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第16章 異なる世界の境界線で
第111話 〜推究〜



エレベーターから降りた紫苑達は道を急ぐ。

その道の先に一つの影が立ちはだかった。

その影を見るなりオシロイが紫苑達の先頭へ歩み出る。

バニジン「!・・・イクシオン・・様?」

イクシオン「バーニィ?」

ミリオン「(バーニィ?)」

バニジン「(バーニィ?)」

ハデス「(愛称か?)」

立ちはだかった影はバニジンガルム。カロンにやられた傷はまだ修復しきれていないらしく

立つのも辛そうだ。しかし、カロンと戦った事など紫苑達が知る術は無い。

イクシオン「そこをどくでごわす!バーニィ!」

バニジン「嫌・・・ここが僕に残された・・・僕達に残された最終ラインだ!

    アリ一匹通すつもりは無い!」

バニジンは強く叫ぶと右手から集団に向かって電撃を放った。

直撃の方向だったアレス、イクシオンが別々の方向に飛び電撃を避ける。

アレス「なら斬るまでだ!!」

アレスが一歩で距離を縮め右腕のフレクサーソードを振り上げる。

オシロイ「待てアレス!」

スザク&アレス「!?」

アレスは爪を振り上げたままの姿勢で止まる。そこにバニジンの拳が走るが

バックステップで間一髪当たらなかった。

スザク「今すげー危なかったぞ!!」

オシロイ「・・・彼女は僕達の知っている彼女じゃないな。」

紫苑「?・・どういうこと?」

オシロイ「確かめる必要がありそうだ。」

オシロイはノートパソコンを取り出しメダロッチを構え直す。

イクシオンとオシロイの視線が交錯し、イクシオンは全てを理解したのか頷いた。

スザク「おい、どういうことだよ?説明しろよ?」

オシロイ「後でいくらでも説明するさ。とりあえずみんなは先に行ってくれ。

    彼女の相手は僕がする!イクシオン!!」

イクシオン「ガッテン!」

イクシオンがバニジンを取り押さえる。バニジンは懸命に暴れるがイクシオンの巨体はビクともしない。

オシロイ「さぁ!行け!!」

スザク「大遅刻な上に勝手な事ばかり言いやがって。まぁいいけどな。」

スザクを先頭に残りのメンバーが通路の奥へ走り去る。

バニジン「くっ・・・どけぇ!!」

バニジンの体が金色に光るとイクシオンを壁に吹き飛ばした。

イクシオンの機体「ジェノサイザー」はかなり頑丈にできているらしく

壁が衝撃でへこんでいるのに対し機体に損傷は全く無い。

バニジン「・・・これで僕も終わりだ・・・。侵入を許してしまうなんて僕も終わりだ!!

    せめて・・・せめて1体だけでも倒す!!」

オシロイ「そのボロボロな体じゃどうあがいたって無理だと思うけどな。

    ・・・君をそこまで戦わせる物って何なんだ?」

バニジン「黙れッ!」

バニジンの電撃が床を走る。イクシオンが巨体に似合わない俊敏な動きで電撃の横を走る。

バニジンは電撃が避けられるごとに次の電撃を放つ。だが攻撃を放つたびに手に痛みを感じるらしい。

オシロイ「チャージ完了!ジェノサイズー発射!!・・・当てるなよ!」

イクシオン「ジェノサイズー発射!」

イクシオンの右腕が大きく唸り大出力のビームの束がバニジンのすぐ左を撃ち抜いた。

撃ち抜いた場所は大きなクレーターとなり爆風だけでバニジンの装甲をいくつか消し飛ばした。

オシロイ「すぐに放熱だ!時間を稼ぐぞ!」

イクシオン「ガッテン!放熱40・・・39・・・この放熱時間どうにかならないでごわすか?」

オシロイ「威力と機動性を重視して冷却装置の数がサイクロッサーと同じだからなぁ・・

    冷却装置増やすと今よりも動きが遅くなるし・・・商品化は無理か。」

オシロイは頭の中でジェノサイザーがコンビニに並ぶ風景を思い描きながら目の前にバニジンを見つめた。

バニジン「つまり・・・今は攻撃できないということだね!?」

バニジンが腕の痛みを無視して大量の電撃をイクシオンに放つ。

オシロイ「残念。頭部は腕と別稼動なんだ。」

イクシオンは迫り来る電撃を鮮やかに回避しつつ頭部のバルカンで反撃する。

バルカンはバニジンに全弾命中したがダメージは少ないようだ。

オシロイ「放熱が未完了の腕の連続使用は控えろ。なんとか頭部で持ちこたえるんだ。

    そのために豆鉄砲大量に詰め込んでるんだからな!」

イクシオン「威力が無いとかなりキツイでごわすよ!」

オシロイ「弾の残量は?」

イクシオン「ざっと7000。割合で言うと8割2分9厘でごわす!」

オシロイ「なら充分だろ!」

バニジンが何度も電撃を放つがイクシオンに掠りもしない。その間にイクシオンが撃つバルカンがバニジンの体力を徐々に削る。

バニジン「ちょこまかと・・・当たれ!」

オシロイ「相手の攻撃にわざと当たるなんてことはできないね!」

その一言にイライラを募らせながらバニジンは電撃を放ち続ける。その電撃をイクシオンは

時に床を走り時に宙を飛び、全てを巧みに避ける。

オシロイ「そろそろ放熱が完了するだろ?終わったら次は左腕だ!」

イクシオン「放熱終了でごわす!ジェノサイゼー発射!」

大奔流はバニジンの真横の壁をぶち壊す。

バニジン「くそ・・・当たれ・・・当た、がッ!」

電撃を出そうとしたバニジンの腕が爆発した。甚大な損傷を受けているパーツで無理な使用を続けた結果だ。

しかしバニジンの戦意に変わりは無い。

オシロイ「まったく敵さんも厄介な事をしてくれるね。そこまで戦わせるのって君の意思じゃないだろ?

バニジン「意思?」

オシロイ「君は生まれと育ちを除いて普通の女の子だと思うな。戦うのだって好きじゃないだろ?

    その帝とかだって本当に尊敬とか、信頼とかしてるのか?尊敬されてる側は君にそんな事をさせるのかな。

    ・・・その気持ちってもしかして一方通行だったりする?」

バニジン「でも僕にはもうこれしか残っていないんだ!!」

オシロイ「・・・なわけねーだろ。」



大きな扉を背に右腕が紙コップ並の重量のパーツ『バルカン』をつけた青龍型メダロット、ロンガンがいる。

そのロンガンのすぐ横に黒いタイツ姿で先端が丸い黄色の角を2本生やした人間(?)がいる。

人間の顔立ちは小学生、多めに見ても中学生が限度。ジコクテンである。

彼らの視線の先には別の扉がある。彼らがいるのは2つの大きな扉がある、かなりの広さがある部屋だ。

彼らの見る扉の向こう側が騒々しい。何か大勢がこちらに向かって近づいてくるのがわかる。

ロンガン「いつかは来る・・・と思っていたこの時ですね。さぁ・・どういう結果になるか。」

ジコクテン「どういう結果になってもいい。あなたの存在意義はそこにあるんだから。」

ロンガン「ふっ・・・色々とご迷惑をお掛けした事を今改めて謝罪します。」

その時扉が勢いよく開かれた!


第112話 〜四重奏〜



スザク「どこだセイリュウー!!ん?ジコクテンか!?」

紫苑「その機体・・・」

紫苑がロンガンを見るなり不快な表情を見せる。

その意味をスザクもゲンブも、ビャッコも理解した。

ゲンブ「嫌な物を使いますね・・・それともそちらの作戦ですか?以前使っていたイヨキッスはどこにいるのでしょう?」

ジコクテンがメダロッチを操作しロンガンの左腕パーツを交換する。

その交換された後のパーツはミカンの皮のような手のひらのパーツだった。間違いなくイヨキッスのパーツだ。

ロンガン「メダロットの基本を知っているか?パーツを付け替えればありとあらゆる状況に対応できるということを。

    つまり今の私はロンガンでもありイヨキッスでもある。」

ミリオン「・・・。」

ヘルメス「そなたの目的は何だ?」

ジコクテン「バニジンガルムが言ってませんでしたか?僕達に残された最終ラインだと。

     私の後ろにある扉の先が貴方達の目指す場所、帝がいる部屋です。」

アレス「つまり・・・貴様が最後のガーディアンか。」

ロンガン「その通りだ。死にたくなければ全力でかかってこい。」

スザク「セイリュウの偽者を狩ってセイリュウの居場所を突き止めてやる!!」



ストロ「奴の相手は深い関わりを持つ彼らに任せるとして、私らは先に進んで敵を蹴散らしておくさね。」

ゴウカン「同感だな。スザク君達よ、ここは任せるぞ。」

ジコクテン「いつ私一人で戦うと言った!ディスティ!!」

ロンガン「パーツ交換!」

ロンガンの全てのパーツが一瞬で交換されストロ達に向かって何かを放つ。

ストロとアースークは片腕でそれを受けた。損傷は軽微、大して威力は無いようだ。

スザクとビャッコ、ゲンブはその変化後の敵の姿に見覚えは無かったが、ハデス達は驚きに満ちている。

紫苑も一部のパーツに見覚えがあった。あの左腕はジャンクショップ『クリーチャー』でセイリュウが見せてくれたオリジナルパーツ!

水色がかった機体で後ろの背景が透けて見える。肩や首、腰などに黄色や黄緑色の装飾が施され女神のような印象を受ける。

ハデス「ディスティ・・・・ブルーディスティ!?」

パープ「ディスティちゃん!?」

アースーク「青龍・・・」

ハデスに龍将、ミリオンに赤龍といった『称号』があるように『青龍』の称号を持つ者がいる。

眼前にいるブルーディスティがそれだ。

ディスティ「これが私の答えだ。ミリオン・・・ハデス!」

ジコクテン「ディスティの答えは私の答え。出会って事情を聞いたときから、私は決心した。」

紫苑「ティアプレート・・・セイリュウちゃんなの?」

スザクとゲンブが紫苑を振り返る。レプラスが彼らに説明した。

スザク「セイ・・・リュウ?」

ジコクテン「今はジコクテンだよ。」

ジコクテンが微笑する。その笑みはロボロボ団幹部特有のサングラスを除けばセイリュウの笑みだった。

ディスティ「ミリオン。お前は戦う力が無いと平和は保てないと以前私に言ったな。そして今回の行動だ。

     だがお前のやり方は見ていて歯がゆい。敵となるのか味方となるのか、ハデスという要素が入った結果、

     中途半端な物となってしまったのだと思う。私はその穴も埋めれる。直接的なやり方は違うが、

     私もお前たちの守る力とやらを試すことが出来る。大事な人を助けようと乗り込んできた者達に対し、

     その助ける者が敵として立ちはだかることでな!!」

ディスティが構える。その様子にハデスはその姿を睨みつけた。

スザク達はまだ状況を理解して無いが、とりあえずメダロッチを構え直す。ゴウカンだけは腕を組み小さく笑っている。

ゴウカン「一人でこの数を相手にする気かな?」

ディスティ「だからいつ私一人で戦うと言った?そんな事も計算にいれられないのか主席卒業!」

ゴウカン「!」

ディスティの体が金色に輝き両腕を左右に広げる。地面が揺れ、赤黒い禍々しい物が湧き出てくる!

ほどなくしてディスティの輝きが消えうせた時、紫苑達のまわりには何十もの敵が取り囲んでいた。

ロボウェポンやゴーフバレット、ブラックロイドなど基地に入ってから幾度と無く戦った相手もいるし、

アビスグレーターやユーリア、サイズカッター、コフィンバット、ワンホイール、タウルスなど戦った覚えのあるメダもいる。

ヘルメス「これは・・・今までに戦った敵か?」

ハデス「・・・。」

ディスティ「これで私一人ということは無くなった。そうだろう?ゴウカン。」

ゴウカン「・・・君は私が誰だか知っているのか?」

ジコクテン「気付かないとでも思ってたの?ディスティの発言は不用意すぎるけどね。」

仮面の下でゴウカンがどんな表情をしているか・・・ハデスは見当もつかなかった。

紫苑「どうして・・・どうしてなの?セイリュウちゃん・・どうして!?」

ジコクテン「今の私はジコクテン。そして理由は今ディスティが言った通り・・・

     戦いたくないなら逃げてもいいよ・・・紫苑ちゃん。」

紫苑「・・・・」

レプラス「紫苑・・・。」

紫苑はうつむいたまま動かなかった。ゲンブが彼女の肩に手を置いた。

紫苑が顔を上げるとゲンブが笑顔で答える。そして何かを小声で、紫苑にしか聞こえない声で何かを伝えた。

紫苑の顔から悲しみが消えた。

紫苑「私は逃げない・・・絶対に逃げない!もうあの時の私には戻らない!」

ジコクテン「(紫苑ちゃん・・・ゲンブ君・・)」

ディスティ「よく言った!ならば全力でかかってくるがいい!」

ディスティの声に応じ蘇ったメダロット達が一斉に敵へ走り出した!


第113話 〜贈呈〜



アルデ「生きているか?」

ウィズ「ちっ・・・なんとか大丈夫だ。」

変形したハイロゥは圧倒的だった。いや、今まで手を抜いていたというのか。

奴の体が青白く光ったと思ったら気付かないうちに機体がボロボロになっていた。

なんとかアルデバランが床を撃ち抜きウィズがハイロゥを穴へ叩き落としたがあれで死んだとは到底思えない。

むしろ戻ってこないのが不思議だ。

アルデ「(あの技・・・メダフォースではなかったな・・・まさか)」

ウィズは剣を鞘に戻し体の埃を払ってアルデに向き直る。

ウィズ「それでどうするんだ?俺は下に行くぜ。アイツの顔を見るまでのんびりしてられねぇ。」

アルデ「アイツ?」

ウィズ「仲間さ。」

アルデの質問にウィズは頬を掻きながら答える。

ウィズ「俺が傷心旅行にここに来てた時に出会った奴でな。久しぶりに会いに来たらかなり状況が進展してやがる。

    ブン殴りたい奴もいるからここまで来たってことさ。」

アルデ「・・・それで崖から侵入か。」

ウィズ「見てたのか?まぁ強引な方法だから誰か見てるだろうと思ってたが・・・」

アルデも同じように武器をしまい、体の埃を払う。

アルデ「よほど信頼しているようだな。その仲間とやらは。」

ウィズ「まぁな。それに強い奴にやられてのこのこ帰って来たなんて言ったらミカゼに何言われるか・・。」

アルデ「ミカゼ?」

ウィズ「俺のマスターさ。」

アルデ「そこまで信頼できる者が俺にもできればな・・・。」

ウィズ「できなかったのか?」

アルデ「俺は」

????「信頼していた者を戦で亡くした・・・か」

アルデ「!?」

アルデが振り向いた先にはいつのまにかフォストが立っていた。



フォスト「こうしてお話しするのは初めてですね。私の名はフォスト。またの名を緑龍。」

アルデ「知っている。あの森を襲った中に俺も混じっていたからな。」

フォスト「ある依頼者から貴方に、いえ紫色のクワガタのメダロットにある物を渡してくれと頼まれました。

    真っ先に思い浮かんだのが貴方です。貴方に再び会うとは、乱世もおもしろい風が吹くものだ。」

フォストは軽く頭を下げながら話す。驚きを隠せないアルデは軽い戦闘体勢をとりながら話す。

そのアルデの動きにフォストは気づかないフリをした。

アルデ「・・・ある物だと?」

フォスト「そう、受け取っていただけますね?」

差し出されたのは青い宝石を手の甲に埋め込まれた紫色に映える腕パーツだった。

そのパーツを見るなりアルデは数歩後ろへ飛びさがる。

アルデ「それは!!なぜそれがこの時代にある!?」

ウィズ「なんだ?これがなんだってんだよ?」

ウィズはフォストからパーツを取るとまじまじと見つめた。

アルデ「それは・・・あの時俺が捨てた右腕パーツ『アクアオーラ』だ。」

ウィズ「捨てた?」

あの時、というキーワードも頭に引っかかったがウィズは後者の言葉に耳を傾けた。

自分も・・・昔ある理由で捨てた物があるからだ。

アルデ「戦争で使い物にならなくなった俺の右腕パーツだ。ナノマシンによる修復機能も完全に消滅し、

    俺は盾にもならなくなった右腕を戦場に捨ててきた。もともとそのパーツは大嫌いな人間が無理矢理俺に渡したパーツだ。

    そして今装備している右腕はプレアデス・・・俺の弟の物だ。」

ウィズ「まさか・・・その弟は・・」

アルデ「先程こいつに言われたとおり、アイツはもうこの世にいない。いや、俺自体も存在してはいけない存在なのかもしれん。」

ウィズはまたわけのわからないことを・・・という顔をしたが、

各々人に言いたくないものもあるのだろうと持っているパーツに意識を集中した。

アルデ「・・・・しかしその右腕で俺に何をしろと言うのだ?」

フォスト「わかりませんね。」

アルデ「俺に・・・あの時代に戻れというのか?」

フォスト「私はそのパーツがどういう物か、詳しく聞いてないし聞かされてもいない。

    その質問は私ではなく、私に依頼した者に問うべきでしょう。そして間違いなく、

    その依頼者は今別の場所で戦っています。ここで立ち止まるわけにはいきません。」

アルデ「そうだな・・・最後に聞いておく。依頼者の名は?」

フォスト「依頼者から匿名でお願いされました。それに、聞かずとも貴方はわかっていると思いますよ。」

アルデ「なんでもわかっているように口をきくな。ウィズ。」

ウィズ「ん?あぁ、これはお前の物だしな。」

ウィズは持っていたパーツをアルデに手渡しする。渡す時ウィズが質問を投げかけた。

ウィズ「話がわからないんだが・・・『時代』というのはなんなんだ?」

アルデ「聞きたいか?」

ウィズ「いや、言いたくなければ言わなくていいんだ。」

アルデ「聞きたいという顔をしているな。」

ウィズは呆れ顔で1歩後ろに下がった。アルデは渡された右腕と今の右腕を交換する。

アルデ「俺の生まれたのは32XX年だ。俺の言う『あの時代』というのは32XX年の事さ。」

ウィズ「はぁ!?」

ウィズの呆れ顔が一瞬で驚きに変わる。今は21XX年。

目の前にいるメダロットは今から約1100年後に生まれたと主張するのだ。

ウィズ「・・・・聞かなかったことにするぜ。スケールが違いすぎる。」

アルデはウィズの困惑ぶりに心の中で笑った。フォストはあいかわらず平然としている。

アルデは取り替えたプレアデスの右腕をその場に置いた。

アルデ「・・・そしてお前はどうするんだ?」

フォスト「宅配者としての使命は終わった。今から私は緑龍としての使命を負う。」

アルデ「戦うのか?」

フォスト「そのつもりだ。」

アルデ「できるのか?」

フォスト「償いさ。」

そういい残すとフォストはアルデがあけた穴の中に飛び込んだ。

ウィズもその後に続く。アルデはプレアデスの右腕をしばらく見つめた後何かを決心したかのように自分も穴に飛び込んだ。


第114話 〜ラーゴールデン〜



バニジンが残っている片方の腕で攻撃を続ける。

オシロイ「やめろ!自分の体がもたないぞ!」

バニジン「このくらい・・・敵に心配されることじゃない!!」

イクシオン「敵・・・おいどんは敵でごわすか?」

バニジン「敵だァ!!」

バニジンの体が光りイクシオンの眼前に一瞬で接近した。

オシロイ「メダフォース!?」

突き、蹴り、殴りの凄まじい連撃にイクシオンは成す術が無い。次々と装甲が剥ぎ取られ最後に壁に叩き込まれた。

イクシオン「がは・・・」

オシロイ「イクシオン!」

バニジン「はぁ・・・はぁ・・・・うっ!」

残っていた片腕も爆発した。両腕を無くしたバニジンはそれでも目の前にいる敵を倒そうとしている。

バニジン「これで・・・決着をつける・・・」

オシロイ「やめろよ・・・」

バニジン「命乞い?この期に及んで・・・」

バニジンが微笑した。オシロイの目から一筋の涙が流れる。

オシロイ「これ以上動いたら君は・・・君は死ぬぞ!?もうやめろ!!」

バニジン「こうなってもなお・・・僕の心配をしてるというのか?」

オシロイは顔に流れた涙を拭うとメダロッチを構え直す。イクシオンがボロボロの体を無理矢理起こす。

バニジン「・・・くだらないよ。」

バニジンの体がまた光り、イクシオンに突っ込む。衝撃と負荷で自分の体が悲鳴を上げるが構わない。

オシロイ「どうしてそうやって自分を押し殺すんだよ!最終作戦・・

    ジェノサイジー、ジェノサイズー・・同時発射ァ!!」

イクシオン「バァーーーーーーニィーーーーッッッ!!!!!!」

イクシオンは自分に向かってきた赤いボロボロのメダロットに損傷のひどい両腕を向けトリガーを引いた。

反動でイクシオンの両腕が砕け大きなビームの嵐は様々な方向に散る。そしてバニジンを粉々に引き裂いた。



ダスト「くそ!くSO!死ねェ!!」

ダストが一心不乱にミサイルを撃ち続ける。ラーは時にミサイルを撃ち落とし時にはバリアを張り攻撃を防ぐ。

ラー「やめろレイ!話を聞け!!」

ダスト「その名を呼ぶなァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

ダストが黄金色に輝きそれまでと比にならないミサイルの束が発射される。

ラーはすかさずバリアを張り攻撃を防ぐがバリアだけでは完全に無効化できず何発か被弾した。

ラー「レイ・・・・すまなかった。」

ダスト「!?」

ラーは目を閉じ両腕を下げ話す。その姿に戦意も威厳も感じられない。

ラー「私が『龍神の森』の守備隊長にでもならなければ共に道を歩めたというのに、

   それに気づくのが遅すぎた。光陰の矢の速度が・・・私の予想外だった。」

ダスト「遅い!遅いんだYO!もう・・・あの時には戻れないんDAァ!」

ラーに接近戦をしかける。

ラー「そう、既にあの時には戻れない。・・・・しかし私は己を偽れん!」

ラーはそのままの姿勢でダストを待つ。

ダストはラーの胸倉を掴み零距離でミサイルを発射、自分の腕と共にラーの体を爆破した。

体の装甲と共にメダルの破片もその場に散乱した。



誰かが泣いていた・・・

泣いているのが誰かもわかっていた・・・

幾年も探し、やっと見つけた・・・やっと場所がわかった。

今そこに行く・・待っていてくれ。


第115話 〜メカドラグーン〜



メカドラグーンとレッドダークンは同時に跳躍した。

お互い空中でハイキックを交え、両者の蹴りが交差したと同時にメカドラグーンが左手から小さな光球を発射、

レッドダークンの顔面を焦がし地上へ落とす。

メカドラグーンは背中のブースターを噴射させ天井に張り付き床の獲物へ光球の雨を降り注ぐ。

ダークン「ふんッ!」

床に落ちた直後倒れた体勢のまま真横へ飛ぶ。ダークンがいた場所に光球の雨が虚しく落ちる。

ダークンは起き上がりざまに右腕から丸いボールを床にばら撒いた。ダークンが籠鍔のついた剣を取り出す。

メカドラグーンが天井に張り付いた姿勢のままダークンに飛び込み右手を握り締め振りかぶる。

ダークンは冷静に剣を横にし攻撃を受け止める姿勢をとった。

だがそれはフェイク。ダークンは拳と剣が当たる寸前に敵の背後へ移動し敵の背を切り払う。

メカ「ッ!」

ダークンが次の刃を振った瞬間メカドラグーンが急旋回、来た刃を『掴んで』止めダークンの顔面を蹴り飛ばした。

剣がダークンの手から離れダークンの顔が床を引きずる。

ダークン「まさか刃を掴むとは・・・」

メカドラグーンは自分の血がついた主人を失った剣を持ち直した。鍔に刃についた血と同じものがこびりつく。

ダークン「だが忘れるな!我の武器は剣だけではないということを!!」

先程ばら撒いたボールから砲台が伸びメカドラグーンに一斉射撃。メカドラグーンは目を細めたがそのまま爆発に飲み込まれた。

ダークンは目の前に煙が充満するのを見て心の中が昂揚するのを感じた。

ダークン「ふははは・・・・我は一人!愛など・・・友情などそんなものはいらない!!そんなもの、無いほうが強いのだ!」

突如煙からメカドラグーンが飛び出しダークンの剣でダークンを切り裂いた。

ダークンはとっさに右腕で受け止めたが右腕が音を立てて砕けた。

ダークン「・・・・我が使う時よりも太刀筋が・・鋭い?」

メカ「ソジャマ、ルル?アイ、ヂチジ、ミカ、ナニ?」

いつのまにかメカドラグーンの持つ剣は赤いオーラを放っている。ダークンが使っている時にこんな物は発していなかった。

ダークン「知ったことではないわァ!!」

ダークンがメカドラグーンに接近し左手で顔面を渾身の力で殴りつけた。

殴られたメカドラグーンは微動だにしない。

メカドラグーン「クゥ、ルル?」

ダークン「何?」

メカドラグーン「アイ、ファクソス。」

メカドラグーンの体が光りダークンの胸に手を添える。

ダークン「(零距離メダフォース!)」

そう感じた瞬間ダークンの意識は闇の中に霧散した。



メカドラグーン「アイ、ユー、ラ・ラー。ヒュ、ワルド、ス、バニス、イズ・・・。」



ダスト「・・・ラー?」

ダストは倒れた、正確にはバラバラになったラーの残骸を見下ろしている。

ダスト「起きろ。まだ勝負は・・・勝負は終わっちゃいないだRO?」

返事など返ってくるはずはない。

その場にはレインボーダスト以外誰もいない。

しばらく静寂が続き唐突に嗚咽が部屋全体を震撼させた。



そしてただ一人残っていた気配も消えた。


第116話 〜逆風〜



レプラス「だーッ!」

レプラスのリペアシューターが唸る。赤い閃光の雨が敵の群れに落ちるが敵は平然としている。

紫苑「以前よりも防御力が上がってる・・?」

ゴウカン「ただ復活させただけではないらしい。」

レプラスが高火力で敵を分散させハデスとヘルメスとパープが射撃で遠くの敵を各個撃破。

しかし、接近せざるを得ない他のメンバーの消耗は明らかだ。

ロボウェポン「うぉお!」

ロボウェポンが重い拳をアースークに振り落とす。

アースークは鉄球で拳を受け止めるが鉄球にビシッとひびが入る。

攻撃を受け止められ動きが止まったロボウェポンにストロの蹴りが炸裂する。

アースーク「(完全に修復されてなかったッスね・・パープはともかく、アッシはどこまで持つか)」

ディスティ「なかなかやりますね。しかし、終わりは無い!」

水色の機体が光り朽ちた機体の群れが息を吹き返す。

ミリオン「ここは根源を絶つべきだと思います!」

サイズカッターがブースターを噴射させてミリオンに体当たりする。

ミリオンは華奢な手のひらで受け止めるとそのまま火達磨にして投げ捨てた。

スザク「よし・・・ビャッコ!俺達でアイツを止めるぞ!」

ビャッコ「アッシもでやすか!?」

スザク「コンビニの借り返さなくていいのかよ!?」

ビャッコ「・・・・あぁ。」

アレス「しかし・・この敵の群れをどう突破するというのだ。」

周囲が嫌悪感を引き出すほど密集している敵の群れが取り囲まれているのを見てアレスは嘆いた。

誰も突破の方法が思いつかない。敵はジリジリと距離を詰める。

紫苑「・・・ゲンブ君、初めて戦った時のアレできる?」

ゲンブ「え?」

紫苑がゲンブに説明する。ゴウカン達はその様子をしばし見つめていた。

ゲンブがさっき紫苑に見せた笑顔と同じ笑顔になった。

ゲンブ「なるほど。たしかにそれなら・・・やりましょう。」

紫苑「・・・ありがと。」

ゲンブ「スザク君!ビャッコ君!活路を開きますよ!!」

ハデス「なんだと?」

ゴウカン「彼らに任せてみようではないか?ハデス。」

ヘルメスが頭部のたてがみを開き空気を急速に取り入れる。頭部パーツ『テンションアップ』。

左右の射撃パーツの充填が一気に完了。静かに構える。

レプラスがヘルメスの背後につく。

紫苑「レプラス、リペアシューター!」

レプラス「あいよ!!」

レプラスが上空に連携攻撃をばら撒いた。リペアシューターを発動し連携攻撃から砲台が伸びる。

ゲンブ「右10、32、65、87度、右上60!左に32と90!!」

ヘルメスが指示された角度に一瞬で弾を打ち込む。角度の先にはレプラスが放った連携攻撃!

銃弾によって方向が修正された赤い閃光はディスティとスザク達を直線で結ぶ場所にいる敵集団に降り注いだ!

数滴の雨粒は大丈夫だった敵も全発を同時に受けて無残な瓦礫となった。

そこをスザクとビャッコ、アレスとディモが飛び越える。

スザク「まさかお前にこんな芸当ができるとは思わなかったぜ!」

紫苑は無言でその言葉を受け取り残りの敵を倒す方法を模索した。



セイリュウ「・・・来た。」

スザク「やっとたどりついたぜ・・・ナンバー4、いや!セイリュウ!!」

スザクとビャッコ、セイリュウとディスティはお互いに見合った。

スザク「ここで使わなきゃどこで使う。いくぜアレス!パーツ交換!!」

アレスのパーツがオシロイからもらった新型、タイガーハート一式に交換される。

スミロドナッドのようなフォルムを残しつつ、若干骨太にしたような機体だ。

ちなみにディモは最初からチーターハートを装備している。

ディスティ「・・・2人を相手にしながら復活は酷ですね。悪いですが、さっさとカタをつけましょう。」

そう言い放ちディスティが息を整える。両腕をだらりと下げ足を少し広げる。

アレス「この戦い・・・絶対に勝つ。」



アルデ、ウィズ、フォストが床に降り立った。

見上げるとアルデバランが撃ち抜いた穴が見える。

ウィズ「奴はどこだ?」

前後に長く伸びる一本道の通路。前も後ろも共にはるか先に扉が見える。

アルデ「・・・正面が地獄、背後は現世。ここはさしずめ三途の川といった所だな。」

ウィズ「そんな事がわかるのか?逆かもしれねぇじゃねぇか?」

アルデ「一度ここまで来たことがある。正面の扉をくぐれば・・・・閻魔のご登場だ。」

????「我ら帝様を閻魔と呼んだか、裏切り者のアルデバラン。」

アルデ「きたか。」

前にはいつのまにかデウスとハイロゥが立っていた。

フォストはその2人を何の感情も無く見た。

何も知らないウィズはあいかわらずだったが、アルデがデウスを見る目はいつもより何か違う雰囲気を醸し出していた。

デウスは順々に顔を見てフォストで視線が止まった。

デウス「イレギュラーがいるロボな。」

フォスト「私か。」

デウス「そうだ。龍族の長よ。貴様がこの戦いに参加するとは思いもしなかったロボ。

   この耳が腐るほど語ってきたあの言葉『力では何も解決しない』は捨てたのか?」

フォスト「捨てた訳では無い。光陰を見つめ私も一つの事を知った。たしかに、『力では何も解決しない』。

   しかし、力に種類があるということをその時の私は知らなかった。」

デウス「力に種類だと?それがなんになるというのだロボ?」

フォスト「なんにもならないかもしれない。だが、私はそれでも支払わねばならない。

   無残に砂上に倒れ伏した戦士達を皮肉にも私自身で笑ってしまったその代価を。」

フォストがどこから取り出したか、ツルのように湾曲した刀を右手に持った。

刃が植物のように緑色を帯び、フォストの赤い目が映る。

デウス「おもしろい。ならば貴様の決意、見届けてみせよう。」



フォスト「(ハデス、君の信じた道が如何なる物か私も知った)」


第117話 〜帰還〜



視界の先は一面闇だ。

闇ってことはあの時僕は死んだのか?死んだ後ってこんな感じなのかな・・

自分の体ぐらい見せてくれたっていいのに何も見えないなんてあの世ってなんて不便なんだろう。

僕はこのまま闇に埋もれて何をするもなくただ過ごしていくのだろう。

遠い昔書物で読んだあの世とか地獄予想図とかなんて、信じてなかったけど今思ったらさらに馬鹿々々しくて笑ってしまう。

キーボードを叩く音が静かに耳を打つ・・・

キーボード?死後の世界ってなんて現実的な音をしてくれるんだ?

そうか、今はこんな闇でもだんだん世界が構築されて・・・死後の世界が出来上がって・・・



オシロイ「起きたか?」

バニジンがまぶたを開くとオシロイとイクシオンがいた。

バニジン「あれ・・・僕・・・僕はあの時・・」

イクシオンに撃たれて粉々になった。先程見ていた闇は一体なんだったんだ?

バニジン「僕は死んだんじゃなかったのか?」

基地の固い冷たい床に寝そべっている。バニジンの横でオシロイがノートパソコンのキーボードを叩いている。

バニジンは自分の体に腕があるのに気づいた。戦闘で爆発して両腕が無くなって、そして撃たれてバラバラになったはずだ。

体を起こそうとするとイクシオンが手伝ってくれた。さすがに立ち上がることはできず、その様子を見たイクシオンが巨体を背もたれにしてくれた。

ふと視界の横に赤い残骸が見えた。見間違える事は無い自分の残骸を見て気分がおかしくなった。

だが自分の体を見ると今も赤い、バラバラになったはずの機体をつけている。

それを見たオシロイはまたパソコンの画面に意識を集中させる。

オシロイ「僕らが戦ったバニジンガルムは僕らが殺した。今目の前にいるのは一人の女メダロットだ。」

バニジン「殺した・・?」

オシロイ「僕らは彼女を救おうとした。だけど精神チップの影響もあって止められなかった。

    見てくれこれを。彼女の背中から取り出したICチップだ。幸い、背中はそのまま形を残していたから取り出せたんだ。」

バニジンがオシロイから六角形の形をしたICチップを受け取る。

イクシオンのビームの影響もあるのか、ICチップはボロボロで少し力をいれると砕けそうだった。

中心にドクロマークがある、メダルと同じか、わずかに大きい正六角形。

オシロイ「メダルを入れる場所の隣り合わせの場所にこれがあった。メダロットを遠隔操作する技術でね。

    他の町でも大きな事件があるとこの技術が応用されてたりしてね。直接的な方法はチップだったり電波だったり様々だけど

    基本は一緒なんだ。昔父さんがある研究書類のコピーを手に入れてね。独立独歩計画・・通称S−R。

    今回のICチップはそれに一番近いな。書類を読んでいて対策が掴めてよかったよ。メダを一人救えたんだから。」

バニジン「・・・」

オシロイ「君は何も残っていないんじゃない。あるのにそれを見なかったんだ。

    僕達が残ってるじゃないか?君が帰る場所も、ちゃんとあるじゃないか。何が不満だ?」

バニジン「・・・この機体は?」

オシロイ「この間うちの会社でドンパチやったでしょ?その時データも同時に取っててね。

    そのデータを元に複製してみたんだけどオシロイカンパニーの技術じゃ9割ぐらいの再現が限界だった。

    メダロット社だったらもう少し高い精度やるのかなぁ・・・ちょっとくやしい。」

よくよく見ればバニジンガルムの元の機体よりも両腕のスタンガンもほぼ箱状になっているうえに一回り大きい。

肩についていた小さなシールドはますます小さくなっているし、スカートもかなりミニスカートだ。

オシロイ「製品化の許可は下りていないから売り出すかはわからないけど、オシロイカンパニーでつけた名前は『エクレルム』。

    愛称はエクル。バーニィよりこっちの方がいいかな。」

バニジン「エクル・・・照れるな。」

バニジンは頬を赤らめた。

オシロイがそろそろ先に進もうかな、と先の扉に目を向けた時オシロイ達が来た方向、エレベーターの方から足音が聞こえてきた。

僕達の前っていたっけ・・・?そう思ってオシロイが振り向いた時、

オシロイやバニジンの目は白銀龍と死龍の姿を捉えた。



メカ「ガルダ、オーキ、ダークン。」

ダークンが目を開けるとメカドラグーンが覗き込んでいた。

メカドラグーンの零距離メダフォースを受けそのまま意識を失った事を頭の片隅に思い出す。

ダークンはそのままの姿勢で拳を握る。

ダークン「なぜだ・・・なぜ我は勝てぬ。なぜ愛とやらに、仲間とやらに我が屈せねばならぬのだ。

    我は認めん!断じて認めんぞ!!」

メカ「ガルダ、キョフ、ザ・メルト、カムタル、ロキ、チェイサ。『サダジュ・アロスト』ルル、サララリー。

   アイ、イズ、アロスト、ワムデダ、ワムデダ・・・・アルテナ、サイト、アロスト。」

ダークン「ワムデダ、アロスト・・?それを束ねる物が・・・ラ・ラー、もしくはレズマ?」

ダークンが起き上がりメカドラグーンに向き直る。

カドラグーンは胸に片手を添えてダークンを見る。

メカ「ファクソフ。アド、ムル、イト、ケー・ジョー、メスタ、ス、ア・サ・ザー、アルカス。」

ダークン「・・・・認めん。」

メカ「ダークン・・。」

ダークンが床に転がっていた自分の刀を拾いマントで血を拭う。

血を拭いきった刀身を見て血の跡が無いのを確認し鞘に収めた。

ダークン「認めないが試す価値はありそうだ。それで我がさらなる力を得、優秀さに磨きがかかるというのなら我はそれを認めよう。

    その決断の時まで貴様との決着はお預けだ。」

メカ「ダークン・・。」

ダークン「我らはさらなる力を求めどこに赴くか・・・」

メカ「セセ・ハ?メ・ケテハ、アブズ、ルル、サララリー。」

ダークンが床を見つめた。床のさらに下を見るように見続けた・・・


第118話 〜幻想〜



ハデスが敵を斬る。レプラスが周囲を焼き尽くす。ミリオンが敵を灰にする。



ヘルメスが撃つ。ストロが敵を倒す。アースークが鉄球を振り回す。



ゲンブ「繰り返していれば敵は減る・・・あとは・・・」

紫苑「メンバーが信じないでどうするの?」

ゲンブ「信じてないわけではありあせんよ。」



アレス「・・・・。」

スザク「・・・・。」

セイリュウ「・・・。」

ディモ「・・・。」

アレスもディモもディスティも1歩も動かない。背後では蘇らせたメダロット達がレプラス達と戦い激しい喧騒を生んでいる。

しかし、3人のまわりだけ時が止まっているかのように、なんら動きを見せない。

『あの時』と同様の展開。そしてその後も『あの時』と同様だった。

ディスティ「フフ・・・臆病風はあいかわらずですか?」

スザクは眉をぴくりと上げた。それを見たビャッコは何かを感じメダロッチを構える。

スザク「わざわざ敵のふところに飛び込む馬鹿では無くなったさ。」

アレスは微動だにしない。ひたすら右腕のサーベルを掲げて静止している。

ディスティ「それは残念だ。」

スザク「だが睨み合っているのも性に合わない。」

セイリュウ「?」

スザクがメダロッチを構え直す。アレスがわずかに体勢を低くした。

スザク「誰だっけな。先手必勝は必勝じゃないって言ってた奴は。俺だったよな・・・

    今思えばあれから俺は先手ばかり打ってやがる。それじゃダメなんだろうけど・・・やってやるさ。

    攻撃させたいんだったら攻撃してやるよ!!アレス、ビャッコ!コンビネーション・ウィンド!」

アレス「滅閃ッ!」

アレスがその場で右手を振り下ろす。届くはずのない距離を風と炎の刃が駆け抜ける。

吹き抜ける風にディスティが両腕で顔を覆った。風が両腕に切り傷を生む。

セイリュウ「風の刃?」

ディスティが滅閃を受けている瞬間にディモが接近し覆っている両腕にフリーズストラクを叩き込む。

ディモのフリーズ攻撃によって両腕がそのままの姿勢で凍る。ディスティはバックステップで距離を取り頭部からエネルギー弾を発射。

エネルギーはディモの頭部に直撃するがビャッコのメダロッチが告げるダメージ量は総装甲の3パーセント。

ディモ「痛・・・くないか!」

攻撃に構わずディモは再接近しディスティの右胸を殴りつける。

右胸も凍ったディスティだが平然とディモを蹴り飛ばし、再度エネルギー弾を頭部にぶつける。

メダロッチ「ダメージ10パーセント。」

ビャッコ「!?」

ディスティは頭部の裏でカシャンと何か音を鳴らしそのままアレスに向かって走る。

スザク「なんつーやり方だ!」

ディスティ「笑止!」

アレスがブレードハンターを振る。ディスティはブレードハンターを宙返りで回避し、逆さの姿勢からアレスにエネルギー弾を浴びせる。

スザクのメダロッチはダメージ16パーセントを告げた。

ビャッコ「スザク、気をつけるでやす!エネルギー弾の威力がどんどん上がってるでやす!」

スザク「何ぃ!?」

ディスティの氷にひびが入る。

セイリュウ「ディスティの攻撃、カウントアタックは撃つごとにパワー、命中する場所、タイミング、形状など

     様々な要素が相手によって調整されていく。だから長期戦ならディスティの方が有利。

     ただ軽いだけのバルカンとは訳が違う。」

ディスティがそのままアレスから離れ両腕の氷を砕いた。自由になった両腕を静かに構える。

セイリュウ「でも長くやるつもりは無い。ディスティ、パターンC実行。」

ディスティ「了解。」

ディスティが再度アレスに向かって走る。

スザク「パターンCだかDだか関係無ェ!アレス、行け!!」

アレス「おう!」

アレスもディスティに向かって走る。ディモもアレスの後ろを走る。

セイリュウ「ティアプレート!」

スザク「ブレードハンター!」

アレスとディスティがぶつかるか否か、その距離まで近づいた時アレスの右腕とディスティの左腕が交差した。

ディスティのパーツは何とも無いのに対し、アレスの右腕にはひびが入る。

アレス「なんて力だ!?」

ディスティ「貴方と殴りあったのはこれが初めてですね。」

アレス「だが!」

ディモ「まだノーエンド!」

ディスティ「!」

ディモがアレスの頭上を飛び越えディスティの顔面をフリーズストラクで力任せに殴りつける。

顔が凍りつきよろめいた所にもう一発、うろたえた所に足に一発殴る。

攻撃を受けた姿勢のまま氷漬けになったディスティの周りにアレスが後頭部から赤い球状の物体をばら撒きディモと共にその場を離れる。

セイリュウ「ディスティ!」

スザク「俺達の勝ちだな?」

セイリュウ「・・・何言ってるの?」

セイリュウの意外な言葉にスザクは唖然とした。

スザク「は?・・・・お前、この状況でまだ勝てるとか・・。」

セイリュウ「違う。」

スザク「は?」

セイリュウ「スザク君と一緒だよ。負けを認めない意地っていうの?

     今度はスザク君の番だよ。やっていいよ・・・私がしたように・・。」

セイリュウはあの時流した涙を思い出した。

スザクは目を見開き鬼の形相でセイリュウへ走る。セイリュウは驚きのあまりその場に硬直した。

セイリュウの胸倉を掴むなりスザクは怒鳴った。

スザク「お前!そんな言い方は無いだろ!?大事なパートナーじゃねぇのか!?」

セイリュウ「自分はやったのに・・・それを否定するの?」

スザク「確かに俺もやったよ!だがあの後色々あってな・・・パートナーって何かがよくわかったんだ。

    もし今の俺が過去の、あの時に行けたら俺は俺を殴り飛ばす!・・・いや、あの時の俺が・・お前だよ!!」

セイリュウはスザクの目から流れる何かに気づいた。

セイリュウ「スザク君・・?それ・・・涙?」

スザク「こんなの涙じゃねぇ。」

スザクはセイリュウを放し自分の目から溢れていた物を拭う。

スザク「何ヶ月・・何年付き合ってるのかは知らねぇけどよ・・・まるで用済みみたいな言い方はやめろ。

    俺はお前がギブアップするまで待つ。それに・・・やられた事をやり返すなんてしたくねぇ。」

スザクの言葉にセイリュウが悲しげに目を閉じた。

セイリュウ「じゃあしょうがないか・・・



      パターンE実行。」

スザク「は?」

ディスティに覆われていた氷が一斉に砕けディスティの機体があらわになる。

セイリュウ「本当は連携攻撃を利用して氷を割るつもりだったけど・・・

     あれだけの時間が経てば破壊も容易だよね。」

ディスティの目がギンと光り体が青く光りだす。これはメダフォースの予兆!

スザク「くそ!アレス、使え!!」

アレス「はぁッ!!」

先程ばら撒いた赤い球状の物から砲台が一斉に伸びディスティに火柱を放つ。

紫苑がスザクに使ったドーナツ放火と同じ攻撃。だが火柱はディスティに届く寸前で止まった。

スザク「!?なぜ止まる!?」

ディスティ「こういうことだ。」

ディステイが右手を振りかざすと火柱が一気に方向転換しアレスとディモに降り注ぐ。

さしものアレスとディモも攻撃を避けきれずに大ダメージを受けた。

ディモ「くッ・・」

爆煙が晴れた時ディモは眼前にディスティの顔を見た。

ディスティ「終わりですよ。」

エネルギー弾がディモの頭部を粉砕、メダルが床に転がる。

ビャッコ「ディモー!!」

アレス「ちっ・・」

スザク「アレス!大丈夫か!?」

アレス「・・・問題無い。肩がやられて左腕が動かないがな。」

スザク「素直に問題あるって言え!!」

動く右腕も損傷がひどい。いや、立っているのが不思議なほどのダメージを受けている。

機能停止しなかったのは気合か執念か。

ディスティ「自らの攻撃を受けた気分はいかがでしょう?」

アレス「言っていろ。すぐに形勢逆転してやる。」

ディスティ「それは楽しみですね。」

ディスティが一瞬で距離を縮めアレスの腹に拳を叩き込む。

アレスが前のめりになった所に背中をエルボーでたたきつけ地面に落とす。

倒れたアレスを見下ろしているディスティはそのまま静かに笑った。

ディスティ「フフ・・・」

スザク「・・・」

ディスティ「さぁ、どうしますか?スザク君?」

ディスティがスザクの方を見た。その時スザクの顔が変わったのをセイリュウは感じた。

セイリュウ「ディスティ!回避!」

ディスティ「え?」

アレス「おおおぉぉぉ!!!」

アレスが起き上がりざまにサーベルをディスティの肩に刺しこむ。床に血飛沫が広がる。

ディスティ「ぐ・・・」

アレスは刺したサーベルにさらに力を込める。サーベルがディスティの体を貫く。

だがその痛みも感じないのかディスティから笑いは消えない。

ディスティ「今のは油断しました・・・・ですが!」

ディスティはサーベルを叩き折りサーベルが体に刺さったままアレスから距離を取る。

そしてサーベルを抜き頭部からエネルギー弾をアレスの真下に発射、またもアレスの視界を封じる。

アレス「ちっ・・・」

アレスが舌を打ったその時煙の中からディスティが飛び出し抜いたサーベルをアレスの目に突き刺す。

衝撃でカメラアイが粉々になった。同時にとてつもない力をいれていたのか、ディスティの腕も粉々になった。

スザク「あいつ・・!」

セイリュウ「私の勝ちだね?あの時と一緒だよ。」

ディスティは大きく飛び退き何も見えない、何も聞こえなくなったアレスに距離を取る。

スザク「何言ってやがる・・・」

セイリュウ「・・・え?」

今度はキョトンとするのはセイリュウの番だった。

セイリュウ「さっき言った事は・・・あれは嘘だったの?アレスは・・・パートナーじゃないの?」

スザク「誰がギブアップするかよ。このお調子者ぉぉぉ!!」

スザクの視線とセイリュウの視線が交差する。

スザクの顔からはあの時と変わらないくやし涙、セイリュウからは悲しみの涙、

そのどちらもが床にスポットを落とした。

やがてセイリュウは涙を拭きメダロッチに叫ぶ。

セイリュウ「パターンラスト実行!!」

ディスティ「仕方無いですね・・・!」

ディスティがアレスに向かって走り出す。残った片腕を突き出しながら全力で駆け抜ける。

スザク「・・・なーんてな。」

スザクがメダロッチにあるボタンを1つ押しアレスの動かなくなった左腕パーツを外す。

外しただけでパーツは交換していないのをセイリュウは不思議な目で見た。

ディスティはかまわず片腕に力を入れアレスに振るう。

セイリュウはあの時と同じ光景を思い描いた・・・



空気が凍る。



アレスは『見えている』かのようにディスティの拳を避け背後を取った。

折れたサーベルに力を入れ機体が金色の光を帯びる。

ディスティは重い衝撃と共に自分がメダフォースを受けた事を知った。



それは一瞬の出来事だった。



スザク「言っただろ?」

セイリュウは床に落ちたディスティのメダルを見ながらスザクの声を聞いた。

スザク「大事なパートナーだってさ。」


第119話 〜皇帝〜



ハイロゥ「行くだぎゃ!」

ハイロゥがアルデ、ウィズ、フォストに向かって跳ぶ。

アルデがハイロゥを迎え撃つ体勢を取りウィズとフォストはそれぞれ別の方向に散った。

デウス「左右から回り込むつもりロボか。そうはさせない。」

ハイロゥ「あーおそがい。」

ウィズ「言ってやがれ!!」

アルデがハイロゥの拳を鎌で受ける。

そのままギリギリと鍔迫り合いを始めた。

ウィズが急に方向を変えハイロゥに向けて走る。手にはあいかわらずの大剣。

3メートルはあろう巨大な剣を軽々と片手で振りかざしながら重さを微塵も感じさせない走りを見せる。

フォストはツルのように湾曲した刀を持ち直しウィズと同じく走る。

デウス「来るがいい、全力でお相手しようロボ。」

ハイロゥが3体へ分身した。否、ハイロゥと同じ機体が2体増えた。

3人はそれぞれハイロゥ1体と戦う格好になる。

ウィズ「何ィ!?」

デウス「ハイロゥ以外は通常のチップメダルだが、時間稼ぎぐらいはできるロボ。」

ウィズ「ちっ!」

ウィズが走るのをやめ敵を迎え討つ体勢を取る。片手には大剣、もう片方の手には小さな片手剣。

フォストに向かったハイロゥが後頭部のワイヤーを持ち上げ捕縛弾を撃つ。

フォストはそれを刀で叩き落とした。本来ならそこで目標にまとわりつく捕縛弾が床に落ちて霧散する。

ハイロゥ「おぅ?」

フォスト「この刀は生命を絶つ刀にあらず。」

そう言い放ちフォストがハイロゥへ走る。刀を使わずに頭を鷲掴みするといきなりハイロゥが壁に吹き飛んだ。

壁に叩きつけられたハイロゥは機能が停止しメダルが機体から離れる。ICメダルだが。

アルデがハイロゥを押し返す。体勢を崩した所にアルデがそのまま鎌を投げるがかすっただけだった。

ウィズが自分に向かってきたハイロゥを大剣でなぎ払うがハイロゥは片手で受け止めそのまま剣を炎で包む!

ウィズ「あっち!!」

ウィズが大剣を離す。ハイロゥがそのまま剣を床に捨てたその時一瞬の隙を縫いウィズが背後へ回り込む。

そのまま小剣でハイロゥを切り伏せた。背中をピンポイントでメダルだけを取り出す。

床にメダルが落ちたのを横目で確認し残った本物のハイロゥへ向かう。大剣は走りながら回収。

フォスト「輝きが足りぬ。だから乱世が続くのだ・・・」

ハイロゥ「とろくせゃあ事言わな。そんにゃた〜けた口曲げてみよか?」

ハイロゥがフォストに拳を振るい炎を射出する。フォストはサイドステップだけでそれを回避した。

アルデ「こんな物でどうにかなると思ったか?」

アルデがICメダルを拾い握りつぶした。

デウス「所詮ICメダルは未だ不完全か。微塵も通用するとは思っていなかったロボがな。

   我が信じるのはこのアルトロンハイロゥだけだ。」

ウィズ「信じる?」

アルデとウィズの動きが止まる。フォストは刀を構える。信じるという言葉などロボロボ団から聞くとは思いもしなかった。

デウス「知らないか?信じるという心は無限の力を生み出すのだ。魔の十日間や先の騒動で戦った子供達のように・・・

   そして今も別の場所で戦っている少年少女達のように・・・ロボ。」

ウィズ「・・・・お前、本当にロボロボ団なのか?」



デウス「我ら神聖ロボロボ団に変わり者は多い。我もその一人だ。

   さぁ続きをしようロボ。アルトロンハイロゥ、メダチェンジ!!」

ハイロゥ「みゃ!」

ハイロゥが形態を変え龍を思わせる姿からそのまま龍の姿へ。周囲を小さな龍の頭部が飛び交う。

紅の双眸を3人に向けた。

ハイロゥ「そろそろ死んでちょー!!」

アルデ「散れ!」

龍の口から衝撃波が放たれる!3人はそれぞれ別方向に跳んだ。アルデが空中で急制動をかけ背中のビーム砲をハイロゥにロックオン!

アルデ「!?」

アルデの真横から龍の頭部が飛来。急発進でそれを回避するもそこへハイロゥが衝撃波を放ちアルデは直撃した。

アルデが壁に衝撃で激突する。一瞬気を失う。かまわずウィズがハイロゥに突撃。

ウィズ「断 光・・・」

デウス「無駄だ!!」

ウィズの前方の床が突如吹き飛びウィズの足を止める。そこへ龍の頭が落ちウィズは元の場所に戻された。

ウィズ「接近は無理か・・・神 天 剣、連牙ァ!!」

無数の刃が獲物に向かって降り注ぐ。だが刃が落ちた時敵の姿は無くウィズの真正面に移動していた。

ウィズ「なんだと!?」

ハイロゥ「だだくさ技使うからや。」

零距離で衝撃波を受けウィズの装甲が砕ける。そのまま壁に叩きつけられ壁も砕かれる。

アルデがビーム砲を放つが龍の頭部がビーム砲を受け止めた。

ウィズ「変形前と変形後でこうも強さが変わるとはな・・・」

ウィズは立とうとしたが足が動かない事に気づいた。さっきの衝撃波で何かが狂ったか。

そこにハイロゥが衝撃波を放つ。

ウィズ「ち・・・デバスチャーよりも強いとはな・・・」

フォスト「ウィズ、走れ!」

ウィズは自分の足をフォストが刀で斬るのを見た。その時足の痛みが瞬時に無くなりすぐに衝撃波を避ける。

ハイロゥ「ん?」

ウィズ「なんだ・・?うわ!」

フォストが続けてウィズを斬る。斬って斬って斬り続けた。突然の事にウィズは防御を忘れる。

デウス「乱心したか?・・・ん?」

ウィズ「・・・・機体の傷が消えただと?」

衝撃波と度重なる戦闘でボロボロになった機体が新品同様の輝きを発する。

傷らしい傷はどこにもなく完全に修復していた。

フォストは同じことをアルデにも行い二人の体力は最大まで回復する。

フォスト「言っただろう・・・この刀は生命を絶つ刀ではない。生命を繋ぐ刀だ。」

フォストは吹き飛んだ床も斬る。すると床までも修復される。

デウス「驚異的な修復効果をもたらす神秘的な刀だ。なぜそんな刀があるにもかかわらず先の大戦でそれを使わなかった?」

フォストは刀を鞘に収め悲しげにその答えを言う。

フォスト「私がこれを手に入れたのは大戦後だ・・・。」

ウィズ「・・・。」

デウス「なるほど。だがその刀がある限り長期戦は免れんロボな。回復ができないハイロゥにとってそれは望むことでは無い。

   パスワード解除。アルトロンハイロゥ、シェンロンの舞を叩き込め。」

ハイロゥ「解除・・・確認・・・みゃぁ!!」

ハイロゥの体が金色に、銀色に、青に赤に紫に黒に!!周囲に風を吹き荒らしながら輝き出す。

地震も起こり床一面にひびが入る。ハイロゥの輝きは数秒単位で倍に増していく!

ウィズ「なんだ!?メダフォースのレベルじゃねぇ!!」

デウス「当然だ!これはメダフォースではない!!メダドライブだ!!!!」

フォスト「(ハデスと同じ力か!)」

アルデ「ウィズ!フォスト!俺の後ろに隠れろ!!」

ウィズ「何言ってんだ!?一人で受け止めるつもりか!?」

アルデ「受け止められる物がある!!」

ウィズとフォストはアルデの右腕を見て答えを見出した。それ以上の反論も無しにアルデの後ろへ走りこむ。

ハイロゥ「シェンロンブレス!!」

風が渦巻きハイロゥが重々しく口を開く。そしてその口から火炎弾を撃つ!

その火炎弾はレプラスのリペアシューターなど比にならないほど大量にかつ巨大で無数に降り注がれる。

アルデ「アクアオーラ・・・展開!」

アルデの右腕の青い宝石が輝きアルデの周囲を青白い光が覆いかぶさる。

光は炎を横に流し壁を、床を、天井を砕き焦がしズタズタに切り裂いた。

デウス「きかないだと!?ハイロゥ、出力を上げるロボ!」

ハイロゥ「ほぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

アルデ「負けるか!はァァァァ!!!!」

熱い空気が充満し煙が辺りを覆いつくす。爆音と光が炎を弾く音がいつまでも続きそして唐突に途切れた。


第120話 〜畏怖〜



ダークンはふと遠くから誰かが来るのを見た。

それは自分も知っている者だった。メカドラグーンもそれに気づき視線を向ける。

どことなく目が虚ろでどこを見ているわからないレインボーダストが二人にとぼとぼと近づいていく。

ダークン「・・・どうした?」

ダスト「・・・。」

そのままダストは何も言わずに通り過ぎようとしたのでドラグーンがダストを引き止める。

メカ「ナニ、イ・テレイ、ルル?レインボーダスト?」

ダスト「・・・?」

ドラグーンの言葉はダークン以外にはわからない。フォストもある程度はわかるが、ダークンほどではない。

・・・ドラグーンはダークン達が使っている言葉を聞くことはできるようだが話せないようだ。

ダークン「どうしたというのだ?」

ダストは無言で握っている右手をゆっくり差し出し中を二人に見せた。

二人はそれを見ると同じように無言になった。

メカ「・・・ゴルゴデ、ドラグオン?」

ダークン「貴様がやったのか?」

ダストは答えなかったが静かに頷いた。

ダークン「フン。」

ダークンはダストに背を向けるとエレベーターに向かって歩き出した。歩きながらダストに向かって言う。

ダークン「我らが『あの戦い』で袂を分かちた時、こうなる事は既にわかっていた。

    その覚悟が足りなかった事は貴様は戦士として未熟だったという事だ。」

メカ「バニス、タママカ、フローン、ルル、ダークン。」

ダークン「恐れるというのなら戦うな!!」

ダストの体がぶるっと震える。持っていた物がその振動で床に落ちた。

ダストは拾おうとせずにその場に立ち竦んでいる。

ダークンはそれを一瞥しもう何も言うことが無いというようにエレベーターのボタンを押す。

メカ「ソル・・・・セヴン、ドラグオン。」

ドラグーンはダストが落とした物を丁寧に拾い自分の手と一緒にダストの手に戻す。

メカ「アイ、リェテット、イーテスレイ、ア・テマ、ウォンド、ラスター、ウォテスト、イ・テレイ。

  ネーダ、ノスイー、ネーダ、ネーダ・・ア・テマ、コスモス、ヤ。コスモス、ダァ、ラスター、

  オールス、ムーン、セアース、コスモス、ノスノスノス、ウォーティ、アウト、ザ・メルト、ワムデダ、ラァ、ヤ、リターシ、ノヴァーラ。

  ロキ、フローン、ヂ、メ・ハウハ、ヴァトル、ア・テマ、ワムデダ、ボイ、ウォーティ、リターシ、イ・テレイ、ヤ。

  ・・・ウォンド、ラスター、ソル・・・。」

ダスト「・・・?」

ダストは何もわからない。困り顔でダークンの方を見る。

ダークンも興味のある話だったのか顔をこちらに向けていたので自然にダストと視線が重なる。

ダークン「・・・・簡略にまとめるが、満月の日にここからはるか東にある遺跡の泉にそれを入れるとたちまち直る、

    ばかばかしい一つの噂話を聞いたことがある、とそいつは言っている。」

ダスト「・・・。」

ダークン「そしてこれは我がこのアジトで集めた情報だが、江戸紫という町・・・場所は忘れたが、そこにある研究所で

    科学的にそれを修復する研究を行っているということだ。我は実際にその研究所に偵察にも行った。

    メダルを1枚直したという実績があった。その直したというメダルは見当たらなかったがな。」

ダスト「・・・。」

ダークンはなぜこんなことを言ってしまったかとそれ以上ダストの顔を見ないようにエレベーターへ視線を戻す。

そこへエレベーターが下の階層から到着し扉を開けた。ダークンは乗り込み開放のボタンを押してドラグーンを待つ。

メカ「ユー、ザ・メルト、ファイン、ハーン・・・。」

ドラグーンは数秒、やさしくダストを抱きしめエレベーターへ入った。エレベーターの扉は閉まり下の階層へ移動していく。

ダストはそのまま微動だにしなかった。



メカ「ダークン。ユー、ナニ、エッターシ、ケーサ、ルル?」

下の階層へ移動中、ドラグーンが一つの疑問をダークンに問いただした。

ダークン「怖くない者などこの世にいない。『優劣』はその怖いという感情をどこまで抑えれるかで決まる。」

メカ「ユー、セ・アース、ア・サ・ザー?」

ダークン「答えるほどの事でもないだろう。・・・我は『高尚』、『優秀』、『高性能』、

    自分という物に大きな自信を持っている。それを自ら宣言する者がそんな物に臆するなど笑い話にもならん。」

メカ「・・・セセ・ハ?」

ダークン「言っている。まだお前の言った事を信じるわけでは無いと先程も言ったはずだ。

    お前の言うことが本当なのか、それを確かめるまでは私はいつまでも言い続けるだろう。」

メカ「・・・」

ダークン「お前と共に歩む、という道はまだ始まったばかりだ。すぐに終わると思うがな。」

メカ「ザ・メルト、ロキ、ソジャマ。ザ・メルト・・・・ザ・メルト。」

ダークン「セ・アース、リリリィ、テメロ。」


第121話 〜時間〜



バニジン「やあ、シルバ。カービン。」

シルバ「バニジン?あんた・・・何してんだい?」

オシロイとイクシオンが顔を見合わせる。そして二人ともバニジンに視線を向ける。

バニジンは静かにシルバとカービンを見つめている。

事情を説明しなさそうなのでオシロイは仕方なくシルバ達に視線を送った。

ふとその視線がシルバの顔で止まる。

シルバはその視線に気づいたか自分の顔を片手で覆った。

オシロイ「あれ?そっちの白い方・・・」

オシロイが何かに気づきシルバに近寄る。その進路をカービンが塞ぐ。

オシロイはポケットから工具と部品を取り出し手の中で使えそうな部品をピックアップ。

必要ない物はそのまま元の場所に戻しシルバに近づいた。そこにカービンの拳が襲う。

カービン「シルバニ・・・チカヨル・・ナ!!」

顔面を殴られたオシロイはそのまま床に倒れこむ。オシロイの周りにオイルが飛び散りカービンの腕自体もオイルまみれになる。

カービンは攻撃を行うたびに自らが傷つく諸刃の機体だ。

殴る相手がメダロットから人間に変わっても、そのダメージは大して比は無い。

イクシオン「マスター!」

バニジン「マ、マスター!」

イクシオンとバニジンがオシロイに駆け寄る。シルバはそのままだったが、カービンは腕が殴った角度のまま、目を細めた。

カービン「マスター・・・?雷龍・・・ドウイウ・・・コトダ?」

バニジン「助けられちゃってね・・・この人がいなかったら、僕はもうこの世にいないって事になるんだ。」

バニジンがオシロイの様子を見ながら振り返らずに言う。

この世にいない、というキーワードを聞いた瞬間、カービンは静かに腕を下ろした。

シルバ「・・・命の恩人ってことかい?」

バニジンは静かに頷いた。体はオシロイに向けたままだが。

シルバ「だけど人間って生き物がどれだけ汚いかを見てきたじゃないか。あの森で見たこと、感じたこと、

   知らないとは言わせないよ!?」

片手で顔を覆うシルバが声を荒上げる。

バニジンはやっとシルバに体を向けた。

バニジン「たしかに僕もあの森でたくさん人間を見てきた。

    どいつもこいつも貪欲で、自惚れで・・・でもこの人だけは何かが違う・・・いや。」

カービン「?」

バニジン「今思い出した。『リンドウ』も、この人と同じだった。」

シルバ「・・・・アイツかい?フォストが唯一心を許していた人間か。」

バニジン「とりあえず僕は借りができたってことだよ。」

シルバ「・・・・。」

シルバの目に迷いが生じる。カービンは至って普通だが、あいかわらず目を細めたままだ。

オシロイ「・・・・とりあえずさぁ・・・。」

イクシオン「マスター!大丈夫でごわすか!」

頬が腫れひどい顔になったオシロイがゆっくり立ち上がる。殴られても握った部品を手放さなかったのは彼も開発会社関係者か。

オシロイはカービンの事を気にもせず、シルバの顔を指差した。

オシロイ「せめてその顔だけでも応急処置させてくれねぇか?メルトでやられたんだろそれ。

    痛々しくて見てられねぇ。片手で隠したって見る側は見えてしまうんだよ。」

シルバ「修理・・・をするっていうのかい?」

オシロイ「といっても装甲板つけるだけだけどな。ここじゃ大掛かりな事もできねぇし、

    生半可な復活パーツ使ってもそこまでひどかったら痕が残りそうだ。」

それだけ言うとオシロイはシルバに近づく。再度カービンが殴るということも無く、

オシロイとシルバの距離は目と鼻の先にまでになった。オシロイが装甲板をシルバの顔に当てて工具で取り付けていく。

シルバ「・・・私達を怖いとか、恐ろしいとか・・・なんとも思わないのかい?」

オシロイ「どうだろう。たしかに君達みたいに強力なメダロットと戦う時は多少なりと恐怖はあるね。

    だけどそれもロボトルだけの話だ。オレがその『リンドウ』ってコト同じ時代にいたらまわりと同じだったかもしれないが、

    これだけメダロットが蔓延している時代に生まれたからね。メダロットが好きで好きでたまらない、

    傷ついてるメダロットは放って置く事ができない人間は俺だけじゃないさ。」

片目を覆い隠したような感じの顔になったシルバを見たカービンはため息を一つもらした。

オシロイ「そういやさぁ・・・」

カービン「ン?」

いつのまにか装甲板を張り終えたオシロイがカービンの方を見ていた。

シルバは装甲板の張り具合を確かめている。

オシロイ「君のそれって正常なのか?」

それがなんなのかすぐに見当がついた。

バニジン「彼は死龍。死を呼ぶ龍なのか死を司る龍なのかは知らないけど、ボロボロな機体は生まれつきなんだ。」

オシロイ「・・・ボロボロなのかそうじゃないのかわからなぇな・・。」



デウス「ガス欠か。」

炎が途切れそのまま倒れたハイロゥを見てデウスはつぶやいた。

やがてアルデの右手にひびが入りパーツが砕ける。フォストが刀でアルデの右手を軽く斬る。

アルデ「メダドライブはメダフォースよりも負担が大きい。貴様らのように『意図的』に出せるように改造されている者は、

   出し続ければそれこそ命に関わる。」

ウィズ「・・・そもそもメダドライブってのはなんだよ?」

タイミングを計っていたのか、ウィズは疑問を打ち明けた。

フォストはわからない顔をしていたがアルデは無表情でその答えを言い出した。

アルデ「メダドライブというのは古より伝わる秘奥義中の秘奥義だ。その手の宗教しか宛にしない連中は

   『神より選ばれし者しか使えない諸刃の剣』と呼んでいるが、実際の所は何もわかっていない。

   威力はメダフォースの数十倍を軽く超える。破壊力が凄まじい分、自分の負担も大きいからその点では諸刃の剣だ。」

ウィズ「・・・なんでそんな事知ってるんだお前は。」

アルデ「メダドライブがなぜこの世にあるのか、それはわからない。知っているのは俺のように『あの時』強化改造を受けた者は、

   メダドライブを自由に発動できるということだ。・・・俺がメダドライブを使えば、その時はメダルが砕けるが。

   自分が使える物については俺にそれを『組み込んだ』奴から大体の説明は受けている。俺も半信半疑だったが、

   実際に使ってみてその諸刃の剣には感嘆した。・・・同時に悲しくなった。」

ウィズは話を聞きながら所々に混じるキーワードに目を細めていた。

フォストは何食わぬ顔をしている。

フォスト「(ハデスもその一人なのだろうか・・・)」

デウスはどっかりと胡坐をかき腕を組む。

デウス「お前のように強化改造ロボか。確かにハイロゥは『その時』強化改造を受けた者を使っている。

   お前が『ジャッジメントストライク』のように、ハイロゥは『シェンロンブレス』だった、そういう事ロボな。」

アルデ「・・・・『その時』強化改造を受けた者だと?じゃあこいつは・・・」

デウス「気づかなかったロボか。ハイロゥはお前の時代では『リゲル』と呼ばれていたそうだ。

   ほかのロボロボ団の幹部達・・・新入りのジコクテンは違うが、アマクサがフォーマルハウト、

   バベルがトロイアン、アキレウスがペテルギウスを使っておる。全て、言語機能と判断能力にプロテクトをかけている。」

アルデ「・・・プロテクトだと?」

デウス「全ては我が帝への忠誠。しかし、判断能力のプロテクトは同時に戦闘能力の低下にもつながった。

   捕らえた奴らを『完全に』従わせるにはこの方法しかなかった。なにせあ奴らは人間をひどく嫌っているロボ。」

アルデ「・・・・。」

デウス「仲間達との感動の出会い、といった所かな?」

アルデ「・・・だが大事なプレアデスがいないのでは感動もひったくれもない。」

プレアデス、あぁ、それは弟と言っていたあいつのことだな・・・とウィズはまた考えをめぐらせた。



フォスト「(吹き抜ける風は鉛の臭い・・・といったところか)」

ウィズ「(俺が考えるにはキーワードが少なすぎるか)」



オシロイ「さて・・・」

オシロイは腫れた顔を痛そうにさすりながら紫苑達が進んだ道を見た。

シルバ「?どうしたんだい?」

オシロイ「そろそろ先に進まなきゃね。友達が仰山行っている。」

カービン「仰山・・?バニジン・・・コノオクハ・・・」

バニジンが無言で頷いた。

バニジン「帝が待つ、この基地の最深部だ・・・。ただし、そこに到達する前にジコクテンやデウスがいるけどね。」

ジコクテンという言葉を聞いてシルバは嫌悪感をあらわにした。

シルバ「ジコクテン・・・」

オシロイ「・・・誰だ?」

シルバ「最近幹部になったんだ。・・・もともと私らが連れ去ってきた子供だけどね。」

シルバは自嘲気味に答えた。その瞳は不安に染まっている。

オシロイ「子供の誘拐事件はロボロボ団の仕業だったのか・・・。」

いつだかゲンブが新聞を教室に持ってきてたな、と頭の片隅で思い出した。

シルバ「現存のロボロボ団にはまともな戦力がいなくてね・・・帝から要請があったんだ。

   小学生がロボトルの実力が安定しているから、ランキングで上位をとる者を中心に奪ってこいってね。

   その誘拐してきた小学生の中でも、あの女・・・ロンガン使いだけはダントツだった。」

オシロイ「ロンガン使い・・・・立甲さん?」

カービン「・・・・ダガ、アノ・・・ロンガンハ・・・」

バニジン「?どうかした?」

カービン「セイリュウ・・・・ブルーディスティ・・・・」

オシロイ「青龍?あぁ、君達の称号か。・・・・青もあったのか。

    ・・・・ってことは紫苑さん達はその青龍と戦ってるってことか。」

イクシオン「急ぐでごわすぞ。先に進むでごわす!」

オシロイ「待った。」

イクシオン「?」

オシロイはイクシオンを制しシルバとカービンを見る。

オシロイ「君達の目的は僕らみたいな邪魔者を排除することだろ?すんなり行かせてはくれないよな?」

シルバ「・・・・。」

カービンは首を振る。シルバも答えに迷う。

シルバ「そのつもりだったけど・・・わからなくなった。」

カービン「・・・・」

オシロイ「・・・わからない?」

シルバ「・・・人間がどういう生き物なのか・・・私達が憎む敵とはなんなのか・・・

   そして私達はどこに行けばいいのか。」

バニジン「・・・。」

オシロイ「そんなの」

オシロイはシルバの肩に手を置く。

オシロイ「これから考えればいいだけさ。身近に人間を置いて考えればいい。」

シルバ「人間を置く?」

オシロイ「君達を見てくれるメダロッターはたくさんいるさ!」

シルバ「・・・・私達も行く。」

オシロイ「・・ん?」

シルバ「アンタ達が先に進むんだったら・・・私達も一緒に行くってことだよ。」

オシロイ「・・・あぁ、大歓迎だ。よし、いくぞ!」


第122話 〜螺旋〜



ディスティ「殺すなら殺すがいい・・・龍将。」

うなだれたディスティが前に立つハデスの方を見ずに吐き捨てた。

ハデス「ブルーディスティ」

ディスティ「フッ。私が貴方を龍将と呼ぶのに何故青龍と呼ばない?」

ハデスはしばらく何も言わずに立ちすくんでいた。

ディスティは視線を床に注いだまま他者の足音がこちらに近づいてくるのを感じる。

ハデス「・・・私はお前に借りがある。」

ディスティが視線をやや上に上げる。

視界に入ったのはハデスの白い足とその傍らに立つ赤い華奢な足。

ディスティ「ミリオンの事ですか。あれが正しい選択だとは思っていない。

     ならば何が正しいかと問えばそれもわからない。が、少なくともミリオンを危険な目に遭わせた事は、

     貴方に裁かれる義務があるに違いない。」

ハデス「それは森の事か?それともミリオンの逃走の事か?」

ディスティ「両方ですよ。私は貴方達の関係を知ってもなおそういう行動をしてきた。

     そして私はセイリュウまでも危険に晒した。覚悟はできているさ・・・」

ディスティはそう言うと目を閉じハデスの裁きを待った。

だがハデスはいつまで待っても動こうとしないのでまた目を開ける。

そこにはハデスとミリオンとは別の姿があった。ディスティは初めて顔を上げた。

新たな客はまたハデスと同じように何も言わずにディスティを眺めていた。

ディスティ「パープ。」

パープ「?」

ディスティ「あの戦い以降、私を探して飛び回っていたらしいな。

     貴方は私に何を求めているのだ?」

パープ「・・・僕はディスティちゃんの中にある、暖かい物を求めてただけさ。」

ディスティ「ちゃん付けで呼ばれるのは好きじゃない。それに、私の中にある物も心当たりが無い。」

パープ「それがあるかどうかは、僕だけが知っているんだ。」

ディスティ「・・・。」



紫苑「セイリュウ・・・ちゃん。」

セイリュウのまわりにはクラスでおなじみのメンバーが揃っている。

アレスやレプラスといったメダロットは離れた場所で体を休めている。

セイリュウ「お久しぶり。黙っててごめんね。」

スザク「・・・。」

セイリュウ「スザク君も・・・来てくれてあり」

話を最後まで聞かずスザクの手はセイリュウの頬を叩いた。

まわりが頬を叩いたと気づくにはしばらく時間を要した。

ゲンブ「ス、スザク君!?」

紫苑「セイリュウちゃん大丈夫!?」

セイリュウ「・・・うん。」

スザク「最低だ。心配してあれだけ必死になってやっと見つけて・・・

   俺が望んだリベンジは!俺が望んだトーテムポールスはこんなんじゃねぇ!!」

ビャッコが額につけているゴーグルを布で拭きながらスザクを見る。

ゲンブも紫苑もスザクに言葉を失った。

セイリュウ「・・・スザク君って変わった?」

紫苑「わかる?ゲンブ君にロボトルで負けてからちょっと頼もしくなったよね。」

セイリュウ「ゲンブ君に?ということは今のナンバー1って・・・。」

ゲンブが頬をかきながら答える。

ゲンブ「えぇ・・・実質のリーダーは僕が持っています。トーテムポールズその物を消すつもりで挑んでいましたが、

   その後ゴタゴタがあって結局消していませんね。スザク君がこのままなら、別にと僕は思っていますが・・・」

スザク「何言ってるんだよ・・・消すならさっさと消せって。ビャッコ、ちょっと来い。」

ビャッコ「ん?あいでやす。」



紫苑「セイリュウちゃん、本当に大丈夫?ちょっと腫れてきてるけど・・・」

紫苑がセイリュウの頬を指す。

セイリュウ「心配かけて踏み倒したのは私だから。正直スザク君があんなになってたのは予想外だけどね。」

紫苑はふと何かを考え込んだ。ゲンブも同じ思考に至ったようで同じように考え込んだ。

紫苑「スザク君って実はセイリュウちゃんの事が好きとか?」

セイリュウは紫苑の冗談に一気に顔を赤くする。ゲンブの考えていたことも同じなようだった。

セイリュウ「ままま、まっさかー。ほ本当にそうだったら・・・びびびびっくり・・・。」

ゲンブ「スザクに限ってそれは・・・・ありえますか。」

セイリュウ「ゲンブ君も何言ってるの!!?」

3人は互いに笑い合った。



スザク「(さすがに強すぎたかな・・・)」

スザクは横目でセイリュウの頬を見ながらビャッコに聞こえないように呟いた。

ビャッコ「スザク、どうしたんでやすか?」

スザク「ちょっとお前に頼みがある。」

ビャッコはぽかんと口を開いたまま手に持っていたゴーグルを床に落とした。

ビャッコ「・・・・は?スザクが頼み事とは意外でやすね。」

何かニヤニヤした顔で落としたゴーグルを拾う。

スザク「握れるほどの残骸をフリーズストラクで凍らしてくれないか?それをその布で包んで・・。」

ビャッコは何故そんな事をと考え1つの答えに結びついた。

ニヤニヤした顔がさらに深みを増しスザクは考えてるんだと言いたそうに顔をしかめる。

スザク「・・・なんだよ?」

ビャッコ「さては立甲さんをメンバーに入れた理由って・・・。」

スザク「前話さなかったか?女がいないから一番何も言わなそうな奴をだな・・。」

ビャッコ「それはフェイク。本当は・・・いひひ。」

スザクはますます嫌そうな顔をした。



ハデス「戦えるのは何名いる?」

ハデスとゴウカンはメンバー達の状態を順々に見ていった。

格闘を主体とした仲間達の状態はひどかったが、まだまだ限界ではない。

射撃主体の仲間達は充分戦える。ナノマシンによる修復も進めば戦いに特に支障は無いだろう。

ハデス「ここから先は・・・」

ミリオン「長い一本道が続いた後、ついに帝が待つ部屋です。」

ハデス「長かったな・・・。」

ゴウカンは拳銃の簡単な点検を終え元の位置に戻した。

片手で仮面がずれていないかを確かめハデスに向き直る。

ゴウカン「まだ終わりじゃない。むしろここからではないか?」

ハデス「・・・・そうだな。・・・そうだったな。」



アースーク「これも1つの信念ッスか。」

少し離れた場所で骨を休めていたアースークが呟いた。

ストロ「フォストともハデスともミリオンとも違う信念ってことさね。」

アースークの言葉にストロも応じる。

アースークはストロに賛成するように軽く頷いた後親指を突きたて、

アースーク「ついでに言えばアッシとも違うッス。」

ストロ「マスター思い・・・か。」

アースーク「ははは。死に別れ3人ッス。墓参りもそろそろしないと怒られるッスなぁ・・」

ストロ「笑いながら言うんじゃないよ。」



スザク「え〜っとセイリュウ?」

スザクが何かを布で包んだ物を持ってセイリュウに近づいた。

紫苑とスザクはふと視線が合い、ゲンブは何かを承知したように微笑む。

紫苑「ゲンブ君?ちょっと・・・」

ゲンブ「え?あ、はい。」

紫苑とゲンブが離れセイリュウとスザクが一対一で向かい合う。

セイリュウの顔はまだ先程の冗談で赤くなっていたがスザクの顔も赤いのは何故だろう。

スザク「え〜っと・・・ほれ。」

スザクが手にした物をセイリュウに差し出す。

セイリュウは最初それが何かを不審に思ったが触ってみて何かか納得した。

ひんやりした感触があったそれをすぐに自分の顔にあてる。

セイリュウ「・・・ありがと。」

スザクはそれだけ渡すと恥ずかしいのかすぐに背を向けた。

スザク「女に手をあげるなんざ俺も落ちたもんだ。考え直さないと良いか悪いかもわからないんじゃどうしようもねぇぜ。」

セイリュウ「でもそれだけ私を心配してくれたってことなんでしょ?」

スザク「・・・・まぁな。」

その時スザクは自分の背中に柔らかい感触が当たるのを感じた。

振り向かずともセイリュウが息がかかる近距離にいるのがわかる。

セイリュウ「ありがと。」

スザク「・・・もうするなよ?」



紫苑「スザク君とセイリュウちゃん、良いムードだね。」

ゲンブ「ですね。」

二人から距離をとった二人は落ち着いた口調で話していた。

紫苑が視線をそのままにしてふと質問を投げかける。

紫苑「ねぇ、一つ質問をしていい?」

ゲンブ「なんでしょう?」

紫苑「ゲンブ君に好きな人っている?」

ゲンブ「いますよ?」

普通は迷う答えをさらっと言ったゲンブは紫苑が固まってるのを横目で見た。

ゲンブ「すみません。即答してあっけにとられてしまいましたね。・・・でも僕が好きな人はいます。

   気持ちがはっきりしているから、そんな質問をされても即答できるんですよ。」

紫苑「やっぱりゲンブ君ってしっかりしてる・・。」

ゲンブは静かに首を振り、

ゲンブ「やっぱりとはどういう意味ですか?それに僕は思っているほどしっかりはしてないと思います。

   だっていつその人に告白しようか、思い悩んでいるんですからね。」

紫苑「・・・。」

ゲンブ「・・・・この流れだと誰?という質問が来ると思ってたのですが・・・。」

紫苑「い、いや!私はそんな事聞かないって!・・・ゲンブ君も困ると思うし・・・。」

ゲンブ「困りませんよ?むしろ聞いてくれたほうがこちらとしては有り難いですね。」

紫苑はまたもあっけにとられる。

紫苑「・・・じゃあ・・誰?」

ゲンブ「貴方ですよ。」

紫苑の顔が真っ赤に染まる。

紫苑「・・・え?」

ゲンブの顔は何ら変化が無い。どこまで信じればいいかわからない。

対する紫苑は心が真っ白になった。唖然とし、今何と言ったか聞きなおそうかとさえ思う。

ゲンブ「さて。残るは敵の親玉だけですね。がんばりましょう、紫苑さん!」

紫苑「う、うん・・。」



レプラス「ん?どしたの、紫苑。」

紫苑「・・・なんか私だけ置いていかれてるなぁ・・・ってそんな気がしただけだよ。」

レプラス「・・・。」



ハデス「・・そういえばディスティ、お前はまた私達と戦ってくれるのか?」

ハデスの質問にディスティは首を横に振った。

ディスティ「共に行けば私は何度でも、それが将来得となるのなら味方を危険な目に合わすだろう。

     それが私だ。それが青龍と呼ばれる私だ。そんな私が共に行ってもよいのか?」

ゴウカン「君はまだそんな事を言っているのかね?」

拳銃をくるくる回しながらゴウカンはからかい気味に言う。

ゴウカン「君には選択肢が2つある。このまま龍神として生きるか、普通のメダロットとして生きるか、だ。」

ディスティ「普通?」

ゴウカン「君はメダロットだ。メダロッターは立甲セイリュウ。

    メダロット社のメダロット登録がそれを語っているのではないかね?

    これから君が歩む道は血塗られたあの森の戦いの続きではない。

    セイリュウと共に、自分の未来を切り開く道を歩むのだ。これに何か不服があるのかな?」

ディスティ「私が・・・普通に生きて・・・・」

ゴウカン「もちろん過去の呪縛を断ち切るにはこの先にいる親玉を倒す必要があるだろう。

    しかし倒した後の君の人生は自由だ。君はセイリュウと生きたい、そうではないのかな?」

ディスティ「・・・・言い逃れはできないか。行こう・・・・私はディスティではない。私は・・・ステルミアだ。」


第123話 〜誓い〜



紫苑達は互いに声を交わし呼応した。

それは友達と再会した喜びであり、困難を越えた達成感でもある。

互いの絆を深めた仲間達は共に新たな道を歩む。さらなる地でも新たな、そしてかけがえの無い出会いが待っていた。



ウィズ「久しぶりだな。」

レプラス「そっちこそ!」

高い音を出して互いの手のひらを叩く。ウィズ達がハイロゥと戦ったその場所はハイロゥのシェンロンブレスによって溶岩地帯並の熱気を醸し出していたが、

今やフォストが綺麗に修復したため、元の狭く長い通路に戻っている。

そのフォストはといえば、ハデスと距離を置いて見つめ合っていた。

ハデス「・・・・まさかお前までもいるとは・・。」

フォスト「意外かな?龍将よ。何か私に言うことがあるのではないのか?」

フォストは腰の鞘を握りながらハデスの瞳を凝視した。無論、その場には他の龍神達もいる。

その誰もが目の前にいる緑色の人物に尊敬、不安あるいは敵意、様々な力を帯びた視線を送っている。

ハデスはこの者がまさかここにいるとは思いもしなかった。一番身近にいて、一番よく知っていたからこそ、いないと思っていた。

さらに彼は『あの事』にも気づいている・・・

ハデス「・・・私はそれが一番の得策だと思ったからこそやっただけだ。

   お前に・・・とやかく言われる筋合いは無い!」

フォストはただ言葉を静かに受け取った。ハデスが怒鳴り気味に答えたのにも何ら興味を出さず、

フォスト「私もあれが一番だと思っていた。彼・・・いやリウスは情緒的に安定とは言えない者だ。

    青き空に放ち其れが滾々と湧き出し続けられるかと思案すればそれは儚い夢だろう。

    ならばいっそ闇に沈め新たな命として青き地に産み落とせば可能性の種は風に乗って辺りに広がる。

    私はリウスについては何も反論は無い。」

ストロ「リウスについては・・・?では他に何かあるさね?」

リウス以外の事は聞かされていなかったらしくストロやアースーク、パープ、ステルミア、ミリオンは戸惑いを隠せなかった。

いや、ミリオンだけはもしやというような顔をしている。

フォストは一同の顔を順々に見回し、ポツリと1つの名前を口にした。

ハデスを除く者は蒼白になった。漫画ならば背景は稲妻だ。一つの大事な要素に彼等は今初めて気づいたのだ。

フォスト「彼女はリウスを庇い砂となった。そして彼女が守ったリウスは今はとある少女の大事なパートナーとなった。

    龍将、何故皆に話さなかった?彼女はリウスのかけがえのない者だったのだぞ?」

ハデスの体はいつのまにか震えだしていた。自分の手中を見つめ必死に言葉を紡ぎだす。

ハデス「全て終わらせた時に私の愚考を、私なりのやり方で正すつもりだった。

    仲間達には余計な心配をさせないように・・・黙っていたのだ・・・・!!」

アースーク「リーダー・・」

フォスト「その正すやり方というのは自らの命を絶つことか?」

ミリオン「そんな!!?」

ミリオンが驚きの声を出す。ミリオンは必死にハデスに食い下がった。そんなことはないだろうと何度も問う。

だがハデスは深刻な顔をしたまま、首を縦に振らなかった。

ミリオンがどっと膝を床に落とす。

ハデス「・・・・ミリオン。わかってくれ・・・。」

ミリオン「わかりません!」

ハデス「私のこの銀色の身体は赤く染まりきっている。いずれ粛清せねばならないのだ。

    お前を、私のような罪人のパートナーにはできない。」

ミリオン「わからないと言ったじゃないですか!どうしてそう決め付けるのです!?

    ハデス様はたしかに・・・カディアが死ぬ要因を作ったのかもしれない!

    ですが私のパートナーにふさわしい方はハデス様しかいないのです!ハデス様が自らを絶つと言うのなら、私も一緒に絶ちます!」

ハデス「ミリオン・・・。」

パープとステルミアは顔を見合わせた。パープはいつもどおりだが、

ステルミアの表情はミリオンに近いものがあった。

ちなみにステルミアは壊れたブルーディスティのパーツを取り払い、今まで通りの青龍型『ロンガン』のパーツを装備している。

フォスト「龍将、そして赤龍よ。」

ハデスとミリオンがフォストを見る。

フォストはハデスとミリオンの会話にも表情を崩さず、平然と続きを述べた。

フォスト「死ぬという行為は全てを捨てて逃げるという行為と同じだ。

    二人共、そんなにいい加減な者ではあるまい?」

ハデスとミリオンは静かに頷いた。

フォスト「罪を償う方法はいくらもある。だが一番難関な物は生きる事だ。

    彼女の分も生き抜け。それが彼女に対する立派な罪滅ぼしとなろう。」

ハデス「生きる・・・・ミリオン・・。」

ミリオン「いきましょう・・ハデス様。」



ステルミア「そういえばそれはどうなされたのですか?」

ステルミアがフォストの刀について聞いた。

フォストは珍しく表情を曇らせ刀を鞘から引き抜いて刀身を見せた。

フォスト「皮肉な物だ。かの人間達はあの森に眠る財宝を求め我らと戦う道に赴いた。

    そして私達は、それを幾度となく拒み戦い続けた。決して財宝など無いと。」

ステルミア「それが?」

フォスト「森が焼かれ、全てが灰となったあの日。積もった灰の中からこの刀を見つけた。

    財宝など無いと思っていたところに財宝が見つかったのだ。」

ステルミア「・・・貴方も罪滅ぼしの途中なのですね。死ぬという選択肢がありながら貴方は生きる道を選んだ。

     私達は自分達が目指す未来の作り方は違えど、同じ道を歩んでいる。そういうことになるんですね。」

フォスト「同じ道?」

ステルミア「生きる・・・という道ですよ。緑龍。」



デウス「よくぞここまで来たロボ。少年少女達よ。このデウス、褒めてやろう。」

あいかわらず胡坐をかき腕を組んだままのデウスは近くにいる紫苑やスザク達に絶賛の声を向けた。

スザク「なんだと!?やるんだったら相手になるぜ!?」

スザクが拳を握りづかづかと前に歩み寄った。デウスは手をひらひらとさせて敵意が無いことを示す。

デウス「慌てるなロボ。我に戦う力は残っておらぬわ。アルデバラン、ウィズ、フォスト。

   かの者達に負けた我は今や年老いたただのオヤジでしかないロボ。」

スザクが踏みとどまる。ゲンブがデウスに歩み寄り片足を引きしゃがみこんだ。

ゲンブ「ならば貴方はこれからどうすると?」

デウス「フン。役目を失った我はお主達がこの先に進んだ後にほそぼそとここを離れよう。

   だが新しき未来を作る者達に塩を送るというのも良い余興では無いだろうか?」

ゲンブ「余興・・・ですか?」

デウス「そうだ。余興ロボ。さる数十年前は我らがお主達のような年齢で未来を歩んでいた。

   だが光陰矢の如しとは言ったものロボ。一気に年老いてしまったわ。我はこの辺でバトンタッチする宿命にあるのだろう。」

紫苑「・・・。」

デウス「少年少女達よ。今お主達はお主達の未来を作っているのだ。諦めるな。

   いかなる困難が立ちふさがろうとお互いを信じ戦い続けるのだロボ。したらば、きっと道は開く。

   我は死ぬまでにお主達が作り出した未来をあの世にもって行きたくなった。そこまでに心を彷彿させたのだ。

   こんな気持ち、とうに忘れていたぞ。我らは神聖ロボロボ団だが、我らが信ずる神は我らでなくお主達に降臨したのだな。」

紫苑「・・・・神の力なんかじゃないよ。」

デウス「ほう?」

紫苑「私達の力。貴方の言うとおり信じ続ければ道は開く。」

デウス「そうだ、それでいい!さぁ行くがいい!!この先こそお主達の目指した地、帝様がいらっしゃる場所!

   その目でしかと、その手でしかと!未来を作り出してくるがいい!!」

紫苑「・・・貴方ってロボロボ団という感じがしないね。」

デウス「そうか?先程もそう言われたロボ。たしかにロボ口調は忘れ気味だ。そろそろ潮時かもしれぬな。」

紫苑「ありがとう。」

デウス「ん?」

紫苑「ありがと。行ってくるよ。」

デウス「ふぅ・・・。あぁ、行ってこいロボ!!」



スザク「なんだよ行ってくるよって・・・。」

紫苑「優しい感じがしたの。あの人とはまた会えたら・・・会いたいな。」

ゲンブ「会えるのではないですか?すぐに会えますよ。」

紫苑「うん・・・行こ、みんな!」




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