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第12章 戦いの上に立つ言葉

第70話 〜邂逅(かいこう)〜

良い天気だ。

蝶は賑やかに飛び回り、虫は勢いを増して短い一生を爆発させる。

ほとほとと流れる水を見ながら一人のメダロットが川辺を歩いていた。

全体が紫に近い赤で塗装され、背中に飛行機と見られる巨大な物体を背負うように装備。

肩には板のような装甲が体を囲むように張り付いている。

腰に長い棒をつけ、頭の角はクワガタを思い浮かばせる。

???「今回の町は・・・結構住みやすそうだな。」

しばらく歩くとパトカーが横を通り過ぎた。

急いでるようでそのメダロットの姿にも気付かなかったようだ。

???「なんだ?」

メダロットはパトカーの後を追ってみた。



パトカーは立甲の表札の家の前に数台止まっている。救急車もある。

一人の警察官は現場検証、また一人は聞き込み、また一人は野次馬の相手をしている。

救急隊員は山積みにされた警察官を病院に運んでいた。

ゴミにたかるハエのように集まった人ごみの中に紫苑やゲンブ達の姿があった。

スザク「くそ!どけっ!」

警察官「あ、君!ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!!!」

スザク「関係者だっつーの!!セイリュウ!」

警察官「ちっ・・近頃の子供は・・ん?」

紫苑「失礼します。」

レプラス「お先に。」

警察官「あ、もう・・・ちょっと!」

最後尾にいたゲンブが警察に詳しい事を話している間に紫苑達は家に入った。



レポーター「昨夜また子供の誘拐事件が起こりました。

      犯人は家のドアを大胆に破壊し、2階の窓を割って逃走した模様で・・」

子供部屋は無残な姿である。

レポーター「被害者はこの家に住む小学生の立甲セイリュウちゃん9歳で、

      両親もかなり前から行方不明だったようです。警察は現在行方を捜査中です。」

老人A「こんなど田舎にも誘拐の手が広がったか・・ここも落ちるのは時間の問題かのぅ。」

若人「おいおいじいさん、そんな不吉なこと言うなよ。」



メダロットは人ごみの外から見物していた。

???「(誘拐・・?そういえばこないだもどこかで騒がれていたな・・。)」

メダロットは迷うことなく人ごみの中に入っていった。

警察「あー君!ここは立ち入り禁止だよ!もう・・・何回いえばここは納得してくれんのかなぁ・・。」

???「済まないな。(しばらくは様子を見るか・・。)ん?」

家から警察が出てきた。紫苑達もいる。

警察官「ダメだ。決定的な証拠が無い・・大胆なくせに証拠が無いんだ。

    くそ、どこぞの野郎なんだかな・・。」

紫苑「セイリュウ・・・ちゃん。」

ゲンブ「くっ・・スザク、どうします?」

スザク「ちっ・・コンビニでも行って考えようぜ。」

レプラス「ここであがいたってしょうがないもんな。よし、行こう。」



???「(ん?・・・今のメダロット・・あの機体はなんだ?カスタムか?)」

レポーター「ただいま入った情報です。」

???「?」

レポーター「現在クルス町近辺で1台のトラックが暴走しています。

      進行方向にはコンビニがあると思われ、付近の住民は避難をしてください。

      繰り返して連絡を・・。」

???「コンビニ?・・そういえば・・行った方がいいな。」

メダロットはすぐに紫苑達の後を追った。



ザコ「アマクサ様、これは危険ロボ!すぐにやめてほしいロボー!!」

アマクサ「バカめが!えぇい、落ち着けロボ!」

ザコ「それになんでアマクサ様が運転せずにメダロットが運転してるロボー!?」

アマクサ「ロボロボ団の掟その3!メダロットは作戦を成功させるための『道具』である!

     所詮は使い捨てなのだロボ、人間が運転し、もし死にでもしたら命がもったいないだろう!?」

ザコ「といってもこのスピードは・・わーロボ!」

アマクサ「おい!あとどれくらいで目的に着くロボ!」

メダロットA「ガガ・・あと20秒デス。」

アマクサ「上出来ロボ。さぁいさぎよくロボロボ団の未来のために散るロボ!」

メダロットA「ガガガ・・ラジャー。」



メダロットA「ロボロボダンニ・・・・エイコウ・・・アレー!!!!」



紫苑達はコンビニの駐車場に集まった。

ピーピーピー・・

スザク「ん?ゲンブ、メダロッチからなんか鳴ってるぞ。」

ゲンブ「あ?・・あぁ、これですか。

    メダロット社とかRR(ロボトルリサーチ)社とか、

    色々な会社からアップロードデータが販売されてますから。

    これは神速ニュースアタッチメントと言いまして現在地に関係したニュースを

    即座に届けてくれる物です。」

買ったばかりのメダロッチでできる機能は最低限のロボトルの情報収集、

メダロットへの会話機能、時計機能、パーツの管理などである。

メダロット社、RR社、オシロイカンパニーなどは全てのメダロッチ共通で

色々な機能を好みでつけれるように様々なデータを格安で販売している。

ゲンブのつけている神速ニュースアタッチメントを始めとし、辞書機能、

簡易銀行、簡易電卓、天気予報システム、パーツカスタマイザー・・

合計で何種類あるかわからないほどある。もちろん、新しいメダロッチにはほかの機能が備えられてたりもする。

紫苑「ニュース?ゲンブ君、読んでくれる?」

ゲンブ「はい。えーと・・クルス町に暴走トラック?進行方向にはコンビニが・・コンビニ!?」

ヘルメス「マスター、まさかあれでは!?」

彼方にトラックが見える。だいぶスピードを上げてるらしい。

だがトラックは確実にコンビニに向かってきている。レプラスは運転手がメダロットなのを確認した。

アレス「運転手がメダロットだと!?」

レプラス「うん、つまりこれは・・誰かがメダロットにそう指示したんだ!」

ヘルメス「野良でなければ・・ですね。!!来ますよ!」

アレス「レプラス、ヘルメス、ディモ、動くな。コンビニの前でトラックを受け止める!」

ディモ「ホワット!?正気かアレス!?」

アレス「コンビニに激突すれば周囲に被害が生じる。それだけは避けたいからな。」

紫苑「レプラス・・?」

レプラス「大丈夫さ。・・・・・やってやる!!」

紫苑達はコンビニの横に退避した。ヘルメスが小声で話す。

ヘルメス「(レプラス、アレス・・・変わったと思わないか?)」

レプラス「(変わったよ。今は・・とても心強い。)」

コンビニの上ではさっきの謎のメダロットが腰につけた棒を構えて立っていた。



トラックはコンビニに激突する寸前にメダロット4体により止められた。

だがトラックは止まることを知らなかった。すでに運転手のメダロットは脚部を残し大破している。

ヘルメス「一応止めてはいるが・・・くく・・このままではそれがしらも同じ餌食となるぞ!」

アレス「く・・・誰かがやらないと・・守らなければならない!!この世界をー!!」

アレスの体が金色に輝く。突如トラックのタイヤは粉砕し、トラックはその場に止まった。

???「ふむ・・あれはメダフォースか。」

トラックの後ろからメダロットが山のように出てきた。その中にロボロボ団の姿もある。

ビャッコ「ロボロボ団でやすか!?」

ゲンブ「しかも・・あなたは!」

トラックから出てきたのは給食争奪事件を起こした張本人、アマクサである。

アマクサ「チッ・・・またお前かロボ!」

ヘルメス「ということはまた食料関係なのか?おおかた・・・コンビニの弁当や菓子が目当てだろう?」

アマクサ「バカめが!だったらどうだと言うのだロボ!大人の事情もわからずに・・ガキが!!」

紫苑「何でもやってもいい訳ないじゃないの!」

アマクサ「バカめが・・・もう子供の戯言など聞く耳持たんロボ。トラックに積み込めないなら・・

     このコンビニを占拠するまで!者ども、かかれロボ!!」

何十体のゴーフバレット、ロボウェポンが一気に展開しレプラス達を囲む。

そのなかにガラパゴッシュの姿も確認した。

ガラパゴッシュ「ゴシュ!!」

ヘルメス「くっ・・・この数、並な計画ではないようだ。」

レプラス「見ればわかるって!くそう・・」

紫苑「レプラス、右にリペアシューター!」

レプラス「あいよぉ!!」

レプラスは閃光の雨を降らす。ゴーフバレット数機が黒焦げになった。

???「・・・。」

ヘルメス「そこだ!」

群れの中に潜んでいたガラパゴッシュに向かって発砲する。

ガラパゴッシュは隣にいたゴーフバレットをつかむなり引っ張り盾代わりにした。

アレス「仲間を盾に!?」

アマクサ「バカめが、仲間ロボ!?」

ガラパゴッシュは壊れかけたゴーフバレットをコンビニのガラスに蹴り飛ばした。

ガラスは粉々に砕け、ゴーフバレットのメダルも真っ二つに割れる。

ディモ「メダルが!」

ヘルメス「くっ・・許すまじ!」

ライオンのたてがみが金色に輝く。両腕の銃が発光し、幾万もの弾をマシンガンのように撒き散らした。

弾は全て頭部だけを射抜き、メダルには傷一つつけずにおよそ20機を葬る。

アマクサ「はははははーははロボ!ついに使うようになったかロボ。

     そうでなくては面白くないロボ。バリアブルムラマサーッッッッッ!!!!!!」

ガラパゴッシュ「ゴシュ!!」

地面を叩き割り衝撃波を出す。コンビニに向かってアスファルトをガリガリと削る。

ヘルメス「こんなものに・・・それがしは屈せぬ!!」

ヘルメスは衝撃波を3つに分裂させ跳ね返した。ロボウェポン7機が衝撃波に飲み込まれる。

アマクサ「ちぃ・・まずは奴らから一気に片付けるロボ。コンビニはその後だ・・。

     全機ミサイル・・一斉射撃ロボ!!」

アレス「マジか!?」

アマクサ「マジロボ!!」

数百機のメダロットが一斉にミサイル攻撃をした。ミサイルが津波のように押し寄せる。

ヘルメスとレプラスは可能な限り撃ち落とした。だがそれでも全体の4分の1を壊したのにすぎない。

ディモ「ジ・エンドか!?」



突如太陽からビームが降り注ぎ津波のようなミサイルを一瞬で全て破壊した。

レプラス達は煙に飲まれる。煙を払うかのようにさらに空から光線が降り注いだ。

さらに何かがアマクサの後ろの方でメダロットを真っ二つにしている・・まるでギロチンのように。

ギロチンはコンビニの正面に広がっている煙の中に消えた。

ようやく煙が晴れ、レプラス達が正面をみるとそこには見慣れないメダロットの後姿があった・・

???「どちらが正しいかわからないが・・個人の欲だけで公共施設を破壊するのは良くないな。」

アレス「コンビニは公共ではない気がするが・・」

???「?まだこの時代は公共ではないのか?(まぁだいぶ過去だからな・・仕方ないか)」

天から小さな砲台が降ってくるとそのメダロットの背中にまるで自分で生きているかのように取り付いた。

レプラス「誰・・・だ?」

???「アルデバラン。正義を見極める者・・・さ。」


第71話 〜精悍〜



アマクサ「正義を・・・ロボ?バカめが!!」

ロボロボ団のメダロット全機は再度ミサイルを連射した。

アルデ「・・・自分と意見が合わぬものは切り捨てるまで・・

    古い思考か・・。」

軽く言い捨てると背中の砲台からビームを発射した。

ミサイルの3分の2以上が殲滅されさらにビームは敵の脚部を蒸発させる。

残ったミサイルも鎌のような武器を振り回して破壊した。

ヘルメス「凄い・・一人であれだけの量を・・。」

アルデ「感心してる暇があるなら手伝ってくれないか?

    これだけの数では一筋縄ではこちらも危ない。」

そう言うなり右腕の銛を敵に撃ち刺し動きを止める。そこにレプラスの砲撃が来る。

アルデは横からロボウェポンが殴りかかってきたが避けるなり両腕を切断する。

よろけるロボウェポンの頭部にアレスが膝蹴りを叩き込み機能を停止させた。

ヘルメス「アレス、そんな攻撃は・・」

アレス「メダルを壊さなければ充分だ!スザク、いくぞ!!」

スザク「おうよ!左ッ!」

アレス「了ッ解!だぁー!!」

切れ味バツグンのソード『ブレードハンター』でゴーフバレットを両断する。

ディモは自慢の攻撃で相手を凍らせてから粉砕する。

ヘルメスも負けじとロボウェポンを破壊する。

ヘルメス「次から次へと・・それがしも無理をしなくてはならないかァ!!?」

ヘルメスの体がもう一度金色に発光する。そこにアルデも加勢した。

アルデの体が青白く輝き出す。レプラスも続く。

アルデ「・・・・・おもしろい。」

ヘルメス「トリプルメダフォース!!」

アルデ「虚無に・・・なれ。」



アマクサ「・・バカめが!・・く・・これは何かの間違いロボ!!」

ガラパゴッシュ「ゴシュ!」

アマクサの立っている所はメダルが草原のように散らばった場所のど真ん中である。

アレス「さっさと去れ!そうすれば殺しはしない!!」

アレスは右手のソードをアマクサに突きつけた。その様子にアマクサは微かに笑う。

そして吹き出したように笑い出した。

ヘルメス「何がおかしいのだ!?」

アマクサ「ひゃーはははははロボ。・・・・・バカめが!!!

     殺すロボ?ひゃーはははははははは・・・ひひひ・・。

     やってみろロボ!!ほら・・・さぁロボ!!」

アマクサは挑発するように前へ歩み寄る。アレスはその様子にたじろいだ。

アレス「!?」

アマクサ「どうした?さぁ殺してみろロボ!!さぁ!さぁァ!!!」

スザク「・・・・・チッ。メダロット三原則を利用しやがって・・。」

メダロット3原則、メダロットが人に危害を加えないように、

危害から避けるためにするために作られた基本プログラムのことである。

人を故意に攻撃できなかったり、人に危険が降りかかるのを黙って見ていられないのはそういうことだ。

アマクサ「バカめが!!殺すつもりが無いなら『そうすれば殺しはしない』など戯言を言うなロボ。

     さぁって・・・じゃあ始めるとするロボか!?」

アマクサは足元の残骸を拾い上げると残骸でアレスを攻撃した。

アレス「ぐあっ!」

アマクサ「キーヒヒヒヒロボ!さぁ、殺してみろロボ!」

スザク「アレス、とっととやっちまえ!」

アレス「ダメだ・・体が言うことをきかない・・。」

アマクサ「バカめが!!」

アレス「くあぁッ!!」

アマクサに吹っ飛ばされたアレスはコンビニの壁に突っ込む。倒れたアレスにスザクが駆け寄る。

アマクサ「さぁ・・・次はどいつロボ・・?」

アルデ「・・・・ふぅ・・。」

アマクサ「お前かロボー!!」

アマクサはアルデに残骸を振り下ろした。

だがアルデは残骸に背中のビームを当て蒸発させるとアマクサの腹に蹴りを食らわせトラックの側面に叩き込む。

アマクサ「ガッ・・・ァ・・。」

紫苑「!!」

ゲンブ「メダロット3原則が無い!?」

アルデ「後から生まれた人間が自分勝手に作った決まりごと。

    オレはそんなものに束縛されはしない。」

アマクサ「グ・・・3原則の無いメダロット・・・ロボか・・バカめが!!」

アルデ「・・・。」

アマクサ「ふは・・・ふはははははははははははロボ。これはおもしろくなりそうだなぁロボ!!」

ディモ「おもしろい?」

アマクサ「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・目に浮かぶロボ。貴様らメダロットが・・

     メダロットが殺した人間の山の上に立つ姿が・・・修羅場の光景が!!ロボ。」

アルデ「神にでもなったつもりか・・・哀れな。」

アマクサ「あ・・・わ・・・れ・・・?ヴァカめが!!哀れロボか?そんな言葉初めて聞いたロボ!!

     くはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

アレス「どこまで・・・嫌な集団なんだ・・ロボロボ団は・・くふっ。」

スザク「無理に喋るなアレス。」

アマクサ「また合間見えようじゃないかロボ。戦場で・・・戦場で血を流し合おうじゃないかロボ。

     それまでごきげんようロボ!ふっふっふっふ・・・はーはっはっはっは!!ロボ。

     あ、カチッとな、ロボ。」

腰から出したスイッチを押し込む。トラックから光が漏れ、大爆発を起こした。

アルデ「んくッ!!」

紫苑「きゃ!」

ゲンブ「ちぃッ!!」



アルデ「逃がしたか。音と煙だけの爆発とは・・・・・こうなることを予想していたのか?」

紫苑達とアルデバランはコンビニを後にした。


第72話 〜白詰草〜



スザク「セイリュウがさらわれ、コンビニで騒動があって・・全く。

    死神がオレらを追いかけてるみてーだなぁ〜?」

レプラス「その言葉、前紫苑から聞いた。」

スザク「な゛っ・・。」

ビャッコ「少なくともここにいるみんなはそう思ってるはずでやす。

     ・・・・彼を除いては。」

レプラス「彼?」

ヘルメス「アルデバラン殿だ。」

アルデは紫苑達の輪に加わらず距離を置いて周りを見ている。

落ちてた空き缶を拾うとそれを近くのゴミ箱に入れた。

ヘルメス「あの強さは並なものではない。・・そして3原則もないとなると・・。」

レプラス「ところでさ?メダロット3原則って実際どんなのなのさ?」

アレス「ぇ・・知らなかったのか!?」

レプラス「うん・・。」

ヘルメス「まぁ簡単に説明しましょう。一つ、人を故意に傷つけてはいけない。」

レプラス「うんうん。」

ディモ「ひとつ、人に危険がふりかかるのを見過ごしてはならない。」

レプラス「ふむふむ。」

アレス「最後にその二つの範囲内で他のメダロットに致命傷を与えない。」

レプラス「ん!・・・あれ?」

ヘルメス「どうかしたか?」

レプラス「いっつも致命傷与えてるような・・。」

ヘルメス「修理して直せるようなら構わないことだ。

     それにメダルを一切傷つけていないしな。」

レプラス「二つ目の危険がふりかかるのを見過ごしてはって・・・当たり前のことじゃないの?」

アレス「場合にもよるんだよッ。深く考えると頭痛くなるぜ?」

レプラス「故意に傷つけてはならない・・・あれ?あれあれ?」

スザク「今度はなんだよ?」

レプラス「ステルミアはバルカンでスザクを攻撃したじゃん。あれは3原則を無視してるんじゃないの?」

全員「!!」

アルデ「(・・・・ステルミア?セイリュウ?)」

スザク「そういえばそうだな・・でもあれはあまりに怒っていて止められなかったとかな・・はは。」

ゲンブ「スザク君・・笑い事じゃないですよ。」

スザク「・・・すまん。」

ヘルメス「(ぐ・・・素直に謝れると調子が狂う・・。)」

アルデはベンチに腰掛け空を見上げた。空には紫色の飛行機雲がうっすら見える。

でも紫苑達の話にしっかり耳を傾けていた。

ビャッコ「そういえばステルミアのメダルって見たことあるでやすか?」

スザク「ん?・・・・そういや無いな。てっきりマーメイドあたりかと思ってたけど。」

紫苑「思えばステルミアって機能停止したこと無いよね・・?

   機能停止すればメダルが飛び出して絵柄見れるけど・・。」

ビャッコ「謎が深まるばかりでやす。」

スザク「だぁーもう!!今はその話じゃないだろ!セイリュウの行方を捜すんだ!!

    警察になんか頼めねぇ。今までさらわれた奴は誰一人見つかってないんだからな。」

ゲンブ「でも何か手がかりはあるんですか?」

スザク「無い。」

レプラス「・・・・・。」

スザク「無いもんはしょうがねぇだろォ!!」

アルデバランはベンチの下に隠されていた空き缶を拾い上げるとゴミ箱に捨てると少し近づいてアレスに言った。

アルデ「・・・・おい。」

アレス「!・・・・なんだ?」

アルデ「その友達がさらわれたのは昨夜のことなのか?」

アレス「ああ。」

アルデ「・・・・・なら人違いかもな。すまない。」

アルデは公園を出て行った。

ヘルメス「人違い?」



ここは朽ちたセイリュウの家。割れた窓から風が入り込み、崩れそうな壁から水が滴り落ちる。

傷だらけの部屋で人目を避けるように家具に隠れるように服を着替えている女の子がいる。

部屋の外では一人のメダロットが見張りをしている。

????「やれやれ・・・ここまで来て服を着替えなければならないか・・人は不便な生き物です。

     まぁ・・・パジャマでは限界がありますかね?」

????「よしっと。終わったよー!ロボ。」

????「了解、ジコクテン様。さぁ、狩に参りましょうか。」

ジコクテン「うん!」


第73話 〜黝簾石(ゆうれんせき)〜



アレス「!上だ!!」

ヘルメス「ぇ、おォ!?」

空から酸が降り注ぎ公園に無数のクレーターと異臭で満ちる。

天から黄色いメダロットが降りてくる。3本指で、ミカンのような頭部。

絶版とされ、すでに生産が中止されているレアメダロット『イヨキッス』だ。

そしていつのまにかジャングルジムの上にはロボロボ団の幹部らしき人物がいる。

イヨキッス「突如の攻撃、避けられるまで強くなったかい・・結構結構。」

レプラス「誰だ!!?」

ジコクテン「我が名はジコクテン・・・審判により貴殿らに制裁を下すロボ。」

アレス「制裁だとッ?おもしろい!!」

スザク「アレス、いくぜ!!たった一人で勝てると思ってるのかよ!」

少し間を空けるとイヨキッスは落ち着いた声でスザクの言葉を一蹴した。

イヨキッス「もとよりその気だ。まとめてかかってきなさい。」

ヘルメス「ただの馬鹿か・・よほど自信があるのか・・。」

ジコクテン「後者ですね。シボリカジュー!」

イヨキッス「ぎょ〜イ〜ッ!!」

右腕から紫色の液体を発射、アレスの足元を溶かす。

ビャッコ「シボリカジュー!?」

スザク「昔ネットで噂されてたパーツかよ!アレス、斬ッ撃!」

アレス「おう!」

アレスはイヨキッスにソード攻撃を行った。

イヨキッスは紙一重でソードを避ける。そこにアレスの左腕が来る。

アレスの左腕を片手で受け止める。

イヨキッス「少し兵法を考えなさい。」

敵の腕の特性は酸攻撃のメルト。アレスの左腕をつかんだまま溶かした。

アレス「ぐ!?」

イヨキッス「次のダンスの相手は・・・誰でしょうか?」

まるで虫でも払うかのようにアレスを吹っ飛ばす。

アレスは空中で体勢を立て直すと地面に着く前に右腕をなぎ払った。

金色に帯びた刃から赤い衝撃波が生み出されイヨキッスを襲う。

だがその衝撃波は難なくかわされアレスは一瞬で背後から蹴りを三連打喰らいのけぞる。

ヘルメス「くっ・・・好きなようにはさせん!」

ヘルメスが敵に向けて1発発砲する。イヨキッスは一瞥すると2本の指を突き出した。

2本の指を箸のように使い弾を受け止めた。

ヘルメス「何ッ!?」

イヨキッス「ミカンはすっぱいですが・・あなたの攻撃は甘いですよ。」

ヘルメスの目の前で弾を挟み折った。そこにアレスが迫る。

アレス「くらえぇ!!」

イヨキッス「発展してませんね。」

イヨキッスは一瞬でアレスと組み合うと右膝の後ろに自分の足をかけ後ろに押し倒した。

柔道で使う技だが、少し経験をつめば誰もが防ぐことができる初歩的な攻撃だ。

アレス「く・・。」

アレスはそのまま巴投げをする。イヨキッスは投げられたものの鮮やかに受身をし、頭部からライフル弾を発射した。

ディモ「させん!」

ディモはアレスの前に立ち氷の壁を作りライフルを防いだ。

だがライフルはその場で放電をし始め、壁は一撃しか持たなかった。

ジコクテン「この程度ですか。新型と聞いたからもう少しやると思ってましたよ。」

ヘルメス「どこかで聞いたセリフだな。」

言葉に苦笑しながらヘルメスは敵に攻撃をしかける。

イヨキッスは鮮やかに避けるとヘルメスに向かって酸を投げる。ヘルメスも鮮やかに避ける。

スザク「そこだ!!」

アレスは変形し、火炎弾を吐き出した。

ジコクテン「ちっ!まだそんな余力が残ってたロボか!?イヨキッス!」

イヨキッス「ぎょ〜イッ!!」

イヨキッスは片手をパーにすると飛んできた火炎弾を跳ね返した。

アレス「何ッ!?」

火炎弾はアレスに返ってくる。レプラスがアレスをかばうように前へ出る。

紫苑「レプラス、いくよ!」

レプラス「あいよ!!」

レプラスは火炎弾を両手で受け止める。そして体が金色に輝きだした。

アレスの火炎弾と、レプラスのメダフォース、プラズマショットを合わせた火炎雷撃弾を再び敵に返す。

イヨキッス「!??!!?!!?いくら強くても避けさえすれば・・」

イヨキッスの腕を背後から近づいてきたヘルメスが押さえつけ拘束する。

イヨキッス「なにッ!?くそ、放せ!!放さなければ・・」

ヘルメス「もとよりそのつもりだ。」

イヨキッス「!?・・・・・・・強く・・・なりましたね・・ヘルメス。」

ヘルメス「!?」

イヨキッスとヘルメスは爆風に飲み込まれた。



爆煙が晴れるとそこにイヨキッスとヘルメスは倒れていた。

ジコクテンは姿が見えない。自分のメダロットを置いて逃げたのか?

ゲンブ「ヘルメス!!」

レプラス「ヘルメス!」

メダルは飛び出してはいない。まだ意識はあるようだ。

ヘルメス「マスター・・・皆・・・ハハハ、やりましたよ。」

アレス「誰に似たんだか・・・・・さて。」

アレスは隣で横たわっているイヨキッスを蹴り飛ばした。こちらは直撃を受けたにもかかわらずまだ機能停止ではない。

イヨキッス「ぐ?」

アレス「セイリュウの場所を話してもらおうか。知っているのだろう!?」

アレスはイヨキッスの胸元をつかみあげ叫んだ。

そのアレスをイヨキッスは冷めた目で見つめる。

イヨキッス「知らぬ。我らロボロボ団のメダロットは常にマスターに忠実。

      聞きたいことがあればマスター、ジコクテン様に聞くがいい。」

スザク「そのマスターがお前を見捨てて逃げたから聞けないんだよッ!」

イヨキッス「見捨てた?何を馬鹿なことを。まぁ期待を裏切ることもあるだろう。

      どちらにせよ、マスターがここにいないなら余計な詮索は無用だ。

      我らメダロットは戦場で残された時敵に余計な情報を聞きだされないように、

      作戦以外の情報は持っていない。もちろん、アジトの場所もな。」

アレスは舌打ちし、つかんでいた胸元を離した。ドサッとイヨキッスが地面に落ちる。

イヨキッス「もし私がアジトの場所を知っていて貴殿らに話したとしても、

      そのセイリュウという奴を助け出すのは不可能だ。世界はまもなく消滅するからな。」

ビャッコ「世界が消滅!?どういうことでやす!?」

イヨキッス「私はそれ以上の情報は持っていない。もういいだろ。」

脚部のほこりを払うと公園の出口の方に歩き出した。

アレス「おい、どこへ行く!」

イヨキッス「マスターを探す。」

アレス「そうはいかない。大事な捕虜だからな。」

イヨキッス「捕虜?私が?おもしろいことを言うようになったじゃないか。

      捕虜なら私よりも的確な者がそこにいるだろう?」

ヘルメス「そこに?」

イヨキッス「後ろさ。」

アレス「後ろだと?」

後ろを見ればロボウェポンが目の前にまで迫りこちらが気付くのを待っていた。

相手が自分の姿を確認したのを見計らってパンチを繰り出した。

紫苑「ぅ・・レプラス、一気に・・行くよ・・。」

レプラス「紫苑!?どうしたの!?」

紫苑「大丈夫・・めまいがしただけ・・。」

ゲンブが紫苑を倒れないように抑える。ゲンブはイヨキッスの方を見たがすでに姿を消していた。

アレス「ちっ!ゴミ掃除か・・。」

アレスは正面のロボウェポンを切り刻んだ。



ヘルメスはロボウェポンを確実に仕留めレプラスは炎の雨、ディモは氷の風で援護、

アレスは傷ついた体を押しながら敵の頭部を木っ端微塵にした。

戦いが終わった時には既に日は落ち、辺り一面闇に沈んでいた。



翌日公園には子供が溢れていた。昨日の騒動などおかまいなしに遊んでいる。

ロボウェポンの残骸は誰かが片付けたようでネジ一つ落ちていなかった。

ゲンブ「昨日の騒動など無かったようだな・・この光景・・。」

レプラス「でもなんでこんなに子供多いのさ?」

紫苑「しょうがないよ、今日、日曜日だもん。私達だって子供だし。」

紫苑達は少しだけ幸せな時間を過ごした。



朝が来れば再び夜が来る。昨日があるから明日が来る。

ここはティンタウン西区の果てにある遺跡。

以前は発掘が盛んで観光名所にまでなっていたが今は衰退し見るも無残な光景になっていた。

所々穴だらけで山の中は油断をすれば奈落の底逝きの落とし穴まである。

そしていつ崩れるかわからない壁だけなので立ち入り禁止区域になっていた。

アルデ「・・・発展した都市の裏の顔か。」

アルデは吐き捨てるようにつぶやいた。空には無数の星が浮かんでいる。

炭鉱のためのトロッコは朽ち果て、線路もサビだらけ、これではまともに走ることは不可能だろう。

アルデ「見かけだけは廃墟・・か。」

カサッ

人の気配がする。メダロットが・・2体か。

ライトに照らされ目を潜める。ライトを持った人物は・・黒いマントにシルクハット、仮面。

後ろから銀色のメダロットと、オレンジ色のメダロットがついて来る。

ゴウカンとハデス、それにアースークだ。

ゴウカン「おや、先客がいるようだハデス。」

ハデス「何・・?見かけない奴だな。さては・・。」

ライトの光を避けながらアルデが言った。

アルデ「さては?なんのことだ?」

ハデス「ロボロボ団のメダロットか?」

アルデ「ロボロボ団?あの黒いタイツのか?」

ハデス「そうだ。」

アルデ「悪いがオレはロボロボ団ではない。すまんな。」

ゴウカンはライトのスイッチを切った。遺跡は再び闇に沈む。

ハデス「なら聞こう。こんな時間にここで何をしている?」

アルデ「観光だ。ただし一人でな。君達もこんな廃墟に何の用だ?」

アースーク「ま、簡単にいやぁ調査っすね。」

アルデ「調査?」

ハデス「それ以上は必要ないだろう?こんな得体の知れない者にごちゃごちゃ言う義理も無い。」

ハデスは歩き出そうとした。が、すぐに歩みをやめた。

アルデ「・・・・・ちっ。どうやら囲まれたようだな。」

ハデス「わかるか?・・・敵影が確認できないためまだどんなメダロットかはわからんが・・。」

ゴウカン「敵の姿が確認できれば良いのかな?」

ゴウカンは拳銃を引き抜くとマガジンを交換した。銃口を空に向ける。

ゴウカン「だがこれは相手にも自分の姿をさらけだすことになる。いいか?」

アースーク「相手はもうこっちの場所を把握してるっす。

      今更姿を改めて見せたって、戦況が不利になることは無いっすよ。」

ゴウカン「了解した。ハデス、2秒後にパターンGだ。」

ハデス「了解だ。」

ゴウカン「いくぞ。照〜明ッ弾っ、てぇー!!」

絶叫と共に空に一輪の花を咲かせる。遺跡は数秒だけ鮮やかに光りを帯びた。

その一瞬で周りにいる敵を全てロックオンするとアルデは背中のビーム砲を一斉掃射する。

ハデスもそのビームに加わり、アースークは巨大な鉄球を投げつける。

空の一輪の花びらが散った後、地上にはまばゆい星色の花が開いた。



アルデ「カラミティ・・・懐かしい言葉だ。」


第74話 〜真実〜



遺跡から花火が上がり1分も経たない内にそこは残骸の山となった。

奇襲しようとしたロボウェポン数機は逆に奇襲され

成すすべもなく破壊されたのである。数秒で。

ハデス「中々の腕だな。観光客で留めておくのはもったいない強さだ。」

アルデ「もったいない?おかしなことを・・。

    いくら強い力を持っていても・・道を間違えれば終わりだ。」

アルデの言葉にハデスの体がビクリと動く。

ハデス「道を・・・間違えるだと?」

アルデ「オレも一度は戦場に身を駆り、そして戦に耐え切れなく戦を捨て、

    そして死神の微笑みにより再びオレは戦に戻った。

    その期間の中で、多くの仲間が死んだ。オレの義理の弟だった奴も。」

ゴウカン「・・・。」

月に背を向けオイルが滴る鎌を構えながらアルデは呟き続けた。

その姿は死神そのものである。

ハデス「お前・・・何者だ?」

アルデ「オレはこの時代の者じゃない。ずっと未来から駆りだされた、

    不幸なメダロットさ。自分で不幸というのは馬鹿らしいがな。」

ハデス「未来からだと・・?どういうことだ?」

アルデ「32XX年、ロボロボ団の勢力が日本全域にまで拡大し、

    国会や防衛軍はたかが子供のメダロットまでも狩る恐怖の時代さ。

    凄まじい攻撃によりマスターの家も崩壊、その後全世界でロボロボ団が活性化。

    第4次世界大戦にまで発展した。人の争いもあるが、失われるのはほとんどメダロットのみ。

    人類から見れば、たかがゲームの戦争というイメージが強い争いの時代さ。」

ゴウカンは拳銃を抜きアルデを威嚇した。

ゴウカン「馬鹿な!何を言っている?奴らの勢力が日本全土を覆うだと?」

アルデ「オレが生きた時代はそうだ。そして野良になり、多くの野良と出会い、

    山の奥でひっそりと静かに暮らした。メダロットは人間ではない。

    太陽さえあれば、一応は暮らせる。」

アースーク「ソーラーシステムっすねぇ・・それでも足りない時はコンセントから直接補給・・・すけど。」

アルデ「でもそれも長くは続かなかった。たちまち防衛軍につかまり、

    心配するマスターがいないオレ達はすぐに鉄砲玉にされた。

    ある奴は『核』を積まされ、敵陣に侵入し、我と共に自爆する作戦を押し付けられ、死んだ。

    またある奴はほかの身寄りのあるメダ達の『盾がわり』として利用され果てた!

    弟のプレアデスとオレも特攻隊に入隊され、敵陣に向かわされた。

    否定をすればその場で射殺、人間がここまで愚かになっていたとは・・井の中の蛙は恐ろしいな。」

ハデス「黙れ・・・そんな話、誰が信じる!?」

アルデ「そういえばお前・・どこかで見たな。森での戦の時か・・?」

ハデス「何・・・・?」

アルデ「敵の攻撃に弟は切り刻まれ朽ち、日本軍は敗走。そしてオレはロボロボ団の捕虜となり、

    あらゆるデータを取られ、あらゆる戦に狩り出された。そして・・・

    『時空移動装置』のテストにも使われた。」

アースーク「『時空移動装置』!?」

アルデ「物質をデータ化させ、空間に何らかの力を与え歪ませた後データを歪みに放出。

    放出されたデータは一定の時間後に再構成される。

    その機械は遂に完成され、多くのロボロボ団が過去に飛ばされた。」

ゴウカン「過去に・・?まさか過去から自分の時代を作る気か?」

アルデ「名答だ。森の戦のまだはるか数十年前に移動を完了し、戦の準備に取り掛かった。」

ハデス「待て。なぜ我らの森の存在をロボロボ団は知っていたのだ?」

アルデ「帝の考えだ。詳しくはオレもわからない。

    散歩に出ていた白銀龍達を捕らえ、洗脳させ、開放した。」

ハデス「洗脳だと!!?」

アルデ「最も白銀龍、暗黒龍、死龍は自ら力に加わってくれたよ。

    雷龍は少し痛い目に合わせたら素直になり、虹龍は完全に洗脳させた。準備はそれまでさ。

    後は君も知っているだろう?」

ハデス「多くの仲間の裏切り、予想しえなかった大部隊の奇襲、全てはそういうことだったか。」

アルデ「その後自分の時代に戻るように上から命令があったが、

    装置の誤作動か、別の場所に飛ばされた。そしてゆっくり時間旅行を楽しんだよ。

    積年の恨みを・・・やっとこの時代で晴らせそうだがな。弟の仇を・・。」

ゴウカン「復讐か。」

アルデ「簡単な言葉で言えばそうなるだろう。オレも戦場で相手のメダルを破壊しない主義だ。

    仲間の死は見たくない。だが敵が人間、帝となれば話は別だ。絶対に殺る。

    だが長い月日の中でか、基地の場所が思い出せない。いや、移動したかもしれん。」

ハデス「その恨みも・・・果たせないかもしれないな。」

アルデ「?」

地面がパチパチと震える。ハデスの顔が鬼のように引き締まり、レーザー砲を構えた。

アルデ「やめろ。オレにお前と戦う理由は無い。」

ハデス「私にはある!!カディアの仇、リウスの恨み、私の怒り、あの方の悲しみを・・身を持って知れ!!」

アルデ「カラミティ。ちっ・・まさにオレ自身、そうかもしれないなぁ・・プレアデス。」

アルデのぼやきと咆哮の刃が激突した。


第75話 〜義旗〜



アルデ「だから戦う理由は無いと言っているだろう!?」

ハデス「ある!!だから私はここでお前を・・・・斬る!!!」

クロノアーチェルを鎌で払う。そこに鉄球が飛んでくる。

アルデは鉄球を叩き飛ばすと背中のビームを乱射した。

アースーク「戦う理由は無いっすか・・よくそんなこと言えますネェ・・。」

鉄球を振り回し再び投げる。アルデの横にあった岩山を粉砕した。

ハデス「戦う意味はお前もわかっているだろう!!?

    それはかつてお前がロボロボ団と共に戦った・・

    我々から見れば、お前はロボロボ団の手先だからだ!!」

ハデスはレーザーを放つ。アルデはその攻撃を軽くはじいた。

アルデ「手先!?誤解だ、何を言っ・・。」

そこに再び鉄球が飛ぶ。アルデは手に持った鎌で受け止める。

そして払うのけると威嚇程度に背中のビームを連射した。

殺気が無いのを一瞬で感じると微動だにせずハデスはさらに攻撃を続ける。

アルデは舌打ちすると今度は少しばかり力を入れて鎌を投げつける。

弧を描いて飛んできた鎌をジャンプで回避し、背後から隙を狙ってアースークが切り込む。

アルデは虫でも払うかのようにアースークの攻撃を流しある程度まで吹っ飛ばした。

アースーク「ぐッ!?」

アルデ「オレもただあんな話をしたわけではない。お前達には何かを感じた。

    それでオレも話す決心がついた。だが今のお前達にその何かは既に無い。」

ハデス「何かだと・・・?」

アルデ「・・・・。」

ハデスは少し表情を曇らせたが一瞬で鬼のような顔に戻すとレーザーを放つ。

アルデ「曲がった根性、めちゃくちゃな戦法、兵法など関係なし。

    ロボロボ団と・・・・同じだな。」

アースーク「同じ・・・!?」

アルデ「お前達は己が戦う相手を見極めていない。何と戦えば良いのか・・

    個人個人で敵は違うが、矛先をオレに向けるのは少し間違ってると思う。」

ハデス「戯言を・・お前がたった数瞬でもロボロボ団になり、我々に牙を向いたその日から

    お前は私達の敵だ。いずれは戦わなくてはならない敵になったのだ!!

    その運命を受け入れろ!!!!!!!!!」

ハデスがアルデに突っ込む。

アルデ「運命?本当に運命かな。」

アルデは攻撃を避けようとせず、あきらめたかのように目を閉じる。

アルデ「オレを斬りたいなら斬るがいい。それでこの乱世が幕を閉じるなら。

    先程も言ったがオレは基地の場所を知らない。たとえオレを倒して捕虜にしたとしても、

    何も得は無いと思うが・・・。」

ハデスは聞く耳持たぬとばかりアルデを切り裂いた。アルデは叫び一つ漏らさず気を失う。



アースーク「何を守り何と戦う。・・・ちゃー、難しい問題重ね重ねっすかね。」

ゴウカン「ハデス、アースーク、コイツを我らの基地に運ぶぞ。」

ハデス「!?本気か?マスター!!」

ゴウカン「奴らの基地の場所以外にも、色々聞きたいことがあるのでな。」



ゴウカン「ここにはまた来るかもしれんな・・。


第76話 〜紫檀〜



アルデが目を覚ましたのは暗い部屋の真ん中だった。

一片の装飾品も無い白一色の殺風景な部屋である。

アルデは体を動かしてみた。両手を電磁式の手錠で固定されてる以外に拘束は無い。

ゴウカン「お目覚めかな?」

ふいに闇の中から声が響く。ゴウカンが拳銃を構えながら歩み寄ってきた。

アルデ「お前は・・・。」

ゴウカンは無言でうなずいた。言葉無くとも通じると思ったのか?

アルデ「基地の場所は知らないと言ったはず。なぜオレを捕まえた?」

ゴウカン「基地の場所以外にも聞きたいことはたくさんある。

     これから君に色々と質問するから答えてくれたまえ。」

アルデ「嫌だと・・・言ったら?」

ゴウカンはためらいも無く銃を引き絞り壁に発砲した。

壁は轟々と熔解し、ひどい熱と硝煙の臭いが充満する。ただの弾ではないようだ。

ゴウカン「ここで死ぬ。素直に答えてもらおう。」

アルデ「・・・・・・この時代の人間も愚かか。」

ゴウカン「ふ、私が人間?馬鹿なことを言わないでくれたまえ。」

アルデ「何?」

ゴウカン「・・・・・おっと、こちらがしゃべるのではなかったな。

     では始めるとしよう。話した内容は全て録音される。

     そのことを頭に入れときたまえ。」

ゴウカンはさっとメモ帳を取り出し淡々とアルデに質問し始めた。

ゴウカン「まず一つ。ステルミアについてだ。」

アルデ「ステルミア?」

ゴウカン「公園で少年少女と会った時人違いか、と言っただろう?

     そのステルミアという事について聞きたい。」

アルデ「公園?何のことだ。」

ゴウカンは拳銃を引き抜くと銃口をアルデに向けた。

アルデは眉をひそめる。

ゴウカン「我らの情報網、甘く見ないでくれたまえ。」

そう言い放つと銃を収めた。

アルデ「・・・・・記憶が薄いのだがな。戦いの中で助けた女メダロットを介抱したことがあった。

    名前を覚えてなかったらしく、一緒にいる時だけはステルミアと呼んでいた。」

ゴウカン「容姿は?」

アルデ「水色がかった透明の機体。」

ゴウカン「君がロボロボ団にいる時か?」

アルデ「違う。その時オレはロボロボ団から既に逃亡している。」

ゴウカン「なるほど・・・・(ディスティだな・・・。)

     では次、その機体についてだ。詳細を答えてほしい。」

アルデ「この機体か?オレの時代の軍事科学者Mr.フィルムクローロナー氏が対ロボロボ団殲滅のために作った

    軍事機体だ。一般メダを凌駕する破壊力がそれを証明している。だがこれを操ることができる者が当時

    軍にいなかったようでな。野良メダ狩りで捕まった中で一番うまく使いこなしたオレがこの機体を手に入れた。

    同時に並行開発していた遠距離支援型のは弟分のプレアデスが継いだ。

    最もこの機体の右腕はプレアデスのものだがな。」

ゴウカン「と、いうと?」

アルデ「ロボロボ団との戦いで前の右腕は大破した。

    プレアデスの無念を忘れないためにもこれを使っている。」

ゴウカン「ならまだ森にその残骸があるかもな。」

アルデ「わからん。・・実際もう森は無いんじゃないのか?」

ゴウカン「くく・・この事については流すとしよう。

     次、帝について。どんな奴か知っているか?」

アルデ「わからない。遠くで見たことさえ一度しか無いのだ。いつも最深部で何かやっている。

    表に出ることは殆ど無い。わずかに感じることができた気配はお前と似ている。・・直感だがな。」

ゴウカン「似てる?」

アルデ「人間のようで人間ではない感じだ。」

ゴウカン「ほう。質問は終わりだ。」

アルデ「もうか?」

ゴウカン「最後にこれから言う方向に足を進めてもらう。死にたくなければ従ってもらおう。

     もちろん、目は閉じてだ。」

アルデは手錠をしながらもゆっくりと立ち上がり指示を待った。目をゆっくりと閉じる。

ゴウカン「右に2歩。」

ゴウカン「左に1歩。」

ゴウカン「前に3歩。」

ゴウカン「左に5歩、開けていいぞ。」


第77話 〜投錨〜



アルデが目にしたのはハデス達と出会った遺跡だった。

アルデ「・・・・夢?メダロットが夢を見るなど・・。」

少し考えたがやがて考えるのをやめると遺跡の外に歩き出した。

遺跡の奥の方ではコウモリが飛んでいた。



ロボロボ団の基地のひとつの部屋では作戦会議が行われていた。

アキレウス「コホ、虫が一匹飛んでおるロボ?」

バベル「虫?それがどうかしたかロボ?」

アキレウス「いや、飛んでおるのぅ・・・とか。」

アマクサ「馬鹿めがロボ。虫ならさっさと叩き落せばいいロボ。」

たしかにハエが一匹飛んでいる。どこから入ってきたかはわからないが、

弱弱しい飛び方をしている。もう長くは持たないか?

幹部は一つのテーブルに二人一組で向かい合うように座っていた。

アキレウス、バベルが片方に座りもう片方にアマクサとジコクテン。

その中心に陣取るかのようにデウスがテーブルの横側にいる。

デウス「ジコクテン、お前ならこの虫をどうするロボ?」

まわりの幹部とはほど遠い、まだ幼さが残る顔立ちだ。

ジコクテン「そう・・ロボね。私の場合は・・。」

しばらく沈黙した後銃声が響いた。ジコクテンの手にはエアガンが握られている。

ジコクテン「こうしますロボ。」

笑顔で告げるとエアガンをどこかにしまった。テーブルの真ん中にハエの死骸が落ちた。

バベル「・・・・・・。」

アマクサ「・・・・・。」

デウス「・・・・・・。」

アキレウス「・・・・・・コホ。」



その声を耳を傾けて聞いていたのは守衛の任務を命じられたシルバ、イヨキッス、サイズカッターだった。

耳を傾けていたのはシルバだけでイヨキッスは腕を組んで微動だにしていなかったが。

中に聞こえないように小声で話しかける。

シルバ「やはりアンタのマスター、なんかおかしいね・・。」

イヨキッス「・・・・・。」

シルバ「なんか言ったらどうだい?」

サイズカッター「チキ!」

シルバ「・・・アンタじゃないよ。」

イヨキッス「・・・何が変ですか?」

シルバ「アンタも含めてさ。たしか連行してきたまだガキとも言える女だよ。

    でも幹部になってから様子が一変している。」

イヨキッス「人の中には高い位置に上ると性格が変わる者がいる。

      マスターもその一人だと思う。」

シルバ「性格が変わるねぇ・・アンタはどうなんだい?

    見たところ、だいぶ落ち着いてるみたいだが。」

イヨキッス「私はこういう時に慣れているつもりです。マスターに拾われる前、

      2、3度ありましたから。」

シルバ「ふぅん・・・かなりここの雰囲気に溶け込んでるじゃないか、え?

    ま、最終作戦に向けて有能な兵士が加わってくれて、こちらとしても助かってるけどさ。

    でも裏切るのなら、その時は命が無いと思いなよ。」

イヨキッス「もとよりそのつもりですよ・・白銀龍様。」

シルバ「!!?」

イヨキッス「さ、守衛に戻りましょうか・・。」

イヨキッスは腕を組みなおし闇を見つめなおした。

シルバ「・・・・・・・(誰だコイツ?)」

イヨキッス「(私はここに来たことがありますからね・・・遠い昔に。)」

サイズカッター「チキ?チキチキチキ!」

バベル「うるさいぞサイズカッター!ロボ。」

サイズカッター「チキ・・・・・。」


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