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第15章 戦場に咲く花々

第100話 〜不可思議〜

来客「パーツはできあがっているか?」

陽はどっぷりと沈み幾多の冒険者が夢の世界を徘徊している時刻。

ハニーフォースのパーツをつけたメダロットをジャンク屋のオーナーは一瞥。

熱いコーヒーで暖をとっていたオーナーはネムその人。

ネム「おう。注文どおりやっといたぜ?」

客はハニーフォースを外し元の濃い緑色のパーツをつける。

来客「・・・・・数百年前、私がこの世界に目覚めた時と同じ感覚だ。」

ネム「ん?なんか言ったか?」

来客「・・・・いや。代金はいくらだ?」

ネム「こっちが聞きたいね。いくら持ってるんだ?」

客はどこからかお金を取り出し近くの机の上に広げた。

紙幣は無い。かわりに大きい硬貨が3、4枚。

来客「全部だ。」

ネム「ふうん。」

良いとも悪いともいえない返事。その声に客は目を細める。

来客「足りないのか・・?」

ネム「んー・・・高すぎってところ。金はいいや。」

机の上に広げた硬貨を全部返す。

来客「?・・・・いいのか?」

ネム「2言は無いさ。ま、そのかわりっちゃなんだけど・・・」

ネムは棚の中からパーツを取り出す。

紫色で、手の甲の部分に大きな水晶玉がはめ込まれている右腕パーツ。

来客「それが?」

ネム「ある人物に渡して欲しいんでね。もちろん匿名がいいな。」

来客「・・・・・引き受けられない。」

ネム「なんでよ?チミ、遺跡行くんだろ?緑龍さんよ。」

来客「緑龍・・・・なぜそれを?」

ネム「ん?当たり?適当に言ったんだが。ここらに出回ってる未確認メダってなんとか龍が多いからさ。

   緑色だから緑でそのまま言ってみたんだけどね。案外そのままなんだねー。」

来客「・・・・・遺跡というのは?」

ネム「どっからか情報流れてきてさ。西区の遺跡に今回の乱世の終結点があるんだってさ。

   そこに乗り込む奴らが増えてるらしい。ま、信用しがたい情報ではありますが?」

来客「・・・前言撤回する。ある人物というのは誰だ?」

ネム「お。あー人物ね。人っつーかメダロットなんだが・・・・・そのメダってのは・・」



どのくらい時が流れたか。ここはどこか。まわりがぼうっと薄暗い。

「ここは・・・・・どこだ・・・・。」

私は死んだはずだ・・・なぜ生きている?貴方が・・・助けてくれたのか・・・?

静かな時間が森を包む・・・



来客「そのアルデバランというメダロットに渡せば良いのだな?」

ネム「そそ。まかせていいか?」

来客「引き受けた。任せてもらう・・・・では。」

ネム「んじゃな。」

ネムは笑顔で客の後姿を拝んだ。その笑顔の裏にどんな感情が眠っているかはわからない。

ネム「ふう・・・オレも一仕事すっかね。」

静寂な闇を切り裂くか勢いでシャッターを閉める。あきらかに近所迷惑だが本人は平然としていた。

だがうるさい音はそれっきりだった。


第101話 〜砕〜



固い機械仕掛けの通路を急いで走るスザクとアレス。

ある部屋の前で急停止してその部屋に飛び込んだ。

スザク「わりィ!遅れた!」

中にいた人達の中の一人、ハデスはするどく見た。

ラー「揃ったか?」

スザクは苦笑し中にいるメンバーを順々に見渡す。

そこにはミリオンが基地にきて、話を聞いたときと同じメンバーがいた。

そしてここは司令室。正面のモニターには何かの施設の見取り図。

ゴウカン「データの解析状、ロボロボ団基地への入り口は最高でも2箇所。

     一つは遺跡。もう一つは海から。我々はここから攻めるしか無い。」

スザク「ビャッコ。海からって・・・・」

ビャッコ「んー・・少しおぼろげでやすが、記憶があるでやす。」

スザク「オレもだ。・・・近くに行ったら思い出すかもな?」

ゲンブ「あぁ・・ポセイドンパークの件でしょうね。」

ハデス「ポセイドンパークの遊泳上から少し離れた所に入り口がある。

    地図でも確認したが・・そこはちょうど遺跡の地下に値する場所だ。」

ゴウカン「紫苑君、スザク君、ビャッコ君、ストロ君は海から、

     パープ、ゲンブ君、ラー、ミリオン、アースークは遺跡から行くことは既に話した通りだ。」

ストロ「子供の子守とは・・・さね。」

ストロがため息混じりにつぶやく。

ヘルメス「・・・代わってもよいのだが・・」

するとストロは飽きれた。

ストロ「いいさね。楽してたら生きられんさ。・・まぁメダロットはかなり信頼できるけどね。」

ビャッコ「あっしらは信頼されてないんでやすか?」

ストロ「まさか。メダロッターあってのメダロット。そのくらいわかってるさ。

    (けっこうおもしろい奴だしねぇ・・ディモって奴は。)」

その様子を見ていたゴウカンは小さく咳払いをする。

ゴウカン「・・・・そして海ルートにネムが同行することが急遽決まった。」

ゲンブ「ネムさんが!?」

紫苑、レプラス、ゲンブ、ヘルメスは驚きをあらわにする。

ハデスは自分のマスターを横目で見ていた。

ゴウカン「彼はこの基地に精通している。そしてカロンも・・・かなり強い。」

紫苑「ネムさんが・・。」

パープ「あ、そうだ。オシロイってのは結局来るの?」

ゲンブ「彼は今ある新型メダロットの開発で手が離せないようです。

    それが終了次第、基地に向かうとのことですが・・・・。」

ハデス「期待できないな。」

ゲンブ「え、ええ。」

ゴウカン「では栄光を祈る。」



海は相変わらず青い。

魚達は優雅に泳ぎ、海水は空からの日光で淡く輝く。

その傍ら、魚達とは違う泳ぎをする物があった。

スザク「思い出してきたぜ!こっちだ!」

スザク、ビャッコはカプセルを強引とも呼べる運転で先を急ぐ。

ストロと紫苑、ネムははぐれないようにしながらついていく。

そして洞窟に入り扉を開けた。

レプラス「ッ!」



ミリオン「さすがに外の警備は薄いですね・・ここを観光に来る人も少ないですが。」

アースーク「厚すぎると町から見た時怪しいッスからね・・このぐらいがちょうどいい?」

遺跡チームは岩の陰から監視のゴーフバレットの様子を覗いている。

ラー「だがいつまでもこうしてはいられない。」

ミリオン「ですね。・・・いきましょう。」



岩をどけて入り口にたどり着く。

その先にあるのは・・・無限の闇。

ゲンブ「暗いですね。底なしの落とし穴がある・・・と聞きましたが?」

ミリオン「その穴は実は基地への入り口なんです。高さがあるため落ちたら人間は耐え切れないのですが。」

ゲンブ「僕に耐え切れない高さなんてありませんよ。」

ゲンブは地面に落ちていた棒切れを拾い上げると先攻する。無限の闇へ。

ヘルメス「マスター!?」

ヘルメスが走り出した直後ゲンブが穴に落ちる。

パープ「すげぇ・・・おっと遅れる。」

棒切れと三角蹴りをうまく使いながら落下速度を調整するゲンブ。

ゲンブ「光が見えてきましたね・・・出口でしょうか?」

ゲンブは落下速度を急激に殺し着地する。前方は一本道、後方は3本に別れた道。

残りのメダロット達も合流した。

ラー「まさかこの高さを難なく乗り越えるとは・・・。」

今落ちてきた場所を見上げる。

ミリオン「ここは・・・4番通路のちょうど真ん中あたりですね。

     この1本道を行けばC区画に着き、そこからエレベーターでH、J、帝のいる区画に行けます。」

パープ「3本道は?」

ミリオン「3本道はそれぞれD、B、E区画に行きます。D、E区画は特に重要地点ではありません。

     そしてB区画は紫苑さん達が最初に基地に入る場所です。

     合流するにしては早すぎますね。B区画にもエレベーターがあります。」

ラー「研究施設はあちらに任せた方が良いな。私達はJ区画に降り牢を開放するぞ。」

ヘルメス「それがよさそうであるな・・・ん・・・。」

ゲンブ「さっそく来ましたね・・・。」



雑魚「侵入者ロボ!B区画、4番通路に侵入者ロボー!!!」
第102話 〜奮闘〜



紫苑達はB区画に押し寄せてきた敵を相手にしていた。

また1体のロボウェポンが壁にたたきつけられる。

アレス「くそ・・・キリが無いな。」

見る限り何体いるかわからないほどのゴーフバレット、ロボウェポン。

紫苑「地上、頭上、2方向から攻撃が来る・・・!レプラス、左!」

レプラス「ッ!くそ、クリアエッジ!」

飛んできたミサイルを貫通し、青い閃光が敵を切り裂く。

カロン「はァ!!」

カロンの包丁がロボウェポンを一閃する。

ネム「敵はそんなに大したこと無いんだけどねぇ・・消耗戦はキツいか。」

スザク「しゃぁねぇな。ここはオレが引き受ける。お前らは先に進め!」

ストロ「この数を一人でやるつもりさね!?」

アレス「だと言ったら?」

やる気に満ちたスザクの目をネムは嘲笑った。

ネム「無理だね。」

スザク「はっきり言ってくれるじゃないか?」

ネム「君の実力は大したものさ。こんな序盤で抜けられては、後が苦戦になりかねない、

   っていう意味さ。ビャッコ君・・残るのなら君がいい。」

ディモ「我輩はそんなに大したこと無いということか?」

ネム「違うっての。ゲンブ君に聞いたけど、君の前の機体、ランドローターだね?」

ビャッコ「そうでやすが・・・・あ。ディモ!パーツ交換でやす!!」

光と共にディモのパーツがランドローターに変わる。

ネム「気付いただろ?ここはスザク君より君の方が適任だぜ?」

ビャッコ「そういうわけでやす。スザク。」

自信に満ちた声にスザクも苦笑する。

スザク「おう。いっちょやってくれ。・・・・で、どう進むか・・・・か。」

ストロ「・・・・。」

隙を見て突撃してきたロボウェポンを逆にキセルで頭を叩き潰す。

ストロ「・・・私が道を作る。そこから先に進むさね。」

レプラス「あいよ!」

ストロ「いくさね・・・・オールデストロイ!!」

メダフォースで敵集団のド真ん中に穴を開ける。

紫苑「今!」

その穴を紫苑達は突き進んだ。

ディモ「この機体の100パーセントのパワー、今こそチャレンジ!!

    ハンドルゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーハンドォォォォォオ!!!!!!」



ネム「エレベーターはこっちかな?」

通路を走るネム達。そのまえにまたも敵が現れる。

レプラス「しつこいっての!クリアエッジ!」

青い牙の前にロボウェポンが機能を停止、攻撃後の一瞬の隙を狙い別の敵が接近!

ロボウェポン「ギグー!」

レプラス「うわ!」

アレス「だァ!!」

レプラスに向けられた腕を真横から蹴り、そのまま壁に吹っ飛ばす。

レプラス「サンキュ!」

アレス「これぐらいどうってことないだろう?」

ネム「どうでもいいけど走りながら喋るのは疲れない?」

再び前方にゴーフバレットが3機はびこる。

スザク「しつけぇんだよ!アレスゥゥゥゥゥ!」

アレス「バリアブルムラマサ模倣奥義・・・・滅閃ッ!」

ブレードハンターで勢いよく床を斬り風圧と摩擦で炎の刃を作り出し敵にぶつける!

ネム「負けられねぇなぁ。カロン!ランチランチャー!」

カロン「ランチランチヤです!!」

敵を倒しある程度進むとエレベーターが見えてきた。

紫苑達は急いで乗り込んだ。ネムとカロンを除いて。

ネム「・・・・わるいな。後でいくわ。」

紫苑「そんな・・・どうしてですか?」

エレベーターの扉が静かに閉まる。

エレベーターはそのまま下に降りていった。降りていく音だけが寂しく部屋を包む。

ネム「・・・・・お客がいるからさ。」

つぶやく。

振り返るとさっきまで何も無かったところに2体のメダロットが立っていた。

カロンは目を閉じ、体勢を整える。

ネム「虹と雷・・・ま、余裕か。」

ダスト「余裕?言ってくれるNE〜。」

バニジン「僕達・・・龍神メダロットを2体で戦い、勝ち目があると思っているのですか?」

カロン「・・・・・。」

ネム「勝ち目?1の位を四捨五入しちまえば100パーセントだぜ?」

バニジン「95パーセントかそこらということ?」

ネム「いんや104パーセント♪」

バニジン「・・・。」

カロン「・・・お調子者が。」

ネム「カーロン♪口調戻ってるぜおい。」

カロン「どっちでもいい・・・・・とにかく・・・・・勝負ッ!!」
第103話 〜胡蝶花(しゃが)〜



ゲンブは瞳を閉じながら押し寄せる気配を感じていた。

前にある枝分かれした道の全てから敵が押し寄せてくる。

ラー「弾は奴らのために残しておきたいが・・・。」

ヘルメス「・・・先に行ってくれまいか?」

前に出ようとしたラーをヘルメスが軽く制する。

ゲンブはなおも瞳を閉じたままメダロッチに指示を一言、パーツ交換。

水色と濃い青のクールなイメージが漂う機体へ・・

製品名「メダプルート」機能的にはゲンブとヘルメスが以前使っていた

ウォーバニットと大差ない女型のパーツだ。

彼らにこの機体を使うために必要な事は前の勘を取り戻すという容易なことだけ。

ミリオン「その機体で戦うのですか!?」

ゲンブ「それ以外に何を申すと?」

見開いた目で静かにメダロッチを構える。その動きにあわせてヘルメスも両腕の充填を開始。

ヘルメス「それがしにはかわりのパーツがある。しかし、そなた達には無い。」

パープ「にしたってさぁ・・」

パープは困ったようにミリオンを見る。

ミリオン「彼を信じましょう。」

そう言うなりミリオンは先を急いだ。パープもアースークもあわててそれに続く。

ラーは一言ささやいてから去っていった。

『死ぬな』

ヘルメス「・・・・死にはしない。この程度ではな。」

敵が到着する。ゴーフバレット、ロボウェポン、サボテンナ数十機、数機のブラックロイド。

見ているだけで不快感を誘う数の前に涼しげな顔をしている二人。

ゲンブ「・・・楽しめますか?」

ヘルメス「わからぬな。肩慣らしになるかどうかもわからぬ。では・・・参る!」



遺跡にある大きな岩に一人のメダロットが降り立つ。

そのメダロットは無言で近くの岩にビームを放ち蒸発させた。

そこからワラワラと飛び立つ黒いものがある。ゴーフバレット。

アルデ「・・・・ここか。」

アルデバランはその手に自慢の鎌を引き抜きながら今出てきたばかりの敵になげつけた。

コウモリ達が脚部と胴体を切り裂かれ何もできずに墜落していく。

墜落していく物体に真上から右手の銛をぶち込んだ。

あらかた敵を仕留めると今度は遺跡全体にビームを連射。だが出力はある程度抑えている。

紫苑達と出会ったコンビニの近くでの戦いでの強力な出力ではない。

遺跡に散らばる岩やトロッコの残骸がビームによって削られ蒸発、破壊する。

場所によっては大きく崩れ落ちた場所もある。

同じ事を2,3回繰り返す。しかしゴーフバレットは最初の1回きりだった。

アルデ「・・・・なるほど。」

紫のクワガタは大空に飛翔したかと思うと空の一点で静止した。

静止した一点から地上に向かって標準をセット。今連射していたビームよりもはるかに強力なエネルギー。

アルデバランの背中の砲口が赤く輝く。大きなプラズマも生じ、レプラスのプラズマシュート並の玉が出来上がる。

アルデ「トリプルエクスカリバー・・・シュート!!」

アルデバランから放たれた大奔流の光線が地上の一点を焼き尽くし、地下奥深くまで貫通した。

アルデは背中のビームを元の位置に戻すと躊躇なくその穴に飛び込んだ。



ヘルメス達と別れたミリオン達は通路を走りぬけた。

先頭を走るパープが前に2つの影を認めて止まる。エレベーターへの扉を塞ぐその者は・・

ミリオン「・・・・奇遇ですね。」

シルバ「そっちがね。」

冷血な視線には何が映っているのか。その名にふさわしい白銀の髪と機体を持つ、白銀龍型シルバレイド。

共にいるのはデスカービン。いつ見てもボロボロだ。

アースーク「ここはアッシがお相手するッスよ・・・死龍。」

パープ「じゃぁ僕は白銀龍・・・君だね。」

シルバ「アンタに私の相手は務まらないよ。ミリオン、アンタが来なよ。」

パープ「挑まれて逃げるのかな?」

シルバ「なんだって?」

パープ「相手が務まらないっていうんだったら瞬殺してみてよ。

    あの時のように!!」

シルバ「坊やが!なめるんじゃないよ!!」

アースーク「ヴァーミリオンス、ラーゴールデン、先に行くッス!!ここはアッシらが。」

2人は頷き返し、エレベーターに飛び乗った。

アースーク「さぁ!!森での決着、つけさせてもらうッスよ!!」
第104話 〜激震〜



ディモ「弱い!!」

ゴーフバレットの大群を前にディモとビャッコは確実に敵の数を減らしていた。

大群が敵1体に対し無数のミサイルを放つ。ディモはそれを1発で無力化する。

ビャッコ「1発当てれば後は全部誘爆するでやす!」

ディモ「そしてエネミーは全てウィング!このハンドルハンドでェ!!」

ハンドルハンド、それは飛行する敵に対し強力な効果を発揮する対空砲。

少しの衝撃が命取りの飛行に対しこの対空、アンチエア攻撃は防ぐ方法が無い。

陸の敵に対し手も足も出なかったランドローターだが、相手を変えれば右に出るものはいない

優秀な機体へと早変わりする。

ビャッコ「一気に片付けるでやす!!」

ディモ「おおぉぉぉぉぉおおおお!!!!!」

ディモのまわりに残骸が降り積もる。

遠くから聞こえる密かな笑い、ディモを嘲笑っているかのようだった。

やがてその笑い声の主が現れる。3機の新手を従えて。

バベル「たしかに飛行にはアンチエアが基本だロボ。しかし!!我らは多脚、

    お前には万に1つも勝ち目は無いロボ!!」

ディモ「陸ならの話だ。」

サイズカッター「チキ?」

ビャッコ「ゴー!!」



ヘルメス「次々とくだらないぞ・・まだまだできるだろぅ!!?」

ゲンブ「右46度、82度、後方8度!」

指示された方向から飛来したミサイルをバックステップでかわし体勢を整えながら左腕で射撃。

両側からの奇襲も一息に回避し、次の攻撃に備える。

ゲンブ「前方34度から熱源!」

ヘルメス「了解、反撃する。」

今度のミサイルは撃ち落とし、次のミサイルは回避、真横からのビームは避けながら反撃、

どんな数をもってしてもヘルメスに攻撃を当てられる者はいなかった。

数十機の敵が黒い残骸へその姿を変えていく。

ゲンブ「全方位24度から82度の範囲で20発のミサイル確認。」

ヘルメス「右腕は放熱中、左腕1発で回避できるポイントをシミュレート、解析終了。ここだ!」

1発のミサイルの爆風で残り19発のミサイルが全て誘爆する。

誘爆の煙に紛れてヘルメスは跳躍、煙が晴れる前に残りの敵を殲滅した。

ヘルメス「これで全部か?マスター。」

ゲンブ「いえ、まだ強力な物が残っていました。来客です。」

こちらも3体のメダロットが近づいてくるのが見える。ロボロボ団幹部アキレウス。

ヘルメス「オシロイから聞いたデアタウロス使いの幹部か・・おもしろい。」

アキレウス「コホ・・おもしろい?今回はデアタウロスだけではない・・3対1でどれだけ楽しめるか・・ロボ。」

ヘルメス「タウルス2機。戦ったこと無い機体だが?」

ゲンブ「データベースには引っかかりました。ブースター装備型です。」

ヘルメス「ブースターに良い記憶は無い。早急にお引取り願おう・・・・さぁ、来られよ!」



アマクサ「こんな研究施設の防衛とはな・・ロボ。バカめが。」

研究施設を一人で守るアマクサは一人ごちた。

ガラパゴッシュ「ゴシュ?」

アマクサ「ほかの区画では侵入者との戦闘が始まったらしいロボ。B区画まで行けば援護も可能ロボ。

     ・・・いくかロボ?」

ガラパゴッシュは静かに首を振った。

アマクサ「そうか・・・そうだなロボ。ん!?」

急な地響きに真上から強烈な殺気。そして轟音ともいえる破壊音。

天井から巨大なビームが降り注ぐ。研究施設はその攻撃により跡形も無く破壊した。

燃える施設とやがて晴れていく視界の中でアマクサは一人の敵を見た。

ガラパゴッシュはすぐに戦闘体勢に入り有無言わずにミサイルを敵へ数発撃ち込んだ。

ミサイルは被弾したようだが、決定的なダメージにはなっていないようだった。

アルデ「・・・・お前か。」

アマクサ「アルデバラン!?貴様いつのまに戻ってきたロボ!!?」

アルデ「いつかは知らない。最初の敵が『森での戦いの時のマスターだった』お前とは、

    なんともおもしろい展開だ。」

アマクサ「たしかにおもしろいロボ。しかし、返り討ちロボ!!!」

ガラパゴッシュとアルデバランは同時に跳躍した。



ヘルメス「ブースターに良い記憶は無い。・・・・・だが。」

ヘルメスは一瞬で敵の背後をとりハンドルキーを連射、タウルスを1機たやすく葬る。

ゲンブ「ヘルメス、1発多いですよ!!」

ヘルメス「すまぬ。」

敵を瞬時に倒したことに褒めず、連射の際に1発多く撃ってしまったことを叱責する。

彼らにとって1機瞬殺は気にとめない事なのか。

デアタウロス「ブモー!!」

角を大きく振り上げ突進する。ヘルメスは神秘的な機体をなびかせながら鮮やかにかわす。

繰り返されるスキのない連続攻撃もギリギリで避け続け放熱が完了したと同時に銃声。

蝶の様に舞い、蜂の様に刺すという言葉があるがそれは彼らにこそふさわしい言葉ではないか。

現在ヘルメスが装備しているパーツ、メダプルートの頭部のハーディには

耳にあたる部分が2本の円柱になっている。その円柱の上の部分から空気を取り込むことで

ウォーバニット同様充填、放熱に悩まされることもない。

以前女型を購入する際にゲンブが着目したのは外見、能力両面での女性型、

簡単に言えば少女や乙女の域に達するパーツのマーメイド型と

ウォーバニットの予備と考える性能的にはほぼ同等のメダプルート2種を買うことだった。

タイプを変え、自分の得意な戦闘スタイルに加え独自のスタイルを開拓、

敵に合わせてどれだけ戦い方を変えられるか、有利に立てるか、それを考えていた。

購入する際、後継機のライオンハートの存在を知らない。だが存在を知っていても

彼、ゲンブはメダプルートも買っていただろう。

ヘルメス「装甲、移動性、出力バランスなどはウォーバニットよりは劣る。

     が、攻撃時の安定性は高く、1発の攻撃力は遥かにライフルを凌ぐ。」

タウルスの拳をわずかにしゃがんだだけの無駄の無い動作で避けそのままの体勢のまま肘で顔面を潰す。

そのまま足払いで転倒させ背後にまわり右腕3発。

タウルス「!グォォォォオオ!!」

攻撃を受けつつ反撃を仕掛ける。攻撃はヘルメスの右肘にかすった。

アキレウス「かかったロボ。」

ゲンブ「!?まさかウィルスですか!?」

ヘルメス「くっ!」

かすった部分からじわじわとパーツが変色している。タウルスの拳に内蔵されたウィルスはかすりさえすれば

やがて敵の全パーツにまで浸透し、相手のレーダー、カメラアイなどの精度を低下させる。

ウィルスが差し込まれた場所が腕ならウィルスの発動時間にしばらく時間がかかるものの

徐々に精度が低下するのは否めない。ティンペットに組み込まれた抗体、免疫プログラムが

ウィルスを除去してくれれば良いのだがそれでも除去には時間がかかる。

ゲンブ「この戦い、そんな悠長なことやってられませんよ?D作戦いきます。」

ヘルメス「御意。」

デアタウロスが角を振り上げ突進してくる。

ヘルメス「まだはっきりと視認できる今の状態を維持する方法はただ一つ。D作戦実行。」

ゲンブ「自切!!」

ヘルメス「うぉぉぉおお!!!ムササビ疾風(むささびはやて)!!!!!」

骨に相当するティンペットもろとも切り離した右腕を左腕の攻撃と共にぶつける。

弾頭が右腕のロケット弾。

アキレウス「コホ、なんと!?」

デアタウロスはムササビ疾風をまともに受けメダルが宙を舞う。

感染した場所をまわりと一緒に切り離せば現状況を打破できる。

ジャガイモの芽を取り除く時と同じ作業。ただし、以後は片腕1本で戦うことになる。

アキレウス「しかたあるまい・・・変形ロボ!!」

タウルスがメダチェンジし、猛牛の姿になる。猛牛はそのまま突進した。

ヘルメス「まっすぐ突っ込むことしかできぬのか!?」

ゲンブ「作戦・・C!!」

突進してきた猛牛に飛び乗り左腕が輝くと同時に胴体に力の全てを叩き込む。

メダフォースを左腕1本に集めたメダフォースパンチ。猛牛の体が中心から真っ二つに割れた。

アキレウス「コホ、3体を一気に倒すとは・・・・ここは退くロボ。」

アキレウスが走り去るのを見送るとゲンブはヘルメスのパーツをウォーバニットに変えた。

ヘルメス「・・・楽しめぬな。」

ゲンブ「どれだけ離されたかわかりませんが・・・先を急ぎましょう。ヘルメス。」

ヘルメス「御意。」



ディモ「ムーブッ!」

俊敏な動きでサイズカッターの鎌を避けると懐にミサイルを撃ち込む。

防御もできずにまともに受けるがケロっとしていた。

バベル「ダメージは低いロボ!気にするなロボ!!」

前後からシックルカッターが迫る。かかとのタイヤをうまく使い横っ飛びで離れる。

ビャッコ「ジャンプは低くでやす!」

ディモ「ラジャー!受けろハンドルアーム!」

サイズカッター「キ!」

バベル「1発1発の威力は低いが・・受け続けるとさすがにやばいロボ。」

ビャッコはふと横を見る。

ビャッコ「水路があるでやすな・・。」

サイズカッター「チキー!」

サイズカッターがブースターを全開させディモの右腕を鎌で一閃。さらには突き刺し貫通する。

ディモ「ぬ!」

バベル「所詮お前一人じゃ無理ロボ!!」

ディモ「どうだかな・・・・むんッ!」

鎌を突き刺したままサイズカッターを水路に叩き落す。

バベル「残念ロボ!サイズカッターは変形すると潜水に・・」

ビャッコ「好都合でやす!!」

サイズカッターが落ちた水路に魚雷の雨を降らす。サイズカッターがうつぶせで浮かび上がる。

背後から迫ってきたシックルカッターもハンドルアームで殴りつけ

カメラアイを潰し割れた部分に銃口を押し込みトリガーを引いた。

ビャッコ「誰かの真似みたいなことを・・」

ディモ「悪いか?」

ビャッコ「上等!」

シックルカッター「シッ!」

シックルカッターが背中から青白い光を出し突進する。

ディモ「こいつもブースターか!?」

ビャッコ「あと1体だけど・・・つらいでやすな。」

攻撃を残りの左腕で受け止め蹴り飛ばす。受け止めたせいで残った攻撃パーツも半壊した。

バベル「フッフッフ・・・とどめロボ!」

シックルカッター「シッ!」

ディモは敵の攻撃を避け続けた。だが疲れが出ているらしく動きにキレが無くなりつつある。

ビャッコ「残る攻撃手段は・・・あれしかないでやす!」

ディモ「わかった・・・・TAKEOVER!!」

紅い数本の槍が敵を突き刺し装甲を吸収する。

バベル「うおぉぉぉおおお!!?ロボ!?ロボボ!!!!」



ディモ「ミッション・・・コンプリート。」
第105話 〜一閃〜



バニジン「はぁッ!!」

ダスト「TO!!」

カロン「・・・・。」

雷龍、虹龍の猛攻を全て避け続けるカロン。避けるだけで反撃しない。

青みがかった瞳を開けたまま、何も言わずにただ避ける。

バニジンの雷撃も、ダストの攻撃も全く当たらない。その手に武器も持たずに虚像のようにそこにいる。

まるで空気の風圧に身を任せるかのごとく、いくら敵が勢いよく腕を振るっても、

何をしようが全く命中しない。・・・・かすりさえしない。

並のメダロットなら既に10回は死んでいるのに関わらず2人はさらに攻撃速度を上げる。

もはや見るのもやっとの速度なのにカロンはまだ避ける。

そして信じられないのはカロンのマスター、ネムがメダロッチに指示をしていないという点だ。

メダロッチも構えずに、ただ一人天井に設置された監視カメラを順々に見渡す。

バニジン「くそ!いつまで・・遊んでる!?」

ダスト「くっSOぅぅぅぅぅぅぅううう!!!!!」

カロン「・・・。」

さらに攻撃速度が上昇。見るのもやっとの速度から見ることが不可能の領域へ。

まわりに観客がいたならば、空気を斬る音が、攻撃者の残像が見えているはずだ。

・・・・・だが当たらない。

カメラを見飽きたようにネムはやる気なさげにメダロッチを掲げ一言。

ネム「・・・・・MORALS。」

カロンの右手が一瞬左のカゴに入ったと思った直後物を切り裂いた音が響いた。

2対の龍の間から離れバニジンから5メートル後方にカロンがいた。

そして数秒後バニジンとダストの体から鮮血が飛び散った。

バニジン「そ・・・そんな・・。」

ダスト「いちげKI・・・バニジン・・ここは退くNE・・。」

バニジン「わかってる・・。」

二人はエレベーターに飛び乗りそのまま下へ降りた。

ネム「だから104パーセントだーーってもう聞いてないか。

   またエレベーター乗り遅れたよ。」

カロン「またではないでしょう?今が最初ですよ。」

ネム「いや何・・・面倒なのが・・ほら。来たから。」

カロン「面倒・・・ですか?」

背後から敵がうじゃうじゃと来る。ロボウェポン、ゴーフバレット、ブラックロイド、

あわせて30機はいるか。

カロン「監視カメラは4つですか?」

ネム「あぁ。さっき見渡した所4つ。」

カロン「わかりました。ではいきます。」



モニターに映る情報に帝は微笑を浮かべていた。

微笑を浮かべられる情報では無い。各区画で敗北が表示され、敵は刻々と近づいている。

慌てているのはモニターを操作するオペレータだけで帝は常にクール。

オペレータ「B区画、監視カメラが全て破壊されましたロボ!!」

帝「・・・監視カメラ?すぐに予備に切り替えを。」

微笑が初めて止まる。切り替えは数秒で完了したが、新たに投影された情報に一同は驚愕した。

カメラが破壊される寸前には30機いた軍勢が切り替えの数秒の間に残骸となっていたのである。

オペレータ「敵機、マスターの姿確認できないロボ!・・・いえ、敵機だけ確認。

      自爆の痕跡がありますロボ!」

そこに表示された敵機はまさにカロンの姿だった。

ネムはカロンを自爆させ先に進んだということか。

しかし自爆をもってでも30機を巻き込むことなど・・・・不可能だ。

帝「F区画に厳重な警戒態勢を。なんとしても地下2階で食い止めるのです。

  オペレータ、あの5機の調整を急いでください。」

これはおもしろいことになる・・・帝はそう予感していた。
第106話 〜硝煙〜



パープが酸を撒き散らす。シルバの足がわずかに当たり溶かす。

パープ「動きが鈍くなったんじゃないか?白銀龍!」

シルバ「ガキがうるさいね!そういう奴は嫌われるのさ!」

パープ「好かれたくないね!!」



カービン「ミカドモ・・・シルバモ・・・!オレガ・・・マモル!!」

カービンが拳を振り落とすとアースークはそれを払いのけた。

アースーク「アッシは嫌ッスね。チミのそういう固い所が!」

鉄球を振り回し勢いに乗せて叩きつける。

アースーク「人生、頼りすぎはよくないッスよ!!」



シルバ「酸ばかりじゃいい加減飽きるものだよ。ほかに無いのかい!?」

強烈な横蹴りの後に腕から小型のミサイルをばらまく。

パープに全弾命中するがダメージは少ないようだ。煙の中、彼女は見えているかのようにナイフを落とす。

カキンという音がし煙が晴れる。そこにはシルバの攻撃を受け止めたパープがあった。

パープ「メルト以外にもあるって。そんなの君だって知ってるっしょ?はぁ!!」

右腕から発射された弾がシルバの体に纏わりつき身動きを封じる。

シルバ「ッ!」

パープ「続けてもう1発!!」

動きを封じたシルバの体にパープのメダフォースが直撃、床に転がった。

カービン「!シルバ!!」

アースーク「スキだらけッスよ!!」

カービン「クッ・・・ジャマダァ!!」

飛んできた鉄球を一瞬で避けアースークの胸部に渾身の一撃を叩き込んだ。

衝撃で自らの腕も粉々に飛散する。アースークの胸部も同じ状態になるが機能は維持している。

ティンペットが露出するほどの攻撃を受けたアースークの戦意は失うどころかさらに増す。

アースーク「それだけの力を持ちながら・・・・」

一気に距離を詰めアースークも同様にカービンの胸部を右腕のメリケンで突き飛ばす。

よほどメリケンが頑丈にできているか装甲が剥がれることは無かったが、

カービンの胸部は砕けている。体から蒸気が溢れ、床にオイルのスポットを落とす。

シルバ「くふ・・・なかなかやるようになったじゃないか。」

直撃を受けて転がったシルバがゆっくりと体を起こす。

カービン「シルバ・・・・ブジカ?」

シルバ「あ・・うん。ありがと。」

アースーク「・・・・(もしやこの二人・・・)・・ッ!」

カービンが何もモーションを見せずに突如アースークに突っ込む。

アースークは反応しきれず頭部を殴られ兜の装甲が吹き飛んだ、

と思ったときにはアースークの回し蹴りがカービンの脚部を捉えていた。

カービンがもう片方の腕で攻撃するがアースークは鉄球で防御する。

並のメダロットの装甲ならいとも簡単に粉砕する鉄球が粉々に砕け散る。

アースークの顔が血で汚れるや否やメリケンで露出しているティンペットを直接殴り飛ばした。

カービンの体の所々が放電を起こす。それでも立っているのは鬼神か。

シルバ「カービン!くそ!」

パープ「相手はこの僕だろ!」

シルバ「うるさい!」

再度ミサイルを連射する。パープは跳躍ざまにメダフォースの塊をシルバに投げつけた。

メダフォースを防御する。今度はうまく受け流した、とシルバが思ったその時、

シルバの真後ろから同じ、いやそれ以上のメダフォースが襲い掛かる。

不意の攻撃にうめき声を漏らした。

最初に放ったメダフォースはダミーで気をとっている間に相手の背後に移動し

最初以上の塊をぶつける。浮遊型だが、本気を出せばそれなりの出力が出せるパープのブースターの荒業。

そして当のパープは背後からの奇襲に加えそのまま接近していた。

攻撃を受けた直後で機能が一時的に麻痺しているシルバの顔面にメルトをぶちまけた。

シルバ「かぁぁぁぁああ!!!!!」

耳を貫くほどの絶叫。顔に酸をかぶせられて平気な者などいない。

パープ「(やべ・・やりすぎたか?)」

カービン「シ!シルバ!!キィサマァァァァァ!!!!シリュウウ!!!!!」

カービンの体が青く光り後頭部に積載されたブースターが最大出力で点火!

さらに突撃モードに変形、一直線にパープへ弾丸のように飛ぶ。その速度は音を越える。

パープ「げげ!がふッ!!」

カービンの体が粉々に吹き飛ぶほどの打撃を受けた直後変形を解いたカービンが腕が壊れているのをお構い無しに

滅茶苦茶に殴り続ける。カービンも、パープもティンペットがズタズタに引き裂かれ、砕け、最後にパープを壁に蹴り飛ばす。

何も衝撃を受けていなかった頑丈な壁がパープの体ごと粉々になる。

自身の体の8割を失ったパープはケホッと一言。

カービンはとどめをさそうとせずシルバに走りよった。

すでに彼女は酸によって顔が焼ききれ、床に倒れ伏していた。カービンは彼女を抱き起こす。

カービン「シルバ!」

声を上げたが返事は返ってこなかった。かすかに指が動いた。

カービン「・・・・シルバ!!」

シルバ「・・・・カ・・−・・ビン・・?」

なんともいえない光景をアースークは一人無言で見つめていた。



ハデス「パーツを自爆させるとはどういうことだ?」

おそらくエレベーターの中だろう、思われる場所でハデスがゴウカンに聞いた。

ゴウカン「『あの』パーツは一切改造処置を施していない。いわば純正品だ。

     スペアはいくらでもあるし、何より相手に敵が1機減ったと思わせて損は無い。」

ハデス「たかが数秒だがな。」

ゴウカン「そう、数秒でも多少は効果があるものだよ。

     スペアが無いといえば、お前のその機体もスペアが無い。

     我らが築き上げた技術を持ってしても99%のコピーが限界だった。

    ・・・・何より私にはお前を失うわけにもいかないからな。

     戦略、依存性、全てを含めた結果さ。」

ハデス「ならばなぜたかが30機にあれを使った?・・・0,1秒だが。」

ゴウカン「面倒だった点が一つ。アレの正体が我々というのも、敵にならどってことないが、

     味方には知られたくないことだ。・・・・・女の機体のハデスなど。」

ハデス「かまわないな。ミリオンも以前にゴッドエンペラーで戦ったことがある。」

ゴウカン「答えになっていない気もするが・・まぁいい。そろそろだな。」

ハデス「了解・・・両腕の充填を開始する。」

二人がたどり着いたのはロボロボ団の基地の地下2階だった。



アルデ「・・・・!」

飛んできたミサイルを鎌で切り払った。

続けて来たチェーンソーも鎌で鮮やかに受け流す。

ガラパゴッシュ「ゴシュ・・・バリアブルムラマサ!!」

ガラパゴッシュが鎌とチェーンソーを交えたまま力を込め空気の刃を作り出す。

アルデはわずかに目を細めた。空気の刃が武器を交えたまま無数に散らばる。

アルデ「そんなもの・・。」

チェーンソーをはらいのけ背中のビームを展開、敵と距離を殆ど置かずに虹色のビームを連射する。

アマクサ「バカな・・うわ!」

研究施設や空気の刃もろともガラパゴッシュを焼き尽くす。瓦礫がアマクサに降り注ぐ。

アマクサ「う・・うわ!」

アルデ「バカめが!伏せろ!!」

鎌を投げつけ瓦礫をよける。研究施設の壁に鎌が突き刺さり、壁が崩れ落ちる。

アルデは鎌を拾うと飛翔。天井に張り付きビーム砲を床にセット。

そして躊躇無くビームを発射、床を溶かした。ここの真下は量産工場である。



フロアに響く爆音を紫苑は聞きつけた。

紫苑「!研究施設が壊れた?」

レプラス「僕らのほかにも味方がいるということ?」

アレス「らしいな。・・・あるいはネム達か?」

ストロ「・・・と。奥に進んだから敵が多いさね。」

エレベーターから降りて数分。かなりの敵を倒したが数はいっこうに減らない。

それもそのはずだ。この量産工場の正面ゲートは最初からかなりの敵が配置されている。

それに加え量産工場で開発された兵が1分に何十機というペースで追加される。

ゴーフバレット、ロボウェポンなどがオートマチックで無数に製造されているのだ。

さすがに数が多くなるとこのくらいの敵も厄介な存在になる。

アレス「くそ・・・なんとかならねぇか?」



スザク「まわりはまわりに任せるぜ・・」

レプラス「でも・・・やるしかないだろ!!」

レプラスが叫びと共にキュアエッジを放つ。

ストロ「その通り!」

ストロが加勢、アレスが一人敵陣に攻撃せずナイフに力を溜めている。

スザク「3・・2・・1!タイミングバッチシだ!いけぇぇぇ!!!」

アレス「二人とも!伏せろ!滅閃ッ!」

可能な限り力が込められた青い刃が敵を切り裂く。格闘型のアレスが空気の摩擦を利用してできる遠距離攻撃。

滅閃は遠距離の中でも強力な枠に入る。

滅閃でかなりの敵が減ったはずの視界に変わらない敵の数。

スザク「お前らゴキブリだぜ・・・」
第107話 〜碧騎士〜



量産工場は全て自動化が施されコントロールも帝のいる司令室からできるため全くの無人施設である。

必要な電力、物資を速やかに供給し数秒で1体、2体のペースでメダロットの量産を続ける。

ベルトコンベアーの重い音がそれぞれ別の音を奏でながら、また、少し離れた場所で爆発音が響く。

その量産工場の天井、鉄よりも強固なその天井を破ってきた者がいた。

製品名「エンデバー」に似て非なるそのメダロットは有無問わずいきなり近くにあった供給システムに

片手で持っていた短剣を差し込む。システムの出力が低下したか否か、確かめる前にもう片方の大剣で切り裂いた。

出力が低下しているかはわからないが同じ攻撃を繰り返せば多少の影響は出るだろう。

ただし、攻撃を繰り返すことができるかが問題だ。すぐに警備メダロットが来る。

ロボウェポン10機。いずれもマスターを持たない、自動制御メダロット。

来訪者は2メートルもあろう巨大な大剣を構えると同時にロボウェポンに突っ込み一瞬で3機を葬る。

片手で2メートルの剣を鮮やかに使い、もう片手で小振りの短剣を隙無く斬る。

息継ぐ前に5体の敵が真っ二つに両断され反撃を試みようと一旦距離を開けた敵も1秒後に同じ運命を辿る。

ウィズ「はるかなる風使い、ウィズ・・・参上!」

10機を何も表情変えずに葬るとシステムに再度攻撃する。

1つ目のシステムコンピュータを破壊したと同時に天井が破壊され紫色のクワガタメダロットが舞い降りる。

ウィズ「!新手かッ!?」

ウィズが剣を構える。その動作に無駄が無い。

ウィズ「・・・・・・じゃねぇみてぇだな。」

アルデ「敵では無いみたいだな。工場を破壊するのか?」

ウィズ「工場?たしかにここは敵の工場みてぇだな。見たことある奴が量産されてるぜ。」

アルデ「俺はここを破壊する。・・・・なんとしてもだ。」

2連のレーザー砲を手近な大型コンピュータに向け容赦なく発砲、大型コンピュータを破壊する。

だがそれでもコンベアの動きが少し鈍くなった程度だった。

別の場所からゴーフバレット2機、ゴッドエンペラー3機が発進する。

アルデ「どうやら徹底的に破壊しないと駄目か。」

3機が行動体勢に入る前に背中のビーム砲を展開、3機を蒸発させる。

ウィズ「メダルを気にしねぇのか!?」

アルデ「メダル?・・・あぁ、こいつらにメダルは無い。」

ウィズ「は?」

アルデバランはたった今発進したロボウェポンの頭部を鎌で切り裂いた後背中から飛び出た六角形の物体を投げ渡す。

それはメダルのようでメダルではない、六角形の形をしたICチップ。

アルデ「メダルの形をした高度な戦術プログラムが記憶されているICチップだ。

    それがコイツらの頭脳。感情無し、恐怖も恐れも無い。証拠にこれだけの敵を倒していながら、

    士気も戦意も変化無い。・・・ここで作られる者全てが感情無き者達だ。」

ウィズ「・・・・・なんでお前はそんなことを知っている?」

アルデ「さぁな。ここにいる敵はメダロットではない。ただのロボットだ。

    命など考えなくていいものだ。・・・・・ここを出ればその考えは捨てるがな。」

ウィズ「だが俺は戦い方を曲げねぇ。どこにいてもだ。俺はあの時誓ったんだからな。」

アルデ「あの時?・・・・まぁいい。俺はアルデバラン。お前は?」

その時ゴーフバレットが1機飛び出た。獲物を逃がさず斬撃を加える。

ウィズ「俺はウィズ。」

アルデ「ウィズ?・・・・聞き覚えがあるな。」

ウィズ「は?マジか?」

アルデ「気のせいかもしれぬがな。俺が聞いたウィズとお前と、別人の可能性も否定できない。

    (風のエレメント・・・・・だったか。)」

ウィズ「きっとそうだと思うけどなぁ。」

言い終わると同時に跳躍、コンベアに並んでいる物資を断光華で一刀両断する。

アルデバラン「はぁ!!」

システムコンピュータ自身が発射したミサイルの波もウィズとアルデは軽やかに回避、

ウィズに至っては大剣の重さを微塵も感じさせない。

アルデバランの連続ビームに加えてウィズが所構わず斬りまくる。

やがて工場全てが破壊され敵の出現は途絶えた。

ウィズ「後は生まれた野郎共か?一気に処理するぜ!ヴォーブレイドォォォ!!」



バチン。

二人は片手で差し出された片手を打ち合った。

アルデ「やるな。」

ウィズ「お前もな。」

瓦礫の山となった工場の真ん中で2人はそのまま静止した。

ウィズ「・・・感じるか?」

アルデ「ああ。・・・・・・・ハイロゥ!」

アルデとウィズが破った天井とは別の天井が崩れ一つの影が舞い降りる。

降りた、と思ったその時には2人に接近し蹴りを浴びせる。アルデは蹴りを受け止め鎌を払う。

蹴りを仕掛けた者は唐突な鎌の攻撃も避け真上の天井に張り付く。ウィズとアルデはそれぞれ別方向に跳ぶ。

ハイロゥ「ひさしぶりだみゃー。アルちゃんよー。」

アルデ「会いたくなかったがな。」

ウィズ「知り合いか?」

アルデ「知り合いにはしたくないんだがな。」

ウィズ「どういう関係だよ?」

アルデ「こういう関係だ。」

言い放つざまに完全出力のビームを連射する。ハイロゥは爆煙に包まれた。

ウィズ「・・・・なるほど。」

アルデ「気をつけろ。仕留めそこなった。」

ウィズ「あれくらいで死ぬ弾とは俺も思ってねぇ。」

煙の中からビーム弾が飛んで来る。アルデはその弾を受け止めるが弾が腕に纏わりつく。

ウィズ「捕縛弾か!・・・ッ!?」

煙にいたはずのハイロゥがウィズの背後をとり襲いかかっていた。

ウィズ「後ろだと!?」

ハイロゥ「遅いみゃー。」

アルデ「どっちがだ!」

アルデもハイロゥの後ろをとり右腕の銛を振り下ろす。

ハイロゥ「みゃみゃ!?」

その銛を拳で受け止めると炎で包み込む。アルデは火だるまになったがかまわず敵に体当たり、ハイロゥも火だるまになる。

ハイロゥ「あっつー!」

ウィズ「受けろ!震 破 閃!!」

床に強烈な衝撃を起こしわずかな地震で敵の動きを鈍らせ、その一瞬のスキを斬り捨てる。

ハイロゥ「にゃ!」

剣の刃と垂直に腕を立て攻撃を受け止める。生半かな装甲では腕もろとも斬られるが

装甲が頑丈なのか。多少の切りキズだけを残し大剣を切り込んだまま片手を短剣に持ち直す。

ウィズ「神 天 剣 ・・・濁歯!!」

連牙の無数の斬撃の雨とは違い一本の巨大な斬撃が落ちる。

連牙は命中性、濁歯は破壊力重視か。ハイロゥは濁歯を避け半歩後退、だがウィズが背後から斬りつける。

ハイロゥが跳躍し後ろからの強襲をかわすとアルデバランが跳躍した敵を逃がさず蹴りとばす。

ウィズ「だぁーーー!!」

ハイロゥから外れた大剣を持ち直しウィズが走る。目の前の敵に向けて真上から剣を振り下ろす、

と真上に剣を振りかぶった直後目の前の敵が消え真横を強く蹴られていた。

ウィズ「ちッ・・」

ハイロゥ「どんどん来いみ・・・おぉぉぉ!?」

アルデが連射しているビームがハイロゥを掠る。ハイロゥが天井に張り付きビームをやり過ごす、

その天井に張り付いたその時を狙ってウィズが真下から断光華を放つ。

間一髪でハイロゥが避ける、と同時にアルデバランが一点に向かってビームを連射。

ハイロゥ「連続攻・・・みゃぁ!?」

ビームをまたも避けて安堵したハイロゥの目の前にアルデバランの拳。

アルデ「消えろ!!」

ハイロゥ「んがふ!」



ハイロゥが倒れている。さすがのハイロゥも頭部への強打は耐えられなかったか。

・・・・しかしメダルはまだ機体の中だ。

アルデ「・・・・やったか?」

ウィズ「さぁな・・・・・!!」

突如二人が立っている床が爆発し煙に満ちる。すぐさま二人は煙の外へ跳ぶ。

アルデ「!」

アルデが身をかがめ握り拳ほどの龍の頭部を避ける。なんだこれは?

龍の頭部が二つ不規則に飛んでいる。ついさっきまでには無かったものだ。

煙が晴れ中から現れたのはハイロゥだった。ハイロゥの・・・変形した姿だった。

ウィズ「変形だと・・・?」

ハイロゥ「仕切り直しみゃ!!」

アルデ「・・・・おもしろい。」
第108話 〜合流〜



ストロ「ッ!工場の方角が爆発!?」

レプラス「誰かに先を越されたね。」

ストロ「私の仕事が無いさね!!」

本来ストロ、レプラス、アレスのチームには研究所破壊と工場破壊の任務がある。

ただし何者かに二つともとられた。

怒り気味になったストロに向かってロボウェポンが2機踏み込む。

その2機を罵声と共にキセル一振りで破壊し接近、残りの敵も次々と蹴り壊す。

アレス「(こわ。)」

スザク「こうなっちまってはしゃーねぇ。アレス!スミロドナッドに換装すっぞ!」

アレス「おう!」

青い光が満ちてアレスの機体が元使っていたスミロドナッドに変更される。

変更完了と共にストロの方向に突っ込む。だがまっすぐはいかない。

ストロの攻撃は範囲が広く巻き添えになる可能性があるためややずらす。

同士討ちしない程度の近い場所へ。ゲンブなら事細かに計算するのだがスザクは目安で指示。

元よりグレてからは算数で30点以上とったことが無い。

アレス「たとえこの前の算数テストが12点だろうが、オレがカバーすれば問題は無い!!」

スザク「言うな!」

紫苑「クス。」

スザクはあくまでも目安なので大幅な誤りがある。その誤りをアレスが強引に修正する。

レプラス「紫苑は何点?」

紫苑「何言ってるんだか・・レプラス!後ろをカバーするよ!」

レプラス「あいよ!」

アレス、ストロの背後をレプラスが連携攻撃でカバーする。

紫苑「プラズマシュート!」

ストロ「てぃや!」

あれほどいた敵が連携プレーにより一気に片付けられる。

スザク「このまま第2エレベーターにいくぜ!?」

紫苑、ストロは同時に頷いた。



エレベーターから降りたミリオン、ラーは敵の少なさに疑問を覚える。・・否。全く敵が無い。

ラー「この気配は・・・」

ラーはF区画の方を見る。ほどなくして人影が走ってくる。

ストロ「ミリオン!」

その道からやってきたのは敵ではなく味方だった。ロボロボ団基地に潜入後、初めて合流したのである。

ミリオン「ご無事で何よりです。ほかの方々も・・・おや?ビャッコ様とネム様は?」

スザク「ビャッコは敵軍相手に一人で・・・一人で残しちまったんだけどよ。

    ネムはわからねぇがたぶん似たような理由だ。そういやゲンブとあの龍2体は?」

ミリオン「似たような物です・・。上で激戦を繰り広げていることでしょう。」

紫苑「みんな簡単にはやられないよね・・・そう、信じるしか無いんだから。」

紫苑が顔をやや曇らせる。スザクはその顔を一瞥した。

ゲンブもビャッコも、アースークもパープラグオンもネムも大丈夫だと思うが、不安が消えない。

アレス「牢は解放したのか?」

ミリオンが静かに首を振る。

スザク「ならとっとと開けて先に進む・・・・か!?」

突如床が揺れ扉全てが強固な壁に覆われる。そしてゴーフバレットといったお馴染みの敵が大量に転送されてきた。

ミリオン「生け捕りが目的でしょうか・・・それとも時間稼ぎ?」

レプラス「同じだってば!」

ラー「飛輪の火は尽きず。万年もあれば尽きるだろうが・・」

ミリオン「とにかく!いき」

紫苑とスザクのメダロッチに通信。全員そこを動くなよ!という声が木霊する。

スザク「この声ッ!?」

紫苑「オシロイ君!?」

牢に続いている扉が吹き飛びレプラスのキュアエッジなど比にならない大量のビームがなだれ込む。

100機近くいた敵を一瞬で全滅させた後扉から現れたのはオシロイと見慣れぬメダロットだった。

オシロイは片手を上げて一声。

オシロイ「や。」



シルバ「ハハ・・・カービン・・アタイの顔・・どうなっている?」

カービンは答えに迷った。答えなど思いつかなかった。

シルバ「アンタがアタイの事・・・何か違う感じで・・・見てたのは・・・わかってた・・

    アタイも・・少し感じていた・・・。」

カービン「・・・・。」

カービンは抱きしめる力を強くした。

アースーク「パープ。大丈夫ッスか?」

頭部パーツ以外が半壊しティンペットがかなり露出しているパープにアースークが尋ねる。

パープ「大丈夫に見える?」

アースーク「話せる余力があれば大丈夫ッスな。」

パープ「話せるだけだけどねぇ・・・」

アースークは苦笑した。パープと比べて損傷はアースークは軽微だが置いて進むわけにもいかない。

先に行っている仲間のことも考えれば進みたい気持ちも湧き上がるが、ここにいる仲間も無視できない。

アースーク「(やっぱバリエーションあった方が良いんスかねぇ・・)」

頭の中で記憶が交錯した。以前誰かに自分の機体の設計思想について問われた気がする。

ここで決めた機体で、お前はずっと生きるのだと言われた。いつのことかはわからない。

地球上の出来事では無い気もする。

ずっと昔に出会ったマスターの言葉が頭をよぎる。夕焼けの色と同じ機体。しかしそれ以外にも何かあったはずだ。

あったはずだ、と思う。

パープ「どったの?」

アースーク「・・・いや。」

ほどなくして来た通路のドアが開く。パープとアースークは来訪者を同時に見た。

その来訪者は二人はもちろん、カービンもシルバも知っている人物だった。

アースーク「・・・本当に勝っちまったッスか?」

ヘルメス「楽しめなかったな。」

一蹴。

ゲンブ「ほかは?もう進んでしまいましたか?」

パープ「進んだ。僕らは一休み中・・」

ヘルメス「に見えなくもないが?」

ボロボロで動けない。そう言いたいのだ。ゲンブはヘルメスのパーツを交換しハデス達に以前施した応急処置と同様の事をした。

そしてカービン、シルバにも応急処置をしようとしたがアースークに止められた。

ヘルメス「たしかに敵という位置にある。・・・・だがデスカービン殿。そなたはまだ戦うのか?」

カービン「ドウイウ・・・イミダ?」

ゲンブ「大事な人をそんな形にした戦いをまだ続けるか、という意味ですよ。」

またカービンが沈黙を再開する。

ヘルメス「デンデンは置いていく。答えは自分で見つけよ。」

デンデンというのは応急処置を行うパーツである。ゲンブによれば同じパーツはもう1個あるらしい。

ゲンブ、ヘルメスを加えたアースーク、パープはエレベーターで仲間達の後を追った。

後に残されたのはヘルメスが残したデンデンと、沈黙し続けるカービンとシルバだけだった。



アースーク「(答えは自分で見つける・・・・ッスか。)」
第109話 〜機甲〜



エレベーターがフロアに到着し、現れたのはハデスとゴウカンだった。

彼らがフロアにたどり着き最初に見た物は目を背けたくなるほどのメダロットの残骸だった。

ハデスの中で1つの悪夢が蘇ったが、振り払うのもたやすかった。

今は悪夢を考えている暇は無い。

ゴウカン「先客のパーツは無い。どうやら無事のようだな。」

ハデス「爆音が聞こえる。・・・・急ぐぞ。」



ディモ「まだいたか?」

バベルを退けたビャッコ達は通路を急いだ。途中沸いて出るゴーフバレットをことごとく潰している。

すでにランドローターからチーターハートにパーツが交換されている。

ディモ「アンチエアが無い分攻撃を当てるのはハード・・バット回避はベリーイージー。」

ビャッコ「何も直接当てる必要は無いでやすが・・」

ディモ「間接?」

氷のメリケンを床に叩きつけ粉々になった氷塊を空中へ撒き散らす。

飛行している機体は少しの衝撃が命取りになる。

最後の1機をフリーズストラクで仕留めるとエレベーターに走りこんだ。

途中カロンのパーツがあったが二人は気付かなかった。

ディモ「何を急いでいるのだ?マスター。」

エレベーターは既に下の階層へ移動している。

ビャッコ「急ぐ?まぁ早くいかないとスザク達が危ないかもしれないでやす。」

ディモ「簡単にプローズする弾ではないとスィンクだがな。我輩は我輩らの無事をさっさと報告したい所だが。」

ビャッコ「スザクが心配なんかするわけないでやすよ。」

ディモ「誰もスザクとは言っていない。あの浜万やストロだ。」

ビャッコ「ほう?」

若干ストロを強く発声した事にビャッコをぴくんと眉を上下させた。

エレベーターが止まり扉が開く。開くと同時にロボウェポンが1機突っ込んできた。

ディモは攻撃を紙一重で避けると右腕を振り上げて叫ぶ。

ディモ「ディーストロイヤー!!」

ガゴン!嫌な破壊音と共にロボウェポンの頭部が床に転がる。

ビャッコ「愛する者のためには破壊を惜しまず、でやすな。」

ディモ「WHAT!?」



少し前、牢屋に壁を突き破って侵入した者がいた。

牢をいち早く開放し、突き破った穴から逃げるように子供たちを促す。

しばらくして騒ぎを聞きつけた警備メダロットが来たが一瞬で侵入者は警備メダロットを撃破した。

侵入者は背中に巨大なロングバレルを3つも備え、両腕に鷹のような羽がついている。

メカ「プルート・ナニ?ア・サ・ザー・ルル?」

それは浜辺でレッドダークンが会ったメカドラグーンだった。

メカ「ロキ・ファイン。」

メカドラグーンはあらかた片付けるとまだ残っている子供がいないか、牢の奥へ進んでいった。

それから数秒後、天井をオシロイとメダロット1機が突き破ってきた。



オシロイ「ギリギリ間に合ったのかな?」

オシロイとイクシオン、といってもサイクロッサーではない全くの新型が徐に近づいた。

アレス「大遅刻だ。」

オシロイ「ありゃりゃ。牢も解放されてたからしゃーねぇか。」

大して気にもしていない様子。ストロはさらに不満げな顔をした。

ミリオン「ところでその機体は?」

イクシオン「オシロイカンパニーが開発した決戦用メダロットでごわす。言ってみればサイクロッサーの後継機に当たるもので

      多少スペックが強化されたものでごわす。・・・・と言われたでごわすが」

オシロイ「全然多少じゃありませんよってね。」

それは先程のゴーフバレット一掃が物語る。過去に世界を破壊と混沌の渦に叩き落したビーストマスター級のビーム砲を両手に装備、

かつサイクロッサーのような巨大な金棒を両肘に備えている。見た目どおりの重量型。

しかしサイクロッサー程度の機動性は確保されている。目に余る両腕の充填時間は頭部の攻撃でカバーするらしい。

製品名称「ジェノサイザー」。ジェノサイドとは日本語で全滅を意味する。

ミリオン「(ブラックロイドと同じ設計思想ですね・・)」

オシロイ「で?ほかにいないの?」

オシロイがまわりを見渡した直後ガシャァンと二つの扉が同時に吹き飛ぶ。

一つは紫苑達が来た扉。もう一つはミリオン達が来た扉。

紫苑達が来た扉からはビャッコとディモとゴウカンとハデス。

ミリオン達が来た扉からはゲンブ、ヘルメス、アースーク、パープ。

ストロ「ディモ?無事さね!?」

ディモ「イエス。サンクス。」

紫苑「あの・・・ゴウカンさん。ネムさんは?」

ゴウカン「稼動中のエレベーターに攻撃されるのはまずいから食い止めてたんだけどてこずってカロンがやられたらしい。

     で、早退だ。」

ハデス「・・・。」

紫苑「そんな・・」

ゴウカン「彼は我らの勝利を願っている。だからここで止まらずに、先に進むしかない。」

ラー「・・・。」

ラーは少し前からゴウカン達が来た道を見つめている。

ミリオン「ラー?どうかしましたか?」

ラー「少し用がある。先に行っていてくれないか?」

ラーはゆるやかに飛行し通路の奥に消えた。

ハデス「どうしたというのだ。」

ヘルメス「とりあえずそれがしらは進むしかあるまい。セイリュウ殿が待っている。」

スザク「この下は最深部に続く場所、ラスボスの部屋の扉がある部屋か。腕が鳴るぜ。」

紫苑「いきます!」

意外とエレベーターは大きくメンバー全員が乗っても重量オーバーにはならなかった。
第110話 〜安威〜



紫苑達全員がエレベーターで下の階層へ降りていった直後

3体のメダロットがフロアに入ってきた。デスカービン、シルバ、レッドダークンである。

ダークン「逃がしたか・・・我が迅速に修復されていれば・・」

カービン「・・・・!」

同じくして牢の扉が開かれる。扉から見えるその姿はダークンは見覚えがあった。

・・・否、絶対に見たくないものである。

ダークン「!メカドラグーン!?」

メカ「ダークン?」

牢から来たメダロット、メカドラグーンは両手にロボウェポンの頭部を担いでいる。

その頭部をおぼろげに床に落とすと静かに歩み寄る。

シルバ「機龍!アンタ今頃来て何のつもり・・ぐっ。」

カービン「ムリヲスルナ・・」

どうやらカービン達はゲンブが置いていったパーツで修復したらしい。

そのパーツはすでにダークンによって破壊されているが。

ダークンは籠鍔のついた剣を抜き構える。その姿にドラグーンの足が止まる。

両者、両腕の充填を静かに開始。

ダークン「二人は先に行け。」

カービン「デキルノカ?」

ダークン「手負いの者など足手まとい以外に何もならん。いくら我が『優秀』だといえども

     貴様等がいては勝てる戦いも勝てなくなるわ。戦力にならない物は無くて結構。

     とっとと進みあの凡愚達を制裁してこい。『汚名返上』のためにもな。」

シルバはやるせない気持ちで内から湧き出る恨みを押しつぶした。

カービン「ソウジャナイ。オマエハ・・・・オマエハドラグーンヲ・・キレルカ、トキイテイル。」

ダークン「どういう意味だ?」

双眸が睨みに変わったのも関わらずカービンがダークンに言い続けた。

カービン「ソレガデキルノナラ・・・ナニモイウコトハナイ。シルバ・・イクゾ・・・。」

シルバ「あ、う、うん。」

シルバとカービンがエレベーターに乗り込む。その様子をダークンは横目で睨みながら吐きすてた。

ダークン「どいつもこいつも凡愚だ。『恋』!?『愛』!?愚かだッ!!哀れだッ!!!

     全く無駄な物だ!!!!!」

メカ「ナズィスタカ、ホウ、ロキ、クシャラ、ルル?」

ダークン「貴様も貴様だ!!力とは己のみで形成する物!!助け合う!?結び合う!!?

     そんな物は・・・生きていく上では無意味しかならぬのだ!!・・・『優秀』な物しか理解できぬか。」

メカ「ロキ、トゥユー、ファイス、トップ。カムタル、オールス、ゼスタクォート、キョフ。

   アイ、ファクソフ、ヤ。ロキ、アイ、グール、ポツ、トゥユー、トップ、キョフ、ヤ。」

ダークン「バニス・・・・グール?」

メカ「アイ、タママカ、グール、イ・テナ、トゥユー、オンリネス。グルイ、ドラグオン、ペチュウム、タママカ・・

   アイ、トゥユー、パルス!」

ダークン「貴様は弱くはないはずだ。かつて盗賊を撃破した時も、あれだけの力が出せたではないか?」

メカ「ロキ、アイ、オンリネス、ウソドファル、メ・ハウハ。」

ダークン「我には貴様は必要無い。たとえお前が我を必要だとしても、それが共に進む理由にはならぬ。

     だからここで・・・・斬る!!」

メカ「ダークン!!」

二人は同時に飛翔した。



ラー「レイ!」

ラーは誰もいない通路で一人叫んだ。レイとは何なのか。

ふと気がついたように近くの部屋の扉をくぐる。そこに目的の物があるように進む。

ラー「レイ!」

????「レイ、レイ、うるさいんだよNE!!」

部屋に来たと同時にブラックロイド2機のビームがラーを襲う。俊敏な動きで回避するとラーは状況を確認した。

部屋にはブラックロイド2機とレインボーダスト。レイとはダストのことか?

だがほかの者はダストと呼ぶ。この違いは一体なんだ?

極太のビームに混じってダストのミサイルが飛来、ラーは回避し手近なブラックロイドにありったけの銃弾を叩き込む。

ラー「話を聞け!レイ!!」

ダスト「うっSAI!!」

ブラックロイド1機が鉄屑となったのとラーの右腕の残弾がゼロになったのは同時だった。

残りのブラックロイドが攻撃態勢に入る前に青白い光弾で片付ける。

ラー「レイ!」

ダストは無言で接近戦をしかける。ラーは強烈な蹴りを肩の装甲で受け背後に回り動きを封じる。

ラー「どうしたというのだ!世界が変わり・・・お前も変わってしまったのか?」

ダスト「はなSEぇぇぇええええええ!!」

メダフォース。ラーは顔をしかめ一気に距離を置く。ダストが絶叫をあげながらミサイルを連射するが

ラーは緑色のオーラで全ミサイルを無力にする。同時に右腕の弾倉を交換。

ラー「これも奴らの策?虹に金色はできない・・・そういうことなのか!?」

ダスト「がぁぁああ!!!」

ラー「レイィ!!!」



????「ミリオンは強さが無いと平和は維持できないと示唆した。

     私もそれが正しいと思う。だからこの手を選んだんだ。間違っているとは思っていない!!

     それが・・・・それが私だからだ!!」


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