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第11章 トーテムの惨劇

第62話 〜宿敵〜

今日は給食カットである。

教室では紫苑達女子が机を囲んで弁当に箸を進めていた。

少し離れたところでゲンブが話を聞きながら一人黙々と食べている。

おにぎりと漬物しか無い、とても小学生とは思えない内容かもしれない。

スザクとビャッコはゲンブに向かい合う位置でコンビニ弁当を食べていた。

ほかの男子は早弁したらしく体育館でバスケの真っ最中だった。

オシロイも含めてである。

パサパサしたご飯を食べながらスザクはゲンブに言う。

スザク「給食が無いんだけど怒らないんだな〜今日は?ぇ?」

聞こえていないようにゲンブはたくわんを口に放り込む。

カリッ、カリッと歯ごたえの良い音が続く。

スザク「聞いてるのかよナンバー2。」

ゲンブ「聞こえていますよ。」

スザク「だったらなんとか言ったらどうだナンバー2。あん?」

スザクは割り箸をカチカチ鳴らした。

ゲンブ「今日はだいぶ前から給食カットという予定されていました。

    それにこうやって弁当も用意してきましたし。

    事前に決められていることに関して文句を言うほど僕は愚かではありません。

    ごくわずかの人の独断で自分自身の立場が侵されない限り。」

そういい終わるとまたたくわんを口の中にいれた。目は閉じている。

スザク「そう言う割にはトーテムポールズについては随分と

    『勝手な』文句を言い続けてるじゃねーか?紳士さんよ。」

ゲンブの目が少しだけ開き眼光をスザクに突き刺す。

ビャッコはそのゲンブにわずかにビビッた。

ゲンブ「全てがスザク君とビャッコ君の独断だからですよ。私とセイリュウさんに一切の話をせずに

    チームにいれランクを付け、それこそ愚かな行為です。引き金を引く原因ですよ?」

スザク「ハハハハハ・・・独断?オレがリーダーなんだから独断に決まってるだろ?

    ま、多数決で決めたんだから独断も何も無いけどな・・ハハハ・・。」

ゲンブ「多数決・・・!?」

スザク「実際言うとなぁ・・当初の予定はオレとビャッコ、そしてお前の3人グループだったんだがなぁ・・。

    花が無いからクラスで一番気の小さいセイリュウをお前を入れた次の日に入れたのよ。

    作った当時は2対1。もちろん1はお前、セイリュウは数にいれてねぇ。入ったのは後だからなぁケケケ。」

群がる女子の中でセイリュウは一人硬直していた。

ゲンブも心の中で沸き立つ感情を抑えられなかった。立ち上がり、食べかけの弁当を鞄にしまい込むと大声で叫ぶ。

その声の大きさに女子は全員驚きゲンブとスザクを見た。

ゲンブ「君がそれほど下賎な人間だったとは・・・いいでしょう!今日こそ君に勝ち、

    トーテムポールズそのものを消滅させ二度と勝手なことをさせないようにしてあげます!!」

スザク「へっ、やっぱそうきたか。ワンパターンだなオイ。」

立とうとしたスザクを横からビャッコが制した。スザクがちらっと見る。

ビャッコ「待つでやす!新型なのはスザクとゲンブだけではないでやす!!」

ゲンブ「・・・・『元』ナンバー2・・ザコがおめおめと帰ってきた・・といいますか?」

ビャッコ「この!そんな余裕打ち砕いてみせるでやす!来い、ディモーーー!!!」



砂が風で舞うグランド。なぜか無音の空間に包まれている。

まわりに人が誰もいないというわけではない。紫苑やレプラス達がいる。

だがその誰もが口を開こうとしない。誰もがゲンブを見守っている。

残念ながらビャッコを見守っている者はいない。少なくともグランド上には。

学校の向かいの家の屋根から一人の男が望遠鏡で二人のロボトルを観戦していた。

ゲンブとヘルメスは両手をブラリと下げている。一見隙だらけに見えるが、

いつ戦闘が開始しても反応できる力具合になっていた。ディモもそうである。

メダロッチを構えたビャッコの前に片足を後ろに引いた状態でヘルメスを睨みつけている。

その間を縫うようにスザクがニヤニヤと笑いながら立っている。

スザク「ふぁ〜〜あ〜あ〜・・・じゃお前ら準備はいいんだろな?」

ゲンブ「はい。」

ディモ「いつでも。」

スザク「じゃいくぜ、ロボトル・・・・・ファイッ!!!」

ディモ「うぉおおおおおーーー!!!」

しかし動いたのはディモだけだった。



トーテムポールズができた当初はナンバー1はスザク。ナンバー2はビャッコ。

ゲンブはナンバー3の位置にいた。だが今はゲンブの方が上にいる。

それはなぜか?

それはトーテムポールズのルールにある。

「上のランクに勝てば昇格できる。」

つまりスザクに勝つことが出来ればナンバー1に君臨し、トーテムポールズの行く道先を考えることが出来る。

ゲンブは言葉で通じないスザクに対しそのルールに乗じ挑み続けてきた。

ランドローター使いのビャッコにはおよそ10秒で実力の差を見せつけ、

スザクとの時もあと一撃で終わるという所まで戦いを制した。

だが一戦目はアレスの改心の一撃でヘルメスが大破。

二戦目はアレス、ヘルメスとも同時に頭を潰し引き分けに終わっている。

続く三戦目、四戦目と幾度と無くゲンブはスザクに挑むが、

全ての戦いが引き分けに終わっていた。



真正面から突撃したディモは右腕に力を込めた。

右腕は青い光を放ち氷を纏う。氷でできたメリケンをヘルメスに叩き込む。

ディモ「アタック!」

ヘルメス「所詮成長などしていないか。」

ヘルメスはしゃがみディモの攻撃を避けふところに入り込む。

そしてディモの顎(あご)に銃口を当てるなり1発撃ちこんだ。

ディモ「がぁ!!!」

メダロッチ「ディモ、頭部ダメージ100。機能停止、機能停止。」

ビャッコ「なっ・・・・に・・2秒・・・でやすか!?」

ヘルメス「負け犬の出る幕ではないということだ。早々に立ち去れ。」

ビャッコに銃を構えた姿勢でヘルメスが言い放つ。アレスが前に現れる。

違和感があるのは右腕が爪ではなくサーベルになってるからか。

スザク「ふん・・負け犬かよ。言うならお前も負け犬じゃねーか。」

ゲンブ「負け犬で終わらない。いきますよ!」

スザク「しゃらくせぇ!!アレス、ぶちのめしてやれ!」

アレス「了ッ解ィィィィ!」



アレスはヘルメスの横の方向に走る。

その反対方向にヘルメスが走る。即座に直角的にアレスが飛び左腕を繰り出す。

ヘルメスは攻撃を受け止めもう片方の腕で反撃する。

アレスは受け止められた手に力を込めヘルメスの体制を崩し攻撃を外させた。

すかさず右の剣でわき腹を斬りつけるがヘルメスは間一髪で避けるとアレスの頭に蹴りを浴びせる。

アレスがのけぞった隙を見て肘で吹っ飛ばす。吹っ飛ばされたアレスだが途中で体を回転させ、

地面を蹴り態勢を立て直す間を与えずに飛び下蹴りを喰らわした。ヘルメスは両腕を交差し防御する。

アレスは連続で攻撃しようとするがヘルメスがアレスから離れそれは叶わなかった。

ヘルメスは離れるなり右腕のガトリングを乱射する。薬莢が凄い速さで地面に散らばる。

地面に拳を叩き込み地面を巻き上げる。巻き上げられた土によってヘルメスの銃は防がれる。

土煙の中からアレスはサーベルを構えながら突っ込む。真上から振り下ろすが体を横にずらしかわす。

拳を握りアレスの頭を殴る。アレスもヘルメスを空高く蹴り飛ばす。

ヘルメスは空中でアレスに向かって発砲、アレス難なく回避。動きを予測しもう1発。足首に当たる。

スザク「ラチが開かねぇ!アレス、変形だァ!!」

アレス「おう!」

アレスの体が不規則に回転し四脚の姿に変わる。そして口を開けるなりヘルメスに火炎弾を放つ。

当たる寸前ヘルメスの姿が消える。そして現れた場所はアレスの後方。

ヘルメスも変形している。するどい牙を備えたライオンのようである。

だが牙は飾りだ。ヘルメスはたてがみから銃を乱射する。

1発1発威力が数倍に上がっているらしく1発当たるだけで地面を大きくえぐる。

アレスは残像を残し真横に移動。ゴウッと風が舞う。

山で戦ったロボロボ団のメダロット、サイズカッター級のブースターを装備しているようだ。

アレスはもう一度火炎弾を発射する。だがまたヘルメスに当たる寸前に、今度は火炎弾が

パァンと弾け飛んだ。一種のバリアーを装備しているようである。ヘルメスは一瞬でアレスの背後に移動、

背後からたてがみを連射した。アレスの装甲が剥がれ落ちる。振り返りアレスが噛み付く。

たてがみの半分をへし折り牙をもいだ。変形を解除し顔にハンマーを叩き込む。

また一瞬で遠くに移動しアレスのハンマーを避けるとヘルメスも変形を解いた。

二人は対峙する。両者の体に異常が発生する。機体が黄金に輝きだしたのだ。

右腕を唸らせ飛び込む。サーベルが虹色に光る。

アレス「うおぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

両腕の銃が銀色に輝き周囲に小さな竜巻を起こさせる。

ヘルメス「はああぁぁぁあぁあああああ!!!」

アレスとヘルメスは互いに相手の頭部に自分の武器を叩き込んだ。巨大な爆風に飲み込まれ、

轟音が怒涛のように響き、風が巻き起こり二人は見えなくなった。


第63話 〜スザク〜



チャリーン・・・・・・

煙の中で何かが落ちる音がした。

薄れていく爆煙の中で一つの影が崩れ落ちる。

煙が晴れ、それはあまりに凄まじい光景だった。

グランドにはヘルメス、アレスを中心に大きなクレーターができていた。

崩れ落ちたのはアレス。ヘルメスが勝ったのだ。

ゲンブ「ヘルメス!」

ヘルメス「く・・・ぅ・・やりましたよ・・・マスター。」

ヘルメスもその場に倒れこむ。ゲンブが駆け寄りすぐに別のパーツに交換する。

パーツを交換しただけでも幾らは楽になる。

スザク「・・・・・・・・チッ。」

ゲンブ「・・・・スザク?」

スザク「なんだよナンバー1が。どうせオレはナンバー2さ!

    えぇ!?どうせそうなんだろぅーーーー!?馬鹿野朗がぁ!!!!」

スザクは門を出て校外に飛び出した。まだ昼休みである。

無論午後の授業がまだある。

ゲンブ「ちょ!スザク君、授業は!?」

遠くから知るかバカヤローという声がこだまして来た。

ヘルメスは外れたアレスのメダルを機体、タイガーハートに戻した。

アレスが目を覚ます。だがスザクがそこにいないことに気付きため息を漏らした。

アレス「やはり・・・・ここまで来て負けるとなると・・ショックが大きかったのか。

    無理にとった頂点だから・・いずれは取られる、そうオレは思っていたが・・。」

紫苑「ショック・・?」

アレス「マスターの親から聞いた話だ。マスターは・・・遊びでも勉強でも2番止まりだったんだ。

    もう数年前の話だが。」

ゲンブ「スザクが2番・・?」

驚きの声を発する。無理も無い。今のスザクの成績は後ろから数えた方が早いのだ。

アレス「どんなに頑張っても1番が取れない。そして事件が起こった。

    マスターが・・・今に至る原因になってしまった・・」

レプラス「事件?」



スザクが小学1年生の時だった。いつものように仲間と公園でサッカーをしていた。

その公園は今のクルス町の公園ではなく遠い都会の真ん中に作られた小さな公園だった。

2本の交通量の多い道路に囲まれ、両側は住宅街に面している。

野球なんてできやしないがサッカーのゴールはひとつだけ作られている。

後は鉄棒が一つ、小さなジャングルジムに、シーソー・・。

スザク「シュートだぁー!」

友人A「おぅ!?とれねー!!」

小さなゴールにサッカーボールが入る。友人達はスザクを称えた。

友人A「ちぃ・・なかなかやるじゃねーの。」

友人はスザクにボールを渡した。スザクはある程度離れてボールを地面に置く。

スザク「んじゃ、第二ラウンド、いくぜ!」

スザクはドリブルを始めた。キーパーは守備のメンバーに指示を出す。

????「スザク、勝負!!」

スザク「ホオウ!!」

ホオウ、スザクの目指すナンバー1。スザクがどうしてもかなわないナンバー1である。

男子に囲まれ女子であるホオウがいるのは違和感があるが彼女の実力は誰もが認めている。

スザク「今日こそお前に・・・・勝つ!!!」

ホオウの攻撃をスザクは力強い動きで避ける。だが前に進めない。

ホオウのフットワークを抜け出せずにスザクはなんとか抜け出そうともがいた。

その時強風が公園を横切った。ボールがスザクとホオウの足からそれる。

ホオウ「あ!」

スザク「お!?」

ボールはだいぶ二人から離れた。公園の入り口付近にまで。

スザク「わりぃ!ちょっと取ってくるわ!」

ホオウ「取ってきたら勝負再開だからね!」

スザク「わかってるって!」

スザクは公園の入り口に走った。幸いボールは道路に飛び出していない。

これなら車に引かれることも無いだろ、そう思ってスザクはボールに駆け寄った。

そう思ったのは間違いだった。横からワゴンが猛スピードで公園に突っ込んできたのだ。

スザク「!!」

運転手「わー!!!!ロボー!」

スザクは跳ね飛ばされジャングルジムにぶつかった。そしてワゴンは勢い余ってジャングルジムに突っ込む。

スザクはジャングルジムとワゴンに挟まる形になった。

後ろからパトカーが数台追いかけてくる。ワゴンは乱暴な運転でまた動き出した。

スザクは全身血だらけの状態で気を失った。彼女のホオウの声を微かに聞きながら。

ホオウ「スザク!?・・・誰か、誰かーーー!!!!!」



ホオウはボロボロになったスザクを見てショックを起こし意識不明。

スザクは全身打撲、内臓破裂、生きているのが奇跡という症状に加え治療方法がわからない脳の異常。

耐え切れないほどの頭痛を突如引き起こしめまい、貧血、吐血。

いつ起こるかわからない症状に医師もスザクの命を手放した。

どこかに治してくれる医師がきっといる。そう信じた親は日本中を捜し歩いた。

そしてこのクルス町に来てその医師が見つかった。だが完全に治すことは出来なかった。

体は事件以前と変わらないほどに復帰したが脳の症状は治せなかったのである。

出かけてる途中で再発し、まわりに誰もいなかったら死の危険もある。

そういう危険を取り除くため一人のメダロット、アレスがボディガードとして付けられた。

スザクは気を紛らわすため、アレスにロボトルを鍛えこんだ。



アレス「だからオレはマスターから離れる訳にはいかない。

    それがオレの使命・・・・任務だ!!!!」

紫苑達を学校に残しアレスはボロボロの体でスザクを追いかけた。

アレス「(最も・・使命、そんな軽い言葉でマスターに従ってる訳じゃないのだがな・・。)」


第64話 〜蜂窩(ほうか)〜



今日も学校が終わった。

スザクは学校を飛び出して帰ってこない。いや、家に帰ったのだろうか?

どちらにしろアレスがついて行ったのだから安心だろう。

ビャッコは放課後になるなりいきなり教室を出て行った。

こちらもゲンブに秒殺されたショックだろうか?

ビャッコとディモは困った時いつも行く森に行った。

そこはクルス町の東にある同じ景色が延々と続く不思議な森である。

延々と続くと思ったらふいに前から光が漏れ新しい世界が見えてくる。

だが大森林に一歩踏み出すとまた入り口に戻る。

クルス町から入り、来た道を振り返るとそこは森を抜けた先にある新しい世界の時もある。

この森一帯に妙な結界を誰かが張っているという噂があるが確かではない。

また突如どこからか数時間ごとに疾風が吹くので人は疾風の森と呼んでいる。



ビャッコ「今日も風が吹いてるでやすな・・・ディモ。」

額につけているゴーグルを陽光に光らせながらビャッコがつぶやく。

ディモ「・・・・今日の風は少しばかりサッドな気がイエスだな。」

ビャッコ達はまだ踏み出せない新しい世界を遠くからその風貌だけ見ることで気を安らいでいた。

スザクのパシリに心疲れた日も、ロボトルにめためたにやられた日も・・

不思議な一本道を進んで歩いた先に見える無知の空間。そこには何が待っているのか・・

ビャッコ達はその空間、ビルが立ち並ぶ都会の姿に今日も驚嘆する。

ディモ「マスター、1回・・1回あのシティーにゴーしてみようぜ?少しでオーケーだからさ?」

ビャッコ「そう思ってたところでやす。いくぞディモ!」

ビャッコ達は思い切ってその新しい世界、まだ見えぬ都会に向かって走ってみた。



走ってる最中いきなり目の前の景色がぼやけて暗くなるのを感じた。

そして気がつくと森の入り口にいた。街に走ったはずなのに着いた先はクルス町である。

ディモ「あ・・・ありゃ?」

ビャッコ「・・・?あれ・・・でやす。」

ディモ「マスター・・・確かウィーはあのシティーにランニングしたはずだよなぁ・・?」

ビャッコ「でもここはクルス町・・・もう一回行ってみるでやす!!ディモ。」

ディモ「了解ッ!!!!!」

何度やっても結果は変わらなかった。クルス町にいたり森の中にいたり・・

街にたどり着くことはできなかったのである。そして7回目の挑戦の森の中間地点で・・

ディモ「マスター、少しここから道をはずしてみてはいかがだ?」

ビャッコ「道を外す?それは・・・この森林に入るということでやすか?」

ビャッコは横を見た。名も無い木が我が先と天に伸び、雑草がうっそうと生えている。

一部一部に野の花が見え虫が飛んでいるのが見える。

熊が出たという話は聞かないが、蛇くらいなら出そうな森である。

ビャッコ「・・・・悪くない話でやすな。行くぞディモ。」

ディモ「イエッサー!」

二人は森林の中に入っていった。



同じ頃ゴウカンは大きな機械がある部屋で数人の会話の相手をしていた。

目の前には巨大なスクリーンが見える。スクリーンには赤い点と青い点がひとつずつ点滅している。

ほかには地形のデータらしく緑、茶、こげ茶と一面に広がっている。

画面の右下には数字がカウントダウンしていた。あと12秒である。

ゴウカン以外の数人は目の前のキーボードを音速に近いスピードで叩いていた。

オペレーターA「第三妨害地点突破されました!」

オペレーターB「識別番号A−34!A−35!いつもこの森に訪れる子供とメダロットのようです!」

ゴウカン「まやかしに夢を抱いてしまったか・・ワープグラフィックも改善せねばなるまい。」

オペレーターC「カウントダウン完了、疾風、レベル3で放出します。

        3、2、1、放出終了しました!」

オペレーターA「第二ワープポイント地点、パターンDからパターンEに変更します!」

オペレーターC「第二ワープまで接触あと3秒!2、1、あぁ!ダメです、突破されました!

        最終防衛ラインまであと1分!」

ゴウカン「ワープパターンの連続変更はどのくらいの隙がある!?」

オペレーターB「一度変更すると2秒経過するまで変更できません!」

ゴウカン「2秒・・・現地点から想定すれば・・ワープパターン、EからAに変更、

     基地内にジャマーバリア展開、バリアの展開時間は!?」

オペレーターC「現在の電力残量では2時間が限度です!」

ゴウカン「キツイな・・ハデス、アースーク、ストロに出撃要請!

     さらに基地半径10メートル範囲にイリュージョン空間システム展開!

     そこでケリをつけさせてもらう!君達は作業を続けてくれ!」

オペレーター全員「了解ッ!」



ゴウカン「やれやれ・・・迷える子羊がこんな天界に何の用かな?」



ビャッコ「おっと、もう森の外なのでやすか?」

ビャッコ達は森を出た。だがそこには目指していた街も、クルス町も無い。

見渡す限り広大な草原が広がっている。

ディモ「北側に出てしまったのか・・・?」

疾風の森は東側に出るとビャッコの目指した街がある。

西側に出ればクルス町である。南側は海がある。北側は何も無い。

ビャッコ「森に戻るでやすか・・ん?ディモ?」

ディモ「・・・・・何かがいる。」

ビャッコ「ぇ・・・?」

ディモは無言で辺りを見回している。微かに草がガサガサと動いている。

ビャッコ「・・・蛇?」

ディモ「ナットスネーク。・・・・メダロットだ。」

ビャッコ「メダロット!?」

そう叫んだ時動いていた草むらから白い影が飛び出しディモに斬りかかる。

ディモは両手でその攻撃を受け止めた。真剣白刃取りである。

ハデス「!?何ッ?」

驚いた声を発したのはハデスだった。その直後横から鉄球が飛んでくる。

ハデスもディモも鉄球を避ける。

アースーク「なかなか速いッスねぇ・・これは本気でいかないとダメ?」

ディモ「ハデス!?」

ハデス「・・・その声、あのランドローターか!」

アースーク「知り合い?」

ハデスとディモはお互いに向き直る。横でアースークが鉄球を元に戻す。

その場所にストロも駆けつけてきた。巨大なキセルを右手に持ち直す。

ハデス「まさか侵入者がお前とは・・・。」

ビャッコ「侵入者?侵入者ってなんのことでやすか!?」

ハデス「そんなことはどうでもいい!ここで見たことを全て忘れとっととここを去れ!

    そうすれば命までは取らない。」

ディモ「全てイレイズだと?それはできない。我輩たちは・・どうしてもあの街に行きたいのだ。

    あの街に行くためのルートは何が何でもメモリーにインプットする。」

ハデス「無理だと・・・・いうのだな?」

ディモ「・・・・・・ファイナルアンサーだ。」

ハデスは右腕の銃口をディモに向ける。ディモはいつでも動ける体勢を作る。

ハデス「アースーク、ストロ、ここは私に任せてくれ。お前たちは・・・・警護を頼む。」

ストロ「?一人で大丈夫なのさね?」

ハデス「充分だ。」

アースーク「はいよ。んじゃストロ、行くか?」

言った時にはストロとアースークはどこかに飛び終わった後だった。

何も無い草原にはハデスとディモ、ビャッコとゴウカンだけが残った。

ゴウカン「この距離だと気絶もさせやしない。やはり、力で押さえつけるしか・・・ないか。」

ディモ「押さえつける・・・?どういうことだ?」

ゴウカン「人には最低一つは秘密がある。ここは一般人は入ることが許されない場所なのだ。

     それを知らずに入ったことには早々に出て行くことで全てを許そう。

     だがその要求は受け入れられなかったようだなハデス?」

ハデス「忠告はした・・・ここからは秘密保持を守るための正当防衛となる。

    容赦は・・・・・・・・・・しない!」

ハデスのレーザーがディモの肩を焼き尽くす。そして瞬時にディモの背後を取るがディモの反撃を喰らった。

ディモ「マスター!ロボトルだ!!!」

ビャッコ「そうこなくてはでやす!負けてばかりではないでやすよ!

     ビーストボデイ展ッ開!」

ディモ「ラジャー!」

突如ディモの姿が見えなくなる。ハデスの時と違い、草の動きも無い。動いていないだけか?

ハデス「・・・・消えた?マスター、熱源反応は?」

ゴウカン「ダメだ。同時に電波を妨害している粒子を放出しているようだ。

     レーダーもきかない。」

ハデス「隠蔽行動型か・・・面倒だな。」

そうぼやきながらも後ろに腕を伸ばし何かをつかむ。そして何も無いところにレーザーを撃つ。

ディモ「ぐぉッ!?」

レーザーは見えないはずのディモに当たり横転させる。

ビャッコ「な!?なんでやす!?」

ハデス「後ろから攻める・・と大抵は決まっている。」

ハデスはレーザーを連射する。ディモはかろうじて避け続けた。

ディモ「こんのぉ!!!」

姿を隠さずに真っ向からディモが殴りかかる。右腕が青白く光り、冷たい風を起こす。

無言でハデスは鮮やかに避ける。避けた直後に背後をとり強力な蹴りを浴びせた。

ビャッコ「ディモ!」

ディモ「心配・・・ノーサンクス!!」

突如ディモの姿が消えハデスの頭上に移動する。そして思いきりハデスの頭は蹴り上げる。

ゴウカン「!?」

ハデス「くぅ・・・やるな!」

よほど力が強かったかハデスの頭がへこんでいる。

ディモ「我輩は・・・こんなところで止まっている訳には・・・いかないのだぁ!!!!」

ビャッコ「ふ・・・・・いくでやす!ディモー!!」

ディモはハデスに渾身の一撃を叩き込む。両腕をクロスさせて攻撃を防御するが、

腕の銀色の装甲は粉々に砕け散った。ティンペットがむき出しになる。

ハデス「!!?・・・・青二才が。」

ハデスの機体が金色に輝き右腕が虹色に、エネルギーが集まり巨大な渦を腕の周りに起こす。

ゴウカン「!待てハデス、それは!」

ハデス「・・・・・たァッ!!!!!」

虹色に輝く極太のレーザーがディモを飲み込む。直後巨大な爆発が起こり周囲の木をバキバキと破壊した!

ビャッコ「ディモ・・・?ディモーー!」

ゴウカン「(あちゃ。)」

ハデスは爆煙の中で燃え続ける影を見ながらため息をもらす。そしてその煙に背中を預けた。

もう敵は倒した。そう思っただろう。誰もがそう感じるはずだった。だが、

ディモ「ビャ・・・・ッコ・・・ビャッコーーーー!!!!」

絶叫でで煙を一瞬のうちにかき消す。そして・・・ディモの体は赤く輝きだした。

ハデス「あの輝き・・・まさか・・?」

ディモ「TAKEOVERーーーー!!」

ディモの体から細い光が何本も伸びる。その光は全てハデスの体を貫き内部から機体を破裂させた。

ハデス「く・・は・・・まさか・・!?」

ハデスの背中から白黒の仮面のような絵柄のメダルが飛び出した。

ゴウカン「(・・・やれやれ。だが、結果的には良いかもしれんなぁ。)」

光はまたディモの体に戻り淡い光を放つ。ボロボロのディモの体を・・何も無かったように修復した。

ゴウカンはそれが終わるのを見計らってディモにとび蹴りをかます。

そして1秒数える前にビャッコの首を後ろから叩き気絶させた。

ディモ「うぐ・・。」

ゴウカンはまだ気絶していなかったかと嘆くと腰から単発式の拳銃を出すとディモの頭に一発撃つ。

ディモ「ガ・・・・・・ガクッ」

銃口から上る煙を吹き消すと拳銃を腰に戻した。

ゴウカン「三連星、メダフォース発動を確認・・やっと戦力に加えれそうだ。

     ふは、ふはははははははははははははははげほほっげほ。」

ゴウカンは一人で草原で笑い続けた。


第65話 〜濃漿(こうしょう)〜



地平線に陽が沈みかけている。

わずかにこぼれる夕日の光を浴びて廃墟となった公園は顔を赤く化粧していた。

地面に少し大きめの虫の屍が転がっている。

その屍にアリが群がっている。恐らく巣に運ぶのだろう。

その光景を一人の小学生が無言で見つめていた。

スザクである。

学校を飛び出して数時間、どこをどう走ったかわからない。

そしてここはクルス町のどこでもない。全く場所がわからない。

気がついたらここにいた。

スザク「ここは・・・。」

崩壊したジャングルジム、崩れ落ちた見る影も無いサッカーゴール。

遊ぶ子供がいなくなってから数年経っているだろう。

アレス「マスター!」

スザク「アレス!?」

そこにはアレスがいた。やはりここはクルス町なのか?

アレス「探したぞ・・クルス町にいなかったからもう無我夢中に走ったら・・。」

アレスもスザクと同じようだ。だが本当に偶然か?

スザク「アレス・・・ここがどこだかわかるか?」

アレス「ん?さぁ。」

スザク「今まで忘れてたけど・・ここはオレは知っている。2年前の事故の現場だ。」

アレス「ここが!?・・・事故が起きてからここは使われなくなったという訳か。」

スザク「忘れやしねぇさ。いや、今まで忘れてたのか。平凡で自由気ままに生きていたんだから。

    自分が良ければそれでいい、そんな生活してたんだから復讐だって忘れていた。」

アレス「復讐!?」

スザク「ロボロボ団、そいつらが事故を起こした犯人。意識が飛ぶ寸前、ロボという言葉も聞いた。」

アレス「そんなことが・・。」

スザク「なぁアレス。オレらやれるかな?ロボロボ団をこてんぱんにできるかな?」

アレス「マスター・・。」

スザク「ふっ。マスターはやめろって。『スザク』でいいさ?」

アレス「スザク・・オレは・・オレは敗北を許した。そんなオレがまたパートナーをしていいのか?」

スザク「お前がいなかったら誰をパートナーにするって?笑わせるなよ。」

アレス「スザク・・・・」



落ちている小枝をパキっと踏み折る音がした。割れた小枝の上に黒い足がある。

オイルがボタボタと地面に落ちる。体から蒸気があふれ、放電もしている。

????「ユウジョウ。ココロ・・シミル・・ダガ・・ブカッコウ・・。」

アレス「!?スザク、注意しろ!」

スザク「なんだ?」

????「ランキング・・・1位・・・・オマエカ・・?」

スザク「ランキング?あのティンタウン地区のランキングか!?」

アレス「それがどうした・・まさかロボトルの申し込みか?残念だが今はそれどころじゃないんだ。」

カービン「ワガナ・・・デスカービン・・・ワレラノアルジノメイニヨリ・・・」

デスカービンは腕に滲むオイルを振り払い構える。

カービン「オマエ・・ツレテイク・・!」

言い終わる前にデスカービンはアレスに突撃した。それなりに距離があったはずなのに一瞬で距離を縮める。

アレス「速い!?ぐほッ!?」

デスカービンの膝蹴りが炸裂した。アレスの黄色い装甲が一気に赤く染まる。

スザク「修理してねぇパーツじゃ無理だな・・それにこれは正式なロボトルじゃない。

    アレス、パーツを交換するぞ!」

アレス「わかった!」

アレスの体が光天からい稲妻が落ちる。アレスの機体が元のスミロドナッドに変わる。

カービン「グァアアア!」

背後から来た重い拳をアレスは受け止めた。直後デスカービンの腕の装甲の一部が吹き飛ぶ。

アレス「自身の体が耐えられないほどの攻撃・・まともに受けたら危険だ。」

スザク「アレス、斬ッ撃!」

アレスの爪が唸り声を上げデスカービンの体を斜め十字に切り裂く。鮮血が飛び散った。

デスカービンは肩から青いリング状の弾を発射した。弾は縄のようにアレスの脚部にからみつき動きを封じる。

両足を封じられたアレスは仰向けに倒れこんだ。そこにデスカービンの一撃が入る。

アレス「くっ!」

両腕で一撃を防ぐ。無理やり縄をひきちぎるとデスカービンの体を蹴り飛ばした。

カービン「アマイ・・。」

宙を舞ったデスカービンは背後に爆風を放ち再びアレスに攻撃する。

アレス「ブースターか!」

バク転で攻撃をかわすなり反撃をする。左腕、ストローハンマーだ!

デスカービンもそれに応じて右腕を繰り出す。

両の拳は粉々に砕け散った。デスカービンの放電がひどくなる。

デスカービンのティンペットも爆発を起こし右腕が無くなった。

カービン「カハッ・・。」

スザク「チャンスだ!アレス、やれ!」

アレス「おう!」

アレスは連続で攻撃を繰り出した。攻撃が当たるたびにデスカービンからはオイルが飛び散る。

返り血で血だらけになりながらも攻撃を止めなかった。最後にアレスの一撃が入る。

デスカービンの左腕はティンペットも含めて粉々になった。

脚部もボロボロになっている。立っているのもやっとだと思うが、

デスカービンは平然と何も無いように立っている。痛みを感じないのか?

アレス「不気味な奴だ・・まるでゾンビだな。倒れても倒れても起き上がる。」

カービン「ゾンビ・・・・ソレハヒニクカ・・ホメコトバカ・・?」

アレス「どちらとも取れるな。」

カービン「ゾンビ・・・ゾンビ・・・・ゾンビ・・・ユ・・ル・・サ・・ナ・・イ・・。」

デスカービンの体が緑色に輝く。あれだけ傷だらけの機体がみるみるうちに修復していく。

スザク「再生もできるのか!?」

カービン「ユルサ・・・・ナイ!!!!!!!!!!」

夕日に染まっていた公園が急に闇のように暗くなる。そしてどこからともなく笑い声が聞こえてきた。

アレス「!?・・・これは・・なんだ!?」

スザク「アレス!右だ!」

アレス「ぅ!?あれは・・・!?」

右に見えたのはローブを纏った影。顔は茶色の頭蓋骨で手には赤い物がベットリついた鎌を持っている。

左にも現れた。首から先がない人間。手には自分のものだろうと思う頭部をつかんでいる。

そしてまわりに死骸に群がるカラスのように次々と現れる得体の知れない生物。

皆が皆刀や鎌と言った刃物を持っている。その切っ先全てが赤く汚れている。

アレス「ぐ・・・こ、これは・・。」

頭蓋骨「キシェシェシェシェシェ!」

現れた亡霊全てが一斉にアレスに向かっていった。アレスは成すすべもなく亡霊に飲み込まれていった。

突如亡霊が爆発し闇を消した。煙が空に昇っていく。

スザク「アレス!」

煙の中でもがく影がある。アレスだ。

機能停止はしていないものの頭部パーツ以外は全て壊れていた。そこにデスカービンはとどめの一撃を与える。

アレスの頭部は砕け散った。だがメダルは飛び出さなかった。

スザク「アレス!大丈夫か!?」

アレス「問題ない。」

スザク「問題無い・・・てあるだろ!!」

アレス「スザク、どうしてオレがお前を追ってここまできたか・・・わかるか?

    使命という安っぽい物じゃねぇ・・オレは・・オレはスザクが好きなんだ!

    強がっているように感じるが今を一生懸命自分なりに生きようとしている、

    いつ起こるかわからない症状に対し決して弱気にならない!オレは・・

    オレはそんなスザクが好きなんだ!スザクを失いたくなんかねぇ・・

    だからオレはここまできたんだ!!クルス町で・・またいつもと同じ生活を・・

    したいからな・・・。絶対に・・・こんなところで負けて・・たまるかぁああー!!!」

決意に満ちた声と共にアレスの体が黄金に輝きに包まれた。



アレス「オレはァーーーー!!お前なんかには・・・やられて・・。」

カービン「コノカガヤキ・・・・コイツモ・・・レアメダル・・!?」

アレス「やられて・・たまるかァーーー!!!!」

右腕の朽ちた爪から光の閃光が放たれる。デスカービンの体を十文字に切り刻む。

カービン「カハッ・・・。」

スザク「アレス・・・いけぇ!!」

アレス「言われるまでも・・・ないさァ!!」

アレスは地平線に向かって腕を払った。横一直線に光の閃光が伸びる。

光はデスカービンを捕らえた・・・と思った時デスカービンの姿が消えた。

空には銀色の髪が揺れていた。

アレス「・・・逃げたか・・。」



公園は再び静寂に飲み込まれる。しかし今度はアリすら気配を潜めていた。

予備のスミロドナッドのパーツに交換し、アレスは果てたジャングルジムに上った。

スザクはサッカーゴールを見ていた。陽はとっくに沈んでいる。

だが住宅街はあっても明かりは見当たらない。住居さえも使われていないのか?

アレス「ここは・・・廃墟みたいだな・・スザク。」

スザク「ああ。なんで短期間でこうなったかはわからねぇ・・だが、

    ここに人がいないのは確かだな。なぜだろな?」

アレス「・・・・・・。」

スザク「やっぱオレの事故のせいなのかなぁ?ここが廃墟になったのは・・。」

アレス「そんな!?事故一つで街が廃墟になるなんて・・・ありえないぞスザク!!」

スザク「さて・・どうかな・・・・・うぐっ!」

いきなりスザクは頭を抱え込んで倒れる。

アレス「スザク!?・・まさか症状が!?」

スザク「くぅ・・・こんな時に・・・かはァ!!が・・。」

アレス「スザク!く・・・どうすれば・・誰か!誰かいないか!?」

スザク「ダメさ・・アレス・・誰もいるわけ・・・ねぇ・・。

    オレも・・・・ここで・・。」

アレス「馬鹿野朗!あきらめるな!きっと・・きっと助けが来る!信じろ!」

スザク「へへ・・・。」

アレス「くっ・・誰かいないのかぁーー!?」

アレスは公園の入り口を見た。人影が近づいてきていた。

スザク「ふは・・ははは・・。」

アレス「誰か!誰か来てくれ!」

その声は影に届いた。暗くてよくわからないが、身長はスザクと同じくらいだ。

人「そこに誰かいるの!?」

アレス「救急車だ!救急車を早く呼んでくれ!」

人「え・・救急車って言ってもここは・・・あれ?」

人影はスザクに近寄った。だいぶ近くにきたので少女というのがアレスにわかった。

白いワンピースを着ている。倒れたスザクを抱き起こす。

アレス「何をしている!?救急・・」

少女「黙って。大声は禁物よ。それに、病院は無理ね。」

アレス「何・・・?」

少女「病院では彼の痛みは治せない。むしろ医学の権威は彼を見放したのよ。」

そう言いながらふところから小さな箱を出し中を開ける。見るとそこにはカプセル状の薬みたいな物があった。

水色と黄色のカプセルをひとつずつ取り出すとスザクの口に入れた。

少女「飲んで。」

スザク「く・・んく・・・。」

スザクの様子が安定してきた。痛みも薬で和らいだらしい。

アレス「何と・・。」

少女「応急処置は済んだけどこのままでは危ない。君、スザクのメダロットでしょ?

   悪いけどスザクを運んでくれる?」

アレス「あ、ああ。(ん・・今スザクって・・?)」

アレスはスザクを背負うと少女に導かれるまま公園を後にした。

公園はアレス達が出るとその姿を森に変えた・・まるでそこには公園などなかったように。

アレス「(この少女・・・何者だ?)」


第66話 〜魂魄(こんぱく)〜



スザク「(ここは・・・どこだ?)」

視界がうっすらと見えてきた。天井には扇風機がグルグル回っている。

体が重い。束縛などはされてないようだが体が重い。

毛布がかけられている。キーボードを叩く音が聞こえる。

少し体を起こしてみた。だが起こそうとした時横から何かに止められた。

見ればメダロットの腕である。スザクはその腕の主を見た。

ハデス「寝ていろ。今は安静第一だ。」

スザク「お前は・・・グランドの・・。」

ハデスの隣にアレスがいる。アレスは無言でうなずいただけで何も言わなかった。

次にスザクは正面を見た。白い仮面をつけた黒ずくめの男が立っている。

スザク「怪盗・・ゴウカン?」

ゴウカン「ご存知で何より、賀宴スザク君。知らなかったらどうしようかと思ったよ。」

????「気がついた?」

キーボードを叩く音が途絶えた。机に向かっていた少女がスザクの方に振り向く。

少女の顔にスザクは見覚えがあった。

スザク「ホ・・ホオウ?」

ホオウ「覚えていて・・くれたんだ。」



アレスは箱を手に取りながら中の薬を見つめている。

ホオウがスザクに飲ませた薬である。

アレス「用法、用量を正しくお使いください・・か。

    店頭では見たことないな。」

ホオウ「店に出しても売れないわ。第一意味が無い・・

    これはスザク専用に作った薬だもの。」

スザク「どういうことだよそれって。」

ホオウ「あなたが転校してから1ヶ月、ようやく意識を取り戻した私は母親からスザクのその症状を知ったの。

    なんとか私なりに助けようと思った。医学を熱心に勉強したのもあなたを探したのも。

    そして私は彼に会った。」

アレス「彼?」

ゴウカン「私だ。」

ホオウ「彼からこの施設の使用許可をもらったの。そして薬開発のためのデータはハデス様が集めてくれた。」

ハデス「ハデスでいい。」

スザク「データ?」

ハデス「お前の血液、生活強度、精神状態、ほか様々に解析し圧縮したデータさ。

    これを見ればお前のおよそ82パーセントの情報はわかる。」

とハデスは脇の机に置いてあったフロッピーディスクを手に取った。

スザク「そんなデータ・・・いつのまに。」

ハデス「隠蔽パーツを使えばたやすいことだ。現にお前のメダロットは索敵ができない。」

アレス「しかし勝手に個人情報を調べるなど・・・ストーカー行為だぞ。

    警察がだまっちゃいない。」

ゴウカン「結果的にスザクを救ったのだ。それに文句があるのかな?」

アレス「そういう訳ではないが・・。」

ゴウカン「それにここは国も存在を知らない聖域だよ。ここに入ることができるのは選ばれし者のみ。

     つい先ほど子羊が入ってきたがね。それでなかったら擬似誘拐行為なんざできるわけがない。」

アレス「聖域だと?」

ハデス「ああ。」

ホオウ「もちろん集めたデータは時が来れば処分する。もちろん公開なんてもってのほか。

    約束する。」

スザク「時が来れば・・・て、いつだ?」

ホオウ「もうそろそろ処分できそうよ。スザク立てる?治療室に移動するよ?」

スザク「治療室?」

アレス「安静第一と言っ・・」

ハデス「医師の判断だ。従え。」

アレス「・・・。」



スザク「治療室って・・治療は誰がやるんだ?」

ホオウ「私と彼・・・ゴウカンよ。」

スザク「・・・・は、ここは素直に信じるさ。ホントに・・これでケリがつくなら・・。」

ゴウカン「一応言っておくがこの治療の成功はスザク君、君の心の強さにかかっている。」

スザク「心の強さ?」

ゴウカン「君はこれから時を越える。そしてまた再び目覚める場所がここでなければ・・治療は成功だ。」

スザク「目覚めた場所がここなら?」

ゴウカン「治療は失敗だ。君は一生その傷に怯えることになるだろう。」

スザク「・・・・。」

ゴウカン「さて・・そろそろだがスザク君、準備はいいか?」

スザク「いつでもいいぜ?」

ゴウカン「では・・・グットラック。」

スザクの視界は突如闇に覆われた。



治療室の外でハデスとアレスは互いに向き合いながら話していた。

アレス「心の強さ?一体どういう治療なのだ?」

ハデス「私にもわからない。ただ薬を使った治療でもなく、体に傷をつける治療でもないのは確かだ。

    そうでなければ・・この基地を使う必要など無いからな。」

アレス「そうか・・。」

ハデス「実際私もあのマスター・・ゴウカンの事は半分以上がわからない。

    出会ってから何百年という時が過ぎたが・・アイツは平然と生きている。」

アレス「何?」

ハデス「お前に言うのもなんだが、アイツには、ゴウカンには気をつけたほうがいい。

    何でも知っているようだ。マスターには死角が無い。」

アレス「・・・・・・・なぜそんな話をするんだ?オレに。」

ハデス「なぜかな。単なる気まぐれかもな・・・クク。」

アレス「・・・・・。」

ハデス「・・・・・。」


第67話 〜毫釐(ごうり)〜



ビャッコがハデスと出会った森から数キロ南に行った所にある砂浜。

波は静まることを知らない。その波を一人のメダロットは無言で見つめている。

鋭いトゲのような後頭部に硬そうな灰色と金色の機体。

肘の辺りから鷹のような羽が垂れている。

そして違和感なのは背中にある3メートルはあろう細長い砲台が3連あることだ。

背後にロボロボ団に属するレッドダークンの姿がある。

ウィズ戦で受けた損傷は完治したようだ。傷跡さえ全く残っていない。

手には剣を握っている。

ダークン「メカドラグーン・・。」

このメダロット、メカドラグーンという名前のようだ。

そういえば以前アースークはダークンにメカドラグーンを南の海で見かけたと言った。

ということは、ダークンは仲間じゃないと言っていたのにも関わらずここに来たということか?

だが握っている剣の意味は誰にもわからなかった。

ドラグーン「ダークン?」

メカドラグーンはすっとレッドダークンを見た。瞳から何かがこぼれる・・ように見えた。

二人はわからない言葉で会話し始めた。

ダークン「ピ、イーテタナー、ファイン、サガメルタ、バニス、ヒュ、アルカス・・。」

ドラグーン「アルカス・・・?カメイ、クゥ、ルル?」

ダークン「アルカス・・アルカス、ヂチジ!」

握っていた剣をメカドラグーンに向けてなぎ払う。半歩後ろに下がり攻撃を避ける。

ドラグーン「セセ・ハ!?リピーツ、カメイ、ラ・ラー、サイト、ズィセカ!」

ダークン「カ・メルタ!」

ドラグーン「チャフ!」

レッドダークンのマントから小さな玉がこぼれる。クロスファイヤーだ。

ダークン「ラ・ラー?アイ、ノーン、タママカ!」

メカドラグーンは砲撃を鮮やかにかわし背中の砲台をダークンに向ける。

ドラグーン「ガンマ、ベータ、アルファ、タイムアタッッッック!!」

ダークンと比にならない程の砲撃が背中から撃ち出される。ダークンは剣で砲撃を跳ね返す。

跳ね返した砲撃は砂を巻き上げた。ダークンは空に一つの影を確認した。

ドラグーン「オメガ、プサイ、カイ、ロードナイト!!」

肘から垂れている羽でダークンを斬りつけた。ダークンを剣を寝かせて受け止める。

ダークン「チッ!・・・ミカ、ドラグオン、オー!!」

レッドダークンの体が発光し地面が爆発する。ダークンは自分の体も巻き添えにしながらも敵を無防備にさせる。

爆風により倒されたメカドラグーンに剣を突く。が、寸止めで終わった。

ドラグーン「・・・ダークン?」

ダークン「ググ・・・・グゥ・・・(やはり我ではコイツを斬れないのか・・?)」

レッドダークンは剣を収めると砂浜を森の方に歩き出した。

ドラグーン「ダークン?」

ダークン「チャフ・・・ナカ・・ナカ、オ、ジマ、イーテタナー・・。

     アイ、ユー、ロキ、ヂチジ・・・ノヴァーラ・・ハーン、アウト・・。」

ドラグーン「ダークン・・・。」

ダークン「ソル。リピーツ、ナカ、ゲート、フルハワサ。」

ダークンは空に消えていった。



ドラグーン「・・・・ゲート、デヴィーハ、ア・サ・ザー・・プルート、ハルダベニスカ、ナカ、オ、ピス。

      レズマ・・・レズマ、イト・・・スィーオン。タプフォル、サイト。」


第68話 〜禊(みそぎ)〜



気がつくとそこは一点の明かりも無い闇の世界だった。

スザク「ん・・・ここは?」

「スザクはまた意地悪してんだなー。」

「聞こえたらどうする気だよほっとけほっとけ。」

スザク「ん!?誰だ!?」

声を張り上げるが見えるのは果てしなく続く闇だけである。

スザク「誰もいねーのか・・そら耳か?」

ゲンブ「あなたはどうして人をいじめるのですか!?答えてください!スザク!!」

スザク「ゲンブ!?」

だがもちろん闇の中にゲンブはいない。声だけが聞こえる。

ここはどこだ・・?ここはなんなんだ・・?オレは・・どこにいるんだ?

「残念ですが・・今の医学では彼を救うことはできません・・。」

「そんな!?なんとかならないんですか!?」

「君も何度言ったらわかるかね・・?私達の力量では無理なのだよ!!」

「そんな・・・そんな・・・。」

ホオウと医者の声が響く。

「アイツに関わると命がもたねーよ、離れな。」

「どこまで嫌な奴かねアイツはさ。全く。」

「なんで疫病神が転校してくるかなーついてねーなオレってさ。」

「先生も困ってるんだよ。スザク、もう少し道徳というものを。」

これは・・・みんなの心の中か・・?

アレス「マスターも・・修理ぐらいしてくれてもいいのにな。」

ヘルメス「結局は無理なんですよアレス。正直、あの方に勉学など・・。」

アレス「・・・か。一生カプセル修理か。」

アレス・・・お前・・・。

紫苑「グスッ・・なんでスザク君は私にこんなことさせるのかな・・私、何か悪いことした?」

「あのガキ大将のことかぃ・・フォッフォッフォ。ああいうのは無駄に長く生きるものさ。」

紫苑「無駄に?どういうこと、おじいさん・・グスッ。」

「気がつけば自分ひとりになってしまうのさ。まわりは敵だけ。わしもそうなったよ。」

紫苑「おじいさんも・・?」

「子供の頃すき放題やってたらな・・いつのまにか親もいなかったんじゃ・・。

 その後わしなりに罪を償ったつもりじゃよ。結果がどうかわからんが今ここにいれるのは・・。

 恐らくそうなんじゃろな。ほら泣かないでおくれよお嬢さん。」

アイツ・・ちっ。オレは何をしてたんだろな。人間失格じゃないか。

失格?そんな言葉で終わらせていいのか?オレにはもっとできることがあるだろ?

スザクは目を閉じ時折聞こえてくる声に集中した。

アレス「少しは・・手当てしていただきたいものだ・・。」

スザク「努力する。ゲンブ、セイリュウに頼んででもやってやる。」

「また弱いもんいじめかよ、ケッ。これだからガキ大将は。」

スザク「ガキ大将?弱いものはまもるためにあるのさ。もういじめはしねぇ。」

「口だけなんだよなぁ・・約束だって自分に不利なもの覚えて無いじゃん?」

スザク「今度は約束するさ。オレは逃げねぇ!絶対に・・逃げて・・たまるかよ!!」

「どこまで嫌な奴かねアイツはさ?」

スザク「嫌な部分を全部言ってくれよ・・頑張るからさ。」

ハデス「合格だな。」

スザク「合格?あん?合格って・・・どういう意味だよ?」

声だけのハデスに突っかかる。

ハデス「これがマスターのやり方さ。原理はわからないがな。

    さあ行け。光の導く方向へ。」

見ると遙か奥に一筋の光が見える。ついさっきには無かった光だ。

スザク「あの光か?あの光がなんだって?」

ハデス「お前の新たな旅の出発点さ。さあ行け、光が消える前に。」

スザク「あ、ああ。」

スザクは光の方に駆け出した。その時体の内側から何かが離れる感じがした。

「さようなら・・オレ。短い間だったけど楽しかったよ。」

スザク「楽しいか・・そうかもしれねぇな。んじゃぁな!」

スザクは振り返らずに答えた。そして光の中に飛び込んだ。



翌朝スザクは自宅の自分の部屋で目を覚ました。


第69話 〜慟哭(どうこく)〜



町はひっそりと静まり返っている。空には満月が浮かんでいるが小さな星はひとつもない。

ただ満月ただ一つが不気味な笑みを浮かべている。

虫がチロチロどこかで鳴いている。だが突然鳴くのをやめた。

遠くから重い足音が聞こえてくる。一歩踏み出すごとにベトリと地面が赤くなる。

デスカービンである。アレスに受けられたダメージは修復はされているものの、完全ではない。

いや、これで完全に回復しているのだろうか?

カービン「グ・・・・オイ。ココカ?」

振り向き後ろからついてくるロボロボ団一般兵に尋ねる。片手で一軒の家を差した。

表札には「立甲」の文字が見える。

ザコ「んー・・あ、ここだロボ。」

カービン「ソウカ。」

そう言い捨てると四の五の言う前にドアを木っ端微塵に破壊した。この轟音ではどんな人間も飛び起きる。

ザコ「おい!いつもいつも・・もっと静かに壊せないのかロボ!?」

デスカービンは無言で家の中に入る。だが玄関に足を踏み入れたとたん動くのをやめた。

ザコ「どうしたロボ。」

カービン「・・・・オキテイル。」

ザコ「あんな音出すから起きるのか当然ロボ。」

カービン「チガウ・・・・カナリ・・・ツワモノ・・。

     ジョウホウ・・・マチガッテナイナ・・。」

ザコ「そうなんロボか?いやはや。」

カービン「・・・・ダマレ。」

警戒するように子供の寝室と思われる部屋に入り込む。

ベッドで眠る女の子を見つけるなりロボロボ団は懐から木の棒を取り出した。

隅には青いメダロットが寝ている。デスカービンは忍び寄りメダロットの頭部に拳を叩き込む。

しかし拳が壊したものは頭部ではなく後ろの壁だった。

眠っていたと思われていたメダロットは起きていてずっと機会を伺っていたのだ。

右腕の銃でデスカービンに反撃し、その場を離れる。

カービン「チッ!」

ザコ「ん?どうし・・おぐっ!?ロボ・・・。」

メダロットは女の子に攻撃しようとしていたロボロボ兵を殴りつける。

体を殴り顔を蹴り飛ばす。金魚蜂がへこむ。蹴り飛ばした先にバルカンを乱射した。

ザコ「メダロット三原則が無いのかロボー!?」

デスカービンは自ら盾になり銃撃を防ぐ。その後一瞬で近づきメダロットに再び拳を叩き込んだ。

メダロットは片手でデスカービンの拳を受け止め肘にバルカンは連射した。

カービン「ガガガガガ・・ガァ!!」

メダロット「ッたぁ!!」

デスカービンを吹き飛ばす。壁に叩き込まれ、壁を突き崩した。さらにメダロットは銃を向ける。

カービン「グゥ・・。」

メダロット「(デスカービンか・・そろそろシルバも来るか・・?)」

メダロットは背後から来た銀色の刃を鮮やかに避ける。

デスカービンはその攻撃に同調し追撃をしかけるが決定的なダメージは与えられなかった。

シルバ「何旧式にてこずってんだい?全くアンタって奴は。」

カービン「シルバ・・・コイツ・・ツヨイゾ。」

シルバ「わかってるさ。アンタがなかなか仕留められないんだ。そして不意打ちも簡単に避ける。

    こういうのを待ってたんだよ。・・・・アンタは人間を先にやんな。」

カービン「(コクッ)スキヲ・・・ツクル。」

シルバはメダロットに突っ込んでいった。ソードの充填はすでに完了している。

シルバ「さっさと眠りなよ!」

メダロットは避けようと微動だにしない。避けるのはあきらめたのか?

そうシルバが思った直後シルバのソードに幾つもの拳が当たり一瞬で刃を折った。

無防備で突っ込んでくるシルバに対しバルカンを乱射する。

シルバはチッと舌打ちすると方向を即座に変えメダロットの頭上からほとんど距離がゼロの状態で爆雷をばらまいた。

メダロットは爆雷を全て右腕の銃のみで撃ち落とす。その時メダロットのマスターが目を覚ました。

女の子「・・・な・・何の・・さわ・・かッ・・。」

デスカービンは体に重い拳を繰り出し気絶させた。

メダロット「マスター!?」

シルバ「アンタの敵はこっちだよ!相性ブレス!」

メダロット「クッ・・しまっ・・!!」

シルバのメダフォースがメダロットを直撃した。頭部の装甲が消し飛び部屋の奥まで吹っ飛んだ。



シルバ「こういうのを待ってたのさ・・丁重に御連れしなよデスカービン。」

カービン「ワカッタ・・・シルバ・・オマエハ?」

シルバ「後片付けをしてから行くさ。またお邪魔虫が来てるからね。」

銀色の刃とと黒い影は夜空に消えた。

その後警察が見た部屋は見るも無残なものだった。



下水が轟々と流れる音が聞こえる。

足元でネズミが這い回る牢屋の中に男の子が隅で震えていた。

その男の子のとなりでパジャマ姿の女の子は牢の外を見ていた。

男の子もパジャマ姿である。牢にいるのは二人だけじゃない。

ほかにも隅で怯えている子供がたくさんいる。

だが全ての子供もパジャマ姿というのは奇妙な光景だ。

その中で唯一この女の子だけは身震い一つせず辺りを警戒している。

子供が捕らわれている牢の反対側には頑丈そうな牢がある。

その牢屋に入っているのは多くのメダロット・・恐らく子供達の。

遠くから足音が聞こえる。その足音はどんどん近づいてきている。

二人か。

一人は向こうの牢屋の前に止まり、もう一人はこちらの牢屋の前で止まった。

額に十字架をあしらい、まるで金魚蜂をかぶったような生物だ。

ロボロボ団の雑兵クラスの団員だ。

ザコA「囚人番号14、28。出るロボ!」

男の子「ひぃ!」

女の子「・・・・私・・かな。」

座っていた二人は導かれるまま牢屋を出た。反対側からも2体のメダロットが牢から出る。

片方は青い狼のような機体で左手が牙のような形状のメダロット、

製品名ブルーティス。そしてもう片方は、ロンガン。

右腕にバルカンを装備している辺りはステルミアとあまりにも酷似している。偶然か?

ザコB「では二人とも、テストを行うロボ。ついて来いロボ。」



二人が行き着いた先は正方形状のステージだった。

中心にメダルの、正六角形の縁取りが施されステージの端は緑色に塗られている。

ステージから外は紫色に濁った水が海のように溜まっている。

まるでステージ全体が紫色の海に浮かぶ小さな小島のようだった。

ザコ「ルールは簡単ロボ。ステージの上で相手のメダロットを撃破するだけロボ。

   ステージから出たらもちろん失格。マスターがステージから降りても失格となるロボ。

   まぁステージから下は『酸の海』ロボから降りたらただじゃ済まないロボがね。」

男の子「酸!?」

女の子「・・・・。」

ザコ「ではロボトルファイトだロボ!!」



別室でステージのロボトルを観戦している者がいた。

幹部クラスだろう。黒いタイツに先端が丸い黄色い角が二本。

レンズが丸いサングラスに額に小さなキズがある。

雑兵「デウス様、今回のショーはどうですロボ?」

デウス「片方のガキはいいとして女の方は最高ロボ。

    あの忌まわしき野良メダよりも役に立つ。」

雑兵「確かに・・ロボ。」

デウス「訓練レベルを4増加、演習を追加だロボ。

    ゴーフバレット100機を同時に相手し、敵を撃破ロボ。」

雑兵「了解ロボ!」

デウス「くっくっく・・・ひさしぶりに有能な者が来たじゃないか・・

    帝様も喜ぶだろうロボ。」

????「・・・。」

デウス「お前にもそろそろ動いてもらうかもしれんロボ。」

????「た〜けた事言わんでクダサイ。」

雑兵「えっとデウス様、今入った情報なんですが・・・ロボ。」

デウス「なんだ。」

雑兵「アマクサ様が勝手に出撃したロボ。」

デウス「ふん・・・目的の見当はついているロボ。

    大方食料だろうな、ロボ。」

雑兵「一人で行かせて大丈夫ロボか?」

デウス「おせっかいな奴が必ず行く。

    それよりもここで観戦しようじゃないか・・おお、ゴーフバレットが・・

    ゴーフバレットが既に半分以上撃破されてるじゃないかロボ・・。」

雑兵「速ッロボ!」

デウス「使えるではないか。アマクサやアキレウスよりも・・・遙かに!

    ふは、ふははははははははは・・・・ロボロボロボロボロボ。」

雑兵「・・・・・(はぁ・・ロボ。)」
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