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第13章 夢と夢の争乱

第78話 〜誰何(すいか)〜

ネムとカロンは温かいコーヒーを飲みながら夜空を見ていた。

もっともカロンのはオイルだが。

今日も夜は冷え切っており、ネムの息も白い。

カロン「今日も冷えますね・・・空の星も一段と輝きを増している・・。」

ネム「乱世に不似合いな輝きや。こんな時間、そんなに続かんだろうな・・・ゴクッ。」

ネムはカップに入れたコーヒーを飲み干した。

ネム「うべっ。」

カロン「どうしました?」

ネム「・・・・・砂糖と塩間違えたかな。」

そう言いながらポットから次のコーヒーをカップに注いだ。

ネム「カロン、昨日のオメガの大出力、なんだと思う?」

カロン「昨日のですか?・・・さぁ・・・・。」

二人の言っているオメガというのがなんなのかはわからない。

ネム「アルファは近日になって飛躍的な戦闘能力の上昇ができた。

   そしてまわりも充分戦力に投入できるほどの能力に向上した。

   だが今頃になって今まで利口だったオメガが騒ぎ出すとはな・・。」

カロン「地獄の魔物が目覚めた・・・ということでしょうか?」

ネム「魔物ねぇ・・本人聞いたら怒るだろうなぁ〜。」

そう言いながらコーヒーを飲み干した。

ネム「うべっ。」

カロン「・・・・・・。」

急に辺りが緑に明るくなる。空を見ると巨大なオーロラが空を染めていた。

カロン「オーロラ?・・・日本にオーロラなど・・。」

オーロラと見えた物体は奥の世界へと、二人の見えない所へ落ちていった。

再び二人のまわりに闇が戻る。

ネム「いや、あれは彗星だな。この時期に彗星なんて珍しいな。」

そうつぶやきながらポットに残っているコーヒーを全てカップに注いだ。

そう言ったネムに冷たい視線を注ぎながらカロンは言った。

カロン「彗星に時期なんて無いでしょう。」

ネム「ふっ。・・・そうだったかな。」

カロン「しっかりしてくださいよ高校主席卒業。」

ネム「山茶花市立グラジオラス高等学校か。・・・懐かしいな。そういや白粉って名字の奴・・いたな。

   ま、その話は今度にしておこうか。」

ネムはカップのコーヒーを微量口に含んだ。

ネム「うべっ。」

カロン「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ネム「前書物でこんな事を読んだ覚えがある。彗星っていうのは大気と天界の間に起こる摩擦現象だと。

   つまり、この世とあの世の距離が一番近くなってるってことさ。

   それに乗じて仏様が天界から地上におっこちてくる、って考えた人もいるらしい。」

カロン「ロマン溢れる絵空事ですね。でもこういう話も聞いたことあります。

    彗星っていうのは飢饉(ききん)や難病が流行る前兆だと。つまりこの世の滅亡を予言する物・・。」

ネム「暗い絵空事だねぇ・・・・ま、何が真実かなんてわからねーけどな。」

カロン「まぁ・・・そういえばそうなんですが・・。」

ネム「そういえば彗星が落ちてった方向ってセイリュウちゃんがよくレアメタル拾ってくるっていう

   ガラクタ置き場の方角だな。」

カロン「それがどうかしましたか?」

ネム「いや、何。使われなくなったティンペットとかに亡霊君が乗り移ったり・・とかさ。」

カロン「ホラーな絵空事ですね・・・。」

ネム「こういうの考えるのはよしましょうか・・寝れなくなる。」

ぼやくとカップに残った最後のコーヒーを飲み干した。

ネム「うべっ。」

カロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(はぁ・・・・。)」


第79話 〜悪霊〜



レプラスは夢を見た。

野の花が乱れ、鳥達が優雅に踊る楽園。

その光景が瞬時に粉々になって廃墟へと変わる。

廃墟の真ん中に黒い影が一つ立っている。

影「ひさしぶりだね・・レプラス。」

レプラス「リウス?」

影「へぇ・・・。僕の名前わかるのか・・。」

影のような闇の機体はしだいに色がよみがえってきた。

姿形はレプラスのクロスドラグーンとほぼ同じ。

リウス「やっとまともに話せるね・・君と僕のことを。」

レプラス「・・・。」

リウスの後ろで朽ちたビルが砂煙をあげて崩壊した。所々に炎がたちこんでいる。

急に風が吹きレプラスに向かって火の粉を巻き上げる。

リウス「ハデスから聞いたろ?僕と君が、かつては一枚の僕だったことを。」

レプラス「うん。」

リウス「だったらこれはどうだ?二つに分かれたのなら、また一つに戻る事だってできそうじゃないか?」

レプラス「!?」

リウス「君も以前の僕と同等の力を蓄えてきた・・ひとつになれば・・あるいは

    ロボロボ団そのものを壊滅できるかもしれない。」

レプラス「紫苑は・・・僕はどうなる?」

リウス「君は意味無き存在、吸収されれば永遠に空気に触れないまま僕の中で生きることになる。不死の命でね。

    彼女もまたこの戦の犠牲者だ。彼女は知りすぎた・・・我らの事を知っている人間が多くなるのはマズイ。」

レプラス「・・・・ということは?」

リウス「血を捧げることになるかもね・・・以前フォストが愛したリンドウのように・・。」

レプラス「リンドウ?」

リウス「まわりはロボロボ団に殺されたとなってるハデスやフォストが大事にした人間さ。

    年齢も紫苑と大差ない。無駄に僕らを信頼してたけどね。」

レプラス「無駄に?信頼しちゃいけないの?」

リウス「信じるというのは怖いものでね・・一度信じてしまうと、拒否できなくなるのさ。

    リンドウも何がおこったかもわからずに逝ったからね。」

レプラス「君は・・・・リウスは僕と違いすぎるよ。」

リウス「やさしさの部分でかい?そりゃそうだ。君は僕のわずかなやさしさで作られた。

    そのわずかなやさしさをかなり強化、増幅されてね。」

レプラス「・・・・。」

リウス「この夢の中では何も出来ないから安心しなよ。

    でもいつか来ることを忘れないでね。」

レプラス「いつか来る?何がさ?」

リウス「僕と君の・・・・・決闘だよ。」



レプラスが夢を見ている頃ティンタウン西区のガラクタ置き場では異変が起きていた。

1体のサビだらけのティンペットがひとりでに動き出したのである。

ティンペットは腕をだらりと引きずりながら中央区の方へ歩いていった。


第80話 〜再生〜



ティンペットが中央区に出現した時にはもう陽が空に昇っていた。

人は叫びを上げ逃げた。テレビでは意味不明の放送をし、

避難勧告が出された。メダロット社はティンペットがこんな感じに現れた原因がわからなかった。

ティンペット「くっ・・・・く・・っく・・・・。これが・・・今の・・・世界か・・。」

警察は独自にバリケードを張り行く手を遮った。

パトカーメダロット、ローサイレンも拳銃の充填を完了している。

ローサイレン「止まれ!止まらなければ撃つ!」

忠告を無視しティンペットはさらに前進を続ける。

ティンペット「道を・・・開けろ・・・。」

ローサイレン「止まれ!!」

ティンペット「開けろと言っているのが・・・・・わからないか!!」

突如ティンペットの左腕が光り、見たこと無いパーツへ変わる。

・・・・いや、レプラスに少し似ている。

左腕は巨大なボールを呼び出しボーリングの要領で転がす。

バリケードはたちまち崩れローサイレン数機も生き埋めになった。

ローサイレン「ぐ、警告は充分した!全機、攻撃、撃てェーー!!」

12機いるメダロットは拳銃を乱射した。

ティンペット「・・・・・遅い・・・・。」

片手で全ての弾を叩き落すと今度は右腕が光に包まれる。

光はやがて形となりまたレプラスに近い右腕パーツへと変わった。

ローサイレン「なんだとッ?」

ティンペット「恐怖と・・・絶望を・・・見せて・・・やろう・・・か?ハァッ!!」

右腕に力を込めるとさっき転がしたボールから直径1メートルはあるだろう砲台が4つ飛び出した。

砲台から青白いエネルギー弾が発射されローサイレンをことごとく飲み込んだ。

そしてその背後にあった高層ビルも跡形も無く瓦礫と化した。

ティンペット「はは・・・・は・・これがレプラスの・・・・生きてる世界・・・つまらねぇ・・・。」



異常はロボロボ団基地でも起きていた。

ミリオンは休む暇無く目の前のキーボードを打ち続けている。バニジンもいる。

バニジン「ダメだ・・エネルギーの上昇が止まらない!」

部屋の中心にはカプセルがある。その中には、メダルが1枚ある。

ミリオン「これは近いところに何か特別なことが起こっているのかもしれません・・。

     その特殊な波動が、このメダル・・・・最終兵器用のメダルを狂わせている・・。」

ミリオンは画面に出た文字列を神に等しい速度で読み取りながらつぶやいた。

その直後画面がフラッシュアウトし、カプセルが木っ端微塵に砕けた。中のメダルも粉々である。

ミリオン「く・・・阻止・・・できませんでしたか・・。」

バニジン「・・・・・。」

ミリオンは膝をついた。だがその口元は微かに笑っていた。

ミリオン「バニジン。」

バニジン「ん?」

ミリオン「たしか使われなくなったメダルや戦で犠牲になった者達のかけらが倉庫に保管されてましたね?」

バニジン「うん、確かに保管してあるよ。でもなんでさ?」

ミリオン「使いましょう・・・一刻も早く新しいメダルを・・・鬼神を創らねば・・・。」

バニジン「鬼神を・・・・創る!?」



ゴウカン「やれやれ・・・本当に亡霊が来るとは。」

モニターに表示された情報を見てゴウカンは自嘲気味にぼやいた。

表示されたのは先程のティンペットが使用した左腕、右腕の詳細データ、進行方向、

火力、反応速度などに加えて映像、音声もある。

傍受音声「恐怖と・・・絶望を・・・見せて・・・やろう・・・か?ハァッ!!」

ハデス「(この声・・・・・・リウス!?)」

ゴウカン「ハデス、心当たりがおありのようだな。」

ハデス「馬鹿な!!アイツのメダルはまだこの基地にあるはずだ!!」

ゴウカン「精神だけ別の場所に蘇った・・・とでも言うのかな?アレがリウスというのもあながち間違っていない。」

オペレーター「研究施設より通信!オメガの80パーセントのコントロールが不可能に!」

ゴウカン「ちっ・・・施設に伝達!!何としても暴走だけは防げ。場合によっては電源を落としても構わん!」

オペレーター「電源!?それでは全てのデータが・・。」

ゴウカン「バックアップ作業急げ!!私は施設へ行く。ハデス、来るか?」

ハデス「・・・・・いえ、私は残ります。」

ゴウカン「了解。(ふ・・・初めて意思通り動いたな。)」



ハデス「なぜだ?なぜリウスが・・・・。」



砂浜には波が打ち寄せている。

鷹の羽を肘に備えたメダロット、メカドラグーンは静かに瞑想していた。

ドラグーン「・・・スシャイン、アウト、イ・テレイ・・・。」

そして海に響く爆音。次に遠くから沸き立つ煙。

どうやら街の方から煙は上がったようだ。

続けざまに爆発が起こる。鳥達は群れて逃げ、波はしだいに狂っていった。

ドラグーン「・・・・・シュミサ、ドラグオン?

      メ・ケテハ、アブズ、ザ・メルト、ゴー・・・リピーツ・・。」



同じ頃名も無き森の枝に座って爆発を眺める者がいた。

ラー・ゴールデン、過去に紫苑達がアマクサのガラパゴッシュと戦う時に

手を出した・・・メダフォースと同じほどの必殺技をいとも簡単に跳ね返した。

クジャクのような羽を綺麗に畳み、するどい爪のある指を曲げたり伸ばしたり。

爆発がおこるたびに視線をそちらに向けるがすぐに自分の手に戻す。

ラー「・・・・・・もう200年以上するのか・・・。」

指折り数えなくとも森が滅んでから何年過ぎたかわかる。そしてずっと想ってた者と別れ続けてる年数も・・。

そして畳んであった羽を広げると大空に轟音を立てて飛び立った。



爆発を繰り返す街の上空には紫色の太陽、いや、

太陽の位置に紫色のメダロットが浮かんでいた。

パープラグオンだった。

パープは暴れているメダロットを見るたびため息をこぼしていたが目に浮かぶ光は鋭かった。

自分のすぐ隣のビルが崩れようと破片が飛び散ろうと微動だにしなかった。

同じ高度、同じ座標で浮遊していたのである。

パープ「尊敬・・・かぁ。でも、その尊敬してた人が・・・今は悪霊なんてな。

    信じがたいけど・・・信じるしかないんだよな・・。

    ハデス・・・何してるかな?」

パープは街が崩壊する様子を呆然と眺めていた。



フォスト「・・・・・・予想していた通りか。」

道をひとつずれると爆発に飲み込まれる・・その域まで近づいているメダロットがいた。

ツルを思わせる湾曲状の鞘を腰に携えた緑色が特徴のメダロット、フォストである。

フォスト「ハデス、お前は隠し事ができないな。特に私をだます事など不可能・・。

     しかし、アイツがここまで変わり果てるとはな・・。」

フォストは現場を後にした。



ティンペット「そこをどけって言ってるだろうがァ!!」

咆哮はビルを崩壊させた。

その光景をモニターで見ながら笑う者がいた。

????「くっくっくっく・・・。」

ザコ「首領様、何がおかしいんですかロボ?」

首領「いやなに・・・こうも予定通り事が進むとは思っていませんでした。

   ゴーフバレットを偵察用に3機、出撃しなさい。」

ザコ「3機ですか?ロボ。」

首領「あのティンペット・・・恐らく向かう場所は我らが一番探している場所。

   うまくいけばその場所がわかるかもしれません。」

ザコ「了解ですロボ。ゴーフバレット、戦闘レベルB、ミッション偵察任務、

   プログラム完了。3、2、1、どうぞロボ!」

何も無い海域からコウモリが飛び立ちまっすぐ街の方へ向かった。

その様子をボロ布をオーブのように着たメダロットは山の頂上から見つめていた。

手にした大剣は陽光に当たり光を帯びていた。


第81話 〜疑団〜



レプラス「クハッ!!」

レプラスは飛び起きた。起きたばかりなのにかなり疲労している。

紫苑「?・・・どうしたの?レプラス・・?」

ゆっくり体を起こした紫苑はレプラスの肩に手を当てた。

レプラス「・・・・紫苑、森に行こう。」

紫苑「森?森って・・疾風の森?」

レプラス「うん。行こう・・・悪い胸騒ぎがする・・。」



ティンペットはすでに骨組みが露出していない状態になっていた。

もはやこれは1体のメダロットと言って過言ではない。

そしてその機体がレプラスと同じ、違うのは色が暗めなだけだ。

既に街を抜け、疾風の森入り口まで足を進めている。

森の入り口には一人のメダロットと一人の男が待ち受けていた。

ハデスとゴウカンだった。

ハデス「研究所の方はどうだったのだ?こっちに来ていいのか?」

ゴウカン「既にオメガは、オリュンポスのメダルは壁を破壊し、外に飛んでいった後だった。」

ハデス「なんだと!!?」

ゴウカン「そしてオリュンポスはあのティンペットと接触し反応を消した。

     ・・・いや、ティンペットに反応が出始めたと言えるな。」

ハデス「あのティンペットにオメガが装着されたということか・・・。」

ゴウカン「つまり、今来た敵はリウスそのものということだ。」

ハデス「今来た敵?・・・ッ!!」

ティンペットはハデスと対峙した。冷たい風が出てくる。

ティンペット「やぁ・・・ハデス、ひさしぶりだね。」

その声はハデスにも聞き覚えがあった。いや、一番聞くのを恐れていた声だった。

ハデス「リウスっ!?」

ゴウカンは銃に弾を込めた。

リウス「僕は君が許せない。カディアを見殺しにし、僕を暗所に閉じ込め、

    僕そのものを封印しようと・・」

ハデス「なぜ今になって蘇ったッ!!?」

リウス「僕は君を許せないと言っただろう!!同時にロボロボ団も、シルバ!バニジン!

    ダスト!ダークン!裏切り者全て!!!・・・そしてアイツも。」

ハデス「アイツ?」

リウス「来たよ・・・。」

レプラス「ハァハァハァ・・・ッ!?」

森に走りこんできたレプラスは目の前のメダロットを見て驚愕した。

後から紫苑も続く。

紫苑「レプラスが二人!?」

リウス「やあレプラス。やっと現実世界で会うことが出来たね・・・。」

ハデス「レプラス・・・なぜ来た?」

レプラス「・・・じっとしてられなかっただけだよ・・ハデス。」

リウス「・・・・丁度いい。今ここで君達を亡き者にする・・。」

レプラス「・・・。」

ハデス「なんだとッ!?」

リウス「今まで僕はレプラスの記憶とコンタクトを取り機会を伺っていた。

    どんな戦況か、僕がどこで眠りについてたか、ハデス、君が何をしようとしているか。」

ハデス「・・・だからメダルを呼び寄せることもできたのか。」

リウス「夢は思い次第で自由に結果を操作できる。現実世界じゃそんなことは不可能だけど、

    それに近いことはできる。」

リウスは無表情のままパーツの充填を始めた。

ハデス「くっ・・・。」

ハデスはいつ来てもいいように体勢を整える。

レプラス「ハデス!ここは僕にやらせてくれ!!」

リウス「!?」

ハデス「レプラス!?」

レプラス「リウス・・・僕達はもともとひとつだったとハデスから聞いた。

     でも君は何かを間違っていないか?復讐で、全てを殺すなんて。」

リウス「僕の過去を汚したのはコイツらだ。そして同時に人間も憎い。

    人間さえいなければ、ずっと森で静かに暮らせたんだよ!!

    お前に何がわかる!!愛する人を見殺しにされ居場所を無くされ自分自身も・・。

    殺して何が損だ!!?悪い奴を殺して何が悪い!?」

レプラス「殺して終わらせば簡単だよ・・でも、自分がしてしまった罪の重さを感じさせ、

     その罪を償わせることも大事だろ!!反省も無いまま終わったんじゃ・・・

     憎しみが繰り返されるだけだろッ!!!!!!」

リウス「ほざけ!!できそこないに説教される覚えは無い!!」

レプラス「できそこないはリウスの方だろ!だから封印されるんだ!」

リウス「どうやら口で言っていては無駄になってきたね。」

レプラス「僕もさ・・・。」

リウス「自分が正しいと言うなら、それを証明してみせろ!!

    この戦いに勝ったものが、世界の生死の判断を下す!」

レプラス「僕はそんな判断はできない。だけど、君は止めてみせる!!」



いまだかつてない戦いが今始まった。


第82話 〜覚醒〜



レプラスとリウスはファイト開始と同時に宙に飛んだ。

紫苑「レプラス、キュアエッジ!」

レプラス「あいよ!」

リウス「甘いッ!」

レプラスが閃光を放つと同時にリウスも閃光を放つ。

紫苑「連携攻撃!?」

リウス「もともとは僕だったってこと、忘れてないか!?」

両者が放った閃光は共にぶつかり爆煙を散らす。視界は双方0・・だが、

レプラス「だからどうしたァー!!」

煙の中からレプラスが飛び出しリウスの顔に拳を叩き込む。

リウス「ぐぅ!なめるなァ!!」

リウスも負けじと反撃した。レプラスは苦も無くそれを回避する。

レプラス「キュア・・くっ!放熱がまだだった!」

リウス「隙あり!!」

リウスは再度連携攻撃を放つ。どうやら準備時間はリウスの方が短いようだ。

紫苑「レプラス・・回避!!」

レプラス「あいよー!!」

リウスはレプラスの方向に頭部からライフルを発射した。

レプラス「連続攻撃!!?」

紫苑「よけて!」

レプラス「無理!!」

両腕をクロスさせて攻撃を受ける。致命傷にはならなかったものの、ダメージは大きいようだ。

リウス「ラジェイト・・8・・7・・まだまだこれからだよレプラス。」

レプラス「放熱完了・・充填・・紫苑、どう攻める?」

紫苑「たぶんまっすぐ撃ってもすぐにかわされると思う・・・・。

   レプラス、ゲンブ君と戦った時のこと、やってみよ。」

レプラス「あいよ。ドラウプニル!!」

頭部から数え切れないほどの赤いボールを発射する。

リウス「!?目くらましか!」

リウスは発射された連携攻撃のボールを全て撃ち落とすと体勢を立て直す。

紫苑「レプラス、いっけー!!」

レプラス「あいよー!!」

リウス「後ろッ!?はぐゥッ!!!!!」

リウスはもろに距離無しで強力な一撃を受け近くの木まで吹っ飛ばされた。

リウス「く・・・目くらまし・・その中から1個だけ持ち去り・・・

    背後にまわりすみやかに攻撃をしかける・・か。」

レプラス「1個じゃないよ、リペアシューター!!」

リウス「2個だと!!?」

光の波がリウスを飲み込んだ。しかし煙が晴れた時そこに敵の姿は無い。

紫苑「いない?上!!」

レプラスはリウスの頭上からの奇襲を半歩後ろに下がり回避した。

着地と同時にすかさずリウスはハイキックを繰り出すがレプラスは片手で受け止め投げ飛ばす。

宙に放り出されたリウスは空中で反転し鮮やかに着地した。

リウス「僕が戦闘能力で負けているのか?馬鹿な・・・認めんッ!!」

頭部からライフルを放つ。レプラスはそれを避ける。

レプラスはキュアエッジ、青白く伸びる光の束をリウスに放つ。だがそれも避けられた。

リウス「(やさしさ?それが何だ!?なぜアイツはここまで強くなれたんだ?

     受け継がれた戦闘能力は半分にも満たないのに・・なぜここまで大幅に跳ね上がった!?)

    くそ・・・認めないィィィィィィィ!!!!ジェダイトーン!!」

左腕から赤い球体、連携攻撃をばらまき紅の光で地を焼き尽くした。

紫苑「レプラス、ドーナツ放火〜!」

レプラス「あいよ!」

レプラスは連携攻撃をリウスを中心に円を描くようにばらまくと一気に放射した。

リウス「くぉッ!?全方向からの攻撃!?だけどねェ!!」

レプラス「!!?」

リウスは周囲にバリアを展開し集中砲火を無効にした。煙だけが空に舞い上がる。

紫苑「そんな・・・。」

リウス「(ふぅ・・・成功してよかったー。)」

レプラス「クロスファイヤーがきかないんだったら・・・直にやるだけさ!!」

レプラスは拳を握りなおすとリウスに向かって突撃した。

紫苑「待ってレプラス!」

レプラスは一瞬走行速度を抑えてしまった。だがそれが危機を救う。

リウスの腕から緑色に伸びる剣がレプラスの肩の装甲を掠った。もう1センチ前にいれば確実に当たっていた。

リウス「(ちっ!メダフォースも当てにならないな)」

レプラス「あぶな・・・紫苑、ありがと!」

紫苑「次来るよ!右!」

レプラス「はいよ!」

リウスの攻撃を紙一重で避ける。隙を狙い連続で攻撃をしかけてきたが、レプラスはそれを反撃で流した。

リウス「(あの人間・・・やっかいだな・・・先に潰しとくか?)」

紫苑「レプラス、いっきにいくよ!」

レプラス「もう少々やばいからね・・・了解!」

レプラスの機体が金色に輝き始めた。



レプラス「プラズマショットー!!」

もはやレプラスのプラズマショットは初めてメダフォースを発動した時と桁違いになっていた。

発射直後に自分ほどの大きさにまで膨れ上がり、ビームのように高速で飛んでいく。

リウス「・・・・・なぎはらいッ!!!!」

リウスの機体が銀色に発光し一の字を書くように空気を切り裂く。

風圧だけで炎を巻き上げレプラスのプラズマショットをかき消した。

レプラス「え・・・!?」

リウス「終わりじゃないよ!一斉射撃ッ!!」

リウスの腕が金色に輝き無数の弾を連射する。ヘルメスと同等のメダフォースだ。

レプラス「ごふ!?」

装甲が粉々に砕けた。ティンペットもむき出しになる。

紫苑「レプラス!?」

紫苑の目からわずかに何かがこぼれた。

レプラス「くっ・・・。」

リウス「勝負は一瞬の油断が命取り・・・まだわかってなかったのか・・それが?」

リウスは地面にボールをばらまいた。右腕の充填を開始する。

レプラス「(・・・終わりかな・・・もう・・・)」

リウス「終わりだ!!クロス、ファイヤー!!」

青い光が屍に群がるハイエナのようにレプラスに襲い掛かった。

紫苑は目からあふれた何かを拭い、メダロッチに向かって叫ぶ。

紫苑「レプラス・・・海でのこと、覚えてる?

   レプラスが初めてメダフォースを使ったあの日のこと・・。」

レプラス「プラズマショット?」

紫苑「プラズマショットの前にやったもの・・できる?」

レプラス「よく覚えてないし・・・海じゃないから何が起こるかわからないけど・・

     やってみるよ・・・紫苑。あとさ・・。」

紫苑「?」

レプラスは襲ってくる光を睨みつけると左手を地面にたたきつけた。

レプラス「泣かしてごめん!!」

たたきつけた左手の周辺の雑草が急成長しレプラスを守る木の壁になった。

木の壁は光を受け止めるともとの雑草に姿を戻した。

ゴウカン「(地形変更・・・海では陸に、草原では草を急速に成長・・か・・。)」

リウス「!?くそ・・・邪魔だァ!!」

リウスはもう一度なぎはらいを発動すると紫苑に向かって炎の刃を出した。

紫苑「ぇ!?」

ハデス「・・・くそ、血迷ったかリウス!!」

紫苑「ぅ・・きゃああああ!!」

紫苑は迫る炎の牙に目を閉じた。そこにわずか1秒にも満たない差でレプラスが紫苑に体当たりをする。

レプラス「く・・・ぐぁあァ!!」

紫苑「レプラス!?」

リウス「馬鹿か・・・人間をかばったか。」

その声を掻き消すかのようにレプラスの体から炎が消える。レプラスの目は、以前と比にならない輝きに満ちていた。

レプラス「人間を・・・だって?紫苑は・・・・紫苑は

     僕にとって特別な存在なんだ・・人間一言では片付けられないんだ・・。

     その紫苑をリウスは殺そうとした・・もう僕は・・・君を完全に許せなくなったよ・・。」

ブスブスと音を立てるレプラスは鋭い目でリウスを見ていた。

リウス「完全に?わずかに許していたりしたのかよ?甘いね。

    でもそれがいつまで持つ?僕のジェダイトーンの残りはまだ充分にあるんだ・・。」

レプラス「(僕は・・・・僕は紫苑を守りたい・・・守らなきゃいけない!!)」

レプラスの機体が虹色に輝く。風が舞い上がり、草が荒れ始める。

リウスは数秒前に感じなかったプレッシャーに体の震えが止まらなかった。

ハデスも同じである。ゴウカンは平然とレプラスを見ていた。

リウス「このプレッシャーは一体・・・・なんだ!!?」

レプラス「はァアアァァァァァアアアアアアーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


第83話 〜雄叫び〜



静かな森でフォストは小鳥と話していた。

差し伸べた手に小鳥は舞い降りるとフォストをじっと見つめた。

手を動かすと器用に移動し、決して落ちない。

フォスト「・・・・指からこぼれる砂のように・・・

     時も流れたか・・・。」

小鳥は首を傾げ、チュンチュンと小さく鳴く。

フォスト「お前はわかるか?リウスも、私も、誰もが結局は編み出せなかった・・

     最終奥技・・それをアイツはレプラスがやったのだ・・・。」

手に小鳥を乗せたまま空を仰ぐ。雲はただ流れるばかりである。

フォスト「私も、この刀、引き抜かねばならぬ時がくるか・・・・。」

視線を戻した時小鳥はすでに飛び立った後だった。



ハデスとリウスはレプラスから発せられている波動に目を細めた。

リウス「なんだ!?この波動は・・・・!!!?」

ハデス「(この波動・・・私のアレに似ている・・いや同じか?)」

レプラス「ツァアアアアアアアア!!!!!」

虹色の光の中に巨大な砲台が8つ出現する。その砲台が全て一斉に火炎弾を放つ。

リウス「連携攻撃?なら回避してしまえば・・・」

連携攻撃は強力な分、次の攻撃への隙が大きい。そして連発できないのをリウスは知っていた。

だが回避した直後リウスが動いた方向に砲台の4つが向きを変え、青いレーザーを撃つ。

残りの4つは瞬時にリウスの頭上に移動し真上から炎の雨を降らす。

リウス「横から上からッ!?なんだこれは・・うぐぁッ!!」

連携攻撃の雨、津波は30秒くらい続いた。一つの砲台から撃ち出される攻撃は1発1発違う特性を持っている。

4種類かぐらいあり、一定のパターンがあるようだが全ての砲台が高速移動しながら撃つため、

予測して攻撃を回避することなど100パーセント不可能である。

リウス「くっ受け止めるだけが精一杯かッ!!ぬぅ!!装甲が・・・持たないッ!?」

リウスが叫んだ直後パーツの装甲が吹き飛び成されるままに地面に叩きつけられる。

ティンペットの一部一部が黒く焦げ、パーツ自体も原型をとどめていない。

その一部始終を見ていたゴウカンは拳銃にスロットルを入れるとつぶやいた。

ゴウカン「メダドライブ・・・。」

ハデス「メダドライブ?マスター・・・それは?」

ゴウカン「メダフォースを越えるレアメダルのなかのレアメダルが発動できる究極奥技。

     メダフォースを自在に使えるほどの者であっても発動させることはまずできない。

     だが発動すれば、メダフォースの数十倍の破壊力を発揮する。」

ハデス「数十倍・・・つまりレプラスが使ったあれは・・。」

ゴウカン「間違いないだろう・・・予想外だったな。」

ハデス「は?」

ゴウカン「お前以外にあんな大道芸ができる奴がいるとは・・・だよ。」

ハデス「・・・・・私のは・・・・・違う・・・。」



レプラス「くぅ・・・・・なんだろ・・・今の。」

力を使い果たしたレプラスは片膝をついた。草がジュッと一瞬で焦げる。

紫苑「レプラス!・・・・大丈夫?」

レプラス「なんとかね・・・リウスは?」

紫苑「そこ。」

レプラス「リウス・・・。」



リウス「ここは・・・・どこだ・・・?僕は・・・夢を見ているのか?」

リウスは見覚えのある荒野にいた。そして現在戦闘真っ最中だった。

ハデス「くっ!やはりこの数は抑えきれないのか!?」

リウス「ハデス?」

ハデスに自分の姿は見えないようだった。かわりにもう一人、あの時の自分が隣にいた。

カディア「アースーク達が・・うまくやっていると良いのですが・・。」

ハデス「くっ・・・シルバ達が・・・あいつらが裏切ることが無ければ・・・くそォ!!」

ハデスは正面にいたゴーフバレットを叩っ斬った。

カディアも負けじとミサイルを連射した。リウスが爆風に紛れて連携攻撃を連射した。

リウス「防衛ラインを無視して敵が奇襲してくるとはね・・フレンドチェーン!」

ハデス「あの森には何も無いというのに・・・どうしてここまで大部隊を連れてくる必要があるのだ!?」

咆哮は敵メダロットの脇腹を切り裂いた。

拠点としてはだいぶ後ろの方に位置している。背後に森を守る形でハデス達は防衛戦を繰り広げていた。

何千、何万という敵に対し、たった3機で守っているのだ。

もちろん戦っているのはハデス、リウス、カディアの3機だけではない。

少し前の方ではストロとラー・ゴールデンが、最前線ではパープラグオンが一人で戦っていた。

パープラグオンが一人なのは一緒にいたシルバやダークンが突如裏切りを起こしたためである。

フォストは動物達と一緒にいた。一緒にいなければ、まわりの戦いで動物達が怯えるからだ。

動物達に視線を配りつつもフォストは腰につけた刀の鞘を強く握り締めていた。



空から2体のメダロットが降り立った。

アースークとメカドラグーンだ。二人とも被弾が激しく、ボロボロの状態だった。

リウス「どうした!?」

アースーク「ダメっす!倉庫を二つ潰すぐらいしかできなかったッス!」

ハデス「充分だ!二人はフォストの下で治療と補給を急げ!」

アースーク「すまない・・・。」



一旦有利と思えた戦いだったがおよそ1000体の伏兵と共に

シルバ、バニジン、ダスト、ダークン、カービンの裏切りにより一気に一変した。

アースークの話では倉庫を2つ潰したようだが、まだ倉庫は5つ以上あるらしい。

さらに周期的に兵が補給されている。

アースーク達は秘密工作中に500体のロボウェポンが空から投下されるところを目撃した。

パープもラー達と合流していた。

ラーやストロ達が敵を減らしてくれてるおかげでハデス達もいくらかはうまく戦えた。



パープ「ちっくしょう!堕ちろぉ!」

ラー「塵に等しき我が灯火・・いつまで燃えていられるか・・・。」

ストロ「物騒な事言うんじゃないさね!」

3連の光は確実に多くの敵を撃破していた。仕留め損ねた敵はハデス達が処理した。

パープ「ん?あれは!?」

パープは銀色の刃を見た。間違いなくそれはシルバの物だった。

シルバ「冥土の土産を持ってきたよ!!」

空からロボウェポンが3000機降りてきた。気分が悪くなりそうだった。

さらにハデス達の方にも2000機が舞い降りた。

ハデス「・・・・・本気か。」

ラー「群れるだけの命、鎮めなければならぬ事を悲しく思う。」

ラーは銃を連射した。軽く30機は死んだ。パープも数機の頭部を焼却した。

シルバ「あんたはここで終わりだよ!紫龍!」

名前ではなく、本来の龍の称号で呼ぶ。これは決闘など、特別な意味を持っている。

パープ「白銀龍!!」

シルバはソードを振り下ろした。パープはそのソードを避けると体に酸を投げつけた。

シルバ「くっ!回避できない!」

左腕に右足に被弾した。ティンペットにも損傷がある。

パープ「とどめ・・・ぐふ!?」

パープの背後からダストが左腕を突き刺していた。

パープ「ダスト!?お前!!」

ダスト「所詮これは決闘じゃないのSA!!命を賭けた戦いだYO!!!」

突き刺した左腕からミサイルを放った。装甲を無視して内部を直接破壊され、倒れた。

ラー「ラグオン!!」

パープはピクリと動かなかった。機体から流れ出たオイルが地面を染めていた。

シルバ「死んだか・・・・余計なことを。」

ストロ「貴様ァーーー!!!」

ストロは巨大なキセルをダストに向かって突き出すとメダフォースを放った。

濃い紫色の弾がばらまかれ当たった敵を全て無に還した。ダストだけは両腕を壊されただけだった。

ラー「うつけ者!今の状況でバラバラに戦うなど・・・ちぃ!!」

ストロの姿はすぐに敵に隠れて見えなくなった。

ラー「ちぃ・・・インパクトダンス!!」

ロボウェポン数十機をマシンガンの放火でなぎ払ったが敵は虫のように多い。

所詮ラーは軍師の位置にある。戦闘向きではないのだ。

ラー「(弾が持つか・・・?)」



ハデス「ラー達と連絡は!?」

カディア「ダメです!うわ。」

カディアに放たれたミサイルをリウスが叩き落す。すぐさまリウスが敵に向かって反撃する。

リウス「くそ!敵多すぎるよ!!あいた!」

リウスにゴーフバレット10機がとびかかる。

ハデス「リウス!」

リウス「邪魔なんだよお前らー!!」

機体に紫色に光り両腕を振りかざす。灼熱の光と共にゴーフバレットを消し去った。

カディア「やるー♪あれは?」

カディアはすぐ横にせまる敵メダロットの大群を指差す。

商品名『ランドブラキオ』。ブラキオサウルスがコンセプトで長い首と黄色いビーム砲が特徴。

最大の弱点は戦車タイプ特有の足の遅さか。

カディア「使わせてもらう。いくよ!」

リウス「カディア?何するつもりさ!?」

20体のランドブラキオ全機がカディアに標準を合わせる。

カディア「ブレンドフラワー!」

カディアは右手をかざし、ランドブラキオの思考回路をショートさせた。

ハデス「なるほど。」

カディア「全機、右向け〜右!発射ァ!」

20機のランドブラキオが一斉に右を向き、両腕のビームを発射した。

ハデス「我々も続け!!」

リウス「カオスツイスター!」

カディア「ラピスラズリ〜♪」

ハデス「クロノアーチェル!!」


第84話 〜短絡〜



ハデス「・・・・・。」

随分時間が経ったかもしれない。

あれほど騒がしかった戦場は静けさに満ちていた。

ハデスの手にはほんのわずかの砂があった。

その砂は風にまみれてさらさらと空気に溶け込んでいった・・。

姿の見えないリウスはハデスを、戦場を見ていた。

シルバ「さあ、ハデス。そこをどきな・・どいたら命だけは助かるよ。」

ハデスは無言、無表情で左腕、プルートソードを構える。

シルバ「・・・・・・あくまで戦う気なのかい・・?」

シルバは顔をしかめた。彼女の背後には兵器の異名を持つゴットエンペラー、

ゴーフバレット、ロボウェポン、ランドブラキオ、

そして戦闘用に改造が施された兵士型メダロット、フロントラインや

連射に優れた銃を持つサボテンナなど総計2億はくだらない戦力。

対して森を背にしたハデスは味方がいない。

全員敵にやられたり、損傷の影響で戦線を離脱した。

もはや森を守るものは・・・・ハデス一人だった。

ハデス「・・・・・ボソ・・・ボソ・・・・・・コード・・」

シルバ「!?なんだい!?聞こえないよッ!?」

シルバが叫んだ時背後から断末魔の叫びがあがった。

振り返った直後ゴットエンペラーの首の雨が降り注いだ。

シルバ「な、うわぁ!?」

驚愕の声を出したそのすぐ後、いや全く同時に2000機のメダロットが爆発した。

摩訶不思議な死をする仲間の爆発のなかに通る1本の白い糸、ハデス。

シルバ「龍将ー!!」

ハデスの目はすでに赤く燃えており意識というものが感じられなかった。

普段は見せない、ハデスに潜む鬼が実態した姿だろうか?

シルバはハデスを追い左腕で斬った。だがシルバの剣は空を斬った。

ハデス「オオオオオオオオォォォオオォオオォオーーーーーーー!!!!!!!」

ハデスが拳を突き出すたびに何万枚というメダルが粉々になる。

シルバ「な・・・。」

ハデスは龍の眼でシルバを睨みつけた。睨まれたシルバの機体は一瞬で砕けた。

シルバ「ッ!!気だけで・・・この威力・・。」

地面に数百万枚のメダルが転がる。ハデスの咆哮はそのメダルをも無に還す。

ロボロボ「撤退・・・撤退ロボ!!逃げるロボ!!」

残った兵士とシルバ達はすぐさま撤退を開始した。

ハデス「逃ィがァすゥかーーーーー!!昇天斬ッッッッ!!!!!!」

ハデスの気の刃は大地に地平線まで延びる底なしの絶壁を作り出した。

刃は撤退する敵の半分を一瞬で消滅、原子爆弾級の爆煙をあげさせる。

シルバ「化け物め・・・・・・・・!!」



ハデス「カハッ・・・・・。」

ハデス1機に2億の敵の8割以上が消滅。

なぜこのような破壊力の技を使わなかったか?

味方と敵の区別がつかないのだろうとリウスは自分を納得させた。

力を使い果たしたハデスはそのまま倒れこんだ。倒れた場所の土は焦げ、異臭を放つ。

それはレプラスのメダドライブと同じだ。だが何かが違う。

ハデス「私も・・・ここで・・・・死ぬ・・の・・・・か・・・・。」

途切れ途切れに喋り、虫の息のハデスは微笑を浮かべた。

リウス「・・・・・・ん?」



数分前、ここはまぎれもない戦場だ。そして今も煙と残骸で満ちている。

その修羅場に一人の人間が直立している。

全身に黒い服をつけ、黒いマントに顔を隠す仮面。

太陽の光が強いこの場所で、なぜこの人間はこんな格好をしているのだろう?

????「仰せの通りですね・・・ここは修羅場だ。」

男の声だった。その声には若干楽しさが含まれていた。

????「・・・・コード龍神将・・君はまだ死ぬ存在ではないのだ・・・。」

男はつぶやきながらゆっくりとハデスに歩み寄った。

仮面に隠された素顔にどんな表情が浮かんでいるかなど確認する方法は無い。

男はハデスをやさしく抱き上げた。ハデスの機体は熱を持って高温のはず。

だがこの男は呻き声一つもらさず平気で抱いている。そしてその足を森に向けさせた。

男が森に消えるとリウスの意識は戦場から飛び去った。


第85話 〜随伴〜



時はレプラスとリウスが戦った時間に戻っていた。

リウスはハデスを見ると残念そうに笑った。

リウス「・・・・ハデス・・・君はあの時すでに僕を越えてたんだな・・。」

レプラス「リウス?」

リウス「夢を見たよ・・・ハデス・・僕は君を見間違っていたかもしれない。」

ハデス「今更何を・・・。」

リウス「いつからなんだろうな・・僕が僕で無くなったのは・・

    やはり人間達が攻め込んできた時なのかな・・。」

なぜメダロットは涙を流せないのだろう。なぜ人間だけ涙を流せるのか。

リウス「僕にはカディアがいた・・・・ハデスにはミリオンがいた・・フォストも・・

    癒せる環境で・・・なぜ僕は変わってしまったのか・・・

    一人の少女が加わった時だって反発の意思は無かったのに・・・。」

ゴウカン「・・・・。」

リウス「・・・・なぁハデス?」

ハデス「ん・・?」

リウス「カディアは許してくれるかな・・・?僕のことを・・・こんなことを

    やってしまった僕を許してくれるかな・・?」

ゴウカン「個人の魂の意思で罪を浄化できるほどあの世は甘くない。」

紫苑「!?」

ハデス「マスター・・・その意味は?」

ゴウカン「だが反省の意思がある。それが真実ならば救いの余地があるだろう。」

リウス「・・・・・。」

ゴウカン「(もう主に簡単に説明はしているのだがな・・。)」

悲しみという感情を持てるのに、目から水がこぼれないのはなぜだろう。

リウス「・・・ここに残って罪を償うというのはできるのかな・・?」

ゴウカン「それは無理だ。さまよう魂は成仏できないのだと判断され、

     発見次第死神に通告、地獄へと落とされリハビリを行う。」

リウス「リハビリ?」

ゴウカン「その後は生きるものが知ることではない。」

ゴウカンは視線を紫苑達に向けながら言った。

涙を流せるメダロットはいない。レアメダルも、涙を流せない。

ゴウカン「君の進む道は既に決まっている。無断変更は万死に値する。」

この悲しみは無くすことができないのか?悲しみだけを取り出して・・どこかに・・

リウス「レプラス・・・。」

レプラス「・・・?」

リウス「ごめん・・・そしてありがとう。」

レプラス「リウス・・。」

リウス「さびしい時はいつでも呼んでくれ。今の僕なら・・・きっと・・

    きっとレプラスのいい仲間として・・・助けれるかな・・レプラスを。」

悲しみと心は一体なのだ。どちらかを取り出すことなど不可能なのだ。

リウスは涙を流したかった・・・声をあげて泣きたかった・・・。

レプラス「いつでも呼ぶよ・・・また・・・そっちもさびしかったら

     いつでも夢の世界で会おうよ。会えるさ。」

リウス「ふふふ・・・・ありがとう・・・ほんとにありがとう・・。」

リウスの体が白くなった。淡い光を放ち始める。

ゴウカン「お迎えの時間が来たようだな・・。」

ハデス「リウス・・・。」

リウス「ハデス。」

ハデス「見ていてくれリウス。必ずあの時目指した世界・・・つかみとるその瞬間を・・。」

リウス「楽しみにしているよ。龍将!」

ハデス「神龍!」

リウスは天に消えていった。



翌日レプラスのメダルは綺麗な水色のメダルに変わっていた。

メダルには2頭の龍が飛翔していた。


第86話 〜無垢〜



空を飛行するコウモリ型メダロット『ゴーフバレット』が3機・・

ゴーフバレットA「ギギ・・今回のニンムは・・カンタン・・だッタナ。」

ゴーフバレットB「ムダグチはタタクナ。キカンしてカら言え。」

ゴーフバレットC「デモサー、このスピードデおッテクル敵なんざ・・・・

         イター!?」

ゴーフバレットA「ナニ!!?」

背後から猛スピードで2体のメダロットが追撃してくる。

だが飛んでいるのは1体だけ。もう1体は飛んでいるメダの上に乗っているのだ。

アースークとストロだ。

ストロ「もう少しスピード出ないさね!?」

アースーク「後付ブースターに文句言うなッス!!」

本来飛行型でないメダロットに強引に飛行機能を備え付ける。それがこの特殊なブースターだ。

アースーク「まぁたかがゴーフバレット、余裕で追いつける!」

ゴーフバレットA「ギ・・。」

1体が反転し迎撃する。ゴーフバレットの攻撃は対空。飛んでいる敵にはめっぽう強いのだ。

ゴーフバレットA「エレクトミサイル・・ファイヤー!」

無数のミサイルがアースークを襲う!

アースーク「ストロ!飛ぶッス!」

有無言わずにストロがゴーフバレットに向かって跳躍する。

跳躍と同時にアースークはミサイルの波を無茶な噴射で回避し、

もう1体のゴーフバレットに鉄球を打ち込む。

ゴーフバレットB「グカ・・・テッキュウ・・だト・・。」

ゴーフバレットA「二号機!?どうしタ!?」

ストロ「よそ見するんじゃないさね!」

ゴーフバレットA「ギカァァアアア!!!!・・・・・・・!!」

2体のメダロットが蒼穹で爆発する。

ストロはアースークに上手に着地すると肩のバルカンを乱射した。

残りのゴーフバレットに。

ゴーフバレットC「オット・・・なんだこの豆鉄砲は・・。」

アースーク達がこのゴーフバレットを狙う理由は先のリウスとレプラスの戦闘を見られた可能性があるからだ。

状況が状況なだけに敵に知られると厄介な情報がありすぎる。

リウスの暴走により平たい情報は敵に漏れていると承知だが、

レプラスのメダドライブは一番知られたくないことだ。

ストロ「後付バルカンだから効果は薄いか!!」

本来ストロとアースークに射撃パーツは無い。

組織にある後付タイプの装備でなんとかしようと思ったが敵もそんなに馬鹿ではなかった。

この類の装備は一般のメダロットが装備すれば制御できないほど強力な物ばかりなのだが、

ストロ達の性能は通常のメダロットの何倍も高いため、

どれも中途半端にしか感じない物になってしまっている。

ゴーフバレットC「この状況デノ撃滅ハ不可!逃げるがカチだ!」

ゴーフバレットは一目散に逃げ出した。

アースーク「さっきよりも敵の速度が上がっている・・やばいッス・・。」

ストロ「つべこべ言う前に飛べ!」

アースーク「無理ッス・・これ以上の速度は期待できない。」

ストロ「くそ!くそー!!」

ストロは狂ったようにバルカンを連射した。だが既に射程外である。

ゴーフバレットC「へっ・・・どうダ!もうこれでトドカナ・・ん?」

背後からはストロ達が飛んでくる。正面からは紫色のメダロットが飛んでくる。

???「サンユニットー!」

ゴーフバレットC「ぐあああ!」

逃げ出したゴーフバレットが残骸と化した。

ストロ「アイツは!?」

アースーク「パープラグオン!!」

パープ「お久しぶりです、先輩。探したよ。」

アースーク「それはこっちのセリフッス。」

ストロ「とにかくこれでメンバーは揃ったさね!」

パープ「メンバー?」

ストロ「ハデス、ストロ、アースーク、ラー、そしてパープ。

    後はロボロボ団の基地がわかり次第、総攻撃を開始できる。」

パープ「ロボロボ団・・・なるほど〜。」

アースーク「一緒に来てくれるか?紫龍。」

パープ「モチ!!」
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