える。いつ突撃されても対応できるように、

しかしハデスの勢いはそれを超えた。コンマ1秒に満たぬ速さでシルバに接近したのだ。

シルバの体が斜めに二等分にされる。ダークンはがむしゃらに剣を振り回した。

戦場にハデスの声が轟く。なんといったか、それは誰も知らない。

その戦場にいるもの全てが『生』という動作を一時的に終えたからである。

空から見下ろしていたある男、一人を除いては・・・・



ハデスが気を取り戻したとき、時は遅かった。

青白い床に深紅の液体、自分の体も赤く染まっていた。

目の前には見慣れた黒いコートの男が・・倒れている。

いつもの白い仮面も今は赤い。体は微動だにせず、すでに心臓は止まっている。

いや、心臓はもう彼の体から無い。ハデスが撃ち抜いたのだ。

罠の可能性のある場所にハデスを行かせまいとしたゴウカンはハデスに銃口を向けた。

人間がメダロットに背くのか?ハデスにはメダロット三原則が無い。

メダロット三原則ができあがる前から生きているハデスに人間が対抗できるのか?銃一丁で?

ゴウカンは並の人間では無かった。ハデスの猛攻を紙一重で全てかわしその隙を狙って銃を撃ち続けた。

ハデスの機体はかなり破損している。左腕は使い物にならないほど大破している。

なぜ人間一人殺せない?その苛立ちがこの事態を招く原因となった。

ハデスはメダフォースを使い攻撃全てに強い磁気を与え命中率を高めた。

高速移動を可能にするメダロットでも回避が困難なほどクロノアーチェルを撃ち続け、

ゴウカンの動きが止まったその一瞬の隙を狙い接近。

距離ゼロでゴウカンの心臓を撃ち抜いたのだった。

だがゴウカンは接近してきたハデスに撃てるだけの弾を撃ち込んでいた。

ゴウカンは即死したが、ハデスも機体の損傷が激しい。

しかしハデスは自分のダメージを気にもせず外に足を進めた。

ハデスが歩くたびに床に赤い足跡が残る。

ハデス「ミリオン・・・今・・いくぞ・・・・・。」



この星は破滅へ刻々と近づいてると感じさせる戦い。

大戦と呼ばれるそれは過去に2度行われ、今再び起こった。

政治家達が出した結論は6体のメダロットを頂点に、軍隊を派遣し抑える。

かつて有能な者が産出したこの日本も、今はその影も無い。

全ては政治家達のメダロットの兵器化。そして人間の飽きた感情。

前世はメダロットは友達と呼ばれ育ってきた。時には親友と時には家族と。

だがその昔の趣はすでに無く、メダロットは他国を占領、または他国からの攻撃を防ぐための武器、

そんな事しか人間は考えられなくなっていた。

平和は長く続かなかったのである。人は欲望にかられ、自分の犯した罪を償わなかった。

大昔に出た魔の十日間事件、ゴットエンペラー事件、S−R計画、おばけ騒動、

事件がおこるたびに人は反省していたはずだが、事件がおこらなければ人は、

全くおきないでいれば反省という行動そのものを忘れてしまうのか?

滅亡し、すでに人々の記憶からその言葉が消えた集団ロボロボ団。

32XX年、その勢力は突如現れ爆煙が広がるかごとく拡大、日本全土を覆った。

自衛隊が極秘に開発していたメダロット、6体を使いその撲滅を図った国会。

無差別に、というよりも集められるもの、全てを強制集結されたメダロット達。

多くはマスターに別れを言えぬまま、また多くは人間を強く嫌う者。

その中から6体、戦闘能力の高い者に開発していたパーツを渡し、

ロボロボ団撲滅を計る。だが開発していた物はあまりにも凶悪な武器だった。

200体以上集まったメダロット達が滅び、耐えられた者はギリギリ6体。

重い責任を委ね、その6体を戦争にとばした。人間は高見の見物をしながら。

戦争の結果はロボロボ団の90パーセントを消滅させはしたが敗北した。

戦争に赴いたメダロット6体は全て戦死。残骸すら残ってすらいなかった。

いや、正確には残骸など探さなかっただけなのだが。

人間は彼らを落ちこぼれと称し、自分達の罪を彼らに全て塗りつけた。

『この戦争は彼らのせいで起こり彼らはその責任をとらなかった無責任者だ』と。

無責任者の名前にはフォーマルハウト、リゲル、ペテルギウス、

トロイアン、プレアデス、そして・・アルデバランと残されている。

やがて世界全てがロボロボ団に支配され・・・・歴史はここで終わっている。



黒尽くめの男は歴史の本を閉じた。顔は闇そのものというように全く見えない。

まわりに金魚蜂をかぶったような白い物体が見える。ロボロボ団か。

男はずいぶん高い所に座っている。豪華といえない椅子に、何かを表示するモニターの前に。

下には多大な空間が広がっている。床以外には何も無い広い空間が。

その空間では緑色の機体が1機、ロボウェポンが3機。

緑色は何もデータが無い。恐らくロボロボ団の新型、あるいはシルバ達と同じ存在。

3機に囲まれたそのメダロットは平然とした状態で構えている。恐れていない。

????「もっと来にゃーといかんでチミら〜?」

独特の喋り方をしている。

緑色と黄色が映える機体と中国の兵士のような頭部。両腕に携えた2対の龍の頭。

後頭部からワイヤーが腰の辺りまで伸びている。そして立っている床のまわりに輪状の光。

ロボウェポン「ギー!」

1体のロボウェポンが殴りかかる。メダロットはそれをひょいと避けると背中をつまむ。

????「行くだぎゃ!」

掛け声と共にロボウェポンが炎に包まれる。灰になるのを確認する前に次の攻撃。

後頭部から伸びたワイヤーがびくんと跳ね起き先端を頭の上まで持ち上がらせる。

そして先端からまた炎。残ったロボウェポンが消滅する。

????「もう終わりかみゃ?」

まだ遊び足りない、そんな子供のような声。戦いを楽しんでいるのか?

デウス「ぬかりはないようだな。アルトロン。」

アルトロン「弱い奴ばっきゃで遊び足りないんだみゃー。」

このメダロットの名前はアルトロンハイロゥ。デウスの使用メダロットのようだ。

デウスはアルトロンが戦った場所から少し離れた場所にいる。

デウス「シルバレイド達が裏切り者の所在をつかんだロボ。場合によってはわしらも出撃する。」

アルトロン「わいは行きたいんだぎゃ〜。」

デウス「まだ指示は無いロボ。」

そう言うとデウスは上を見上げた。上にはさっきの黒尽くめの男、帝がいる。

帝は無言で今の戦闘データを見ているようだった。顔は全く見えないが。

首領「・・・・・・・デウス。」

高低がずいぶんあるはずなのにはっきり聞こえる声。

首領「森へ行って下さい。」

デウス「森?シルバレイドとデスカービンの援護ですか?ロボ。」

首領「やはりあの二人には無理だったか・・あなたはミリオンの徹底破壊をしてください。

  邪魔する者も徹底に破壊することを許可します。例外は無し。」

デウス「はッ!了解しましたロボ!!いくぞ、アルトロン。」

アルトロン「だぎゃ〜。」



帝「・・・・・・くっくっくくく・・・さぁ・・

  時はどんどんおもしろくなっていきますね・・・。」

帝はモニターに表示された3体のメダロットのデータを見る。

モニターには『スィート』の文字がある、3体分。

帝「くっくっくっく・・・・・・ははははははは・・・・。」
第92話 〜挟撃〜



カービン「テキ・・・テキ・・・キタ・・・。」

シルバ「敵?方向からして・・・ミリオンか。なるほどね。

    帝様も良い仕事を与えてくれるね。」

カービン「ン・・モウ一体クル・・森ダ。」

シルバ「森?誰だろうね?」

カービン「ソノマエニ・・・オワラセル・・。ブラックロイド・・ゼンブソウチャージカイシ・・

     イツデモウテルヨウニ・・スレ。」

ブラックロイド「ギ。」

ブラックロイド。首領がロボウェポン同様にミリオンに造らせた、新たな戦力。

全身漆黒の三本足のメダロット。足は三本だが丸太のように太い。

従来のゴーフバレットなどの一般兵メダロットに比べて機動性は最悪だが、

その分破壊力は凄まじい。両腕のビーム砲は一撃で高層ビルを完膚なきまでに破壊させ、

頭部のバルカンは一発で10センチの金属板に穴を開ける。

無論、人やメダロットに当たると一秒数える前に蒸発してしまう。

シルバ「この森・・帝から指定があったことだし、何かあるのかもしれないね。

    案外当たってるかな?」

カービン「ヴァーミリオンホソク・・・ブラックロイド・・・・・

     イッセイシャゲキ・・・ヨウ・・イ・・。」

シルバ「殺すのかい?それは・・・ちょっと。」

カービンはシルバを一瞥した。そしてすぐに指示。

カービン「ゼンブソウ20パーセントノ・・・シュツリョク・・・デ・・・ウテ。

     3・・・2・・・1・・・ファイヤ!!」



ミリオン「パープラグオンから教えられた森・・ここにハデス様が?」

ボロボロの機体を引きずってミリオンは森が見える位置にまで来た。

森の入り口に複数の敵反応を認識すると反射的に背中の槍に手を伸ばす。

自分の設計したブラックロイド4機とシルバ、カービンとわかり苦笑。

ミリオン「このダメージだと・・・あと幾らも持ちませんか。」

いつかハデス達に寝返ることは前から決めていたことだ。

いや、ミリオンはロボロボ団の仲間になっていたのではない。

最初からハデス達の仲間だったのだ。ただしミリオンだけの独断である。

背中の槍を握り締めた直後森から光を見た。

ブラックロイド全機がビーム砲を発射したのである。

ビームの出力が低いのを見てミリオンは目を細めた。自然に腕に力が入る。

攻撃を紙一重で避け間髪いれずに敵に向かって跳ぶ。

ミリオン「出力が低い・・・生け捕るつもりですか?

     シルバ!だからあなたは甘いのです!!」

槍に力を込めると空気との摩擦で槍は炎をまとった。あと3回跳べばブラックロイドを斬れる、

その距離に達したとき視界に黒い塊が迫った。デスカービンである。

デスカービンは力任せに殴りかかった。ミリオンは槍でその攻撃を受け止めた。

二人は同時にぐッと声を漏らす。

槍にひびが入ったのを見るとデスカービンの攻撃力はかなりのもだがデスカービン本人の腕もひびが入っている。

破壊力が大きすぎるため機体自体が衝撃に耐えられないのだ。

槍を抑えているミリオンの腕がギシギシとうなる。

カービン「・・・・シネ。」

ミリオンの槍を力任せにへし折ると胸に一閃、最大出力の左腕がミリオンに深々と埋まる。

ミリオン「かッ・・・!」

胸の装甲が吹き飛びティンペットが露出する。倒れたミリオンはじっと動かなかった。瞳も閉じない。

完全に機能停止したのか?

カービン「シュリョクヲカンゼンニシテイレバ・・テバヤク仕留メラレタ・・・

     カモ・・シレナイ。ソウジャナイノカ・・・シルバ。」

シルバ「別にいいさ、そんなこと。どちらでもいいんじゃない?」

カービン「・・・・。」

デスカービンは無言で両腕を充填し始める。その様子を見てシルバは眉を細めた。

シルバ「なんのつもりだい?」

カービン「イケドルトハ・・キイテナイ・・・・。ウラギリモノニハ・・シヲ・・。」

シルバ「ま・・・しょうがないか(本当に?そうなのかい?シルバ。)」

カービン「イマメダルヲハカイスレ・・・・バ、オワル・・・・オワルゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

カービンが拳を振り下ろした。



振り下ろされた拳を受け止めたのはミリオンの華奢な手のひらだった。

ミリオン「チームワークレベルC・・・あいかわらず動きにスキが大きい。」

ミリオンの目がカッと開くと同時にカービンを吹き飛ばした。

ゆっくりと立ち上がり、腰を少し落として左手を腰に右手を左手の上に。

あるわけの無い刀を持つような、居合いの構え。

シルバ「(なんのつもりだ・・?)」

カービン「コレデ・・オワラセル!!」

カービンは変形し、巨大な牙の形になり背中のブースターを点火した。

ミリオンに突進、背後から同じようにミリオンに近づく銀の影。

シルバではないその影はミリオンの前に立ちはだかりカービンを受け止める。

カービン「ッ!キサマ・・・!!」

両肩から伸びる角。銀色が映える機。ハデス。

だがその銀色の機体も今は赤く薄汚れていた。

ミリオン「ハデス様ッ!?」

ハデス「待たせてすまない・・ミリオン。」



ハデスは左腕、プルートソードの出力を最大まで搾り出しカービンを受け止めた。

しかしゴウカンに破壊された左腕は充分な出力が出ていない。

ティンペットにひびが入っていてもおかしくないほどである。

ハデスの左腕が完全に分解したと同時にハデスの体が光る。

ハデス「ツアアァァァ!!」

カービン「ほぐぉ!」

金色の拳がカービンの頬を殴り飛ばす。

ハデスの体がもとの色に戻ったときカービンはティンペットだけの状態で転がっていた。

ミリオンはハデスの体を見て絶句した。赤いまだら模様、これは・・

ミリオン「ハデス様・・血が・・。」

ハデス「案ずるな・・・私の血ではない。」

ミリオンは思考した。返り血か?だがこんなに血を浴びたハデスを彼女はかつて見たことがない。

ハデス「(く・・コードを1秒やるだけでも辛いか・・。)」

ハデスは自らの震える腕を強引に震えを止まらせる。

シルバは右腕のソードを充填しながら叫ぶ。

シルバ「アンタ!まだ生きていたのかいッ!?」

ブラックロイドの放熱は終わっていない。再び撃つにはまだ時間を要するだろう。

ハデス「ミリオンだけは・・・失うわけにいかない。」

シルバ「つくづく飽きれるね・・・・。そいつは私らを裏切ったんだよ?

    アンタだって裏切れるかもしれないんだよ?わかっているのかい!!?」

ハデス「私もたった今仲間を裏切ったばかりだ。裏切るほうの気持ちも考えろ。」

ミリオンははっとした。まさか・・と小声で言う。

ハデスは振り向かずにミリオンの声にうなずく。シルバは微笑を浮かべる。

いつもの邪魔な仮面はいない、シルバはそう確信した。

ボロボロのハデスとミリオンなどたかが知れている強さ。

反面、自分は整備万端。今なら絶対に勝てる。負けるはずがない。

かなり楽な仕事だ。後々の戦いもこの二人がいないのならかなり楽になる。

シルバ「アンタ達にはがっかりしたよ!!」

思い切り踏み込み刃を抜く。ハデスに向けて真上から叩き込む。

ガキィン

ハデスは右手の肘の装甲で攻撃を受け止める。気づけばハデスの背後にミリオンの姿は無い。

シルバ「!?」

頭上から殺気が降り注ぐ。ミリオンが幻の剣を引き抜く。

ミリオン「ヴォルカノン!」

剣は気の刃となりシルバの装甲を苦も無く両断した。

ハデスは受け止めたシルバの刃を力任せにへし折ると腹に一撃を浴びせ蹴り飛ばす。

シルバ「くッ!なめるんじゃないよ・・ブラックロイド一斉射撃!!」

ブラックロイド。帝がロボロボ団戦力増強のためミリオンに急遽造らせたロボウェポン強化型メダロット。

その攻撃力は高層ビルを一撃で木っ端微塵にし、タンカーを易々と葬る。

機動性のことは考えてない。無敵の装甲と、無敵の火力。

闇のような黒の機体色はなんとも不気味だ。丸太のような三本足も変な感じにさせる。

ブラックロイドから放たれた凄まじい数のビームの嵐。

並みのメダロットなら一瞬で蒸発する。

ハデス「くっ・・この程度の攻撃・・ダメージが少なければ!!」

ハデスとミリオンはもう自分の体がまともに動けないことを知っていた。

動かせない体に苛立ちを募らせるも、表情一つ変えずに押し寄せる光の波をにらみ続けた。
第93話 〜惹起(じゃっき)〜



襲い掛かる光の波にハデス達をかばうかの如く何者かが割り込む。

メダロットだ。メダロットはビームの束をもろに受け爆発した。

ハデス「今のは・・・?」

爆煙で視界がぼやけるがハデスはずっと前を見る。

ラー「我が呼んだ。リーダー。」

上から声。舞い降りる黄金の孔雀。後方から援護射撃、見覚えのある青い弾頭。

ハデス「呼んだ!?何を!?まさか?」

レプラスのキュアエッジがブラックロイドに突き刺さる。

紫苑、レプラス、スザク、ゲンブ、アレス、ディモ、ビャッコが駆けつける。

ヘルメスの姿が無い。

ミリオン「・・・今私達をかばったのは・・ライオン型?」

声が小さい。しゃべるのもやっとの体力か。

ハデス「ヘルメス!!」

煙に向かって叫ぶ。煙の中から落ち着いた声が返る。

ヘルメス「心配ご無用だ、ハデス殿。」

煙が晴れるとそこには変形したヘルメスの姿があった。装甲に一切傷は無い。

ヘルメス「それがしの機体、この程度はなんとかなる・・単発ならば。」

ミリオン「単発無効機能・・。」

戦闘フィールドにバリアを発生させるトラップを設置する、それが単発無効機能。

出力が比較的多く必要で1回設置してもバリアを発生させるたびにまた設置しなおさないといけない。

それでなければトラップ自身のエネルギーが足りないのだ。

防御面ではかなり有効な手段である。だがそれを無効化するパーツもある。

ラー「残党処理・・開始する。」

右腕にマガジンを込めつぶやいた。



荒れ果てた遺跡に緑の影が佇んでいる。

青々と茂る草のような緑色の機体、フォスト。

つるのような鞘の剣を腰に携え、遺跡の岩を見つめている。

フォスト「葡萄の美酒夜光の杯、飲まんと欲して琵琶馬上に催す

     酔いて沙場に臥す君笑うこと莫かれ 古来征戦幾人か回える・・・。」

前触れ無く鞘から剣を抜き見つめていた岩を一閃する。

斬った、そう思った時にはすでに剣は鞘の中に入っていた。

だが前の岩も真っ二つになることも無く静寂な時を数えている。

フォスト「方法論が異なるだけで私達の歩む道は一致している。

     そうだろう?龍将、青龍、神龍。」

フォストの後ろに誰かが空から舞い降りる。背中に巨大な砲台を3つ背負い、

腕から鳥の翼のような物が垂れている。

ドラグーン「リピーツ、ダークン、フルハワサ・・・カシミル、メ・ケテハ、ルル、フォスト。」

フォスト「リピーツ、ダークン、フルハワサ?」

フォストが振り返る。

フォスト「ゲート、アルテナ、フローン。レズマ、ラ・ラー、タプフォル、タママカ。

     イーテツ、ソジャマ、ルル?ビビサ・マスタ、ハーン。ディフィ・・タママカ・・。」

ドラグーン「ク・ハルカ。サンクス。」

メカドラグーンは再び空に消えていった。

その空をフォストはずっとうれしそうな瞳で見続けた。



ブラックロイド「ギグー!!」

ゲンブ「バリア展開!」

ラー「クリアエメラルバ!」

ラーとヘルメスのまわりに緑色のオーラが発生、高出力のビームの束からハデス達を守る。

シルバ「何やってるのさ!さっさと仕留めろ!」

スザク「いくぜアレス!ブレードハンター!」

アレス「おう!」

飛び込みざまにブラックロイド1体に斬りかかる。ガァンとにぶい音がした。

アレス「固ッ!」

斬りつけられたブラックロイドは砲身をアレスに向けるがアレスはバックステップですぐに体勢を整える。

レプラス「リペアシューター!」

アレスが敵集団から距離を開けた直後空から炎の雨が降る。その1発がシルバに当たる。

間髪いれずにディモが氷の拳を叩きつける。

シルバ「くッ!なめるんじゃないよ!」

シルバが右手から大量のミサイルを撃つ。ディモ目掛けてミサイルが飛ぶがラーが割り込む。

ラー「インパクトダンス、受けよ白銀龍!」

1秒で100発放たれる銃撃がシルバを襲う。ミサイルは全て撃ち落とされた。

シルバ「ぅ!かはぁ!!」

ボロボロの状態で吹き飛ばされる。虫の息、といったところか・・しゃべることも困難だ。

ヘルメス「つぁあ!!」

負けじとヘルメスも銃をブラックロイドに連射する。

全員の攻撃を繰り返し受けてるというのに、その黒い機体には傷一つついていない。

ブラックロイド2体がレプラスとアレスにビーム砲を撃つ。

二人は難なく回避、反撃にクリアエッジを打ち込む。

ヘルメス「あの装甲・・・どうすれば・・。」

ラー「ヘルメス、リーダーとヴァーミリオンスの護衛、一人でできるか?」

ヘルメス「守るだけなら可能。」

ラー「充分だ。・・・あとはまかせたぞ。」

ラーは黄金の孔雀から黄金の龍へ形態を変え猛スピードで突出した。

ブラックロイドが頭部からバルカンを乱射する。1発ごとに大量の土砂を巻き上げる。

ラーは器用に弾丸を左右にスライドするように攻撃をかわす。

直線上にブラックロイドを1機捕捉すると額に埋め込まれた水色の宝石を輝かせ

口から赤い電撃を帯びた青白い光を吐き出した。捕捉されたブラックロイドがメダルだけを残して蒸発する。

レプラス「凄い・・。」

だがラーは一発だけでかなり疲労しているようだ。メダフォース以上の体力を消費している。

紫苑「見とれないで!レプラス、左!」

レプラス「ッ、おっと。キュアエッジ!」

ガトリングを避け攻撃する。ブラックロイドは特に動かずに攻撃を受ける。

動けないから仕方なく攻撃を受けるのか、大したこと無いから受けるのか。

ディモはまわりの景色と機体の色を同化させレーダーも妨害しながら手当たり次第凍らせる。

凍ったブラックロイド目掛けて再度ラーの光、またメダルが1枚転がる。

ビャッコ「残りは2機でやす!」



ラー「ぐは!」

ラーがひざをつく。機体の所々から火花が散り肩で息をしている。

ラー「2発が・・・限度か・・・インパクトダンス!!」

残ったブラックロイド2体ともラーの攻撃を平然と受け続ける。

片方のブラックロイドがラーに反撃、両腕のビームをなぎ払う。

ラーはオーラを出し受け止めるが衝撃でいくらか吹き飛ばされた。

スザク「ストローク!」

アレスの左腕が敵の右肩に当たる。こちらも呻き声ひとつもらさない。

突如銃口をアレスに向ける。

スザク「あぶねぇ!アレス、前方宙返り!」

コンマ1秒の差で攻撃を回避する。

アレス「スザク、久々の宙返りだな。」

そう言いながら頭部から何かをばらまいている。着地後敵と反対方向へ走った。

アレスの進行方向から敵めがけてディモが走りこんでくる。

アレス、ディモが重なった瞬間、レプラスが敵の真上からキュアエッジを叩き込む。

ばらまいた何かもレプラスに加勢し青い光を放つ。アレスも連携攻撃をばらまけるのだ。

煙が収まる前にディモが一撃を与え即座に離脱する。

ハデス「見事な連携・・・だな・・。」

ブラックロイド「ギ・・ギギー!!」

ブラックロイドは2体ともビーム砲を背中側にまわしビーム砲の裏側からブースターが顔を出す。

頭部が体の中に入り込み、肩の装甲が青に変化、足を収納する。

ヘルメス「まさか・・メダチェンジ!!?」

ヘルメスが目を見開いた直後変形した1体が飛来する。ビュン、という音が聞こえる前にヘルメスにぶつかる。

バリアを急遽開いたが勢いはとまらない。

ゲンブ「状態固定!姿勢制御!」

ヘルメスはそのままの姿勢で攻撃を受け止める。

ミリオンは吹き飛んだヘルメスの装甲に目を細めたがヘルメスは1歩も後退していなかった。

場所を動かずに一瞬で音速を超えた速度を止めたのである。

ミリオン「なんというポテンシャル・・」

目の前のヘルメスが一瞬消えたと思うとブラックロイドのわき腹を変形を解除したヘルメスの膝蹴りが襲う。

肘うち、まわしげり、重たいブラックロイドを少しだけ浮かせると体当たりで力任せにぶっとばす。

もう1体のブラックロイドが横からヘルメスを襲う。

ヘルメス「チッ!」

舌打ちするヘルメスの前にアレスが出、ブレードハンターで受け止める。ちょうど顔のあたりを斬るように。

ヘルメス同様装甲が一部なくなるがこちらも一瞬で音速を止める。

アレス「はぁああああ!!!」

アレスがストロークでブースターを粉々にする。渾身だったらしくアレスの左腕も跡形も無い。

スザク「終わらすぜッ!!?」

スザクが右手を挙げ怒号を放つ。アレスは自分の3倍は重いブラックロイドを天高く投げると

右手のブレードハンターを抜き放った。

ブースターを破壊され、無防備状態になったブラックロイドの腹にめがけて飛翔しブレードハンターを一閃する。

手ごたえかまわず続けて下に蹴り落とし自分も同じ速度、いや、敵の落下速度を越える速度で落ちる。

右腕を構えながら、敵の頭部に垂直に刃を叩き込む!

アレス「賀宴必殺・・・唐竹割りィィィィィィイイイイイ!!!!」

全身から搾り出されたメダフォースの刃が一直線にブラックロイドを斬る。

破損していたブースター、収納していた足2本、右腕のビーム砲を修理不可能なまでに破壊した。

が、ブラックロイドはまだ生きている。

スザク「まだ生きてるのかよ!!」

ブースターが壊れた今変形している意味は無い。

躊躇せず元の形態に戻る。足が2本壊れているが強引に体勢を立て直すと左手のビーム砲をアレスに向ける。

そこに背後からディモが右腕を繰り出しビーム砲を凍らせる。

ブラックロイド「ギ!」

頭部のガトリングをディモに向けて放つ。ディモはギリギリで避ける。

ディモ「こんな攻撃・・・・イーズィー!」

ビャッコ「そう言ってるわりにはギリギリでやすな。」

アレス「まだまだこれからだ・・・・いくぞ!!」
第94話 〜真価〜



ヘルメスが吹っ飛ばしたもう1体のブラックロイドはまだ飛行を続けていた。

レプラスが執拗に攻撃を仕掛けるがあの速さには追いつかない。

レプラス「当たらないか・・・紫苑、どうする?」

紫苑「攻撃時のスキを狙うか・・・接近した時を狙うか・・それとも。」

レプラス「それとも?アレ?」

紫苑「うん。」

レプラスの体が黄金色に輝く。右の手のひらを地面に当てて叫ぶ。

レプラス「地形変更ッ!!」

景色が歪み気がつくとまわりは高層ビルの立ち並ぶ市街地になっていた。

突如の視覚の変化にブラックロイドは混乱し、近くのビルに衝突する。

ビルは粉々に粉砕され、ブラックロイドも墜落。墜落したところにキュアエッジが走る。

キュアエッジが当たった瞬間、ビルの破片や景色は一瞬で元に戻った。

ブラックロイドはまた飛ぼうとしブースターを展開する。そこにリペアシューターの雨が降る。

紫苑「逃がさない!」

レプラス「キュアエッジ!!」

敵の真横から青い光を放つ。

ブラックロイド「ギ!!」

ブラックロイドは青い光に対し両腕のビームで光をかき消す。

だが地上にレプラスは確認できなかった。

レプラス「プラズマァシュートォ!!!」

真上から巨大な電撃の玉が落ちる。凄まじい電気の渦が装甲を削り取る。

レプラスは舌打ちするとすかさず距離を置く。

メダフォースを使っても敵はまだ攻撃をしかけてくる。効いていない訳ではなさそうだが・・

紫苑「?レプラス、左!」

レプラス「ッ?ぅお!!」

正面のブラックロイドではなく、アレス達が戦ってるブラックロイドがレプラスに向けてビームを放つ。

紫苑の指示もあってレプラスは苦も無く回避した。

レプラス「キュア・・だめだ!放熱しきれてない!」



ハデス「・・・。」

ハデスは無表情で右腕を充填し始めた。

ヘルメス「ハデス殿?何をするつもりだ?」

ハデス「いつまでも・・守られてる訳には・・・いかないのでな・・。」

ミリオンを一瞥する。そして視線を遠くでうなだれているラーに向ける。

ラーのあの光は体力を一気に消耗し敵を一撃で抹消する奥の手。

それを2発連続で行ったためラーのエネルギー残量はもうわずかしかない。

ヘルメス「マスター。パーツをタイプBに。」

ゲンブ「タイプB?あれですか?」

ヘルメスのパーツが光り、形状を変えていく。

頭部が青いシャープの形状をした、グリルエルに、

右腕がでんでん太鼓のような、デンデンに、

そして左腕が濃い青と紫の暗い印象を持つ、インバリッドに。脚部はそのままだ。

突如ブラックロイドが2体ともヘルメスに向けてビームを放つ。

ヘルメスは顔をしかめ、左腕のバリアを展開させた。

ニ脚のため姿勢の制御がうまくいかず、そしてバリア出力が小さく衝撃波で左腕が放電する。

そんな左腕に見向きもせずヘルメスは右腕と頭部でハデスに応急処置を施した。

ハデスは修復した左腕をチラリと見る。応急処置なのでまだ装甲は無いに等しい状態だが、

充填し盾として出力する機能は充分に出せる。ハデスの左腕はビームを展開し、様々な攻撃を軽減、無力化させる。

考えてみれば右腕も何も知らない人間が見れば格闘用のナイフだ。本当はレーザー砲だ。

再びブラックロイドのビームがヘルメスを襲う。相手もこれ以上敵を増やさないために躍起らしい。

すかさず左腕をかかげビームを防ぐ。そして頭部が淡い光を放ちハデスやミリオンを包み込む。

ヘルメスはミリオンにも応急処置を施すと元のライオンハートにパーツを戻した。

二人とも本調子ではないが、充分動けるようになったことを確かめる。

グリルエルの光はパーツ内に存在する装甲を修復させる機能、ナノマシンを活性化する効果がある。

ナノマシンが活性化し徐々に体力が回復していく・・ハデス達には直接回復するよりこう間接的に回復した方が良い。

連戦連戦で体力を浪費したのならとにかく、今の二人がビームに当たるというのは絶対に無いからだ。

そしてハデスには自己修復機能がついている。活性化とセットになり見る見るうちに装甲が元通りになる。

かつてのマスターから受けた血も拭い去り・・

ハデス「つぁああああああ!!!!!」

ハデスはまっすぐレプラスに向けて飛ぶ。

その方向にヘルメスは目を向けたまま問う。

ヘルメス「動けるか?」

ミリオン「充分です。」

ヘルメス「あちらはまかせる。なんだかんだ言ってもあの二人が心配だ。

     それがしの進む道に・・・アイツらは絶対必要なのだ。」

ミリオン「かつて一戦交えた時とは段違いですね・・ここまで育ちが良いのはあなたもレアメダルでしょうか?」

ヘルメス「レアメダル?それがしが?」

ミリオン「その資質は充分あります。では・・また無事に会いましょう。」

ヘルメス「御意。」

二人は別の方向へ走った。



レプラス「ハデス!?ケガは!?」

ハデス「私を甘く見るな。さっさと片付けるぞ・・・神龍!」

ハデスはブラックロイドの左肩にレーザーを放つ。

レプラス「神龍?それは僕のこと?」

キュアエッジが敵の頭部に当たる。装甲が破損しているが、痛みを感じていないようだ。

ミリオン「加勢します。」

頭上からミリオンのヴォルカノンが落ちる。頭部にクリーンヒットするも機能停止にならない。

ハデス「もともとリウスの呼称は神龍。そしてリウスの力も受け継いだお前は新の神龍となった。

    龍神の呼び名を持つ者の中で特別な、そして最も見所のある未来を携える者。」

紫苑「神の・・龍・・。」

ミリオン「異議無し、私も貴方を神龍として認めましょう。レプラス。」

レプラス「でも・・そんな物には興味ないかもしれない。僕は紫苑がいるだけで・・・

     そして僕の、みんなの前に立ちはだかる者を倒す・・・それだけでいいんだ。」

ハデス「・・・・その答えを待っていた。認めたくないが、マスターの目は正しかったというわけか。」

ミリオン「・・・。」

3人は同時に攻撃を放つ。度重なる攻撃にもブラックロイドは顔一つ変えずに受け続けた。

ミリオン「私が設計したメダロット・・いや兵器ですね。出来はかなりいい方です・・。」

レプラス「こいつを設計した!?」

ミリオン「えぇ。ですが意図的に作った構成した欠陥部分や装甲や放熱効率などが徹底的に改修されています。

     かなり知識が無いと見破るのは難しかったのですが・・。」

ハデス「ミリオン以外に有能な技術者がいるということか?」

ミリオン「はい。・・・・でもそういうのは見当たらなかったですが・・。」

ミリオンがブラックロイドを焼き付ける。そこにハデスのレーザーが唸る。

紫苑「ねぇレプラス、ちょっと思ったんだけど・・。」

レプラス「?」

紫苑「バラバラに攻撃できるときに所かまわず攻めるよりも一点に集中して攻撃した方がいいんじゃない?」

ハデス「確かにな。」

ミリオン「ですね。先攻は?」

ハデス「私が行く。次にレプラス、ミリオンと続いてくれ。」

レプラス「あいよ!」

ミリオン「はい。」

紫苑「れっつごー!」



スザク「ゲンブ!?あの2人・・ぁ、あっちで戦ってるか。」

ゲンブ「私一人増えただけでどうにかなるとは思いませんがね。」

ディモ「一人でも多いほうがハートストロング!!だ!」

アレス「そのとおりだ。3人が共に戦うなどほとんど無かったな。」

ヘルメス「前に一度。これでステルミア殿も加われば・・・言うことなしだが。」

ゲンブ「すぐに揃いますよ。そのためにも・・・」

ビャッコ「まずこいつを倒すでやす!!」

3体のメダロットがブラックロイドに攻撃をしかける。

3体の攻撃とは別の方向から銃弾の嵐が飛ぶ。

ラー「私がいるのを忘れるな・・・・ァ!!」

アレス「(すまん・・忘れてた。)」

ブラックロイドがラーに向けてビームを撃つ。ラーは舌打ちしオーラを張る。

ヘルメス「余所見をするでない!!」

敵の肩を射撃で射抜く。

アレス「おォーーりゃぁぁぁァ!!!」

渾身の一撃が装甲に響く。

ディモ「アタァァーック!!」

黒い機体を一瞬で凍らせる。

ラー「かくなる上は・・・・リミットドライブ!始動ォ!!」

ラーの黄金色の機体がさらに黄金色に輝く。光り輝く右腕を、銃を獲物に向け発砲!

通常なら傷一つつかない装甲をズタズタにした。

ヘルメス「凄い・・・。」

スザク「たく!なんでそういうのさっさとやらねぇ!?」

ラー「使いたく・・・ないから・・・だ!!カハッ!」

口からオイルを吐いた。同時に肩の装甲が吹き飛ぶ。

アレス「!?」

ヘルメス「ラー殿!?」

ラー「リミットドライブは自らの体を削り攻撃力を大幅に上げるメダフォース・・・

   承知したらそなた達も攻撃をしてくれ!!」

スザク「・・・・わかったぜ・・・アレス!ブレードハンター!」

ゲンブ「ヘルメス!キングバレル!」

アレス&ヘルメス「おう!!」

Xの字を描くように2体の攻撃がズタズタになった装甲をさらに切り裂く。

ラーの銃撃は耐えない。一体どれくらいの弾が眠っているのか。

ブラックロイド「ギ・・・ギ!!」

ヘルメス「逃がさないッ!」

的確な射撃で足を止める。

ラー「くぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・つああぁぁぁぁああああァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!」

咆哮と銃弾の津波に敵は後退した。この塊もついに怯えを出したか?

スザク「ブレードハンター!」

ゲンブ「キングバレル!」

ビャッコ「フリーズストラク!」

3人の同時攻撃で敵の右腕をついに木っ端微塵にする。続いてラーが左腕を破壊した。

スザク「いくぜゲンブ、ビャッコ!」

ビャッコ「あれでやすか?もちろんOKでやす!」

ヘルメス「フフフ・・・あれか。」

アレス「異議なし!」

3体のメダロットが陣形を組む。アレスを後ろにヘルメスとディモが立ちはだかるように前に。

ゲンブ「いきます!トーテムスプリンター!!」

ヘルメスとディモが突進し敵を突き上げ空に放り出す!

空中に浮かびすきだらけになった時を狙いアレスが真下から跳躍、右腕が青く輝く!

アレス「受け取れ!唐竹割りイイィィィィィッ!!!!」

アレスが下から全身全霊の力を込めた拳を叩き込む。脚部を貫通し頭部をかち割った。

ブラックロイドの背中からメダルが外れる。

スザク「オレ達のチームワークに・・!」

ビャッコ「勝るものは・・!」

ゲンブ「皆無ッ!!!!!」



ハデス「クロノアーチェル!」

ハデスが光の刃を撃つ。そこにレプラスが続く。

レプラス「一点集中・・キュアエッジ!」

ミリオン「ヴォルカノン!」

紫苑「ミリオンさん!右ッ!」

ミリオン「ッ!」

真横から来たミサイル郡を回避。その方向にはゴーフバレット隊が・・・せいぜい10機。

ハデス「増援か・・・シルバ?」

気づくとシルバの姿は無い。デスカービンも逃げたようだ。

レプラス「はめられた?」

ハデス「まさかな。」

ブラックロイドの頭を切りつける。続いてキュアエッジ、ミリオンの槍とタイミング良く続く。

紫苑「ゴーフバレット10機が増援?」

レプラス「数だけで勝負なんでしょ?リペアシューター!」

紅炎の雨が増援を一瞬で撃破する。メダルが雨となって降り注ぐ。

ハデス「3・・2・・・1・・ラジェイト完了。」

ミリオン「1・・2・・ヴォルカノン!」

メダフォースを連発するミリオン。眠っている体力はどれくらいのものか、華奢な体からは想像できない。

レプラス「いいかげん・・・倒れろォ!!」

紫苑「プラズマシュート!」

レプラス「はぁッ!」

ついにこちらのブラックロイドも機能が停止した。
第95話 〜揚陸〜



パープ「ハデス!こっちも終わったのかい?」

空からの紫色の龍、パープラグオンが飛来する。かなりの戦闘をこなしたらしくボロボロだ。

ハデス「ラグオン!?どうしたその体は?」

パープ「いやぁ・・ミリオンと会ってさ・・追われてたから時間稼ぎに200機ほど相手にしただけさ。

    でも二人とも無事みたいだから無意味じゃなかったね。」

ハデス「お前という奴は・・。」

パープ「僕がやった部隊は退却したけど・・ひとつバッドニュース。こっちに向かってヘリが1機来てる。

    所属はたぶんロボロボ団。・・酸の残りが無いから僕は離脱するよ・・。」

ミリオン「わかりました。・・・ヘリ?」



ダバダバダバダバ・・

ヘリコプターから1体のメダロットが落ちてくる。無音で着地する。

緑と黄色で構成された機体。中国の甲冑のような頭部。両腕につけられた龍の頭。後頭部から垂れたワイヤー。

ハイロゥ「ひさしぶりの娑婆の空気はうまいだがね。」

レプラス「・・・・誰?」

ヘリから一人の男が舞い降りる。ロボロボ団幹部のデウス。ハイロゥとは対照的な音を出し着地。

常人なら足の骨は余裕で折れているが男は何も痛みを感じていないようだ。

デウス「我が名はロボロボ団幹部の中の幹部、デウスである。」

ハイロゥ「そのメダロット、わいの名はアルトロンハイロゥだぎゃー!」

ヘルメス「バベル、アマクサ、また新しい幹部が来たか。」

ゲンブ「オシロイの話ではアキレウスという幹部もいるようです。そしてジコクテン・・。」

スザク「幹部って何人いるんだよッ!?」

デウス「我、バベル、アマクサ、アキレウスが神聖四天王、ジコクテンは新入り幹部だロボ。」

ハデス「ロボロボ団にお前のような者がいるとはな・・・意外だ。」

それは恐らく強さを言っている。

ハイロゥ「意外?たーけっ。だだくさ生きてるとちゃう?もっとかんこーせいや。

     わいなどまだ始まりだぎゃ。」

アレス「始まり?」

ハイロゥ「始まりだぎゃ!!」

姿が消え背後からアレスを蹴り飛ばす。

アレス「奇襲か!」

デウス「よーいドンで始まる戦争など無いロボ!」

レプラス「戦争だって!?」

ハイロゥ「戦争だがや!!」

また姿が消えレプラスの側面にするどいストレートを打ち込む。攻撃を受けながらキュアエッジが放たれるがそこにハイロゥの影は無い。

アレス「速いなッ!」

消えては現れまた消える。一種のもぐらたたきのように。

ハデス「ちっ。」

舌打ちするとクロノアーチェルを構える。その背後にハイロゥが来る。

ミリオン「ハデス様!」

ハイロゥ「遅いみゃー!」

だがハイロゥの拳は空を切る。ハイロゥの背中からレーザー一閃・・ハデスのクロノアーチェルだ。

ハデス「遅いのは・・・どっちだ!?」

ハイロゥ「ぎゃぎゃぎゃ!?」

損傷したハイロゥは地面を転がりまわる。そこにハデスはクロノアーチェルを何発も撃ち込む。

レプラスのキュアエッジ、ヘルメスの銃撃、ラーの銃弾、ミリオンのヴォルカノン。

ハイロゥ「いったぁー!おそがい攻撃みゃー!」

ようやく起き上がった直後アレスが正面から殴り飛ばす。

ハイロゥ「あたぁー!!」

ふたたび転がる。これで本当に幹部か?

ミリオン「・・・・手加減している?」

その声を聞いた直後それまでの動きが嘘だったかのように素早く起き上がる。

ハイロゥ「アヒャ!わかっっちまっただぎゃ?アーヒャヒャヒャヒャッ!」

デウス「ふっふっふ・・・いつまでも遊んでられんロボから・・そろそろ片付けるぞ!ハイロゥ!」

デウスの目が見開きハイロゥが消える。

レプラス「!そこかー!?」

何かを感じたかレプラスが真横にキョアエッジを放つ。その方向にハイロゥがいた。

ハイロゥ「奇襲がワヤだぎゃ!だけどみゃー。」

体をひねるという最低限の動きだけで攻撃を避けるとそのままレプラスを蹴る。

レプラスを蹴った1秒後にはその周辺からは影も形も無くなりミリオンの背後から拳を振り上げる。

ミリオン「後ろッ!?」

そう言う前に背中に備えていた槍に手をかけ背後から迫る異常な殺気に斬りかかっていた。

だがハイロゥはえびぞりの状態で槍を簡単に避けるとそのまま足で槍を蹴り上げ

ミリオンの手から槍が外れた一瞬に拳を胴体に一発叩き込んだ。

ハイロゥ「メダフォースだぎゃぁ!」

充分回復していない装甲に強烈な一撃が走りオイルが飛ぶ。紙一重で直撃を避けたミリオンは距離をとるため後方に跳んだ。

そう・・跳んだつもりだった。しかしミリオンの足は地面と接着されていた。なぜ?

ミリオン「!?足が動かない!?」

ハデス「ミリオン!」

ハイロゥ「邪魔だぎゃー!」

後頭部から垂れているワイヤーを持ち上げ先端部から青いリング状のビームを数発撃つ。

ハデス「こんなものがなんだ!?」

左腕のビームシールドを展開すると苦も無くビームを打ち消す・・打ち消したつもりだった。

ビームはシールドに命中した直後拡散し鎖のようにハデスにまとわりついたのだ。

ヘルメス「ちィ!キングバレル!」

ヘルメスが発砲する。だがまたも撃ち出されたビームに弾が飲み込まれヘルメス自身も動けなくなった。

デウス「ハイロゥのビームは特殊なウェーブビームロボ。」

ハイロゥ「理屈は良いだぎゃ。もっかいメダフォー・・」

スザク「俺たちを・・・!」

ビャッコ「忘れるなァー!でやす!」

アレスとディモが同時に突っ込む。デウスがニヤリと笑う。

ハイロゥ「はいはいはいはいはいはいぃぃぃぃ!!!!」

ディモ「うお!?」

アレス「なに!?」

同時攻撃をいとも簡単に払いのける。見えない連撃を受け装甲の薄いディモはふっとぶ。

装甲がやや厚いアレスは少し離されるだけで踏みとどまった。

ミリオン「く・・・くく!はぁー!!」

ミリオンが束縛を解き放つ。同時に槍をなぎ払う。アレスは再び攻撃する。

アレス「唐竹割りィ!!」

ミリオン「ヴォルカノン!」

ガァアアァン・・鈍い音がする。ハイロゥはそれぞれの手で攻撃を受け止めたのだった。

その顔には、声には痛みの感情が一切無い。

ハイロゥ「みゃー。」

アレスとミリオンが瞬時に火だるまと化した。
第96話 〜霊威〜



ハイロゥの両手の龍からは炎が出るようだ。

頭部で動けなくし、燃やす、その攻撃が恐ろしい。



火だるまとなったアレスをゴミでも捨てるかのように投げ捨てた。

スザク「アレス!」

アレス「大・・・・丈・・・夫だ!」

ようやく火もおさまり黒こげになった虎は立つのがやっとだった。

スザクが少し安心したのもつかのまハイロゥはミリオンを燃やし続ける。

ミリオン「この程度の炎で!」

槍を構える。その槍は自ら身に炎をまとった。

そう、ミリオンの攻撃も炎だ。

ミリオン「私を倒せますか!?」

槍がハイロゥの体に突き刺さる。同時にハイロゥも炎の渦に飲み込まれた。

火だるまと火だるまが重なる。だがデウスは笑っていた。

一瞬光が見えたと思うと熱風が吹きあられ二人の炎をかき消した。そこにあらわになったのは・・



ハイロゥの腕がミリオンの体を貫通したそのときだった。



ハイロゥ「唐竹割りだみゃー。」

その声からはやる気が感じられない。だが貫通させた腕を引き抜くと内部からメダフォースを直撃させた。

ミリオン「かは・・・。」

頭部と胸部を粉々にし、メダルが落ちる。そのメダルめがけてハイロゥが炎に包まれた拳を振り上げる。

ハイロゥ「フィニッシュだぎゃ。」

ハデス「やめろォーーーーーー!!!!!!!」

ハデスの叫びは轟音にかき消された。



ハイロゥがミリオンのメダルを破壊しようとした刹那、空から何者かがハイロゥを殴り飛ばす。

耳が痛くなるほどの支離滅裂な音をたてながら。

ハイロゥ「ほんげあ!」

ミリオンのメダルから数メートルの場所に落ちる。

白い仮面に黒いマント、黒い手袋、魔女のような黒い帽子、黒いデューン・スーツ。

仮面以外黒で塗りつぶしたような人影。

????「緑で飾ろうこの大地。大事に守ろう木々達を。直ちにやめようポイ捨てを。ダイオキシンを吹っ飛ばせ。

     論語読みの論語知らず・・横断歩道は手を上げよう。木の葉で優しく正義を助ける

     ミラクル戦士・・奇跡のファイター・・快盗ゴウカン、ただいま推参!」

ゴウカンはミリオンのメダルを拾うとハデスに投げる。束縛から解放されたハデスは難なく受け取る。

ゴウカン「今回は私の負けだな・・お前の勝ちだ・・ハデス。」

ハデス「まさか・・・そんな・・。」

ゴウカン、新品のスーツと愛用の拳銃「るりたでは」。

ミリオンの機体からあたかもそこにディスクが入っていたかのように取り出す。

ゴウカン「彼女は極秘機密のデータを持ってきた・・・いや、機密かどうかはわからないが・・

     少なくともすれに相応する物だろう。」

ディスクをマントの中に隠し拳銃をハイロゥに向ける。

ハデス「マスター、なぜ生きている?生きていたのは嬉しいが・・・納得できない。」

ゴウカン「たかがメダフォースを直撃しただけでは私は死なない。」

その言葉にハデスは、いや、ハイロゥ、デウスも含めそこにいる全ての者は戦慄した。

一部の者でなければ使用できないメダフォース。それをたかがと呼ぶ。

確かにハデスを筆頭とするあのメダロット達はメダフォースを使いこなす。使えて当たり前。

彼らは恐らく全員がレアメダル。ずば抜けた戦闘能力が物を言う。

だがそれはメダロットと人間の違いの枠を超えていない。

メダロットはメダフォースに幾らか耐えられるだろう。・・・・人間は別だ。

強力な衝撃に外部は耐えられても内部は破壊しかねない。人間はメダロットと比べれば・・ひ弱だからだ。

しかしこのゴウカンという人間を殺すには、メダフォースでは絶対に不可能ということか?

ゴウカン「ここは私に任せてもらおう。ハイロゥ、私が相手だ。」

ハイロゥ「人間?・・・違うみゃ。メダロットでも無い・・。」

ハイロゥの姿が消え背後からゴウカンを襲う。

ゴウカン「ケツからしか敵を攻撃できないのかな?」

侮蔑以外なにもないセリフをぼやくと攻撃を鮮やかに避ける。

ハイロゥ「おみゃーも奇襲か防御だけだろみゃ!」

鋭い角度で連続で蹴りを加える。だがそれも全て空を切る。

ゴウカン「回避も攻撃もできるさ。」

ハイロゥの最後の蹴りと同時に銃声が走る。

ハイロゥは紙一重で銃弾をかわした。

デウス「反撃もできるか・・ロボ。」

ゴウカン「それだけじゃないさ・・・今から強力な攻撃を『3秒後』に『正面から』お見舞いしよう。」

デウス「は?」

ゴウカン「1・・・2・・・・」

ゴウカンはゆっくり銃口を向ける。不思議とハイロゥは構えたままだ。

ハデス「・・・・。」

ゴウカン「3。」

パァァァァァアン

キュポン

銃口から淡いピンク色のコスモスが顔を覗かせる。

ハデス「・・・・・。」

ゲンブ「・・・・・。」

レプラス「・・・・・。」

ハイロゥ「・・・・・。」

デウス「・・・・・。」

ゴウカン「・・・・・?」

デウス「ごたくはそれだけか?」

ゴウカン「まさか。」

ハイロゥ「付き合いきれんみゃ!!」

一瞬でゴウカンの真正面に近づき腹に強烈な蹴りを浴びせる。

だがゴウカンの姿が消えハイロゥの頭の上にさっきのコスモスがそっと添えられる。

コスモスとハイロゥが触れた瞬間コスモスは大爆発を起こした。

ハイロゥ「けほ。」

ゴウカン「終わりかい?」

ハイロゥ「!?」

見れば攻撃が届く範囲にあの男がハイロゥを見下ろしている。

ハイロゥ「みゃー!!」

渾身の力を振り絞り拳を繰り出す。それを投げられたボールを受け止めるかのごとく片手で止めた。

数瞬ハイロゥは異常な寒気に襲われた。表現しきれない、凶悪な気の流れを自ら出した拳から伝わったのだ。

ゴウカン「フン・・。」

受け止めたままゴウカンはハイロゥを投げ飛ばす。簡単に受身を取れるはずのハイロゥはそのまま地面に落ちた。

ハイロゥ「ぐぐぐ・・・・。」

デウス「・・・・1回退くぞハイロゥ。」

ハイロゥ「みゃ!!?」

デウス「その男には常識が通じない。そして圧倒的な劣勢だロボ。

    今ここでお前を失うわけにいかないロボ。」

ハイロゥ「・・・・・・・・・・。」

デウス「退くぞ!ハイロゥ!」

ハイロゥ「みゃー!!!!!!!!」

ハイロゥとデウスが消える。最初からそこに何も無かったかのように。

ゴウカンは取り出した武器、火器を全て収納するとハデス、ミリオンに歩み寄った。
第97話 〜理想〜



ゴウカン「さて・・どこから聞こうか?」

基地の中の広い部屋。紫苑、レプラス、スザク、アレス、ヘルメス、ゲンブ、

ビャッコ、ディモ、パープ、ミリオン、ハデス、ストロ、アースーク、ラー、ゴウカン。

よりどりみどりのメンバーが揃っている。

アースーク「一番わからないのは今回のミリオンッス。」

ミリオン「最終兵器が完成した時、私はデータと共にハデス様と合流するつもりでした・・。」

ゴウカン「ハデスはそのことを知っていたのか?」

ハデスは静かに首を振る。

知っていればゴウカンが立ちふさがった時に彼を説得するのもたやすかっただろう。

ラー「一人の計画・・・か。」

ミリオン「私が捕らえられた当時、最終兵器のデータはバラバラながら存在しました。

     私はいっそのことその時抹消しようと思いましたが・・・力が及びませんでした。」

ビャッコ「・・・。」

ミリオン「ハデス様が望む未来の在り方もわかります。ですが私達が作った未来を維持するためには・・

     力が必要です。私達の命も永遠では無いのです・・・いずれ私達の意志を継ぐ者を見つけなければ。」

ヘルメス「守る力を育てる・・ということか?確かに作られた平和は簡単に崩れるだろう・・。

     意思が無ければ。」

ハデス「アルデバランの言っていた時代か・・。」

アルデバランという言葉に紫苑達が振り返る。その反応を見たハデスはわずかに顔をしかめた。

ゴウカン「一里ある・・・そういうことでいいか?」

ミリオンはうなずく。ハデスは目を閉じ、ストロとアースークは天井を見上げる。

アレスとヘルメスは互いに振り返りすぐに視線を外す。

ディモとビャッコは腕組みをしている。ラーは手を広げたり握ったり。

スザクはミリオンを見ていた。ゲンブは自分の右手を見つめている。

紫苑とレプラスは固い瞳で時が流れるのを待っていた。

ストロ「同じ森に住んでいたけれど・・考え方はだいぶ違うみたいださね。

    今回の戦いもその延長戦・・かね?」

ハデス「フォストの考え、ミリオンの考え、シルバ達の考え、リウスの考え・・。」

ミリオン「この考え方は私だけではありません・・少なくともあと一人・・イヨキッスも

     この考え方の一人です。」

アレス「イヨキッス?あのミカンか?」

ミリオン「ご存知ですか?」

レプラス「僕達に戦いを挑んできたんだ。ジコクテンという幹部も一緒にね。」

ミリオン「そう・・ですか。」



メダロッチから電子音が流れる。

ゴウカン「ディスクの解析が終了したようだ。データを今から全員に転送する。」

ハデス「貴重な情報を民間人に流すというのか?」

ゴウカン「民間人?彼らが民間人というのかね?」

ゴウカンは紫苑達を見回す。

ゴウカン「彼ら、彼女らは少なくとも我々に関わっていたり、ロボロボ団と因縁を持っている。

     そして戦力にはこれ以上のものは期待できないのではないのか?」

ヘルメス「オシロイはどうするのだ?彼もロボロボ団に会社を襲われている。

     そして・・それがし達の立派なクラスメートだ。」

ハデス「加えたいところだが、まだアイツはメダフォースを発動していない。

    メダフォースが使えない奴を戦わせることはできない。」

ゴウカン「送ることは送ろう。来るか来ないかは・・・本人次第だ。」



スザク「本拠地は遺跡の最深部か・・・で?いつ攻めるんだ?」

ハデス「そんなに時間は残されていないだろう。整備、部品調達・・全て含めて・・・・

    1週間後が妥当か?」

ラー「そのぐらいだろう。」

ミリオン「・・・・。」
第98話 〜命運〜



ネム「あー夏だってんのになんで気温低いかなァー。」

ティンタウン南区にあるジャンクショップクリーチャー。

カロン「いつも晴れてるとは限らないのでは?

    時には曇りで気温が上がらない日だってあるでしょ?」

その店員(といっても二人で営業しているのだが)

ネムとカロンは注文されたパーツ修理に取り組んでいた。

今はその注文の仕上げに入っている。

ネム「えーとここはこうでこの回路はあーで、ん〜カロン、ドライバ!」

カロン「はい。」

持ち歩いているかごの中からプラスドライバを取り出し渡す。

ドライバー2刀流であらゆる欠陥部分を取り除く。

修理できそうな物や取り替えた方が早い物まで、心臓部分以外は全て。全く異常の無いものは残す。

ネム「んっとこりゃぁ・・。」

バシッと取り出したコードの束を持ち上げしげしげと見つめる。

カロン「デバイス・・・ですね。」

ネム「おう。・・・・ダメだな。使い物にならねぇ。」

カロン「ですね・・倉庫に在庫があったはずですが?」

ネム「おう、頼むわ。あとそのデバイスいれたら終わりかな。」

それが聞こえたか聞こえなかったかカロンは店の奥に消えていた。

ネムは一仕事終えて冷蔵庫から何か飲み物でも出そうと思った。

ふと彼の目線が店の入り口に向けられる。子供の背丈よりも多少低い人影がある。

ネム「いらっしゃい、アンタ一人か?」

メダロットと予想したネムが声をかける。人影は肯定のサイン。

ここからでは陽光が反射してボディのラインは見えても顔の細かい形は見えない。

立ち上がり店の入り口まで歩み寄る。そこでネムは来客に少し驚いた。

その来客は全身草のような緑色と、赤い双眸。ツルのような刀を携えていた。

ネムが予想した通りその来客はメダロットだった。だが通常のメダロットとは違っている。

ネム「ここに来たのは初めてだね。」

来客「ああ。パーツの修理を頼みたい。」

ネムはしゃがみ相手と同じ目の高さで話す。

ネム「今つけてるパーツかい?」

来客「ああ。」

そう言うと来客は自らのパーツを取り外した。外したパーツをネムに渡す。

来客「どれくらいかかりそうだ?」

ネム「2日・・・かなァ?」

来客「その程度でいいのか?」

ネム「そんなに早くできるなんざオレぐらいなもんさ。」

来客「なら2日後また来る・・。」

ネム「りょーかいりょーかい、あ、ティンペットでいいのか?パーツのレンタルやってるぜ?」

来客「修理以外の金は・・・・無い。」

ネム「壊さなきゃ金はいらねぇよ。壊したって返してくれりゃ何十円の世界さ。

   収入の数パーセントはこれで埋めてるもんでね。」

来客「・・・なら幾らか。」

ネム「あいよ。」



カロン「マスター。デバイスです。」

ネム「お、サンキュ。カロン、仕事追加だよー♪」

カロン「追加・・・このパーツは・・・。」

カロンがさきほどの来客のパーツを見る。

カロン「・・・・・これは・・!!」

ネム「そう、フォストさ。どうやらあちらも攻める準備をしてるらしいな。

   調整、点検、整備、頼んできたからね。さぁどれくらいぼれるかな。」

カロン「・・・・ぼれる?」

ネム「通常価格は何百円とかそんなもんだけど面倒な部分とかあるからなぁーお前らのパーツって。

   あちらさんの持ってる金がどのくらいあるかね。」

カロン「・・・・。」

ネム「冗談だよ冗談。さぁーって仕事に入りますかァ!?」

カロン「・・・・はい。」
第99話 〜蜃気楼〜



アルデ「時は近い・・・。」

ティンタウンにあるビルの屋上から遺跡を眺めている。

アルデ「プレアデス・・・もう少しで・・お前の無念を晴らせる・・。

    それまで・・・待っていろ!!」



残骸がちりばめられた砂浜。

パープがミリオンの時間稼ぎのためロボロボ軍団と戦った場所。

そこにメカドラグーンが立っていた。

悲しみを浮かべた瞳である残骸を拾った。

メカ「ノーン・・・・ダークン、ハーン、サッド・・・・。」

残骸を抱きしめ嗚咽した。

その残骸はダークンのパーツの一部ほかならなかった。



数歩先には断崖の絶壁がある。

前は見渡す限りの大海原が広がっている。

大剣を背負いマントをつけたメダロットは大海原を凝視した。

???「オレも一緒に行くぜレプラス・・・また会う時まで・・死ぬなよ。」

メダロットはマントを捨てる。マントは風に流れて遠い世界へ消えてしまった。



製品名「ハニーフォース」。天道虫をモチーフとし、赤が目立つメダロット。

男性にも人気のそのパーツをつけたメダロットは静かに人気の無い道を通った。

メダロット「今が乱世の花が咲き乱れている時期ならば・・・私はその花を刈る。

      だが平和の種子があるとは限らない・・・未来は・・・どこから来るか。」

メダロットは歩きながらつぶやいた。

メダロット「葡萄の美酒夜光の杯、飲まんと欲して琵琶馬上に催す

      酔いて沙場に臥す君笑うこと莫かれ 古来征戦幾人か回える・・

      あの少年少女たちが・・・古来征戦の戦人か・・・。それとも私達が戦人か?」



バニジンガルムはロボロボ団の基地の食堂でオイルを飲んでいた。

胸の奥でチリチリする何かに不安を抱いている。

あのオシロイカンパニー襲撃から抱く何か。

ミリオンの脱走には驚いていた。だがミリオンはあくまでハデスやフォスト派だったのを忘れていた。

彼女は自ら進んでここに来たのでは無かった。

それを言えば自分も全てが自ら進んだとは言えない。

その葛藤か、このチリチリはその葛藤が増幅した物か、思ったがすぐに否定した。

森での生活で一度も体験しなかった思いか?

バニジン「イクシオン様・・。」

意識も無く名前を呼ぶ。バニジンはオイルを一気に飲み干した。



ハデスは悪夢を見た。

自分とリウスとカディアと・・戦い続けてたその時正面から衝撃波が怒涛のように飛んできた。

ハデスとリウスはとっさにカディアをかばった。

だがハデスとリウスは体をズタズタに引きちぎられた。第2波がカディアを襲う。

リウスは叫んだ。ハデスもカディアを助けようと踏み込んだ。

しかしハデスは動けなかった・・もう体が動かなかった。

自分の体が悲鳴をあげているのも構わずリウスはカディアをかばう。

そのリウスの前にカディアが出て衝撃波を受けてバラバラに散った。

リウスは絶叫した。自己修復で幾らか動けるようになったハデスはとっさにカディアを受け止める。

しかし・・・受け止めたのはカディアのパーツだけだった。

メダルは・・・・砂になって戦場に積もっていた。

ハデスはリウスに向かって何かを叫ぶ。その言葉にリウスは何かをどなる。

ハデスはリウスの背中をむしりとってメダルを取り出した。

直後リウスのパーツに巨大な剣が刺さる。そして再度飛来した衝撃波を受けリウスの体は偶然そこにあった岩に叩きつけられた。

リウスのメダルを脇にあるスロットに隠すとハデスは前に立ちはだかる敵をにらみつけた。

その敵は・・・シルバだった。後ろの方にバニジンガルム・・そして奥には・・

ゴッドエンペラー200体だった。



ハデス「くは!!」

ハデスは飛び起きた。

悪夢のせいか・・・ひどく疲労していた。

ハデス「なんだというのだ・・・・くそ!!」



イヨキッス「・・・・・・・ジコクテン様。」

ジコクテン「・・・・どうしたの?イヨキッス。」

イヨキッス「貴方は・・これでよかったのですか?私は・・・。」

ジコクテン「そのことはもう話し合ったでしょ?

      私には・・もう母さんはいない。父さんを探す義務があるったって・・言っても

      あったはずだった・・でもね。もういないんじゃないかって・・思った。

      最初からいないのか・・さえ思った。」

イヨキッス「そんな!?ならなぜここに・・・ここに生まれたのです?」

ジコクテン「たぶん私って・・父さんに捨てられたか・・捨てたのかどっちかと思う。

      赤ん坊の時の記憶なんて残ってないけど・・・時々夢を見る。

      誰かがケンカしてるの。たぶん母さんと父さん。何を言ってるのかはわからない。

      父さんはその後大きな荷物を持って家を飛び出した。

      母さんは私を抱いて泣き崩れた。私は意味がわからない・・夢はいつもそこで終わる。」

イヨキッス「父さんは長い旅に出た・・・そう母さんから聞きました。」

ジコクテン「父さんはどこに行ったのかな・・・それすらわからないんだもん。

      母さんは・・・重い病気で私を置いて遠い空に行っちゃった・・。」

イヨキッス「マスター・・・。」

ジコクテン「ディ・・イヨキッスの手伝いができるなら・・私はそれで幸せなの。

      私達・・・何か・・メダロットとメダロッターていう感じしないね。」

イヨキッス「・・・・ありがとうございます・・マスター。」

ジコクテン「もうこんな話はやめよ?スザク君達が来たとき・・やるんでしょ?」

イヨキッス「ええ。・・・・ですね。気合いれましょう。」

ジコクテン「じゃ、行くロボ!」

イヨキッス「御意。」


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